Y’s Roadの森時彦社長が語る、プロ経営者としてのこれまでの歩み

日本最大級のスポーツ自転車小売店Y’sRoad。現在34店舗(2016年1月26日現在)を運営する株式会社ワイ・インターナショナルの森時彦社長に取材いたしました。いろいろな仕掛けづくりを行う、森社長の異色の経歴を伺います。

ノーベル賞を目指して大学入学。そして神戸製鋼入社につながる

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―森社長の経歴についてお伺いさせてください

森社長「社長に就任する前の経歴は結構長いから、何時間でも話せてしまうよ。最初のキャリアは研究畑出身で材料工学等を専攻しました。大学を受ける時は、ノーベル賞を取るぞって意気込んでいきました。いざ入学したら自分の研究したい「材料工学」という分野がノーベル賞に結び付きにくい分野でした。博士課程まで進みましたが、そんな訳で大学教授になるというのも興味が持てなくなりました。」

―大学時代の「材料工学」がY’sRoadの社長業と結びつくのがイメージできないのですが

森社長「材料工学は自転車と密接な関係があります。みなさんが購入する際にチェックするフレームの材質、アルミ・カーボン・クロモリなどが使われていますね。同じクロモリ材質でもマンガンやニッケル、クロームなどメーカーや自転車の種類によって使われているのが異なります。自転車メーカーは、最適な素材は何かということを常に考えていますので、材料工学が自転車の骨組みをデザインするといっても過言ではないでしょう。そんな材料工学の研究がきっかけで、神戸製鋼の研究職として就職が決まりました。」

―神戸製鋼時代はどのようなお仕事をされたのですか?

森社長「神戸製鋼は鉄鋼の会社なので、鉄鋼の研究や建設機械の設計技術などをみました。異質なところでは、ユリ・ゲラーの超能力スプーン曲げを日本テレビと協力して研究しましたよ。」

―え!?あのスプーン曲げは、本当に超能力を使っているんですか?

森社長「いやいや、研究においてはスプーンに何回圧力がかかったかという点の断定のみです。200回から300回折り曲げて曲げられたというところまでは研究結果でわかりましたが、本当のところどうやってユリ・ゲラーがスプーンを曲げているかまでは、秘密なんですよ。」

ビジネス研究と外資系からの思わぬオファー

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森社長「その後、神戸製鋼で海外留学(ビジネススクール)や新規事業を任される部門に配属されるチャンスを得られました。新規事業ではチタンを使った人工関節をビジネスとして立ち上げました。立ち上げ当初、北米と日本での関節マーケットを比べると40倍以上の差がありました。なので、将来的には日本にビジネスがやってくる可能性を感じ、日本やアジアを見据えた関節を開発しました。今は京セラメディカルという会社になっています。セラミック製のカップと組み合わせて非常に質のいい人工関節が完成しマーケットを確保しました。」

―GEに転職されたとのことですが、きっかけは?

森社長「アメリカのビジネススクールに通っていた時に日系企業と外資企業の比較論文を書きました。テーマはGE(ゼネラル・エレクトロニクス)と東芝のビジネス研究で、どちらも重電とよばれる炉や発電機など大型の物から軽電とよばれる家電まで作るメーカーで、どういう風にビジネス上の違いが出始めたのか興味がありました。」

―転職はご自身からですか?

森社長「いやいや、神戸製鋼で勤めあげるつもりでしたが、GEの方から会ってみたいというオファーがありました。転職する気持ちは全くなかったのだけれども、研究対象だった企業だったので会ってみなきゃなと(笑)。その後は、GEでM&Aを担当し役員を任されたり、テラダインという試験装置の会社の社長を勤めました。」

―GE時代の印象に残っている話などありますか?

森社長「一番は、ジャック・ウェルチが2つ上の上司だということでしょう。」

―え!?あのウェルチが上司だったのですか。

森社長「そうです。GEの大幅な発展を担った伝説の社長ですが、彼の経営手法は会社の最適化とM&Aでした。日本における市場確保をするためには、右肩上がりの成長戦略を描くのではなく会社の為になる企業買収を行わなければいけません。買収された企業も解体されるのではなくGEの傘下に入ることで大幅な成長を行うことができるのです。ハゲタカと呼ばれるM&Aのやり方とは違います。」

森社長「ウェルチが日本に来る際には、買収先の選定や大企業のトップとの調整を実施しました。SONYの出井社長との会談は非常に印象に残っています。GEに在籍しているとなんでもできる会社だからこその自信と不自由さを感じました。世界中を相手にできる楽しさがある反面、逆境が少ないといった感じでしょうか。」

ワイ・インターナショナル社長就任の背景

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森社長「セミリタイアを考えているときに、株式会社リバーサイド・パートナーズという会社で投資のアドバイスを行う業務を担当する事になりました。その投資業務の一環で、弊社に投資する事になりました。」

―ワイ・インターナショナルへの投資のきっかけは何だったのですか?

森社長「Y’sRoadは日本において圧倒的な店舗数を持つ自転車小売店です。投資すればより成長が見込めるという点を認識していました。」

―社長交代のきっかけは?

森社長「投資後就任された社長は自転車業界に詳しく非常に活躍されました。しかし体調を崩され、後任の社長を調整することも難しく急きょピンチヒッターとして社長に就任しました。」

―聞かれ飽きているかと思いますが、社長になられてから自転車はよく乗るようになりましたか?

森社長「もちろん。投資を決めてから大体8台ぐらい購入したかな?ただ、大会に出るようなロードバイクは乗らないでブロンプトンの街乗り用自転車を愛用しています。

自転車を始める前はゴルフやランニングなどやっていたが、歳をとってくると膝や腰へのダメージが大きく、健康管理の為の運動が不健康につながってしまうこともあるんです。自転車はその分、道路が整っていれば負担なく自分のペースで乗れて健康に非常に良いんですよ。」

戸惑った商習慣と外部社長だからわかるビジネスのむずかしさ

―社長に就任されて戸惑ったことはなんですか?

森社長「メーカーと小売店の信頼関係に驚きました。自転車以外のスポーツを見ると、例えばゴルフなんかは小売店が今は強くなっています。メーカー側が小売店に在庫や価格について意見していた時代や直営店と小売店が同じ価格で販売していた時期もありました。メーカー側から見た時に、小売店側にそっぽを向かれてしまうと販路が確保できなくなるためディスカウントなどを容認する形に変化していった。」

―自転車業界も小売りが強くなるということですか?

森社長「いえ、そうはならないと思います。自転車は購入してすぐ乗れるということはなく、セッティングやメンテナンスなどの手間がかかる乗り物です。なので、他のスポーツと同じく販路を多くして販売数を増やすという方向には舵を切りません。

安価なものを買うよりも、安心してメンテナンスやセッティングされる小売りがユーザーに選ばれます。メーカー側もしっかりとサポートできる小売店を信頼します。そうした信頼関係を継続する為には人件費や教育コストがかかるため、単純に価格を下げてユーザー満足度を上げることはメーカーも望んでいないのではないでしょうか。」

―今年はどんな一年になりそうなんですか?

森社長「それは・・・」

※自転車業界の展望を占う、森社長の観測は明日公開予定の後編へ

「2020年、その先を見据えた自転車文化の創造を」Y’sRoad社長が考える自転車文化とは


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Written by 佐藤 大介

新宿の編集プロダクション ワードストライク代表。経済論評から猫記事まで幅広い連載を行っています。ピストでエンデューロに出たり、ママチャリでジャックナイフします。