ブレーキをかけられない!?競輪場イベントBANK10レポート

2016年9月10日、川崎競輪場にて10回目となるBANK 10が行われました。BANKは自分の自転車で競輪場を走ることができたり、競輪のいろはを教えてもらえるイベントで年二回開催ながら競輪選手、トラック競技者の選手、メッセンジャー、ピストバイク乗り、ロードバイク乗りなどさまざまな人が一緒に集まって楽しめるイベントです。

開会式~会場内様子


会場になったのは普段は競輪選手が使用しているスペースでした。会場に入ってまず感じたのは、数えきれない位のピストバイク(トラックレーサー)が揃っていたということです。

天井からぶら下がっているのはいわゆるNJS、競輪規格で組まれたプロ用のピストバイクです。右手手前に映るのは女性サイズから揃っていた貸出用のピストバイク。普段ロードバイクの取材が多い為、この雰囲気には圧倒されました。

会場に入り受付を行います。その後検車を必ず行います。これは安全にバンク走行を楽しむ為に行うもので、終わると検車済のシールが車体に貼られます。ここで安全にバンク走行をするためのルールを教わり、競輪の車券を貰います。これで準備は完了です。


フレームに貼られているのが検車済を表すシールです。ピストバイクということは変速機が一切ありませんからこのように自転車を駐輪するスタンドも後方が特殊なものになっています。


会場まで自転車で走ってきた人や輪行してきた人もおり、各自念入りなセッティングをしていました。


開会式が始まり、主催者挨拶のあと、本イベントに協力してくれた競輪選手の紹介がありました。このイベントの面白いところの一つはとても近い距離で競輪選手からアドバイスが貰えることでもあったりします。

集団3本ローラーで轟音オーケストラ

当日はあいにくの雨でしたので、屋外のバンクが使用できないとという状況で普段競輪選手がトレーニングをしている部屋で3本ローラーにチャレンジすることに。実は私これが人生初の3本ローラーになります。


流石プロという慣れた3本ローラーを披露する競輪選手(手前)。椅子に座っているのではという程の安定感で両手放しもこの通り、全く軸がブレずにペダリングする様子を見て感動しました。

後ろ側からサドルを持ってもらうことで私もなんとか3本ローラーに乗ることができました。これだけの人数で一斉にローラーにのるとゴーという轟音が響き渡ります。3本ローラー経験者にも伺いましたが横に手すりがあるのが便利ですね。

また早速競輪選手にポジションやペダリングについて相談している光景も見ることができました。こんなに近い距離でプロの知識からアドバイスを貰えることはとても貴重ですね。

ちょっとしたポジションの変化で、乗り心地が大きく変わることが実感できます。

思わず声があがる!解説付きで楽しむ競輪

入場時に頂いた車券(競馬でいう所の馬券)をもって元競輪選手で川崎競輪事務局の方の解説のもと皆で競輪を見てみます。競輪というと陸上短距離のように個人戦をイメージしますが、実は少し特殊で9人で走る中に3人組のグループが3つありそれぞれが一人の選手を勝たせたいという思いで戦略的に位置取りをしていることがわかりました。

車券はランダムに選手が買われた2車複という種類のものでした。これは選んだ2人の選手のどちらが1着、2着でも良いので2人揃うことで当たる車券になります。

普段馴染みがない競輪でしたが、こうして接点を持つことで自分の手元にある車券の番号の選手はどんな選手なのかとても興味が湧いてきました。

多くの方が競輪を普段見たり買ったりしないようでしたが、この食いつきぶり。真剣な眼差しです。レース最終コーナーでは「行け!」など思わず声が出てしまう光景も。参加者の人数で2車複で全パターン買ってあったこともあり、的中者も出ました!

脚をつけるのは負けのサイン。スタンディング大会・フットダウン大会

室内で行える2つのイベントが開催されました。1つ目はスタンディング大会です。これは文字通り自転車を走らせずに、ペダルに脚をつけながらバランスを保ち止まっていることを維持するゲームです。

どうして止まっていられるかというと、ピストバイクの構造が大きく関係します。ピストバイクのいわゆる固定ギアという方法は後輪の回転と、クランクが一体で動くためペダルを後ろに踏むことで後ろ側に進むことができます。これをバックといい、この構造を活かすことで前にも後ろにも進まずバランスを取ることができるのです。


止まっています。この状態からLv2の片手離し、Lv3の両手離し、Lv4の両手手離しからの片足前輪へと進みます。(Lv4にビンディングペダルでチャレンジしていた強者もおりました。)


2回行い両方とも優勝した人は同じで、彼はなんと若干17歳とのことでした。(写真左手)10代のバランス感覚恐るべし!

続いてはフットダウン大会です。

これは皆でゆっくり同じ方向に円を描いて進み、脚をついたら負けというゲームです。車体を当てるのはOKなので、所々で狭い隙間をあえて攻めていく人が多くこける場面も多かったです。それにしても皆さんバランスを取るのが上手かった。

念願のバンク走行

ようやく若干雨があがりバンク(競輪場内コース)で走ることができるようになったということで、自転車を持ちバンクへ向かいます。

それぞれの参加者のレベルと自転車別に走る時間がずれており、固定ギアのバンク経験者、固定ギアの初心者、ブレーキ付きのフリーギア(シングルもロードも)と別れて別々に走行します。

これには理由があり、固定ギアは後ろに踏むことで急ではない減速ができる為前後が狭い車間距離(プロだと前後10cmの車間距離を維持できる)でも問題なく走行できます。

しかしブレーキのあるフリーギアは、突然急ブレーキをかける可能性がある為、バンク走行では他のピストバイクとの接触の可能性があり別での走行を余儀なくされます。選手会事務局の方がロードバイクでバンク走行してみた初心者が走行後ピストバイクが欲しくなることが多いと仰っていました、その理由がここでようやくはっきり理解できました。



実際に私も走ってみました(ネオンのヘルメット)が、黄色いラインの上の位置までいくと強烈な角度で正直かなり怖かったです。走っている様子を見るのと実際に走ってみるのとではまるで違いました。

写真にあるようなバンクの最も高い位置までは結局チャレンジできませんでした。


普段から練習されている方々はこのように集団走行を行っていました。


ロードバイクでの参加者も複数人おり、普段走り慣れている道とは違うであろうバンクの感触を体感していました。

また会場では競輪選手による模擬レースが実施されました。さきほど自分で走ったバンクのコースをプロが走るというのは、考えただけでもドキドキします。


自転車に乗る前は、談笑し笑顔も見られましたがひとたび自転車に乗るとこの通り。普段のレースさながらの真剣な表情に。

空気感が変わるその瞬間をバンクの内側から見ることができて、ただただ感激です。


そしてスタート。5周の走り順位を競います。序盤はこの速度ならと見ていた参加者でしたが、レース後半になるとそんな参加者の表情も変わっていきます。

それもそのはず。速い。ケタ違いに速いのです。選手の勢いそのままに、まさに車券を握りしめているかの如く熱烈応援をしてしまいました。


白の1番の選手が最後に抜けだし、勝ちました。バンクの内側から見ると選手同士の駆け引きや、一瞬のアタックのタイミングなど全てが間近で見ることができとても貴重な経験でした。

何事も最初が肝心!0-40(ゼロヨン)


これだけ多くの種目に参加しても、まだ参加できる種目のメニューが残っているのがBANK10というイベントです。これは0-40と呼ばれるゲーム。先ほどの競輪選手がスタートで使っていた発射台をそのまま使い40mのみのダッシュで勝負を競います。

発射台は後輪を取り付けているだけのシンプルな構造なのですが、参加者はなかなか上手に発射台から出られなかったりと苦戦しながらも思い思いにもがいて40mを駆け抜けていきました。


あとちょっと!


さながら長いレースの最後のように、真剣に取り組んでいる様子がお変わりいただけるでしょうか。


バンクでは経験者の方のみ、こうしてバイクに引かれるプロと同じトレーニングを行っている人の姿もありました。最終コーナーはバイクを70km/hまで飛ばすんだとか・・・。

閉会式・感想


最後に記念撮影と景品の授与があり無事イベントは終了しました。

また川崎競輪はUrban Track Clubという名前で、月に一回バンクの走行を行えるイベントを行っているようです。

縁がない人にはハードルが高いと思われる競輪場。しかし一度その面白さを体感してしまったら、見方が大きく変わると思います。イベント全体を通して、自転車の新しい魅力の発見や楽しみ方を提供してくれていました。

また選手・出店店舗との距離感が近く、普段聞きたくても聞けないようなことが質問できその場で教えてもらえるのがこのイベントの魅力だと感じました。今既にピストバイクに乗っている人も、そうでないあなたもとりあえず今乗っている自転車で競輪場を走るという『体験』をしてみてはいかがですか?

ギアがなくても前へと進める・・・ 俺達の人生に変速はいらない。

※競輪場内を走る為、多くの自転車でブレーキをあえて外した状態になっていますが、一般の公道を走る際は必ず前後のブレーキが必要になります。

LINK:GEEK GARAGE
LINK:tempra cycle

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BYU-die

ヘヴィメタルとピストバイクをこよなく愛するカワリモノ。 クロスバイクを購入したことで自転車の楽しさに触れ、その後シングルスピード、ピストバイクと乗り換えている。現在の愛車は自らフレームから組んだアメリカのブランド、State BicycleのContender。 ちなみに好きなメタルバンドはParkway Drive。

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