どうやったら「自転車=車道」という意識が日本人に根付くか?

こんにちは、FRAME編集部です。

先日公開をした歩道で事故に合わない為に、考えるべきこと。とという記事をお読みになっていただけましたでしょうか。

自転車は車道走行が原則と決まっているにも関わらず、まだまだ歩道をスピードを出して走っている自転車は多いです。では、どうしたら今より多くの自転車が車道を走る社会が訪れるのでしょうか。

今回も引続きNPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長の内海潤さんに記事を執筆してもらいました。車道を入ることが当たり前の社会になる為に、内海潤さんが考える提言をぜひ最後までお読みください。

そうは言っても時間がかかる


古今東西を見渡しても新しい概念が浸透するには、どうしても時間がかかる。それはそうだ。昨日まで正しいと思っていたことが実は間違いで、今日からは間違いだと思っていたことをやらなければならないとすれば、頭のいい人ほど混乱する。しかも、その新しい概念が蛮行に近いと感じていれば、なおさらだ。

自転車で車道を走ったことのない人にとって車道は危険な場所に見えるだろう。すれすれを抜いていく大きなトラックや、猛スピードで走り去るスポーツカー、同じ走行空間をシェアするオートバイ。人力で進む自転車は車道上で交通弱者だ。

文字通り弱肉強食の世界に放り出された、か弱き草食動物になった気がするに違いない。そんな危険な場所へ、わざわざ身を晒すなんて頭のおかしい人しかしない愚行だと思っているかもしれない。知らない世界を正しく評価することは実に難しい。

目からウロコが落ちる


いまだに自転車は歩道と考える人が大勢いる。我々のような車道走行推進派は、むしろ異端児なのかもしれない。とは言え、誰でも納得してくれる車道走行のメリットがいくつかある。

まず、交差点に段差がない。歩道を走り続けると必ず車道と交差する場所に2cmの段差が現れる。「ここから歩道ですよ」と視覚障害のある方へ認識してもらうためのものだ。

これを交差点のたび越える必要がある。あのガタン、ガタンが車道にはない。もちろん凸凹の路面ブロックやクルマの侵入を防ぐポールも立ってないから、驚くほど快適に走れることが分かるはず。

乗り心地の悪いロードバイクで歩道を走っている人を見るたび、進んで拷問を受けて修行でもしているのかと勘ぐってしまうが、もしも車道を走ったことがなければ「そういうものだ」と甘んじて受け入れているのだろう。あるアメリカ人サイクリストが「世界最高レベルの路面状態だ」と感激した日本のアスファルト舗装を、騙されたと思って一度走ってみてほしい。目からウロコが落ちるはずだ。

自転車本来のスピードで走るには


自転車の通行が認められた歩道では車道側を歩行者の邪魔にならないよう徐行して通ることができる。自転車本来のスピードは出せない規則だが、ほとんどの人が徐行なんてしないから、気付かない内に揃いも揃って交通違反をしている。下手をすれば、白チャリのお巡りさんでさえ違反している節がある。

ネット上でも自転車の車道走行を推進するより、歩道を徐行してもらうよう呼び掛けた方がいいという声を時々聞く。でも考えてみてほしい。水は低きに流れるものだ。メリットがなければ人は動かない。歩道のメリットより車道のメリットが大きくなれば勝手に動き出す。お膳立てが整ってから「違反せずに自転車らしく走りたいなら車道へ降りるといいよ」と囁くだけでいい。

鶏が先か卵が先か


いざ車道を走るとなると恐怖を覚える人に「さあ走って」と促したところで無理なのは百も承知している。車道を走る人が増えれば、お役所も税金を投入しやすいが、なかなかそうも行かない。お膳立てとしてインフラ整備は避けて通れないので、多くの人が車道を走ってもいいなと思えるレベルの整備を目指すが、税収減の中できる限りコスパを考えたい。

理想形は縁石などで構造分離した自転車道を道の両側に設けて一方通行で運用すること。ただし多額の費用がかかるのでクルマのドライバーへの教育も兼ねて暫定形態である自転車専用レーンを将来の布石として整備しネットワーク化する。A地点からB地点までの道を自転車走行空間で結びたい。

車道が便利で快適だと気付き走る人が増える

今まで通り歩道を走っていると歩行者から叱られる

自転車は車道を走るというコンセンサスが出来上がる。

ここまで何年で出来るだろうか? 自転車マークと矢印を路面に描きまくって自転車はここを走るんだとアピールする効果も狙う。それには世界中から人が来る東京五輪を絶対に利用すべきなのだが。

ものの分かった人を増やす


毎年春に、東京サイクルデザイン専門学校の一年生へ「どうすれば自転車のルールを守ってもらえるか」というテーマについて最初の授業で考えてもらっているのだが、おもしろいことに北風と太陽で言えば北風政策ばかり出てくる。

免許制とか罰則を厳しくする、ナンバープレートを付けさせるなど。国が自転車の活用推進を決めた今、求められるべきは太陽政策である。こっちの水は甘いよと誘う。

自転車に乗る人が減ってしまっては元も子もない。車道を走る人が増えれば、いかに日本の道路がクルマ寄りに作られているか身に染みて分かる人も増えるだろう。どうすれば自転車が安全快適に車道を走れるようになるか、自ら考え始める。

実際に世の中を変えていくのは政治家ではない。サイレントマジョリティー*が声を上げ出したら、いち早く自分の方針に取り入れるセンスの持ち主が政治家になる。平和ボケが蔓延し、あるがまま受け入れる癖が染み付いてしまっているが、もっと日本人は怒っていい。

納得できないことがあれば声に出すべきだ。賛同者が増えれば正義になる。政治家も役人も要望のない所には興味がない。票になる、税金の使い方で評価されることこそ彼らのモチベーションで、アメリカでもトランプさんが当選するくらいだ。世界中で民主主義のあり方が問われている。

(*サイレントマジョリティー・・・積極的な発言こそないものの大多数であることを指す。)

太陽の次こそ北風だ


日本人は優秀だと思う。昔、燃えるゴミは黒い袋で出したものだが、ある時から白い袋で出すべしという御触れが出て、あっという間に白一色へ変わった。見事としか言いようがない。単一民族のなせる技というより、勤勉とか律儀と表現すべきだろう。

だからこそ、追い込みには北風が有効だ。まだ恥の文化が有効だと思っている。「みなさん既に車道ですよ」というキャンペーンをやるのはどうか。

歩きスマホ撲滅キャンペーンでは、ポケモンGOにあやかり「歩きスマホはダサい」というポスターを掲示している。若いアイドルあたりに「あ、あの人まだ歩道走っている〜。やばくね? 超かっこ悪ぃ」なんて言わせてみたい。

取り締まりも本気でやってほしい。日本人は宗教観が欧米人と異なり、神様がいつでも見ているとは思っていない。警察を含むお上が見てなければ、大悪はやらないものの小悪は誰もがする。

自転車も取り締まりの対象だと分かれば手のひらを返したようにやらなくなるはずだ。歩道を暴走する輩が減るだけで歩いて暮らせる街に一歩近づく。信号のない生活道路の交差点で一時停止する人が増えれば、出会い頭の事故で亡くなる人も激減するだろう。

何度も書いて恐縮だが、

  1. インフラ整備
  2. 教育・広報
  3. 取り締まり

・・・の3本柱を着実に推進して行けば、本来、勤勉で律儀な日本人のメンタリティーを考えると、自転車=車道が浸透するのは案外早いかもしれない。

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

あわせて読みたい!

アバター画像

WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

他の記事も読む

pagetop