目指すべきはヨーロッパスタイル?海外に見る自転車活用法
オシャレな街乗り自転車に乗る人もずいぶん増えました。
四季のある日本で、季節の色や風を肌で感じながら、そして変わりゆく街並みを眺めながら走る。
そんなサイクリングの楽しさや爽快感は、本当に格別で心落ち着くひとときです。
例えば家の近所だけでなく、お出かけした先や仕事先でも自転車に乗れたら、きっと便利だろうなあ。
そんな風に思ったことありませんか?
そんな「自転車好き」の夢が実現されているところは、実は世界中に結構あるようです。
地球に優しいエコ車でもある自転車。健康的で燃料いらず、その利便性ある魅力が広く浸透し、さまざまな国で活用されています。その中でも特に印象的なのが、「自転車先進国」とも称されるヨーロッパの国々。
さて、欧州では一体どんな風に自転車が活躍しているのでしょう?
目次
自転車活用度、世界一!エコ&健康志向の国・オランダ
photo by?David Hsu
オランダはそのなだらかな地形により、古くから自転車が普及し愛用されている国です。
環境配慮の面からも、便利でエコな自転車の環境整備は欧州でもいち早く行われ、随所にある自転車専用路では車に対し自転車に優先権 がある[i]など、国を挙げての取り組みが行われています。色で区別された自転車専用路が充実し、また自転車ルートの地図があちこちに設置されています。どっちに行けばいい?あと何キロ?など、これらを見て確認しながら、スムーズに目的地へ向かってサイクリングが楽しめます。日本ではなかなか難しいですが、専用道も広く設けられ二台並んで走ることも余裕。
2003年に鉄道会社運営でスタートしたレンタサイクル「OV-fiets」の会員は10万人以上[ii]。年会費10ユーロ、貸し出しは24時間3.15ユーロで、駅やバス停など250以上もの場所でいつでも借りることができ、自転車人口の多さに比例して駐輪場や駐輪機も十分に用意されています。特筆すべきは「多くの駐輪場近くに修理場が設置されている」ことです。ふいのパンクの際など、突然足止めされることもある自転車。メンテナンスはもちろん、そんな時にもこういったサービスがあると本当に安心です。
有名なのは車だけじゃない!ドイツはツーリング天国
photo by?David Kadavy
屈指の自転車先進国として有名なドイツ。
オンとオフをきっちり分け、よく働きよく遊ぶ。そんなドイツの人々は、休みになると自転車とともに自然の中に飛び出し、休日をおもいっきりエンジョイします。サマータイムには夜9でも明るい青空が広がるなど、アウトドアを長く楽しめるのも理由でしょう。エコや都市交通の混雑対策から、「自転車とともに行動する」生活スタイルへの整備が十分に行われ、あらゆる場所で自転車を利用しやすくなっています。電車やバスへの持ち込みOK、自転車専用道も充実し、車・自転車・歩行者がそれぞれ安心できる街づくり。
シェアサイクルも人気で、ドイツ鉄道子会社運営の「コール・ア・バイク(Call a bike)[iii]?」はその名の通り「電話&レンタル」のスタイル。登録料は12ユーロで、各地に設置された「ステーション」にてレンタル&リターン。電話やSMSでの認証後、コード番号入力でアンロック。返却の際も電話で返却場所などを伝えます。ベルリンやフランクフルト、ミュンヘンなどでは「地域内であればどこへでも乗り捨て可能」そんな驚きのスタイルも。同じようなサービスで「ネクストバイク(Next bike)」もあります。こちらはスマホなどのアプリでも可能。
フランスではシェアサイクル「ヴェリブ(Velib)」が2万台超え!
photo by?mariordo59
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続いてはパリから。こちらも都心部の車渋滞や汚染への環境対策、よりよい街づくりへの活動が進められています。そのひとつで有名なのが2007年7月スタートのシェアサイクル、ヴェリブ[iv]。「パリに来るならぜひ乗ってね!」そんなフレーズとともに、365日使えるヴェリブは2014年現在2万台と驚きの世界最大数に。ステーションと呼ばれる駐輪場は約300mごとに設置され、オンラインやヴェリブステーションで利用登録料&時間使用料を払う仕組み。登録料は1日1.7ユーロ、使用料はこちらも最初の30分までは何度でもフリー、その後30分毎に1ユーロ、2ユーロと加算されるしくみ。ちょっと乗ってエッフェル塔からシャンゼリゼへ。そこで近くのステーションへ返却して散策を楽しむ。散策を楽しんだあとは再び自転車でルーブルやモンマルトルへ。そんな風にあちらこちら行きたいところへスムーズに移動できるのが魅力的です。
この「30分までタダ」は多くの国で採用されているシステム。シャンゼリゼでは2012年から車通行止めでのヴェリブイベントなども行われています。ヴェリブがパリ民に受け入れられたことで、フランスの多くの都市でもシェアサイクルのシステムが普及しました。自転車への人気も高まり、新たに自転車を購入する人も増えたそう。
自転車ネットワークの拡大が続くイギリスは、フランスのヴェリブがお手本に!
photo by?Seth Anderson
大都市ロンドンでも、環境問題の改善対策への取り組みとして、大規模な自転車施策が行われています。
記憶に新しい2012年のオリンピック開催の大成功ですが、こちらに向けて2005年よりロンドン市長のもと始まったのが「エコ五輪」への二大政策。ロンドン中心街から延びる「バークレイズサイクルスーパーハイウェイ」、そしてシェアサイクル「バークレイズサイクルハイヤー[vi]」 です。エコの視点からも「自転車都市を目指して」と大規模な取り組みでスタートした2つのシステム。水色の自転車レーンを敷いたスーパーハイウェイは、2014年現在4本、そして2016年までに計12本もの開通が予定されています。
サイクルハイヤーは2010年7月に始まり、この自転車は市長ボリス・ジョンソン氏の名前から「ボリス・バイク」とも呼ばれています。開始当初に目指したのは400ステーションに6,000台。ですが2014年には700ステーションに10,000台とあっという間にヨーロッパ2位の規模に拡大しました。こちらのボリス・バイクも30分まではフリー。最初に期間ごとのパスを購入し、使用した時間で利用料を支払うシステムです。このボリス・バイク拡大の秘訣は、考え抜かれたの利便性にあります。借りやすく返しやすい「十分すぎるほどのステーション」を用意することで、利用者のニーズに応え、広く市民に浸透しました。
今回調べたそれぞれの都市に共通することは、「健康的で地球に優しい自転車利用の推進」と、「利用しやすい環境整備の徹底」があるようです。乗りたい時に乗りたい場所で、必要な分だけ。また、愛用の自転車お出かけに仕事とどこへでも一緒に。そんな風に利用者の目線でプランニングされたところが成功の秘訣でしょう。欧州での自転車人気はますます高まり、「自転車シティツアー」などもポピュラーになっています。さすがヨーロッパと感じるのが、シンプルかつファッショナブルな自転車デザインや輪止め。歴史ある美しい街並みに溶け込むよう、街の景観とのマッチングも十分に考えられているのでしょう。
日本ではまだまだ未知の領域ではあります。しかし「良いものは見習い、フレキシブルに取り入れる」そんな取り組みでオリンピック大成功を収めたロンドンのように、日本もまた2020年開催国としてそのロンドンから、そして他の自転車先進国から学ぶべきことは多いでしょう。2020年の東京オリンピックに向け、東京都では新都知事のもと、交通緩和やそれによる環境保全、国民の健康を目的とした自転車活用を推進すべく、スウェーデンの自転車専用レーンなどの交通システムを見習っての整備事業を進めたいと方針を示しています。
意気込みとともにその実現へと取り組むことでエコシティへの道を進み、そして日本もまた、自転車活用国として歩んで行くことも夢ではないでしょう。
iza 産経デジタル
(表紙:photo by?Sascha Kohlmann)
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WRITTEN BYFRAME編集部
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