自転車保険は、やはり必要!? 弁護士に聞くその理由 – サイクリスト弁護士に聞く自転車事故と自転車保険 【後編】

弁護士として自転車ADRセンターの調停委員を務める弁護士の萩原 崇宏 (はぎはら たかひろ)氏(第一東京弁護士会所属)。前編の「事故のことはプロに聞いてみよう! ? サイクリスト弁護士に聞く自転車事故と自転車保険【前編】」では、事故の調停に弁護士がかかわる利点などをお聞きしましたが、自転車事故にはどのような傾向があるのか、また、自転車保険に入るメリットはどのようなものなのかをお聞きしました。

萩原 崇宏氏(以下、萩原)「調停委員を務めていて思うのが、自転車の事故って、けっこう起こっているんだな、ということ。自転車事故の調停を専門に扱う自転車ADRセンターだから、という点を考えても、やはり多いと感じます。事故の多くは、普及台数が多いからでしょうか。ママチャリなどの軽快車に乗られている方の事故件数も多いですね。」

調停委員に聞く、自転車事故のシチュエーション

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それでは、事故のシチュエーションはどのようなケースが多いのでしょうか?

萩原「よそ見をしない、走行中に携帯電話をいじらない、傘をさしながら運転しない、一時停止線ではきちんと止まるなど、基本的な事を守っていれば事故を防ぐことができたのでは、と思うケースをよく見かけますね。」

時に軽視してしまいがちになる交通ルールですが、事故に遭わないためにもルールは守る必要があります。では、事故を起こしてしまった時の賠償金額はどのようなケースがあるのでしょう?

萩原「様々なケースがあるので、一概には言えませんが、被害者の骨が折れたり、事故により後遺症が残ってしまった場合は、賠償額が高額になることが多いと感じます。また、被害者が高齢者の場合は特に、骨折などの重い結果が発生しやすく、被害金額が高額になりやすいことが言えると思います。どんな人でも事故に遭う可能性があります、それは予測が立てられませんので、自転車保険へは絶対に入った方が良いと、個人的には思っています。」

事故に遭う可能性は誰にて?もあるもの

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萩原「先ほど話したように、自転車に乗っている以上、事故に遭ってしまう可能性はあるわけです。ケースによっては、1億円近い賠償が命じられることもありますし、保険料はさほど高くありません。私自身も調停委員の経験上、必要だと感じて自転車保険には加入しています。これは個人的な意見ですが、車やバイクには自賠責という制度がありますよね? 自転車にも、同じような制度はあった方が良いと考えています。」

同ブログの記事「冷や汗をかくその前に、自転車事故の賠償事例と4つの対策方法」でもご紹介したように、数千万円もの賠償金が請求されるケースも報告されています。 備えあれば、憂いなし、楽しいサイクルライフを満喫するためにも自転車保険への加入は必要なものなのかもしれません。

ADRセンターを頼るメリット

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事故の時に頼りになる自転車保険ですが、萩原氏が務めるADRセンターの調停委員も同じく頼りになる存在です。同センターの調停サービスは、和解によって得られる当事者の経済的利益が100万円までの場合、10万円までごとに3,000円、数千万円の高額賠償のケースでも数万円で調停サービスを受けることができます。

たとえば、和解によって30万円の経済的利益が得られた場合、調停サービス費用は3,000円×3=9,000円程度と、さほど高価ではありません。

前編の「事故のことはプロに聞いてみよう! ? サイクリスト弁護士に聞く自転車事故と自転車保険【前編】」で萩原氏にお聞きしたように、プロが調停に関わることで、「事故調停に関わる精神的 な負担が減る」「中立的な第三者が間に入ることで交渉がスムーズに進む」「法律の専門家の調停委員とともに、妥当な解決案を検討できる」など様々なメリットが有るそうです。

一般財団法人日本自転車普及協会のホームぺージには調停サービス利用のしおりが掲載されているため、もし事故に遭われた際は相談してみてはいかがでしょうか?

もっと自転車を楽しめる環境を

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最後に、萩原氏になぜ調停委員の活動をされているかを聞いてみました。

萩原「私は、もっと自転車を安心して楽しめる環境づくりをしたいんです。ADRセンターの調停委員は、調停サービスだけでなく、自転車に関わる法の整備や発展のための活動も行っています。私は一法律家という立場ですが、その立場から、日本のサイクルシーンに貢献していきたいですね。やっぱり自転車が好きですから。」

今回の取材では、数多くの事故調停に関わってきた萩原さんのお話を聞いて、改めて安全に走ることが重要だと感じました。楽しい乗り物だからこそ、周りに迷惑をかけないように、安全に走りたいものですね。

(終)

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WRITTEN BYスズキ ガク

1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI

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