ヒザが痛んだらお尻を叩け!? 整骨院の先生に聞く、サイクリストのセルフメンテナンス法【前編】

自転車に乗っていると、腰が痛くなったり、ヒザを痛めたり、体のトラブルが出てくることがあります。今回は体のメンテナンスのプロ、はなまる整骨院院長の中野浩樹先生に、サイクリストに役立つセルフメンテナンスの方法をお聞きしました。

プロフィール

中野先生は三重県伊勢市出身の35歳。東京都世田谷区経堂に居を構える「はなまる整骨院」の院長を務めています。柔道整復師、鍼灸師、按摩マッサージ指圧師など様々な資格を持つ中野先生は、28歳から現在の仕事を始めました。

一般的な整骨院で行う、骨折、脱臼、捻挫やギックリ腰などの施術に加え、はなまる整骨院ではスポーツ障害の施術も行っています。整骨院がある経堂は近くに大学があるので、学生さんの来院も多いそうです。

中野浩樹先生(以下、中野) 「高齢化が進み整骨院は、高齢者の方が多数来院する場所と言われます。しかし、当院はスポーツ障害の施術をしているからか高齢者の患者さんが少なく、全体の10%くらいでしょうか。

スポーツ全般、特に野球、ランナー、サッカー、ラクロス、格闘技の患者さんがよくいらっしゃいますが、自転車競技をされている方もいらっしゃいますよ。」

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(はなまる整骨院の壁には著名な方のサインがずらり)

スポーツ障害の施術を行う中野先生も、過去に自転車に乗られていたことがあるそうです。

中野 「最初は親父の乗っていた古いロードバイクに乗っていて、次に友達が乗っててかっこいいなと思ったピストバイクに乗りかえました。

ピストバイクは日常の足として使ってました。でも、怪我すると患者さんやスタッフに迷惑がかかるので、30歳になった時から乗ってません。たまに乗りたくなるんですけどね。」

自転車で壊しやすい体の箇所

中野先生のプロフィールを紹介したところで、サイクリストに多い故障の箇所を聞いていきます。先生、自転車に乗っていると壊しやすい箇所ってどこなんでしょう?

中野 「まず、短距離を走る人と長距離を走る人で、壊しやすい箇所は全く別です。短距離競技に代表される競輪やスプリントレースは転倒が多いので、骨折が多いですね。

さらに細かく言うと鎖骨、肋骨、肩甲骨の順で骨折するケースが多いと思います。骨折は整形外科も関わる分野なので、当院では応急処置として骨折している箇所を固定して、接骨院を紹介します。」

ーー  なるほど、逆に長距離ではどこを壊しやすいんでしょうか?

中野 「長距離競技では、転倒は少ないと思うんですが、長時間に渡って体を動かすので、筋肉や腱、特にアキレス腱の炎症や断裂、ヒザの故障、また背筋や腰を痛めることが多いと思います。」

ヒザを痛めたらお尻を叩け?意外なセルフメンテナンスの方法

ーー ヒザ、アキレス腱、腰、背中ですね。僕も長距離を走っていたとき、ヒザを壊してしまいました。片方を痛めてかばっていたらもう片側も痛くなってしまって。ああいう時に自分で対処する方法はありますか?

中野 「人によってケースは様々なのですが、ヒザの故障が起こる原因のひとつとして、ヒザにつながる筋肉が緊張していることが挙げられます。

該当する筋肉は、太ももの表面の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、大腿筋膜張筋、それとハムストリングスと呼ばれる太もも裏側の筋肉などです。

それぞれ簡単に言うと、大腿四頭筋はヒザを伸ばす役割を担い、ハムストリングスはひざを曲げる役割を担うんですが、ヒザの痛みって、大腿四頭筋と大腿筋膜張筋、ハムストリングスのどこかが緊張して起こる場合があるんです。

それらの筋肉はお尻の大臀筋(だいでんきん)に筋膜で繋がっているので、お尻の筋肉をこぶしをにぎってトントンと叩いてあげると、太ももの緊張がほぐれてヒザの痛みが良くなることがあるんです。

ヒザを故障した患者さんには、患部そのものを湿布で冷やしたりマッサージするのではなく、太もものやお尻の筋肉をほぐしてあげると良くなる人が多いですね。」

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(ヒザの動きに関係する筋肉のレクチャーをしてくださいました)

ーー お尻をトントン、ですか。今までヒザを痛めた時は痛む場所に湿布を貼っていましたが、その処置は間違っていたんですね。

中野 「もちろんそれで良くなる場合もあるんですが、痛む箇所ではなく、別の場所に原因がある場合も多いですよ。体って全て繋がっているので、どこかを痛めるとそれをカバーして体が不自然な動きをするので、別の箇所が痛くなることもあるんです。

先ほど聞いた、片膝を痛めたらもう片方も痛めてしまうのも、そのひとつですね。適切な処置は個人では難しいこともあるので、どこか痛んだら僕たち治療家のようなプロに頼んだ方が治りは早いですよ。」

アキレス腱を伸ばすには

ーー ヒザの次はアキレス腱について教えていただけますか?

中野 「アキレス腱には上から下腿三頭筋(かたいさんとうきん)、腓腹筋(ひふくきん)、その下にヒラメ筋という筋肉が層になって繋がっています。

アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋の腱が合わさったものなんですね。さらにそれらの筋肉に先ほどヒザの時に説明したハムストリングスが筋膜で繋がっていると言われてます。これのどこかが緊張している状態なので、全て伸ばして緊張をほぐしてあげることが必要です。」

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(アキレス腱に関わる筋肉のレクチャー、中野先生が熱く語ります)

ーー ここでも色々な筋肉が関係しているんですね。

中野 「そうですね。それで、伸ばす方法なんですが、学校の体育の授業で行ったアキレス腱のストレッチがありますよね。前足を曲げて、後ろ足を伸ばすやつです。まずあれがひとつで、下腿三頭筋が伸ばせます。でもそれだけだとヒラメ筋が伸ばしづらいんです。

ヒラメ筋を伸ばすには、腰ぐらいの高さの台に足を乗せてヒザを曲げながら体重を前に乗せていくんです。こうすると、ヒラメ筋を伸ばすことができます。このストレッチをする時は、効率よく伸ばすために、かかとを浮かさないでくださいね。」

ーー アキレス腱を伸ばすのにこんな方法もあるんですね!
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(まずは普通のストレッチ)

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(次にヒラメ筋を伸ばすストレッチ、これで完璧!です)

体が痛むときは痛む箇所に注目してしまいがちですが、原因が別の箇所にあるという話には目からウロコという方も多かったのではないでしょうか。

後編では腰や背中、また肩のコリに関するセルフメンテナンスの方法をお聞きしていきます。肩のストレッチ方法はデスクワークをされている方にもおすすめできる内容ですよ!

後編はこちら。
肩が凝ったら胸を揉め!? 整骨院の先生に聞く、サイクリストのセルフメンテナンス法【後編】

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WRITTEN BYスズキ ガク

1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI

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