僕はビジネスアスリート-スペシャライズド・ジャパン代表 望月秀記さんの競技生活(後編)

サイクリストなら誰でも一度は聞いたことがある自転車メーカー「スペシャライズド」。今回は神奈川県本厚木にある同社のザ・スペシャライズド・ラウンジに伺い、スペシャライズド・ジャパン代表の望月秀記さんにお話を伺った。

前編では、毎日サイクリング・ラン・スイムを続けるストイックな日々や、それを実行していくマインドについてご紹介した。後編では、望月さんの半生についてご紹介し、前編で紹介したマインドがどのように生まれたかを追っていく。

前編はこちら:
ほぼ毎日がトライアスロン-スペシャライズド・ジャパン代表 望月秀記さんの競技生活(前編)

アスリート少年は海外に

望月さんは9歳の頃から競泳を始め、高校時代にはインターハイにも出場していたアスリート少年だった。1984年大学に入学してからも競泳部に所属し、競泳は続けていたが、望月さんは競技選手以外の道を模索し始める。

望月秀記さん(以下、望月)「高校3年生くらいになると、競技に向いた体のつくりではないなと分かってくるんです。自分じゃどうにもオリンピックに出ることはできないと思い、競技選手以外の道を模索し始めました」

そう考えた望月さんは、英語を学びたいと考え、大学1年生でアメリカのアイオワ州に向かい、農場で2ヶ月間アルバイトをしながら滞在する。それだけでは満足できなかった望月さんは、大学3年目に奨学金制度を利用してブラジルのパラナ州に2年弱留学した。

望月「当時のブラジルは軍政からの移行期でハイパーインフレの最中でした。今日100円だったパンが次の日には200円になって、明後日には400円になっているような状態でした。犯罪率も高かったですね、銀行の現金回収車も機関銃を装備してました」

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映画のような世界で20歳前後の多感な時期を過ごし、国に戻ると日本はバブルの最中。その落差に望月さんは「日本の教育で学んできたことはぜんぶ嘘っぱちだった」と感じたそうだ。

望月「これはもっと勉強しなきゃと思い、またすぐに留学しようと思い立って、ブラジルから帰国後またアメリカのアラバマ州にある小さな街の大学に留学しました。それが大学4年生の時です。」

留学から戻り、再び日本に戻った望月さんは、外資系広告会社に務め始めた。97年にはナイキジャパンに転職し、学生時代のバイタリティそのままに営業のトップになるなど、14年間同社で勤務を続けた。

2日間連続9時間のスペシャライズドの面接

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ナイキジャパンを退職後、スペシャライズドの日本支社のトップに就任するきっかけになったのは、創業者から来たメールだったと言う。

望月「サンフランシスコの本社に呼ばれて、朝の9時から9時間連続で面接が始まるんです。1時間ごとに会社のトップメンバーが出てきて。お昼は水一本とコッペパンひとつ。途中には弊社のランチライドにも行って、それが2日間続くんです」

当時を思い出して、あれは「どこまで耐えられるかテストしてたんじゃないか」と望月さんは話してくれた。強烈な面接経験を通して、2011年9月に望月さんはスペシャライズド・ジャパン代表に就任。現在に至る。

人を惹きつける「ビジネスアスリート」

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望月「僕は自分のことをビジネスアスリートだと思っています。仕事も競技もアスリートとして、より高い次元に引き上げていきたいんです。そのプロセスが楽しいし、今48歳ですけど、今後もそれは続けていくつもりです」

望月さんは、仕事も競技も「生活をキュレーションして、ポジティブに変えていく方法」だと言う。そして、代表を務めるスペシャライズ社のミッションを「自転車を通じて、ユーザーのライフスタイルを向上していくこと」だと捉えているそうだ。

望月「例えば、エアコンを買う人は、エアコンそのものではなくて、快適な住環境を買っているじゃないですか。自転車も同様に、乗って楽しいとか、ヘルスケアになるとか、自転車に乗ることで生まれるものを欲していると思うんです」

望月さんは平日は4時半に起床、朝6時半には出社して、40~50kmを2時間かけて自転車で走る。昼休みは約8kmのランニングを行い、夜はジムでウェイトトレーニングとスイムに励む。年に3度はトライアスロン大会に参加し、ストイックな生活を続けている。

仕事も競技も自身の人生をより前向きに拡大していく方法だと言う望月さんは、社内の誰よりも率先して「自転車を通じて、ユーザーのライフスタイルを向上していくこと」というスペシャライズ社のミッションを実行しているように見える。

それは小さい頃からアスリートとして培った精神と、常に自身の可能性を切り開いていく姿勢が影響しているのだろう。

話を伺った時の望月さんの表情は楽しそうに輝いていて、まるで好きなことを話す子供のような目をしていた。物事をどこか斜に構えたり、冷めた視点で見てしまう人も多い現代で、向上・前進・研鑽を続けていく望月さんの生き方を暑苦しく感じる人もいるかもしれない。

しかし、今だからこそ望月さんの生き方はとても魅力的に映る。インタビュー中、望月さんは何度も冗談混じりに「僕の生活って異常かもね」と話していた。しかし、そう話す望月さん自身はとても楽しそうだ。

何かを追いかけている人は人を引きつける魅力がある。僕もお話を聞いているうちにどんどん望月さんの話に引き込まれていった。御年48歳になる望月さんは今後もより高みを目指して人生の質を上げていくのだろう。

ザ・スペシャライズド・ラウンジ

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今回望月さんにお話を伺ったのは、神奈川県本厚木にあるザ・スペシャライズド・ラウンジ。
同社の販売するバイクやバイクギアが展示され、登録者は誰もが使えるシャワーブースや、同社製品の試乗、自転車講座を受講することができる。
スペシャライズドのたゆまぬイノベーションの歴史と、最新テクノロジー、ライダーの熱き鼓動を身近に体感できるラウンジにぜひ一度足を運んで欲しい。

ザ・スペシャライズド・ラウンジ
住所: 〒243-0018 神奈川県厚木市中町3‐13‐5 (地図
営業時間:
・平日 13:00~20:00
・土日祝 12:00~18:00
・定休日: 毎週月曜、火曜
(イベント等により、臨時休があります)

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ラウンジ2階のカフェスペース、ここは同社社員のミーティングやランチに利用されている

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ラウンジ2階では自転車にまつわる講座も随時企画している

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シャワーブースは、さすが自転車メーカーと言いたくなる広さ。ブースは合計で5つ設置されている。社員だけでなく、厚木市近郊にライドに来た方も使用可能。社員だけのものでなく、ラウンジでボディージオメトリーフィットを受ける方や、近郊でライドされた方(有料、500円)でご使用いただけます。

スズキ ガク

WRITTEN BYスズキ ガク

1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI

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