自転車ファンのみならず、漫画ファンにも朗報です! 自転車漫画を手がける作家陣による、豪華対談が実現しました。集まったのは、2017年1月からアニメ放送が決定した『南鎌倉高校女子自転車部』の松本規之先生、『亀が無理してロードバイク乗ってみた』のきっか先生、『まるしばポタリング記』の佐倉イサミ先生の3名。

意外と知らない自転車漫画の系譜から、作品の制作秘話に至るまで、濃厚トークをたっぷりとお届けします。

プロフィール


松本規之


某美少女ゲーム会社に10年程在籍退社、フリーになった後はイラストレーターとして活動。代表作はアニメモーレツ宇宙海賊の原作「ミニスカ宇宙海賊」近年では漫画をメインに活動し代表作にアニメ化した「南鎌倉高校女子自転車部」があります。

きっか


まんが家。イラストレーター。奈良出身のおのぼりさん。著書に「しょぼにゃん」(少年画報社)「動物園でもふもふお世話中!」(KADOKAWA)「ジュニア空想科学読本 9」(KADOKAWA)挿絵担当。「亀が無理してロードバイク乗ってみた」(学研)。サイクリングブログ「亀が無理してロードバイク乗ってみた」連載中。

佐倉イサミ


東京都在住。愛車は東京サンエスJFF#501。自転車ブログ「まるしばポタリング記」運営中。芳文社「まんがタイム」12月号〜3月号に自転車漫画「おかわり自転車」がゲスト掲載中。

『弱虫ペダル』だけじゃない!自転車漫画のジャンルと歴史



ーー松本先生はフィクション、きっか先生と佐倉先生は自身の日常を描くスタイルで、一口に自転車漫画と言っても色々なジャンルがありますよね。

きっか:松本先生の『南鎌倉高校女子自転車部』や、三宅大志先生の『ろんぐらいだぁす!』のように、かわいい女の子を描いた自転車漫画。『弱虫ペダル』みたいなアツい少年漫画。私やイサミさんはエッセイテイスト。それから、『かわうその自転車屋さん』みたいに、ファンタジー要素をミックスさせたものもありますね。私はそれぞれがすごく好きで、それぞれに良さがあると思います。

松本:そうはいっても、自分が5年ほど前に南鎌倉高校女子自転車部の連載を始めた頃は、今ほど自転車漫画のジャンルが分岐していなかったんですよ。当時は弱ペダもまだあまり注目されていなくて、自転車漫画はマイナージャンルでした。なので、5年前と今では、だいぶ状況が変わっていると思います。

佐倉:私が去年ブログで漫画を描き始めた時には、すでに弱ペダが大ヒットしていたので、だいぶ女性の自転車乗りが多かったですね。でも、いざイベントに行ってみたらそれほど女性は多くなかったし、イベントのことを漫画で描いてる人もあまりいなかったので、自分にできるかもと思って描き始めました。

ーーみなさんがスポーツ自転車に乗り始めたきっかけは?

きっか:弱ペダです(笑)。私はすごくスポーツが苦手で、最初はロードバイクなんて考えられなかったんです。でも、そんな人間にも「自転車に乗りたい!」って思わせるような魅力が、弱ペダにはありました。自分のペースでゆっくりですが、今は本当に、ロードバイクを始めて良かったなって思ってます。

松本:自分の場合は、弱ペダがまだ存在してない頃ですからね(笑)。普通に生活の足として買う感じでした。取材に行く時など、電車の代わりに使ったり。そうしているうちに自転車雑誌も増えてきたので、新しい連載の企画を練っていて、「自転車漫画を描いてみよう」となったんです。

佐倉:私はもともと小径車でイベントに出たりしていたんですけど、だんだんロードバイクに魅力を感じるようになって、1年半くらい前にようやく買いました。やっぱり、スピード感がいいですよね。

ーー序盤から『弱虫ペダル』というキーワードが頻繁に出ていますが、みなさんにとっても弱ペダの影響は大きいのでしょうか?

佐倉:影響力は爆発的にありますよね。

松本:でも、弱ペダはいきなりポッと出てきたわけではなくて、実は自転車漫画自体にちゃんと歴史があるんですよね。昔は『シャカリキ!』っていう漫画があったりとか。

きっか:私、シャカリキ好きなんですよ!(笑)

松本:その前で言うと、40年前くらいに連載されていた『サイクル野郎』が自転車漫画の元祖ですね。そこからシャカリキが出て、その次に『並木橋通りアオバ自転車店』が出て、最後に弱ペダ。これが自転車漫画の系譜で、だいたい10年くらいのスパンで王道の作品が出てきている印象です。なので、今後は弱ペダに続く作品が出てくるんじゃないでしょうか。

自転車漫画家ならではの悩み…「リアリティの描き方」


きっか:松本先生は、漫画を描く時はデジタル作業なんですか?

松本:はい、フルデジタルでやってます。自転車の作画も、3Dでモデリングしたものを取り込んでいます。

きっか:モデリングしてるんですか! すごい!

松本:じゃないと量産できないですからね。弱ペダとかだとフリーハンドで描いたほうが勢いも出てマッチするんですけど、美少女系の絵柄の場合はかっちりしたタッチの方が向いているので、デジタルとの相性がいいんですよ。

きっか:私もデジタルを使っていますが、自転車に関しては手描きなので、いつもかなり苦戦しています。パーツも難しいし……。先生の作品は風景もすごく綺麗ですが、あれは実際に写真を撮っているんですか?

松本:そうですね。取材に行って写真を撮って、ちまちま描いています。

きっか:お会いしたらお伝えしようと思ってたんですけど、本当に綺麗ですよね(笑)。感動します。漫画の風景とか背景って大変なのでごまかしがちなんですけど、それをあえてしっかり描くことで、季節感や情景がすごく伝わってきて素晴らしいです。

松本:ありがとうございます。なかなかこうやって感想を聞くことはないので、嬉しいです(笑)

佐倉:あの、聞いていいのかわからないんですけど……松本先生は、アシスタントさんは何人ぐらいいらっしゃるんですか?

松本:あぁ、自分一人で描いてますよ。

佐倉:一人なんですか!?

松本:最初はスタッフに手伝ってもらったりもしていたんですけど、自分で全部描いた方が早いなと(笑)。デジタルだと背景の切り貼りとかは使い回しがしやすいんで、意外と楽ですよ。

ーー他の漫画にはない、自転車漫画特有の苦労などはありますか?

松本:一般的な自転車漫画って、ごまかしがきかないというか、嘘をつける幅が狭いんですよ。弱ペダのように多少誇張されて描かれている作品もありますが、翼が生えて飛んでいくとか、超能力で相手を倒すといったような、SF的な要素はないじゃないですか? アクションシーンで空を飛んだりできれば、カメラアングルで自由が利くんですけどね。でも、自転車漫画でリアリティを持たせるためには、道路上での平面的な動きにしないといけない。それだけでも、かなり制約があるんですよね。なおかつ、道路交通法に違反しないような作画で……。

きっか:左側通行とか、いろいろありますもんね(笑)

松本:あと、プライベートでいうと、自転車での怪我はご法度ですよね。特に漫画家は替えのきかない職業なので、リスクをしっかり考慮した上で走りにいかないといけない。

きっか:私、自転車を買って1か月で事故に遭ったことがあります……。幸い怪我はなかったものの、やっぱりリスクを考えると、締め切り前などは走りにいくのを躊躇してしまいますね。

松本先生、アニメ版『南鎌倉高校女子自転車部』裏話を教えて!


ーー1月から『南鎌倉高校女子自転車部』のアニメ放送が始まるわけですが、声優さんのアフレコなどはいかがでしたか?

松本:やっぱりみんなうまいですよね。特に、舞春ひろみ役の上田麗奈さんは、ヒロインをやるだけの実力を持っているなと感じました。ほかのキャラに関しても、かなりイメージ通りに仕上がっています。

ーーアニメ版の見どころとは?

松本:自転車とキャラクターがちゃんと動いている、というところですね。背景もかなり綺麗に描かれているので、鎌倉の綺麗な風景を見てもらって、「そこに行ってみたい、走りたい」と思ってもらえたら嬉しいです。あとは、ポタリングやレース、ヒルクライミングなど、大抵の自転車イベントは作中で網羅しています。もともと、企画段階からアニメ化を想定していたんですよね。

佐倉:そうだったんですか!?

松本:実際にアニメ化の話があったわけじゃないですよ。でも、自分の中では多分いけるだろうと思っていたので、連載当初からアニメの展開を意識して構成していました。

きっか:すごい……! 著名な先生の場合、当たる作品を思いついた時には、なんとなく自分でもピンとくるって聞いたことがあります。きっとそういう感覚なんでしょうね。

ーーここ数年は、『けいおん!』からの流れで「女子×部活」をテーマにしたアニメもかなり流行っていますしね。

松本:「女子×自転車」を取り上げたのは、多分『南鎌倉高校女子自転車部』が初めてなんじゃないでしょうか。ほかの作家さんの多くは、少年漫画の方程式である「少年×スポーツ」で描こうとするんです。過去にはそういう王道のスポ根自転車漫画もたくさんあったんですけど、現在残って連載しているのは弱ペダくらいで。でも、「女子×自転車」なら競合も出てこないだろうから、多分いけると思ったんです。

アニメ 南鎌倉高校女子自転車部

自転車漫画家のメリットは、健康になれること!


ーーきっかさんと佐倉さんは日常漫画を描いていますが、フィクションの自転車漫画からはどのような影響を受けましたか?

佐倉:それこそ、南鎌倉の風景と自転車っていうのはすごく魅力的で、参考にさせていただいたところがあります。ほかにも、社会人と日常にある自転車を描いた『かもめ☆チャンス』、アツい友情を描いた弱ペダというように、「自転車と人物がどう接してるか」という部分なども参考にしています。そうやっていろんな作品のいいところを取り込んで、自分の作品の中に落とし込むことはもちろん、自分自身の日常にも活かせたらなと思います。

きっか:取材をして、自分で体験をすることは大事だなと思いますね。体験しないと描けないことはいっぱいあるなって。たとえば弱ペダの渡辺先生も、作品に出てくる舞台へ自分で走りに行かれてるんですよ。自転車イベントにも参加されて、自分でレースにも出られるし、自主練もよくされているし、風景の写真もたくさん撮られている。そういった自身の経験を作品に活かしているのを見ると、取材はすごく大事なんだなと思います。

松本:取材は絶対しないといけないジャンルですよね。そこが大変でもある。

きっか:作画する時間以外に、取材する時間も必要になってきますもんね。でも、そうやって実際に訪れた土地での体験を漫画に描いて、地元の人に喜んでもらえたり、読者から「そこに行ったことあるよ!」というような声があると嬉しくなります。

ーー自転車漫画を描いていて、良かったと思うことは?

松本:運動することかな(笑)。漫画を描いて健康になるのって、自転車漫画だけですよね。

きっか:そうですね(笑)。それまでは私も完全なるインドアでした。

佐倉:自転車で走ってる間は気分転換になって、ネタが思い浮かびやすいんです。なので、ネタに詰まったら走りにいったりしてますね。

きっか:それもすごく共感できます。締め切りが迫っているからといって、家にずっといるよりも、あえて外に出て自転車に乗った方が頭もスッキリして捗りますよね。気分転換には、自転車ってすごくいいんじゃないかなと思います。

ーー最後に、みなさんが自転車漫画を通じて、今後読者に発信していきたいことを教えてください。
松本:基本的に、自転車っていうのはコミュニケーションツールだと思うんですよね。スポーツだと思って一生懸命走るんじゃなくて、「人と会って繋がっていける便利なツール」っていう視点で入っていってほしいです。

きっか:私は、自分自身がもともと運動音痴だったので、「運動が苦手な人でも乗れるよ」っていうことを伝えたいです。スポーツ的な乗り方以外にもいろんな楽しみ方ができるし、徒歩や電車移動している時とはまた違った発見があるのも醍醐味ですよ。

佐倉:私もお二人がおっしゃるのと同じように、自転車がフラットに日常に寄り添いつつ、ちょっと特別な気分で楽しめるような存在であればいいなと思って漫画を描いています。ラフな格好でちょっと走るだけでも、得られる感動がたくさんあるので、そんなロードバイクをぜひ楽しんでほしいです。

ーーお三方、本日は本当にありがとうございました!

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