【レースレポート】シクロクロス東京エリートレースは見る側も走る側も最高のレースだ!

2017年2月11日・12日に開催されたシクロクロス東京2017。天気にも恵まれ、のべ2万人もの観客が詰めかけました。

今回レポートをする私、実はメインレースである男子エリートに参加しており、今回はその“走る側”視点から当日の様子をお伝えしたいと思います。

最高のロケーション・最高のお客さん。走る選手のテンションもMAX

近年日本でも人気上昇中のシクロクロス。その中にあってシーズン終盤の一大イベントが、このシクロクロス東京です。

全日本選手権や野辺山シクロクロス等のUCI国際レースなど、年間にいくつか選手にとってとても重要なレースがあります。そういったレースでの出走前の緊張感・ピリピリ感は凄いものなのです。それに対して、シクロクロス東京は重要レースでありながら、どの選手もどこかにこやかな表情。秋から始まったシクロクロスシーズンをここまで戦ってきて、シーズンの最終盤にたくさんのお客さんに応援されながら走る喜びが選手の表情に表れているのです。

もちろん、レースのレベルも国内最高。国内ランキング35位以内の選手だけが出場を許される男子エリートには、海外の強豪も招待選手として出場します。

今回の出場選手の中でも優勝候補筆頭は、フランスのスティーブ・シェネル(クロスチームバイG4)。過去には世界選手権で4位に入った実績を持っており、普通にやれば優勝間違え無しの選手。レースは彼を中心に展開していくことは、やる前から明白でした。

対するは昨年優勝のジェレミー・パワーズ(アメリカ、アスパイアレーシング)。そして国内のトップ選手もシェネルに一矢報いようと全力で挑みます。

私自身は、ランキング的にもギリギリで出場権を取った感じで、とてもシェネルを倒そうと言う感じではないものの、たくさんのお客さんの前で全力を出して、1つでも上の順位を取ることを目指します。

ここからは、私が実際のレースの中で感じたことをお伝えします。

レースは試走から始まっている

シクロクロスはオフロードレースなので、試走がとても重要だ。

難しいラインを事前に頭に入れるため。また、複数のラインがある場合はどのラインが良いか見極めるために、しっかり試走する。特にシクロクロス東京のコースは砂浜の難易度が高いうえに、林の中のシングルトラックもトリッキーなので、試走は十分にしておく必要がある。

ちなみに、エリートレース当日の試走は時間が短いうえに渋滞して思うように走れないこともあるので、トップ選手は前日から会場入りして試走を行うこともある。

私は、試走を兼ねて、前日に開催されたサンドスイッチエンデューロと言うレースに出走。レースと同じペースでコースを走ることが出来て、翌日のエリートレースに役立てられた。

砂用のセッティングでレースに臨む

シクロクロス東京はとにかく砂場セクションの攻略が重要。そのために砂場が走りやすいセッティングでレースに臨む。ただ、厳密に言うと、あまりに砂だけに合せてしまうと、林の中のシングルトラックが走り難くなるので、バランスを取りながら調整していくのだが、普段よりタイヤの空気圧を落とし、あまりタイヤにノブ(ブロック)が付いていないタイヤを選んだ。

今回の私の場合、ビットリアのXNと言う砂に最適なタイヤを用意していたのだが、空気圧を落とし過ぎて、試走中に林の中で気の根っこを踏んでパンクしてしまった。それくらい、砂と林の中のバランスを取ったセッティングと言うのはシビアなのである。

(出典:Vittoria

ビットリアのXNタイヤ。こう言うブロックの少ないタイヤが砂にはよく合う。

レース出場者の視点で見たエリート男子のレース

13:40。晴天の中、メインのエリート男子のレースのスタート時間にはたくさんのお客さんが詰めかけ、たくさんの声援の中、レースがスタートしていく。この盛り上がりは走る方も気持ちがいいもの。

ただ、レースは激しい。

最初のコーナーでオーストラリアの選手が先頭付近で落車したことによって大混乱が生じた。

この混乱を上手く抜けた竹之内悠(東洋フレーム)やシェネルがトップに立つ中、後方では渋滞が発生し、足止めを食った選手はこの時点でトップと数十秒の差がついてしまう。私もその1人だった。

エリートレースの第一コーナー。先頭付近で落車が発声し、後方は大混乱
(写真:Kensaku SAKAI)

激しい位置取り合戦も収まり、各選手がペースを上げて走っていく。トップでは前出のシェネルやパワーズ、竹之内の先頭争いが繰り広げられ、ほどなくしてシェネルが抜け出し、独走態勢に。

そんな中、レースもちょうど折り返しを迎える頃、私は30番手くらいの4人パックで走っていたが、後ろからシェネルがもの凄い勢いで迫ってくるのが見えた。

通常、オフロードのレースではトップの選手から周回遅れになるとレースから降りなくてはならないけれど、このシクロクロス東京はコースが短いため、周回遅れになっても引き続き走らせてもらえる。ただ、マナーとして、周回遅れはトップの選手の邪魔にならないように、レコードラインを譲るのが常識になっている。周回遅れになると、前も後ろも注意を払って見ながら走ることになるのだ。

ついに長い砂の直線に出たところでシェネルが追い付いてきたので、私が4人パックのメンバーに「後ろからシェネル来たぞ。やべ~速いぞ」と声をかけると、皆慌てて道を譲る。まるでクルマが救急車に道を譲るように4人がいっせいに避けた脇をシェネルが異次元の速さで抜いていく

しかも、抜いていく時に笑顔で私を見て「ヤバ~い!ヤバ~い!」と連呼していたのだ。

実はレース3日前に、彼と一緒に走る機会があり、その際に「イタリア語のマンマミーアみたいな感じで日本ではヤバ~いって言うんだ」と教えて、その場でずっとヤバ~いと連呼していたのだが、まさかレース中も連呼するとは。

何て余裕。しかも満面の笑顔

異次元の走りを披露したスティーブ・シェネル。砂を飛ぶように走る
(写真:Kensaku SAKAI)

矢のようなスピードで駆け抜けていったシェネルを見送り、私たちはまたレコードラインに戻り先を急ぐ。これからはトップ争いをしている選手がどんどん来るからだ。その度に止まるので一気にラップタイムが落ちる。だからこそ、誰もいない間にどんどん先へ進みたいのだ。

それにしてもこのレースは過酷だ。

後半は体力が落ちて砂の上は乗車できず、自転車を押してランニングする場面が増えてきたのですが、ランニングの時に右足のシューズが左のふくらはぎと擦れて、ふくらはぎから出血。レース中なのでアドレナリンが出ているが、それでも走ると当たって痛い。

このレースは過酷だ。ランニングが多いので、シューズとふくらはぎが擦れて流血
(写真:Kensaku SAKAI)

さらに、レースが進むにつれ、砂のラインが変わっていく。

しっかりラインが付いて走りやすくなった場所もある反面、ミズタニサンドエリアと言う後半の砂区間は、満ち潮に伴い、波打ち際の最速ラインが無くなってしまったのだ。心拍数がMAXに近い状況で、冷静に代わりのラインを探す必要がある。

満ち潮で、途中まで走れた水際のラインが消滅していく。
(写真:Kensaku SAKAI)

そんな過酷な状況だけど、このレースは楽しい

何故なら、2万人の観客の前で走れるから。たくさんの人が自分にも声をかけてくれる。トップ争いと言うより、最下位争いをしている自分にも温かい声援が飛んできて力になります。このレースは本当にシクロクロスのお祭りなんです。

そして、レースもあと10分少々と言うタイミングで、またシェネルが後ろから迫って来る。これで2ラップ目。予想はしていたが、手が付けられない強さ。

結局、トップの3選手には2ラップされてしまったが、31位でフィニッシュ。

毎年これくらいの順位なのでほぼ定位置だが、今年は自分なりに砂での乗車率が挙げられたと思う。あとは、砂をどれだけ速く走れるか。また来年に向けて課題を突き付けられたようだ。

ビックイベントの余韻漂うゴール地点

ゴール付近は走り終わった選手とそのサポートスタッフでごった返すが、皆自然と笑顔がこぼれ、握手やハイタッチをしている。このレースでオフシーズンを迎える選手も多く、そんな解放感もあり、他のレースのゴール地点には無いような和やかな雰囲気があった。

ゴールした選手は皆笑顔
(写真:Kensaku SAKAI)

たくさんのことが凝縮した1時間のレースだった。言葉ではお伝えしきれない部分も沢山あるが、とても素晴らしいレースだった。

来年もこのレースは開催される。僕ら選手は来年に向けてまたトレーニングを積み、レースを戦っていくことになる。

来年のシクロクロス東京もぜひ遊びにきて下さい。

LINK:シクロクロス東京

向山浩司

WRITTEN BY向山浩司

シクロクロッサー、自転車店店長。高校から自転車競技を始め、就職を機に一度引退。その後、ロードレースに復帰し、Jプロツアーを転戦。クリテリウムを得意とするスピードマンでならす。現在はSNEL CYCLOCROSS TEAMに所属し国内外のシクロクロスレースを主戦場にする。ロードからMTBまでこなすマルチライダーとして、自身の経験を活かして東京・あきる野市で自転車店A-Pad SPORT CYCLE STOREを運営する。A-Pad SPORT CYCLE STORE 

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