梅雨直前!急な雨への対策法1〜雨に負けない走り方のコツ

みなさんこんにちは。シクロクロッサーでサラリーマンの向山です。
5月は自転車月間に指定されるなど、サイクリングを楽しむにはうってつけの季節ですね。

ただ、5月が終わり、6月になると、梅雨に突入します。
通勤や週末ライドで、走っている最中に急な雨に襲われることもあれば、レースやイベントなど、雨でも走らなくちゃいけない状況も発生するでしょう。そこで今回は、雨対策についてお話ししたいと思います。特に、走っている最中に雨が振り出した時にどんな対応をすべきかお話ししたいと思います。

急激な雨、降り始めは特に注意を!

「雨で一番怖いのは降り始め」自転車の世界でも、クルマの世界でもよく聞く言葉です。
これは、雨の降り始めはアスファルトの表面にあるゴミや砂、油等が雨によって浮き出して来て滑りやすくなるからです。雨がずっと降り続けば洗い流されるのですが、降り始めはこう言ったゴミや油分が悪さをして一番滑り易いので、ブレーキングもコーナーリングも慎重に行いましょう。
また、ロードレーサーについては、雨の降り始めはパンクも増えると言われています。雨で小石の尖った部分が上を向くので、パンクリスクが増すのです。

実は、土砂降りよりも、降りはじめの方が滑る

雨はブレーキが効きづらい。その理由は

雨が降ると当然ながらブレーキは効きづらくなります。最近は雨天でも性能が落ち難いブレーキシューやリム、タイヤも出ており、ウェットコンディションでも高いパフォーマンスを発揮する製品も多くありますが、それでもドライコンディションと比べると止まりづらいのは事実です。

雨で止まり難い=制動距離が長くなる理由を整理しましょう。
主な理由は2つ
ひとつは、リムブレーキの場合、リムが濡れることにより、リムとブレーキシューの間に発生する摩擦が減り、ブレーキをかけても“ホイールの回転がなかなか止まらない状態”になること。つまり、ブレーキの制動力低下の問題。
もうひとつは、タイヤと路面の間に発生する摩擦が減り、ブレーキをかけてもタイヤがスリップしてしまう状態。つまり、タイヤのグリップ低下の問題です。

感覚的には、ブレーキをかけてもスーッと進み続けてしまうような状態がブレーキ制動力低下の問題。そして、ブレーキを掛けるとタイヤがズルッと滑ってしまうのがスリップの問題です。

この2つをよく理解しておきましょう。
なぜかと言えば、ブレーキの制動力が落ちる問題については、ブレーキを強めにかけることで対処できますが、タイヤのスリップを防ぐには、ブレーキを強めにかけてはいけないからです。止まり難くなる2つの原因は対処方法が全く逆なので、これが厄介なのです。

この2つのちょうどギリギリのライン、「タイヤがスリップする寸前の強さのブレーキ」。この感覚を見付けることが、雨の中でのブレーキングの答えです。
そして、こう言った微妙な力加減のブレーキングをマスターしても、ドライコンディションより制動距離は長くなります。どう頑張っても雨の中は止まり難いので、制動距離は長めに図り、早めのブレーキを心がけましょう。赤信号や、前に停車車両がいる場面で、思った所で止まれないと結構危険な目に合うので、安全マージンをしっかり取って、早めのブレーキをしましょう。

雨天ではブレーキの利きも悪くなるので、コーナーリング前の減速は慎重かつ早めに。

雨のコーナーリングは急な動きを極力減らそう

雨で一番怖いのは、やはりコーナーでしょう。無理をすると、すぐにスリップして落車してしまうので。
どんなにコーナーリングが上手くても、滑る時は滑ります。ただそれでも、上手くなるとスリップしないコーナーリング(スリップしないギリギリのコーナーリング)が出来るようになるので、その説明をしましょう。

雨の中のコーナーリングでは、曲がりはじめる前に、しっかり減速させることは基本中の基本です。そして、コーナーリング中はブレーキはかけず、急なハンドル操作も行わないことが重要です。また、コーナーリング中はグレーチングや白線など、路面抵抗が低い部分は踏まないようにすることもポイントです。
言い方を変えると、ブレーキや急ハンドル、路面抵抗の低い部分を走ることは、スリップのきっかけを作ってしまうことになるのです。しっかり減速をしても、雨の中でコーナーリング中のタイヤはギリギリのグリップで路面を捕えている状態です。このギリギリの状態にタイヤが滑り出すきかっけを与えることによって、タイヤは簡単にスリップしてしまうのです。
だから、コーナーリング中はスリップのきかっけになる急激な動きは極力減らしましょう。

ドライならイージーなコーナーでも、ウェットだとスリップの危険性が高まる。急ハンドルや急ブレーキせず、スリップのきっかけを作らないように心掛けよう。
ドライならイージーなコーナーでも、ウェットだとスリップの危険性が高まる。急ハンドルや急ブレーキせず、スリップのきっかけを作らないように心掛けよう。

私の雨落車の話

最後に私が雨の中でスリップして落車した時のお話をしましょう。
悪い見本と言うことで覚えておいて頂ければと思います。

直近では、昨年のツアーオブジャパンの東京ステージの前座で行われた実業団のレース中に、雨の中で落車しました。
この時はゴール前の最後のコーナーを曲がっている時、集団の前の方で落車が発生しました。この時、コーナーでのブレーキは即落車に繋がるので、私はノーブレーキで対応しようとしたのですが、最初の落車に巻き込まれ、他の選手も相次いで落車してしまい、その選手たちを避けるために、私もブレーキを掛けざるを得ない状況になりました。この時「たぶん、ブレーキかけたら転ぶだろうけど、ノーブレーキで落車した選手に突っ込むよりマシだし、上手くやればスリップしないかも知れない」と一瞬で考えて、弱めにブレーキを掛けたのですが、見事にツルっと滑って、そのまま落車しました。幸い、ブレーキで減速したので、ダメージの少ない落車でしたが、滑る時は、分かっていても簡単に滑るんだなと再認識しました。

滑る時は一瞬。避けるのは難しいので、急激な動きは避け、落車のきっかけを作らないようにしましょう。

雨の中で行われた、昨年のツアーオブジャパン東京ステージの前座レース。集団落車の対応で、コーナーリング中に僅かにブレーキをかけただけで、見事にツルっと滑り落車

写真:Kensaku SAKAI (FABtroni+camera)

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WRITTEN BY向山浩司

シクロクロッサー、自転車店店長。高校から自転車競技を始め、就職を機に一度引退。その後、ロードレースに復帰し、Jプロツアーを転戦。クリテリウムを得意とするスピードマンでならす。現在はSNEL CYCLOCROSS TEAMに所属し国内外のシクロクロスレースを主戦場にする。ロードからMTBまでこなすマルチライダーとして、自身の経験を活かして東京・あきる野市で自転車店A-Pad SPORT CYCLE STOREを運営する。A-Pad SPORT CYCLE STORE 

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