電アシとコミュニティサイクルで巡る 自転車先進都市・岡山

コミュニティサイクル「ももちゃり」

オッサンの自転車放浪記。今回は岡山へ向かった。昼は映画のオーディションの取材、夜は「ジェフユナイテッド市原・千葉」のサポートという大仕事が待っている。オッサンは、何を隠そう、ホーム自由席の年間シート券を持つサポーター。アウェー戦も、時間と金の限りを使って、駆けつけている。

聞けば、岡山市は「自転車先進都市」だという。平成24(2012)年8月に「自転車先進都市おかやま実行戦略」を策定し、その大きな施策として岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」(岡山といえば、桃! 桃太郎!)を導入した。簡単に言えば、利用登録すれば、街角のサイクルポート(専用駐輪場)にある自転車を、24時間! 年中無休!で、気軽に使えるというもの。ポート数は35カ所!、自転車台数452! という脅威の充実度だ。

JR岡山駅前の桃太郎像

9:00岡山着。早速、JR岡山駅東口のサイクルポートを目指す。地図を頼りにしたら、少し迷ってしまった。「グランヴィアホテル岡山」を目印にすれば、間違いない。

まずは各ポートにある路上端末機での利用登録。Suica、ICOCAなど交通系やおサイフケータイなどのFeliCa対応のICカードとSMSが受信できる携帯電話が必要だ。

岡山駅東口ももちゃり サイクルポート

オッサンはSuicaをアップルペイに登録しているのだが、こちらはなぜかうまくいかず、セブンイレブン系のnanacoカードで登録。「新規登録」を押して、名前、携帯電話号を入力し、プランを押す。

料金表

1回利用 100円

60分くりかえし利用 200円

回数券(5回券) 300円

ほかに、1ヶ月利用、6ヶ月利用、1年利用とあるが、旅行者はこちらのいずれかだろう。1日に3回以上乗る人には、オススメという「60分くりかえし利用」を選んだ。

すぐにショートメールでIDとパスワードが届く。「本登録」を押して、IDとパスワードを入力。端末にカードをかざして、「支払方法」を選択し、基本料金を払う。自転車ラックの脇にあるカードリーダーにnanacoカードをかざすと、ランプが「点滅」から「消灯」に変わり、ロックが解除。自転車を引き出せる。

登録から使用までは約5〜10分程度だろうか。カンタンである。

電動アシスト自転車は1日1,000円

自転車もレンタルできたし、取材時間まで観光でも…といきたいところだが、オッサンにはもう一つ使命がある。姐御編集長から電動アシスト自転車に乗るように、と厳命されているのだ。しかし、電アシはサイクルポートに取り扱いがない。

HPを見ると、運営本部(岡山市北区岩田町2-26 ニュー中桐ビル1F)にて、貸し出ししているという。運営本部は平日10:00-17:00、 土日祝10:00-19:00の営業。多少時間があったので、宿泊先のカプセルホテル、リバーサイドホテル岡山(1泊2900円〜)に寄って、荷物を預ける。

10:00すぎ、運営本部に到着。乗ってきた自転車を一旦返却する。17時までは電アシに乗って、その後は「ももちゃり」に乗り換えるつもりだ。「60分くりかえし利用」なので、その後もデポジット分が有効というわけだ。

運営本部で電アシをレンタル

電アシのレンタル料金は1日1,000円。松山の1日300円が激安すぎた。妥当な金額か。

日本三名園・岡山後楽園

岡山訪問は2度目。前回は新聞記者時代だった3年前、やはり、ジェフ千葉対ファジアーノ岡山戦を見るためだった。しかし、時間がなく、観光も土地の幸を味わうこともなかった。はるばる岡山まで来たのにもったいないことをした。フリーの今だから、そんなことも思う。

後楽園通りには専用レーンも

岡山後楽園に向かう後楽園通りには自転車専用レーンもある。さすがは自転車先進都市。空襲で大きな被害が出た岡山だが、旭川沿いの出石町界隈は古い建物も残っていて、風情がある。

岡山後楽園は岡山藩2代藩主、池田綱政が作らせた庭園。今も江戸の面影を残し、金沢の兼六園、水戸の偕楽園とあわせて、日本三名園として知られている。

入園料は個人券400円。岡山城との共通券(560円)を購入した。広い庭園の中、和装の新郎新婦を数組見かけた。中には結婚式ができる施設もあるのだ。園内は撮影スポットがいっぱい。池に水路が張り巡らされ、要所要所には建物が配置されている。中央にある唯心山からは園内を一望できる。その近くの花菖蒲畑は梅雨の季節には見頃を迎えるという。

花菖蒲

唯心山からの風景

結婚写真の撮影も

東屋では、新郎新婦が正座して、記念撮影をしていた。新婦は美人、新郎は「足が痛い」と言って、はにかんだ表情を見せる。観光客も、そんな風景を温かく見守る。幸せそうな若い男女の姿を見ると、オッサンもうれしくなる。ウチの二十歳になる娘もあと数年したら、お嫁に行くのだろうか。なあんてね。

デミ丼の老舗 味司 野村(あじつかさ のむら)

早朝から動いたので、お腹がへった。岡山城へ行くのは後回しにして、岡山名物のデミグラスソースカツ丼を味わおうと、その発祥の老舗店「味司 野村(のむら)」へ。11:00の開店前から店の正面には行列ができていた。ルールも分からず、待っていると、お客さんの一人が「食券はお買いになりましたか?」と声をかけてくれた。まずは食券を買って、名前と人数を記帳するというシステムだった。

玉子とじカツ丼とドミグラスソースカツ丼

待つこと約20分。玉子とじカツ丼とドミグラスソースカツ丼のセット、子膳ヒレ(1500円)が目の前に。2つの丼をあわせて、大盛の量になるという。普通は「デミグラス」というが、ここでは「ドミグラス」と発音する。発祥の店ながら、呼び方までは浸透しなかったのかな? 初めて食するデミカツ丼は濃厚なソース。相当煮込まれているはずなのに、ねっとりしていて、型崩れしない。コクがある。岡山ではカツ丼といえば、デミカツ丼の方が一般的なのだとか。普通のカツ丼も美味しかった。

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岡山県天神山プラザ~岡山城

13:00から岡山県天神山プラザ(1962年竣工)で映画『ずぶぬれて犬ころ』の出演者オーディションを取材。25歳の若さで夭逝した岡山市出身の俳人、住宅顕信の生涯を描くもので、この秋、岡山県内で撮影が予定されている。役者たちがセリフ読みをしているのを、脇で見ていた。

岡山県天神山プラザは戦後の日本の建築界をリードしたモダニズム建築の旗手、前川國男が設計。さすが、そのフォルムにもデザイン性がある。

15:00すぎ、取材を終えて、岡山城に向かった。

岡山城は大大名・宇喜多秀家が、8年の歳月を費やして、慶長2(1597)年に完成させた。天守閣の壁には黒漆塗りの下見板を取付け、その黒い容姿からは「烏城(うじょう)」と呼ばれる。しかし、昭和20(1945)年6月、岡山大空襲によって、その多くが焼失。戦後、昭和41(1966)年11月、2年間に及ぶ大工事の末、その外観を取り戻した。

後楽園から見る岡山城

実は1966年竣工の近代建築

工法は鉄筋コンクリート造。前川國男によるの岡山県天神山文化プラザとほぼ同時に作られた“近代建築”なのである。中に入ると、中央にあるエレベーターで4階に上がる。天守閣からは岡山の町並みが一望できる。そこから下っていくと、岡山城の歴史が分かるという仕掛けだ。

この城がそのまま残っていたら、同じく「烏城(こちらは「からすじょう」と読む)」と書く松本城と同様、国宝であろう。つくづく戦争はむなしい。

シティライトスタジアム いざ、決戦の地へ

その後は岡山後楽園の旭川沿いの道を1周し、夢二郷土美術館を外観だけ見学。17:00ジャストに運営本部に電アシを返却。「ももちゃり」に乗り換える。ここでも、「60分くりかえし利用」が効力を発揮する。一旦、ホテルに戻って、チェックイン。ジェフ千葉の黄色いユニフォームに着替えて、いざ、決戦の地シティライトスタジアムへ。

オッサンは、ジェフ千葉の本拠地フクダ電子アリーナが最高のスタジアムだと思っている。JR蘇我駅から徒歩10分以内という好立地、さらにはピッチと観客席の距離が近く、客席を覆った屋根が反響し、サポーターの声が響き、一体感のある応援ができる。収容人数18,500人というのも、大きすぎず、ちょうどいい。

アウェイに行くと、まずアクセスの不便さが目につくのだが、シティライトスタジアムは岡山駅西口から約1.5km。徒歩20分という地の利の良さ。これが自転車なら、もっと早い。近くのコンビニで、ビールとつまみを買ってから、岡山県総合グラウンド内のポートで「ももちゃり」を返却。追加料金なし。

岡山県総合グラウンド内のポート

お手柔らかに

シティライトスタジアムのアウェイ側自由席
シティライトスタジアムのアウェイ側自由席

岡山2-1千葉。悔しい敗戦。次こそ頑張ろう

他県から岡山に観光、サッカー観戦に来る人に「ももちゃり」は超オススメ。市内だけを巡るなら、「ももちゃり」だけで十分だ。

肝心の試合は2−1で逆転負け。滋賀から来たサポーター仲間とスタジアムで再会。駅チカで“反省会”と称した飲み会で友好を深めるのだった。

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WRITTEN BY哲也

1968年、東京都生まれ、千葉育ち。92年からスポーツ新聞社に勤務し、主に芸能、映画を担当。世界三大映画祭を取材したのが自慢。15年1月、退社し、ふらふら。17年夏、編集プロダクションを立ち上げ予定。ロードバイク歴11年。サイクリング中に見つけた千葉にある近代建築の保存運動にも関わっている。

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