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ピスト界の常識? 自転車業界の非常識!? ピストバイク乗りのペダルを解明

FRAME読者の皆さん、こんにちは。前回のなぜ今、幅広で真っ直ぐなハンドル?ハンドルから読み解くピストバイク文化記事に引き続き、今回も365日ピストバイクの最新情報を調べないと気がすまないピストバイクマニアの私UDがまだまだ知られていないピストバイクの話題についてお届けします。

前回の記事でピスト乗りの独特なこだわりというものが伝わったのではないかと思います。今回もピストバイク乗りのこだわりのポイントについて話をしていきます。

いきなりですが、自転車に乗る時にどんな靴を履きますか?スニーカーの人も、靴がペダルと固定できるビンディングペダルの人も、もしかしたらサンダルでママチャリに乗っている人もいるかもしれません。

どれが良くてどれが悪いと一概には言えないのですが、レースに出ている選手たちが全てビンディングペダルを用いていることからも、足を固定してしっかり踏み込んでパワーを最大限にし無駄なペダリングをなくす観点からビンディングペダルが有効であることは間違いないでしょう。これは、ある種「自転車界の常識」であるのですが、ピストバイクに乗る人達の場合は少し状況が違います。

ピストバイク乗りの中での「ペダルの常識」、ピストバイク乗りの中でペダルと言えば大きく2種類あります。

1つ目はトゥクリップを取り付けたペダル

このように蹴返しと呼ばれる突起がかかと部分ペダル後方に付いているペダルに、横から見るとひらがなの”し”を倒したような格好のトゥクリップ(トークリップとも表現される)を取り付け、革製などのベルトであるトゥストリップで締め上げて靴ごと固定する方法を取っています。

2つ目はペダルストラップを取り付けたペダル

ペダルストラップとはマウンテンバイク向けなどのペダル左右に穴が空いている軽量なペダルにマジックテープ式の丈夫で硬めな布を通して輪を作り、そこに足を入れることで靴を固定することのできる方法です。

実際に装着するとこのようになり、足の甲の部分を支えられる形で使用します。

トゥクリップとペダルストラップのメリットとは

この2種類双方ともにメリットとしては、一般的に着脱がビンディングペダルより簡単であるということ。そしてスニーカーのままペダルを漕ぐことができるというメリットがあります。

では、なぜピストバイクのりにはビンディングペダルがはまらなかったのでしょう。実はこの謎を解決する理由はピストバイク乗りの文化と生活に密着しています。

ピストバイク乗りがビンディングを選ばなかった理由

ピストバイク乗りがビンディングペダルを選ばなかった理由は大きく3つあると考えています。

1つ目はピストバイクが普及した背景に関わるものです。

ピストバイクが普及する際にメッセンジャーの存在が大きかったことは前回の記事でお伝えしました。まさにこのメッセンジャーが1つの鍵で、素早く自転車を降りて荷物を持って届けに行き、その後すぐに自転車に跨って次の届け先まで向かう必要があります。

そうなのです。自転車の乗り降りが多い、そして階段を登って届けるなど歩く頻度も多いことがピストバイク乗りのペダルがビンディングにならなかった理由かと思います。

2つ目は日本におけるピストバイクの原点が競輪だったことです。

ピストバイク乗りは世界中にいるのですが、特にクラシックな思考をしているピストバイク乗りの間で神格化されているのが”NJS”です。

NJSとは実際の競輪の規格で用いられるパーツを日本自転車振興会が認定した場合だけ与えられる称号です。

これは即ち圧倒的な力で踏み込む競輪選手がレースで使用できる耐久性を持つトップクラスの性能を認定したもので、一部の海外のピストバイク乗りもわざわざ日本からNJS認定パーツを購入するほどです。

事実、NJS認定のペダルを作り続けている三ヶ島ペダルのHPでは、トップ画面に競輪(NJS)認定品というカテゴリーがあるほどです。

LINK: http://www.mkspedal.com/

話題を戻して、なぜNJSの話をお伝えしたのかと言いますと競輪ではビンディングペダルが使用されていません。レースを走る全員がトゥクリップを用いて靴が全く動かない程ぎゅうぎゅうに締め上げた状態でペダルを踏んでいます。

競輪でトゥクリップを採用している理由ですが、競輪が70年以上の歴史のある競技であること。そしてビンディングペダルの結合強度を上回るパワーで自転車を漕ぐ世界であること、そして更にバンクに傷が付くことを防ぐ為という狙いもあるのでしょう。

競輪がこうしたトゥクリップを用いたこと、そして日常生活においてピストバイクを求める人のニーズが耐久性だったこともピストバイク乗りがビンディングペダルを用いなかった理由ではないでしょうか。

そして3つ目、最後はとてもシンプルな理由です。

「どうしてもスニーカーで自転車が漕ぎたい」

これです。

いや、もう好き勝手にすれば良いではないかと、思った方も多いはずです。まさにその通りなのですが少し言い分を聞いて下さい。

ピストバイク乗りにおいて、ピストバイクを漕いでいる距離自体が目的なのではなく走行中の格好だとか、ピストバイクの見た目だとかそうしたファッションの要素がとても強いのです。

見られて格好良い、オシャレに乗るという要素がピストバイク乗りの中ではとても重要なのです。

そしてなかなかロードバイクなどでは見られない考え方として、どんなスニーカーでピストバイクに乗るか考えたりします。個人的にはVANSのスニーカーでピストバイクに乗っている人が多いように思いますが、今ならハイテクスニーカーで自転車に乗るのも良いのではないでしょうか。ペダル文化にも変化の兆し(提供:Red Hook Crit)

ただ、ピストバイク乗りの世界でのペダル文化にも変化の兆しがあります。

近年話題になっているピストバイクでのクリテリウムレースRed Hook Critなどでは、ビンディングペダルが一般的になってきました。

これらのレースなどではルール上、ピストバイク特有の機能であるペダルを後ろ向きに踏む(通称バックを踏む)ことで減速をかけるという機能が禁止されている為、ビンディングペダルが一般的になったと推測しています。

このようにクリテリウムレース方面ではロードバイクと同じようにサイクルジャージ×ビンディングペダルの組み合わせに、競輪(トラック競技)や街乗りではオシャレなスニーカー×トゥクリップやペダルストラップを用いた形に変化してきています。

このような変化に影響をされて日本国内でも、ビンディングペダルを用いてピストバイクに乗る人が少しずつ増えてきたと聞いています。

まとめ

ピストバイク乗りが異常なまでペダルにこだわっている様、そして彼ら・彼女らの常識が必ずしもロードバイク乗りの常識とイコールでない点を理解していただけましたでしょうか。

ピストバイク乗りがスニーカーで漕いでいる様子を見ていて、今まで非効率なペダリングをしているなと思っていたあなたも、この記事を読んで少し感じ方が変わっていただけたのであれば嬉しいです。

なお、トゥクリップや半分のサイズで着脱がしやすいハーフトゥクリップはクロスバイクに導入するととても快適に漕げるようになるなので、クロスバイク乗りの方もぜひご検討ください。ピストバイク界のオシャレかつ快適な方法を用いることができるのは何もピストバイクに乗っている方だけに限りませんよ!

WRITTEN BYU-die

ヘヴィメタルとピストバイクをこよなく愛するカワリモノ。 クロスバイクを購入したことで自転車の楽しさに触れ、その後シングルスピード、ピストバイクと乗り換えている。現在の愛車は自らフレームから組んだアメリカのブランド、State BicycleのContender。 ちなみに好きなメタルバンドはParkway Drive。

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