あなたが「見えてる」と思っているほど、車からは見えてない〜ライトと反射材の話〜

反射材に関する豆知識

 皆さんは反射材と聞いて何をまずイメージするだろうか? 
工事現場の人が着る作業ベストだろうか。それとも塾通いの小学生が背負うリュックか。あるいはキーホルダーを思い浮かべる人もいるだろう。

反射材(リフレクター)は光が当たると強く反射するので夜間に遠くから人の存在を認識させ、交通事故を防止する上で極めて有効なツールである。安価で製造できるため自治体や交通安全協会などが作って配布する事例も多い。夜道を通る方は出来る限り付けていただきたい。自転車本体にも後方に向けた赤色反射板が標準で付いており、ペダルに橙色の反射板、車輪に無色の反射板が組み込まれている場合もある。

 道路交通法(以下、道交法と略)第六十三条の九で反射器材の付いていない自転車を運転してはならないと定めてあるが、東京都では道路交通規則の中に赤または橙色で後方100mの距離から認識できる反射器材が付いていれば尾灯は点けなくても良いと書いてある。

これは県によっても内容が若干異なり大阪府は反射テープまで尾灯とみなし、テープは何色でも構わないことになっている。
安全性の高い赤色反射板にはJISマークとVIAの刻印があるので、一度ご自分の自転車を確認してもらいたい。一見、粗悪な外国製品と同じような外見なのだが反射効率が驚くほど違う。キャットアイ製に代表される日本製の反射板は世界屈指の性能を誇っている。

リフレクターは品質が高い日本製にするだけで視認性が上がる
リフレクターは品質が高い日本製にするだけで視認性が上がる

(出典:キャットアイオフィシャルサイト

尾灯に関する豆知識

 尾灯も後方から迫り来るクルマに対して自転車の存在をアピールする重要アイテムのひとつ。ひとつと書いたが2個でも3個でも数に制限はないので異なる種類を試すつもりで複数装着していただきたい。

ちなみに筆者の場合、自分で買った物、いただいて装着した物もあるがヘルメットの後側にひとつ、リュックに3つ、そして自転車本体に3つのLEDライトを設置して、さらに腕にも緑色に光る帯状のライトを巻いて走っている。前方には別途7つ装着している。

著者内海氏のリアライト
著者内海氏のリアライト

著者内海氏のフロントライト
著者内海氏のフロントライト

知人は笑うし実際これだけあると点消灯が大変なのだが安全には代えられない。

尾灯が複数ある場合、東京都の場合は後方100mから視認できる赤色灯を最低ひとつ入れることと前照灯と混同しないために白や淡黄色は避けることを心がけて欲しい。どうしても夜間は視認性が落ちるので危険度が昼間に比べて高くなるから目立つことが大切。クルマに追突されて痛い思いをするよりはマシだ。

反射板が付いていれば尾灯は点滅モードで構わないから、なるべく明るいのを選んで付けて欲しい。
ちょっと検索してみれば分かるが単純に同じパターンで光る尾灯だけでなく、最近では加速度センサーを搭載してブレーキをかけると光り方が変わる尾灯が登場した。通常走行時には点滅だがブレーキをかけてセンサーが反応すると非常に明るい点灯状態になり後方の車両に減速を伝える優れもの。加速度センサー分だけ高めだが、事故の防止効果を考えると十分検討に値すると思う。

ただし、夜間に長距離走るブルベ競技に出場する場合は尾灯も常時点灯モードで参加することが決められているので要注意。

▲加速度センサーを搭載したキャットアイ(CAT EYE) セーフティライト [RAPID X2 KINETIC] ラピッド エックス2 キネティック 加速度センサー内蔵 TL-LD710K

前照灯に関する豆知識

 新しく自転車を買うと前方に向けた無色の反射板が付いていることがあるが、前方には反射材だけでは不十分でライトが必要。

東京都の場合、尾灯の色は赤と定めてあるが、前照灯は白または淡黄色で前方10mの位置にある交通上の障害物が確認できる照度を持つものと定めてある。これが神奈川県へ行くと前方5mと短くなる。つまり東京都の基準より暗くても良いとされている。

もとより東京も神奈川も繁華街は明るいから前照灯を点けなくてもいいと勘違いしている人がいるが、さにあらず。交通事故を防ぐ上では自分が見えるかどうかよりも相手に認識されるかどうかが重要なので、夜間に繁華街を走る際にもライトは前後とも点灯してもらいたい。

とにかく他人と差別化したいのか、前照灯を赤や青色、尾灯を白色にして走っている人を時々見かけるけれども、全世界的に前は白系、後ろは赤系と決まっているのでお間違えなく。都会では起きないかもしれないが暗い田舎道なら遠ざかっていると思った自転車が近付いて来て衝突したなんて笑えない話が起きるかもしれない。

フロントは白色、リアは赤色は世界共通
フロントは白色、リアは赤色は世界共通

それから電池式ライトを使用している人で節電したいから(目立つからという人もいる)点滅モードを使って走っているケースをよく見かけるが、車道の左側をバスに追随して走っている場合に点滅モードだとバスドライバーから見落とされる危険性がある。

バスには複数のバックミラーがあり確認しながら走っているが、ドライバーが左のサイドミラーを確認した際に点滅の滅のタイミングだと自転車の存在に気付かないことがあるそうだ。そこにいないと思えば急な幅寄せをしてしまうことだってあるだろう。これは現役の路線バスドライバーから直に聞いた話なので信憑性が高い。

前照灯を2つ以上装着すれば1つは点滅でも構わないが、必ず1つは常時点灯させて欲しい。経験上、ニッケル水素充電池を含む乾電池は電池の持ちが悪い。少しでも長く持たせようと点滅モードにしたくなる気持ちも分かるが、リチウムイオンバッテリーの方が明るくて長持ちするというのが印象だ。

自転車通勤途上でバッテリー切れした際に乾電池ならコンビニでも購入できるメリットはあるものの、予備の電池を会社に用意しておいて暗くなって来たなと感じた時に入れ替えれば通勤途上でバッテリー切れを起こすことはないはずだ。

明るい方が良いが、上に向けて走っていると前方を走るクルマからクレームを付けられることがあるので要注意。それほど明るくないライトですら「おめえのライトが眩しいんだよ」とマイルドヤンキーの兄ちゃんがクルマから降りて来て因縁をつけられた経験を筆者は持っている。
筆者が最近購入して気に入っているのは、点滅モードでも滅のタイミングで暗くなるが消えないタイプだ。これならバッテリーの持ち問題とライト滅時のリスクを一挙に解決できる。

なんのための反射材・ライトなのか

 反射材、ライト共に目的としては自分の存在を認識してもらうことに尽きる。尾灯を付けず反射材だけでも構わないが、自発光するLEDライトを併設するのがオススメ。

高光度の前照灯を付ければ路面を照らし出す効果も期待できるが、明るい繁華街で乗る場合はあまり意味がないので、どうせ買うなら高い(明るい)ライト1つの予算で2つ買える(暗いが夜間に10m先が確認できる)ライトを2個付けて1つは点滅にした方がいい。

自転車に乗っていてクルマに撥ねられた人の多くは「ドライバーが自分の存在に気付いていると思っていた」と語るが、実際のところ自転車側が期待するほどドライバーからは見えていない。
ドライバー側も故意に事故を起こそうと思っているわけではないので、お互い何ができるかを考えれば自転車側が目立つことが双方にとって有効だと分かる。

自分で思うほど、車から自転車は見えていない
自分で思うほど、車から自転車は見えていない

もちろん事故を起こせばドライバー側も心に痛みを感じるだろうが、フィジカルで痛い思いをするのは自転車側なのだ。事故に遭いしばらく松葉杖に頼るレベルで済めばいいが、◯◯◯不随や△△△欠損となると人生を棒に振るかもしれない。

目立って恥ずかしい思いをするのは一瞬だが後悔は一生だ。備えていなければ悔やんでも悔やみきれないのではないか。例えば保険は転ばぬ先の杖と言われる。
自転車に乗るなら保険は必須だけれども保険で治せない怪我もあるので、ライトを複数装着してドライバーから認識されるよう目立つことを厭わないでもらいたい。

 もうひとつ。明るい色の服を着て乗ることも反射材同様に目立つので、通勤するなど夜間に自転車を運転する機会が多い人は蛍光イエローや蛍光オレンジを安全のために選んでみてはいかがだろうか? 筆者は蛍光イエローが好みだが、服の色が明るいと気分まで明るくなる気がするから不思議なものだ。一度お試しあれ。

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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