利用履歴全体を見ると男性利用者の方が女性利用者よりも頻繁に利用

シェアサイクルで街はどう変わっていくのか〜Mobike(モバイク)白書から読み解く日本のこれから

モバイク白書には、日本のこれからが書かれているのかもしれない

いまや世界中のいろいろな都市で、交通手段として大事な役目を担っているシェアサイクル。日本でもドコモバイクシェアを始めとするシェアサイクルがありますが、破竹の勢いでシェアサイクルが延び続けるお隣の中国に比べると、普及率はまだまだです。

そんな中、ついに中国シェアサイクルの大手、Mobike(モバイク)が札幌からスタートします。これ、一部では「黒船来襲」と呼ばれるほどで、ここから日本のシェアサイクルの普及状況や利用状況がどう変わっていくのか、恐れおののく人もいます。

そんな中公開されているモバイク白書(英語版)を見てみると、シェアサイクルの急激な広がりで街が・社会がどう変わっていったかをインフォグラフィックでわかりやすく説明してあります。FRAME編集部はモバイクの許可を得て、日本語に翻訳してみました。以下はその中でも面白いポイントの抜粋です。
こちらを、中国シェアサイクルの現状/また道路事情・行政事情も含め日本の自転車事情をよく知る「日本で一番自転車乗りの権利を考える男*」こと自転車活用推進研究会・内海事務局長に解説していただきます。

自転車活用推進研究会・内海潤事務局長
自転車活用推進研究会・内海潤事務局長

街に自転車を呼び戻す

中国の都市交通の歴史的傾向

中国と言えば中山服(人民服)を着て自転車通勤する人々で道が埋め尽くされるイメージがあるが、それは1980年代までの話。現代の中国はクルマ社会であり渋滞や環境汚染がひどいため、免許証は抽選制となっている。
現在地から目的地まで乗って行けるシェアサイクルは免許も要らず盗難の心配や探す手間とも無縁だし安価で気軽に利用できることから、急速に普及して市民の足として本当に良く使われている。

利用者プロフィール

利用者プロフィール
利用者プロフィール
利用者の7割以上が若い世代というのは実感値に近い。クルマが欲しくても買えない大学生や抽選に当たらず免許証が取得できない若い社会人はシェアサイクルと公共交通機関を組み合わせて移動している。
必要に迫られて利用する人が多いはずなので通勤・通学や外食・買い物は想定通りだが、シェアサイクルをレジャーや運動に利用している人が3割強もいるというアンケート結果は少し意外な気もする。

バイクシェアリングの規模は驚くほど急拡大し、既に中国の半分をカバー

バイクシェアリングの規模は驚くほど急拡大し、既に中国の半分をカバー
バイクシェアリングの規模は驚くほど急拡大し、既に中国の半分をカバー
日本にシェアサイクルが導入されてしばらく経つが広く普及していない現状を考えると、中国では昨秋から本格的に導入が始まったばかりだと言うのに驚異的な速度で拡大していることが分かる。
日本市場で事業展開する難しさと中国企業の「やる時はやる」といったバイタリティやスピード感には心底驚く。彼らが起こす様々な問題を大目に見て来た中国当局だが、さすがに最近は眼に余るとして規制が始まっており、今後の成長には疑問符も。

利用履歴全体を見ると男性利用者の方が女性利用者よりも頻繁に利用

利用履歴全体を見ると男性利用者の方が女性利用者よりも頻繁に利用
利用履歴全体を見ると男性利用者の方が女性利用者よりも頻繁に利用
面白いデータである。女性より男性が頻繁に利用し、中でも32歳未満男性が最も多く主婦が最も少ないという結果には納得できる。若い社会人女性の利用距離が短いことや女性大生の移動速度が最も遅いのも想像通りである。
日本で調査しても同様の結果だろう。ただし男性退職者が最も長く、最も速く移動しているという結果には驚いた。健康増進のためにエクササイズとして利用しているのだろうか?

自転車利用による街の変化

バイクシェアリングにより自転車利用が2倍に増加

バイクシェアリングにより自転車利用が2倍に増加
バイクシェアリングにより自転車利用が2倍に増加
つい最近までの中国は自転車の交通分担率が大幅に下がっていたので、ふたたび街に自転車が戻って来たという表現は的を射ている。先日、天津市を視察した際も所有する自転車に乗る人は少なく、ほとんどの人がシェアサイクルを使っている印象だった。
天津では地下鉄の工事が進んでおり、今後ますますシェアサイクル+公共交通機関の組み合わせが便利になる予定。所有する自転車は探す手間と盗難の心配があるので減って行き、さらにシェアサイクル利用者が増えて行くと思われる。

車利用は半数以下に減少

車利用は半数以下に減少
車利用は半数以下に減少
クルマがステータスシンボルであることは日本同様だが、あまりに多いため渋滞や環境汚染がひどくなって社会問題化している。解決策のひとつとして免許証を抽選制にしているが、代替交通手段がない場合は仕方がない。
クルマからのリプレイス率がデータ通りならば実に素晴らしい結果であり、問題解決は時間の問題だが実際そうなのだろうか。パリのヴェリブは元々歩いている人たちが乗るようになっただけで結局クルマは減らなかった。真の解決策になり得るのか、経過を継続的に見てみたい。

違法三輪タクシーの利用は53%減少

違法三輪タクシーの利用は53%減少
違法三輪タクシーの利用は53%減少
無免許ドライバーが運転する違法な三輪タクシーが跋扈していたという時点で日本では有り得ない話だが、それらがシェアサイクルの導入で駆逐されたのだとすれば当局としても一石二鳥だったことになる。
しかも人々の移動ニーズがあって、ブラックと言えるレベルの過労ドライバーが200人以上も存在していたようだから、社会問題の解決策としてもピカイチだろう。ドライバーたちの再就職については別の問題として残るけれども、もはや世直しと呼べるレベルに達している。

バイクシェアリングでバスや地下鉄への乗り継ぎが便利に

バイクシェアリングでバスや地下鉄への乗り継ぎが便利に
バイクシェアリングでバスや地下鉄への乗り継ぎが便利に
これは日本が目指す理想的な近未来の面的移動パターン。かつては郊外の自宅と勤務先を線で結んだ線的移動がメインだったが、近い内に中国も高齢化社会を迎えると市民が街中を快適に移動できる交通手段が必要になる。
線的移動で大量輸送を担って来た公共交通機関は小回りが利かないが、公共交通機関+シェアサイクルの連携は解決策を提供できる。バス停や鉄道駅に隣接したシェアサイクルの配置は自転車の機動力を高め、スムーズな移動を実現させてラストワンマイル問題を解決できる。

バイクシェアリング+公共交通機関は、最も効率的な移動手段

バイクシェアリング+公共交通機関は、最も効率的な移動手段
バイクシェアリング+公共交通機関は、最も効率的な移動手段
世界の大都市であれば、どこで調査しても5km未満ならシェアサイクル+公共交通機関または自転車だけでもクルマに圧勝である。信号機や渋滞があって人々が思うほどクルマは速く走れないが、自転車であれば渋滞するクルマの脇を走って行けるので信号待ちをしたって都会では無敵だ。
多くの利用者はシェアサイクルを5km未満で乗り捨てるため、クルマよりも早く目的地に到着できるが、さすがに荷物が多い時や雨の日はクルマが有利だ。晴れていて1人で近距離移動なら迷わず自転車を使うべきだ。

夜間のMobike利用

夜間のMobike利用
夜間のMobike利用
自転車に通信チップを搭載してありGPS経由で移動ログが取れるため、人々がどのように動いているのかビッグデータが取れることはマーケット分析や自転車の投入台数を決める上で、将来にわたり極めて重要な価値を生む。24時間365日稼働するシェアサイクルだからこそ、有効な情報として様々な分析や予測に使われるだろう。

バイクシェアリングで都市の二酸化炭素排出量を削減

バイクシェアリングで都市の二酸化炭素排出量を削減
バイクシェアリングで都市の二酸化炭素排出量を削減
国民数が多い中国では様々なデータの規模が大きい。すでに月まで3,300回も往復するだけの距離を自転車で走りクルマで走った際と比べて54万トンもの二酸化炭素やPM2.5を出さずに済んだことは、環境汚染がひどい中国が近い将来クリーンになることを示唆している。
我々が視察した際も空は常に霞んでいて晴れていても青く見えなかったが、最終日だけは青空が見えた。このままシェアサイクルの活用が進めば、また青空が数多く見られるようになるに違いない。

バイクシェアリングで省エネ

バイクシェアリングで省エネ
バイクシェアリングで省エネ
化石燃料を使い続ければ近い将来に枯渇することが分かっており、かつ環境にも負荷がかかるため、欧州では電気自動車を推進して行くことになった。内燃エンジンは研究が進み、すでに理想に近いが早晩過去の技術になることが予想される。
日本でもトヨタとマツダが垣根を越えて提携するなど業界再編が進むが、人ひとりが移動するのに、わざわざ1トンもの鉄の塊を動かす必要はない。自転車のエンジンは人間で人間の燃料は脂肪と糖である。体重より軽い乗り物に乗って脂肪を燃やせば済むことだ。

バイクシェアリングで都市空間を節約

バイクシェアリングで都市空間を節約
バイクシェアリングで都市空間を節約
乗り物ごとの占有面積と乗車人数の比較は昔からポスターなどを通じて訴えられて来た。例えばバスはスペースを取るが大人数が乗るので面積あたりの輸送人数は自家用車の何倍にもなる。都心のビルでも駐車場は余っているのだから用途をクルマに限定せず車両置き場に変更すればいいだけの話。駐車場に自転車を何台か置いても全く問題なくなる。
数年前に付置義務台数の見直しも行われており、マンションなどで駐車場が空いて駐輪場が溢れているケースなどは調べて用途を変更した方がいい。

よりよい街づくりを共に実現

バイクシェアリングで公共交通機関を補完

バイクシェアリングで公共交通機関を補完
バイクシェアリングで公共交通機関を補完
モバイクを含むポート不要のシェアサイクル企業が急速に成長できた背景には中国当局が事態を大目に見て来たことが大きい。彼らがサービスを提供する上で様々な問題が起きている。
最近でこそ上海や北京で返却用手続き用として電子柵を設けるケースが増えているが、好きな場所で借りられて、どこでも乗り捨て出来る点が市民に歓迎されたことも事実だ。今後、返却手続きは決められた場所でのみ行うことになりそうで当初持っていた魅力が下がるため、市民からどう評価されるのか注目されている。

ユーザーベースを結集し、技術を活用することでよりスマートに自転車を分配

ユーザーベースを結集し、技術を活用することでよりスマートに自転車を分配
ユーザーベースを結集し、技術を活用することでよりスマートに自転車を分配
ドコモ・バイクシェアが多くの人件費をメンテナンスと再配置に割き人海戦術によってサービス提供していることを念頭に置くと、4年間はメンテナンスしなくても大丈夫な自転車を採用し、インセンティブを出してユーザーに再配置してもらうモバイクのシステムは実にスマートで合理的に構築されている。
移動ログのビッグデータを元に、あらかじめ需要の大きいエリアには自転車を大量投入するなど常にマーケットに寄り添う努力も見逃せない。日本企業が見習わなければならない点は山ほどある。

LINK:Mobike
英語原文:Bike Sharing and the City 2017 White Paper

内海潤

WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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