日本で一番自転車乗りの権利を考える*事務局長が警鐘「自転車の傘さし運転、摘発される場合も」

ルールを守らなければ講習を受けることに!?

台風一過で再び夏を感じられた週末だったが、これからは雨の多い季節になる。
自転車で出かける際に雨が降っていたら、皆さんはどうされるだろうか? 専門学校の1年生に毎年訊いている質問だが、解答は四択だ。皆さんも一緒に考えてもらいたい。

1.傘をさして乗る
2.傘を固定具に取り付けて乗る
3.雨具を着て乗る
4.乗るのを諦める

さあ、皆さんの答えは何番だろうか?

答えを言うと3と4の両方が正解。
答えは常にひとつではないことと固定具はダメだと認識してもらうことの2つを目的にやっている。さすがに自転車の専門学校に来る学生達だから、1の傘さし運転は違反だと知っているものの、固定具がダメとは知らない学生もいる。

雨の季節に限らず、例えば日差しの強い日には、お母さん達が日傘をさして走るケースも多いだろう。何もなければいいが、万が一事故を起こしてしまえば安全運転義務違反で摘発される可能性が高い。

日差しがキツイときは日傘の人も増えるが
日差しがキツイときは日傘の人も増えるが ©Matsumura Seiya

3年以内に2回摘発されてしまうと、5,700円を払って3時間の講習を受けさせられ、最後に反省文を音読させられるという仕打ちが待っている。それだけで済めばいいが、もしも事故を起こして他人にケガをさせたり、命を奪ったりしてしまえば一生かけて償うことになる。

たかが自転車、されど自転車。人の命を奪う危険性もある乗り物なのだということを、改めて肝に銘じて欲しい。本来は楽しく有益な乗り物で、これから国を上げて推進して行こうとしているわけだから、どうか使い道を誤らないでもらいたい。

傘さし運転ダメと知っていても

アンケートを取ると傘さし運転が違反だと認識している人が9割もいるが、(リビング新聞/全国女性711人/2015年)つい、やってしまう人が多いのか街中で良く見掛ける。

雨の日、どうしても自転車に乗らなくてはならない場合は雨具を着て乗るのがオススメ。なぜ傘さし運転はダメなのか。理由は複数ある。1つ目は法や規則で禁止されていること。47都道府県で長野県だけ禁止されてなかったが、ようやく数年前に日本全国で禁止(条件付や曖昧含む)となった。2つ目は片手運転になるので事故回避のための急な操作ができないこと。3つ目は「つゆ先」と呼ばれる傘の先端が鋭利な突出物なので、歩行者の目を突く危険性があること。4つ目は風が吹いたら煽られてバランスを崩す危険性があること。5つ目は視界を遮るので危険察知が遅れる場合があること。
ビニール傘はともかく、日傘は黒いので完全にアウト。傘で目立つから気付かれやすいと強弁する輩もいるが、端から見れば唯我独尊の迷惑者でしかない。

先端は非常に鋭利、自転車の速度ならば重大事故につながる
先端は非常に鋭利、自転車の速度ならば重大事故につながる

片手運転は何がいけないか

少し話は逸れるが道交法第53条で合図について定めてある。手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。と書いてある。クルマならウィンカーを出せば勝手に戻るから問題ないが、自転車の場合は曲がる方向へ手を伸ばし、曲がり終えるまで片手運転しろと読めるので早急に変えてもらいたい。危険なので遵守しないよう講演などで説明している。

片手運転がダメな理由は子どもでも分かるだろうが、自転車は止まった状態で立っていられないから漕ぎ続けるわけだ。この時、バランスを取って走っているが片手だと不安定になる。スマホ片手に乗る人もいるが、注意散漫になるので傘より始末に負えない。運転に集中できないので安全運転義務が履行されておらず、車両を運転している感覚に乏しい。
片手運転に限らず、どうせ来ないだろうとの思い込みが出会い頭の事故を生む。もしかしたらクルマや自転車が横から来るかもしれないと予測して備えていなければならないが、心ここに在らずでは瞬時に対処できない。

片手運転ではとっさの対応ができない ©Matsumura Seiya
片手運転ではとっさの対応ができない ©Matsumura Seiya

また自転車のブレーキは前輪と後輪とに分かれ、左右のレバーを同時または後輪側を早めにかけることで正しく制動できるが、片手運転では左右同時にレバーを引くことができない。左手に傘を持って運転している場合は右レバーを引くことになるけれども、日本では前輪ブレーキが利くようになっているので下手をすると前転しかねない
交差点で一旦停止と安全確認をすれば事故の多くは防げるが、それも片手運転だと怠りがちになる。

固定具を売っているけど?

では、大阪のおばちゃん御用達さすべえなど固定具を使う場合はどうなのか。
さすべえ製造元、株式会社ユナイトの荒川社長は製造することは違法ではないとの見解だが、現在個人への直接販売はストップしている。消費者が固定具を買うことも当然ながら違法ではない。
さすがに店頭では販売しなくなって来たが、相変わらず通販では堂々と売っているのだから、買って何が悪いという話になる。作るのも合法、買うのも合法。


どこでもさすべえ

ところが、傘を固定して乗ると違反として摘発される場合があることを認識してもらいたい。
例えば警視庁のホームページに傘さし運転は積載物大きさ制限超過、つまり固定した時に傘の上端が地上から高さ2m以上の場合や積載装置(自転車の場合はハンドル)の幅に0.3mを足した長さを超える場合は違反だと書いてある。
成人男性用の場合、小さめの傘でも広げると直径約90cm、大きいのだと直径約130cmの傘もあるので確実に基準(ハンドル幅は60cm以内が多い)を超えるし、先に挙げた危険性が無くなるわけではないので、なるべく傘は避けて雨具を着用して運転したい。

横風にハンドルを取られる

自転車乗車中に横風が吹いて急に進路が変わり、怖い思いをしたことのある人も多いだろう。台風の時などは雨だけでなく風が吹くので傘は大して役に立たない。まして風で煽られてバランスを崩し、車道の中央方向へ転倒でもしようものなら大惨事になりかねない
運悪くクルマが接近していたら…考えただけでもゾッとする。

固定具でも状況は同じだ。あるホームページでは雨具を着て走ると蒸れるし、目的地でビチャビチャになって大変だから固定具で傘をさして走ればいいとアドバイスしているが、様々な危険性を考慮せず基準をクリア(ハンドル幅と傘直径の差が30cm以内)すれば傘を固定して乗ればいいと勧めるスタンスは如何なものか。筆者は他人から恨まれたくないし、責任の取りようもないのでダメなものはダメと伝えるしかない。是々非々である。

車は急には止まれない
車は急には止まれない

雨具の進化も見逃せない

最近は自転車用に開発された雨具も進化しており、大きな透明のバイザーで雨が直接顔に当たらないよう防ぎつつ視界を確保する優れモノも登場している。送り迎えのお母さん達が着ても似合う洒落たデザインになっており、ポンチョタイプやズボンタイプなど好みと機能に応じて選べるようになっているので、比較して好みに合う物をチョイスして欲しい。

送り迎えのお母さんにピッタリ!
送り迎えのお母さんにピッタリ!

また子どもが寒かろうと膝掛けを子載せ椅子に掛けてあげる場合は、膝掛けの端を子どもの脚の下に挟むだけでは心もとない。
小さな子どもは興味が湧くと身体が反応してすぐ動くから、膝掛けの端が下に落ちて車輪に巻き込まれてしまうことがある。しっかりとクリップなどで固定しておきたい。

最近は子載せ椅子ごとスッポリ包むブランケットも出ている。なお多くのママチャリの後輪にはドレスガードという子どもの足やスカートの裾が車輪に巻き込まれないよう防ぐパーツが付いているが、それでも雨具の裾を締める紐や膝掛けが車輪に巻き込まれて大きな事故に繋がるケースが報告されているので、くれぐれも注意してもらいたい。

昨年、わざわざ消費者庁が注意勧告を出したのは、日本全国で雨具の紐や膝掛けなどの長尺物が自転車の車輪に巻き込まれて転倒する事故が相次いだからだ。

雨の日に油断するとツルッと...
雨の日に油断するとツルッと…

雨の日は路面が滑りやすくなっているし視界も悪い。タイヤが雨水と共にガラスの破片などを絡めて巻き上げるのでパンクしやすい。お子さんの送り迎えなど雨の日でも自転車に乗って行かなくてはならない場合をのぞき、乗るのを諦めて歩いて行く勇気も必要である。

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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