日本初上陸! 札幌Mobike(モバイク)、札幌市民はこう考える

Mobike –札幌・アカプラで開催のイベントで
Mobike –札幌・アカプラで開催のイベントで

札幌市内中心部にある通称「アカプラ」(札幌市北3条広場)に並んだひと際鮮やかなオレンジ色のシェアサイクル「Mobike」。海外で注目度が高まってきた「Mobike」は、8月23日、札幌で日本初のサービスを開始しました。

日本での運営は、2017年6月に設立された「モバイク・ジャパン株式会社」(本社:福岡市)です。

札幌ローンチセレモニー
札幌ローンチセレモニー

そもそもMobike(モバイク)って何?

「Mobike(モバイク)」は自転車大国、中国で誕生。「大気汚染」問題が深刻になっていることから、大都市で自動車から”自転車”へ再びシフトさせる手段として生まれた発想が「シェアサイクル」。自転車を所有せずとも自由・手軽に自転車に乗れる方法として「Mobike」が誕生しました。

ドライブシャフト
ドライブシャフト

サドルの高さ調節はレバーで
サドルの高さ調節はレバーで

大きな荷物も乗せられる形のカゴ
大きな荷物も乗せられる形のカゴ

IoT (Internet of Things)自転車を導入したMobikeは、GPS機能を使いスマホアプリで最寄りの「Mobike」所在地がわかるシステム。高品質・耐久性がある独自IoT自転車として、チェーンに代わりドライブシャフトを、タイヤはパンクレスタイヤ(エアレスタイヤ)を使用し、通常、車体に見られるブレーキ等のあらゆる「線」を車体内部に格納し耐久性を実現しているそうです。サドルの高さはレバーを押して”サドルを下げて”調節(力を加えないとマックスの高さに戻る)、頑丈そうなスタンドなど、カラーリングだけではなく、それぞれのパーツも特徴的。

スマホと自転車走行技術があれば、誰でもすぐに利用可能

Mobikeアプリ起動時のMobike所在地表示
Mobikeアプリ起動時のMobike所在地表示

開錠時の画面
開錠時の画面

スマホの「Mobike」アプリのインストールでMobikeが使用可能になり(決済カード情報等の入力が必要)、アプリ起動後、車体のQRコードを読み取ればロックが解除に。指定駐輪場で借りて(乗って)、利用後はいずれかの指定駐輪場へ返却する仕組みです。
利用中の注意として、施錠したままで車体を動かすと警報が鳴るので、誤って持ち上げたりしないこと。また、盗難を避けるため、短時間自転車を停める場合にも施錠を忘れずに。

札幌市内のJR桑園駅エリア、円山エリア、西18丁目・宮の森エリア、琴似エリアのドラッグストア「サツドラ」やコンビニ「セイコーマート」を中心に専用駐輪場を設置しており、順次指定駐輪場を増やす予定。

サツドラ宮の森3条店のMobike指定駐輪場
サツドラ宮の森3条店のMobike指定駐輪場

Mobikeは、自転車走行技術とスマホがあれば利用できることから、今回、Mobikeに乗るまでの一連の流れを試し、特にスマホ世代にとっては、とても利用しやすいサイクルシェアシステムということを実感しました。

モバイク・ジャパンでは、日本での今後の展開について、これまで展開してきた海外各都市で、それぞれの都市に合った形で作り上げているとし、札幌においてもMobike指定の駐輪場をパートナー企業とともに、札幌独自の形・運営に進化させつつ利用可能なエリアを慎重に広げていく方針と話しています。

札幌には元々シェアサイクルが広がる土壌がある

NPO法人ポロクルとNPO法人ezorockが共同運営するサイクルシェアリング”ポロクル”
NPO法人ポロクルとNPO法人ezorockが共同運営するサイクルシェアリング”ポロクル”

札幌では、2011年4月に開始した札幌中心部をサービスエリアとするサイクルシェア「ポロクル」(NPO法人ポロクルとNPO法人ezorockの共同運営)が2017年4月で7シーズン目を迎え、すでにサイクルシェアを受け入れる土壌は、ある程度できているといえます。そういう理由から、Mobikeについても札幌では受け入れられやすい環境といえそうです。

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表、伊藤博之氏
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表、伊藤博之氏

Mobikeの札幌ローンチについて、そのきっかけを作ったともいえる「No Maps」の委員長で、「初音ミク」で世界的ヒットを作り出したクリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役社長の伊藤博之氏(札幌在住)は、”北海道や札幌は新しいモノ・コトに抵抗感が少ない土地柄”で、共通目的のために”意識を合わせやすいのでは”としたうえで、Mobikeの広まりにより、違法駐輪の解消につながるとともに、札幌は新しいことが生まれる街、札幌に来れば何か新しいことがある、という街づくりを視野に入れ、Mobikeを応援していきたいと話しています。

ここで思い至るのは、「新しいモノ・コトに抵抗感が少ない」と同時に道民を表現する「のんびり」気質。開拓使時代の屯田兵や移住者が全国各地から訪れて「共存」してきた経緯から、新・旧と異質のものさえ共存する体質があるように思います。
来るものをすぐに拒むことなく、のんびり様子を伺いつつ受け入れていく。そういう観点からも、伊藤氏が指摘するように、新しいことを始めやすい要素があるかもしれません。

8/23のMobike専用駐輪場
8/23のMobike専用駐輪場

同日のMobike所在地
同日のMobike所在地

札幌での可能性

札幌市民としてのユーザー的観点からすれば、現在、ポロクルのポート(専用駐輪場)がない郊外エリア、これはまさにMobikeがサービス開始に当たり専用駐輪場を設置したエリアが含まれますが、特に自宅近辺から地下鉄や市電、JRへの移動手段として利用可能になると、モバイク・ジャパンが指摘する「通勤・買い物経路の変化」で自分の街の新たな魅力発見につながりそうです。つまり生活の楽しみや余裕が増える可能性に注目したいところです。

8月23日のサービス開始時点で指定駐輪場があるスポットは、商業施設や店舗が立ち並ぶなかの閑静な住宅街が隣接する場所にあるので、自宅近くとよく行く先の近隣に利便性がある指定駐輪場がどれだけ増えるかにより、利用頻度がかなり変わると思います。個人的には、近々、自宅最寄りにも指定駐輪場の設置予定があると聞き、そこからどこへ行けるのか、指定駐輪場の広がりを楽しみにMobikeアプリをチェックしようと思います。

ブラックアイスバーンの上に積雪した道路(手前は歩道に積もった雪)
ブラックアイスバーンの上に積雪した道路(手前は歩道に積もった雪)

世界的降雪地、札幌とMobike

ここで「冬の降雪期に自転車は果たして乗れるのか?」という疑問がわくと思います。
札幌の冬は積雪が年平均約6mにもなり、新雪から圧雪、ブラックアイスバーンなど、路面状況が1日の間にも刻々と変わり自転車走行には危険な環境です。また、1時間で数十cm積もることがある雪で道幅が狭くなり、駐輪場も雪に埋もれるため、降雪期にはほとんどの人が自転車を利用しません。従って、夏に乗っていた自己所有の自転車は、自宅車庫や自転車預かりサービス等で保管が必要です。

そういう理由から、既存の「ポロクル」が冬の約半年間サービスを停止すると同様、利用者減少と安全面・管理面の難点からMobikeも冬のサービスは休止となる見込みです。
Mobikeの利点としては、他都市に展開した場合、冬の札幌で使用しないMobikeを他都市に移動し利用することが考えられます。
フレイム編集部が今年2月に羽田空港で利用したレンタカーが札幌ナンバーで、冬は北海道から車両を移動し活用していたそうですが、冬の北海道で道路・交通状況の悪さにより利用者が一時的に減少する期間、道内外で車両をやり繰りするレンタカー会社と同様の方式でMobikeも運営していくのかもしれません。

そこで札幌市民がサイクルシェアを利用するメリットのひとつとして、自己所有自転車には避けられない降雪期の自転車保管場所に苦慮しなくてよい点も上位に上がってきそうです。
また、サイクルシェア利用の拡大は、先に伊藤氏が指摘していた違法駐輪問題にも絡み、降雪により持ち帰ることができず、相当数の実質的に乗り捨てられた自転車の問題にも一定の歯止めがかかることを期待したいです。

自転車で行ってみたい札幌郊外の前田森林公園
自転車で行ってみたい札幌郊外の前田森林公園

旅とサイクルシェア

Mobikeの広がりにともなう楽しみは、「旅」とも切り離せません。
Mobikeアプリで一度登録すると、Mobikeを展開している都市では、海外を含め、どの都市でも利用することができるため、札幌で登録すれば、フィレンツェやマンチェスター、上海へ行ってもスマホさえあれば自由に利用が可能になります。

札幌市内に関していえば、市内くまなくといってよいほど店舗が点在するサツドラやセイコーマート店舗の特に郊外店に指定駐輪場ができれば、市民にとってサイクルシェアがより身近になることはもちろん、旅行者が自転車でより遠くへ行く自由とチャンス、市民との身近な交流が増えることも予想され、国際都市札幌の許容範囲がより広がる、広がって欲しいと思います。
日本国内でも他都市へのMobikeローンチが進めば、旅行先、出張先で自転車をいつでも利用でき、旅先での過ごし方に選択肢が増え、より充実した時間が過ごせる期待感が高まります。

Mobike試乗中
Mobike試乗中

Mobike指定駐輪場
Mobike指定駐輪場

最後になりましたが、Mobikeの乗り心地は、なかなか楽しいものでした。日本でよくある自転車の作りとは少し異なるので、ハンドル操作において若干の勝手の違いがあるように思いましたが、何度かペダルを漕ぐうちにすぐに馴れると思います。

先日、イベント関連の仕事で缶詰のような毎日を送っていた中、同僚が調達した自転車をシェアしながら、久しぶりに自転車に乗り、歩くのとも車とも異なる目線の高さや顔に当たる風を感じ、改めて自転車がある生活っていいなぁと実感したところです。また、道外から来たある同僚は、「札幌で自転車に乗ると、風も爽やかで乗っているだけでとても気分転換になるよね」と話していた言葉が印象的でした。

札幌の街は、碁盤の目で構成される道路が多く、道が比較的わかりやすく平坦な土地なので、サイクルシェアが可能なエリアが広がれば旅行者にとって、「ちょこっと乗り」が気軽にできる専用駐輪場環境になれば札幌市民にとって、それぞれ自転車がより身近な存在となり、札幌は、一層、自転車が似合う街になっていく可能性を秘めているのではないでしょうか。

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WRITTEN BYNaoko Ichinomiya

札幌在住の「どさんこ」。数年間の釧路生活で道央圏と異なる自然環境の道東(釧根・十勝・オホーツク)ライフを満喫、北海道の魅力を再発見。以来、”北海道の魅力発信”をライフワークにコミュニケーション・アテンダント(フォトライター、アテンド通訳など)として活動中。地球の歩き方札幌特派員札幌100マイルキュレーター、FBページ「Photogenic Hokkaido」主宰。

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