さいたまクリテリウムでほっと緩んだフルームが語った「ツールよりブエルタが好き」「ランダとの関係」

フルーム、今シーズンの締めが「さいたまクリテリウム」だった

11月4日(土)さいたま新都心で開催された「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」に出場するため来日したクリス・フルーム(イギリス/チーム・スカイ)。2017年シーズンはツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのダブル優勝という輝かしい戦績を残した圧倒的王者のフルームだが、前日祭である3日(金祝)のイベントでは、王者自らまさかの忍者コスプレを披露するなど、終始シーズン終了を楽しむ穏やかな顔を見せていた。

シーズン終わりでリラックスした王者の話を聞こうと、英語オンリーの囲み取材には海外媒体の記者が多くインタビューに参加。フルームを取り囲んで「えっ、そんなことまで聞いちゃうの!」という質問を繰り広げた。その様子をお伝えする。

フルームもノリノリでニンジャの扮装を楽しんだ
フルームもノリノリでニンジャの扮装を楽しんだ

フルームとの一問一答

王者フルームは終始笑顔で気持ちよく応対してくれたが、小さなソフトボイスでボソボソ話すので音声を聞き逃すまいと多くの録音機材(スマートホン)が写真の中に写り込んでいるのはご愛嬌。

ソフトボイスのフルーム
ソフトボイスのフルーム

さいたまクリテリウムについて、フルームはこう思っている

ーー前日祭で忍者に扮しましたよね。このようなイベントに参加した感想は?
フルーム「いつもと違ったことをやるのは面白い(笑)。特に、参加している選手は共にシーズンで長い時間を過ごしたいわば同僚たちなんですが、このような機会があると、我々の仕事であるレースとはまったく関係ない話ができる。みんなオープンな気持ちで話が出来るので、意外な一面を発見したり、より深く相手を知ったりできる」

ーー忍者として手裏剣をうまく投げましたね(笑)
フルーム「まあまあ(笑)。もちろん実際の戦いとは違うけどね」

ーー2017年の今年はダブル優勝しましたがその感想は?
フルーム「ツールとブエルタのダブル優勝は素晴らしい体験だったが非常にタフだった。今シーズンが終わり2017年を振り返って『2つのグランツールに優勝するという僕の夢が叶った』という気持ち。もちろんツール4度目の優勝というのも自分として狙って得たものだから嬉しいが、一方でブエルタの優勝というのは、本当にここ数年ずっとそこにターゲットを絞って努力を積み重ねてきたもの。ついに優勝したので心の底から満足している」

ーーこのようなシーズンを終えて今日本でクリテリウム走るというのはどうなんですか、ちょっと間が空いちゃってますが。
フルーム「確かに自分のシーズンは終えて今はオフだけれども、トレーニングはしているので、身体を動かすことを楽しむよ。本格的なトレーニングは来週から開始の予定だ」

さいたまクリテリウムを走るフルーム。観客との距離が近い
さいたまクリテリウムを走るフルーム。観客との距離が近い

フルームは「ツールよりブエルタのほうが面白い」

ーーチーム・スカイでの自分のキャリアに満足してる?
フルーム「もちろん。でも我々選手は契約ベースなので」

ーーなぜあなたにとってブエルタはそんなに大事だったのか?
フルーム「まずブエルタは何よりも『レース』だということ。グラン・ツール出場の実力ある選手達がアタックしたり果敢に攻めたりして狙えるチャンスがあり、そのおかげでレースが面白くなる。

ツール・ド・フランスとブエルタとの違いは何かというと、ツールは山頂ゴールが2つ3つしかないので、その数少ない山頂ゴールで失敗すると勝機を逃してしまう。だから誰もアタックして果敢に攻めたりしないで相手の様子をうかがい、先行している相手を追うことに終始する。

ところがブエルタはツールに比べてさらに9つも山がある(笑)。だからみんな攻撃的にアタックするし、レースががぜん面白くなる。またブエルタはシーズン最後のレースなのでみんな全力を出し切る。レースとしても面白いし、何ていうかシーズン終わりのリラックスした雰囲気があるんだ。巨大なプレッシャーに押しつぶされそうなツール・ド・フランスとは全然違う。つまり、レースとして面白いということと、プレッシャーやストレスがツールに比べて少ないというコンビネーションで独特の雰囲気が生まれるんだね」

ーーブエルタのほうがよりあなたのスタイルのレースってこと?
フルーム「そうだね、僕らしいレースができる。攻撃的で、(ツール・ド・フランスでは精神戦の面が強いが)ブエルタはもっとフィジカルな戦いだ。それに舞台であるスペインも素晴らしい。僕はスペイン系ではないけれど、スペインの文化の中で走るのは滾る。皆それを感じているよ」

©Unipublic
©Unipublic

ーー毎シーズンあなたは「トップチューブに座る下り」など、新しいテクニックで我々を驚かせてくれたけれど、そういう「秘技」は今年はないの?
フルーム「もう僕のテクニックは出尽くしたよ・・・(笑)。真面目に答えると僕は32歳で今年はブエルタで一番いい“一位”という数字を得、自転車乗りとしては上達していると思うよ。毎シーズン、シーズンが終わるごとに経験を重ねている。レースの経験というのは“通過”するものじゃなく、“学び取る”ものなんだ。とてもタフなレッスンなんだ。だから僕は毎シーズン終わるごとに、毎年学びを深め、年々上達している。例えば、今シーズンはパヴェのようなクラシックレースをどう走るかなどの学びがあった」

二番手エースだったミケル・ランダとの関係の本当のところ

ジョークを飛ばす時も基本真面目なトーン
ジョークを飛ばす時も基本真面目なトーン

ーーチーム・スカイではエースのひとりだったミケル・ランダがチームを去るけど・・・
フルーム「それは彼の『自由』だ」

ーーでも同時にあなたは「ランダ・フリー(ランダなし)」になるわけで。チーム内でエースを脅かす相手がいなくなるのはどんな気持ち?
フルーム「ランダは非常に才能に溢れた選手で、違うチームに行っても間違いなく僕にとってプレッシャーとなり、脅威となるよ」

ーー「ランダ・フリー」なあなたはチーム内でのプレッシャーがなくなって嬉しい?
フルーム「いやいや、『ランダ・フリー』っていうのはジョークだよ、そこは間違えないで(笑)。メディアやチームの外では僕らが対立しているとか緊張感がある関係だとか、いろいろ言ってるのも知っているけれど、実際のところは違う、一緒に戦うチームメイトなんだ。チームの中は凪いでいた。ランダがいるからアタックするのを避けてるとか言われたけど、そういうのではないんだよね。なんたって2年もチームメイトなんだから」

ーーランダは新天地モビスターで活躍できると思う?
フルーム「彼はリーダーの資質がある。間違いなくグランツールでモビスターを牽引するだろうね」

ーーでもモビスターにはエースであるナイロ・キンタナがいますよね?
フルーム「キンタナにバルベルデもいる。でも誰がリーダーになるかなんて決定事項じゃないから分からないよね?誰にでもチャンスはある。ランダがエースで来ることもあるかもしれない

さいたまクリテリウムでは小柄はケニー・エリッソンドに引かれた186cmと長身のフルーム
さいたまクリテリウムでは小柄はケニー・エリッソンドに引かれた186cmと長身のフルーム

「負けず嫌い」もサドルを降りると終始穏やかな紳士

レースでは負けず嫌いで闘志を見せるフルームだが、不仲が噂されていたミケル・ランダを巡るきわどい質問にも笑顔とジョークで答えるなど、終始リラックスした対応。チーム・ディメンションデータのネイサン・ハースらと多摩湖やアラサイに出没するなど、シーズンオフの最後を飾るさいたまクリテリウムは、フルームにとってオフの自由な時間を満喫できる最後のイベントなのだろう。

クリス・フルームは今週2018年に向けてのトレーニングを開始する。

沿道のファンに応えるフルーム
沿道のファンに応えるフルーム

All photos by Kenichi Inomata

WRITTEN BYヤマショウ

FRAME編集長 山祥ショウコ マガジンハウス『GINZA』を経て英国遊学から帰国後女性サイトの草分け「Cafeglobe.com」の立ち上げに参画。その後『Casa Brutus』『GQ Japan』「Variety Japan」など、雑誌やウェブのスタートアップ時の編集に携わる。自転車歴9年目。四国出身、湘南在住。

他の記事も読む

関連記事