サガンとUCIとの論争に終止符 |ツール失格は覆らずも、故意ではなかったという結論に
date : 2017.12.07 update : 2017.12.07

スポーツ仲裁裁判所に訴えたサガンと所属チーム、和解で決着

2017ツール・ド・フランスの第4ステージにおいて、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を故意に落車させとして、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が失格処分となったことは、今年のツールにおける最大の話題であったといっても過言ではないだろう。

ゴール手前200m、落車する瞬間のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が肘を出しており、これが落車の原因とされているが、各種動画を見れば明らかな通り、先に頭をぶつけてきたのはカヴェンディッシュの方で、すでにその時点でカヴェンディッシュはバランスを崩し、落車はさけられない態勢になっていた ©A.S.O.

ゴール手前200m、落車する瞬間のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が肘を出しており、これが落車の原因とされているが、各種動画を見れば明らかな通り、先に頭をぶつけてきたのはカヴェンディッシュの方で、すでにその時点でカヴェンディッシュはバランスを崩し、落車はさけられない態勢になっていた ©A.S.O.

サガンとボーラ・ハンスグローエは、「故意による事故ではない。失格処分は不当だ」として、失格当日にCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴えを起こした。これまでその結論は出ていなかったが、このたびCASの最終ヒアリングを待たずして、UCI(国際自転車競技連合)と和解することとなった。

ステージ優勝したアルノー・デマール(フランス、FDJ)。フランス人スプリンターによる勝利は久しぶりで、本来ならフランス中がこのニュースで湧くはずだったが、サガン失格のニュースにかき消されてしまった感がある。デマールのスプリントも、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)の前を斜行するなど、あまり美しいものとはいえなかった ©A.S.O.

ステージ優勝したアルノー・デマール(フランス、FDJ)。フランス人スプリンターによる勝利は久しぶりで、本来ならフランス中がこのニュースで湧くはずだったが、サガン失格のニュースにかき消されてしまった感がある。デマールのスプリントも、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)の前を斜行するなど、あまり美しいものとはいえなかった ©A.S.O.

UCIの言い分とサガン側の言い分

和解に至るまでの道のりは、それほど複雑ではなかった。失格当日には詳しく分析されなかった各種ビデオや写真を見ることによって、UCI側も「この事故は故意ではなかった」との結論に達したのである。しかし、あくまでも当日の状況では、UCIは最善の判断を下したという点は譲らず、サガンとボーラ・ハンスグローエがそれを飲む形となっている。

チームメイトに付き添われてゴールするカヴェンディッシュ。後に行われた精密検査で右肩胛骨の骨折が判明し、第5ステージのDNSが発表された ©A.S.O.

チームメイトに付き添われてゴールするカヴェンディッシュ。後に行われた精密検査で右肩胛骨の骨折が判明し、第5ステージのDNSが発表された ©A.S.O.

この辺は、現実主義者のサガンらしい選択だ。もうすでに終わってしまったレースのことで争うのは不毛であると感じでいたのだろう。仮にUCIが判断ミスをしたという結論になったとしても、ツールをふたたびやり直せるわけではない。それならば、UCIの面子を潰さない形で、自分に非がなかったことを認めさせようという結論に達したわけである。

この和解について、サガンのコメントは前向き

サガンは、「もう過去のことは忘れたよ。自転車競技の未来のことを考える方が大切だ」とコメント。いちばん現実的な解決方法を選んだ後の、最良のコメントといえるだろう。かつてはやんちゃだったサガンだが、ずいぶんと大人になったものだ。

レース後、カヴェンディッシュのもとへ謝罪にいったサガン。普段2人はとても仲が良く、お互いをリスペクトしている ©A.S.O.

レース後、カヴェンディッシュのもとへ謝罪にいったサガン。普段2人はとても仲が良く、お互いをリスペクトしている ©A.S.O.


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Written by 仲沢 隆

仲沢 隆 自転車ジャーナリスト。早稲田大学大学院で、ヨーロッパの自転車文化史を研究。著書に『ロードバイク進化論』『超一流選手の愛用品』、訳書に『カンパニョーロ −自転車競技の歴史を“変速”した革新のパーツたち−』がある。