TOMMASINI(トマジーニ)|美しい「鉄」がファンを魅了する珠玉のイタリアンブランド

ロードバイクはレースで勝利を求めるために進化してきた乗り物だ。「より速く、より機能的に」を求め続けた結果、ロードバイクの素材は時代によって変化している。

現在ツール・ド・フランスなどグランツールと呼ばれるレースの表舞台からは、スチール素材のロードバイクは姿を消したが、スチールにしろ、アルミにしろ、その素材独特の乗り味や特徴があり、魅力がある。中でも、スチール/クロモリ素材の自転車は愛好家が多い。プロでも「レースじゃない日の自転車はクロモリに乗る」という人もいる。

そんなスチール/クロモリフレームの魅力を伝える第一弾として、今回は「TOMMASINI(トマジーニ)」に注目、紹介しよう。

自転車に乗らない人さえもその美しきフレームに誘われる

TOMASINI(トマジーニ)

1990年代にアルミフレームがレーシングバイクの主流になり、2000年代にカーボンフレームが主流になっても、トマジーニは高品質なスチールフレームを作り続けた。世の中の潮流が変われども、世界中にトマジーニの美しいラグワーク(継ぎ手部分の技術)に魅了された熱心なファンがいるからである。現在のトマジーニには、カーボンモデルもアルミモデルもあるが、日本のファンに人気があるのは、やはりスチールのモデルである。

トマジーニの歴史と代表的フレーム

メッキが施されたラグ(継ぎ手部分)が美しいSINTESI。
▲メッキが施されたラグが美しいSINTESI(シンテージ)。トマジーニのスチールモデルの代名詞である

トマジーニ(TOMMASINI)の創設者であるイリオ・トマジーニは、1948年にトスカーナ州グロセットでフレーム作りを始めた。イタリアには元選手によって興された工房がたくさんあるが、イリオもまた自転車選手であった。ただ他の工房と違うのは、引退した後に興した工房ではなく、まだイリオが現役選手だったときにフレーム作りを始めたということだ。だからトマジーニには「こう作れば売れるだろう」ではなく、「選手だからこそこう作りたい」という哲学がずっと流れ続けているように思う。

その後イリオは、ミラノでファリエーロ・マージと並び称されるフレーム作りの名匠ジョゼッペ・ペラに師事。同じトスカーナ出身のペラからフレーム作りのすべてを受け継ぎ、1957年にいよいよ自らのブランドであるトマジーニを興したのである。当初はOEM生産を主としていたが、1970年代に入るとその魅力的なフレームは、イタリアはもとより海外にも供給されるようになった。

バネ感がありキビキビとした走りの「SINTESI(シンテージ)」と、軽量チューブでラグジュアリーな「TECNO(テクノ)」の2車種が、トマジーニの代表モデルであることに異論を唱える人はいないだろう。どちらも、ため息が出るような美しいメッキのラグ(継ぎ手部分)が特徴で、走る喜びに加えて、「所有する喜び」を教えてくれるモデルとなっている。

TECNOの美しいヘッドラグ
▲TECNOの美しいヘッドラグ

スチールバイクの魅力は「ラグ」にあり

バッジタイプのヘッドマーク
バッジタイプのヘッドマーク

トップチューブ後方には、イリオ・トマジーニのサインが入る
▲トップチューブ後方には、イリオ・トマジーニのサインが入る

1970年代頃までの、スチールフレームがプロ用レーシングフレームの主流だった時代、ラグのカットには2つの潮流があったイタリアンバイクで主流だったシンプルな「イタリアンカットラグ」とフレンチバイクで主流だった複雑な形をした「コンチネンタルカットラグ」である。

トマジーニはイタリアンバイクゆえ、基本的にはイタリアンカットラグなのだが、そこにコンチネンタルカットラグかと見まがう装飾性を加えているのが特徴だ。もしデカール(ブランドのステッカー)が張られていなくても、トマジーニのフレームを見分けられないファンはいないだろう。そのオリジナリティ、そしてイタリアの頑固な職人が手作業で作ったモノという価値が、「走るための道具」を「芸術品」の域まで高めているのである。トマジーニを所有する最大の喜びは、この「イタリアの芸術品を持つ」ということにつきるだろう。

軽量チューブを用いて軽さと美しさを両立したTECNO。
▲軽量チューブを用いて軽さと美しさを両立したTECNO(テクノ)。SINTESIと双璧をなす人気モデルである

トマジーニの溶接技術の確かさはステンレスモデルにも

軽量肉薄のステンレスチューブをTIG溶接でくみ上げたモデル「X-FIRE」
▲軽量肉薄のステンレスチューブをTIG溶接でくみ上げたモデル「X-FIRE」(Xファイア)。錆びないステンレスチューブのおかげで、いつまでも美しい輝きを放ち続ける

ラグのあるモデルのことばかりに言及してしまったが、そのほかにも魅力的なスチールモデルがある。2010年にラインナップに加わわった「X-Fire」だ。X-Fireは軽量・肉薄なステンレスチューブをTig溶接したモデルで、トマジーニの溶接技術の高さを証明している。SINTESIやTECNOのようなラグワークは楽しめないものの、ステンレスの怪しい輝きがファンの心をくすぐるモデルとして静かなブームとなっている。もちろん、肉薄チューブならではの軽量性も魅力だ。

ヘッドラグ部を溶接する職人。
▲ヘッドラグ部を溶接する職人。イタリアの熟練の技により生み出されるバイクを所有する喜びは、何物にも代えがたい

X-FIREの軽量肉薄のステンレスチューブをTIG溶接する職人。
▲X-FIREの軽量肉薄ステンレスチューブのTIG溶接を始め、チタンの溶接までこなしてしまう高い技術力を誇る
トマジーニはフレームの溶接だけでなく、塗装まで自社工場で行っている。それゆえ、カスタムジオメトリーやカラーオーダーにより、世界でたった一台のイタリアンハンドメイドバイクができあがるのだ。「乗る喜び」に「創る喜び」を加えることができるのが、トマジーニのスチールフレームの魅力ということができるだろう。

塗装も自社工場で行われる。
▲塗装も自社工場で行われる。それゆえ、こまかなオーダーに応えることも可能だ

幸い日本にはアクションスポーツという心強いトマジーニの代理店がある。アクションスポーツと取引のあるショップであれば、トマジーニを手に入れることは簡単だ。トマジーニを所有することに、特別な制約はない。「トマジーニが好き」という気持ちさえあれば、誰でもその魅力を楽しむことができるだろう。メンテナンスに関しても、特に難しいことはない。丁寧に乗り、雨に濡れたらすぐに水滴を拭き取り、普段は室内保管をしておけば、10年は乗り続けられるだろう。

日本で取り扱いのあるトマジーニ人気モデルのスペックと値段

以下、アクションスポーツが扱うトマジーニのフレームを挙げてみた。完成車に見える写真もすべてイメージなのでご注意いただきたい。
トマジーニの真価=イタリアの宝石を所有する喜びを味わうには、カスタムオーダーやデザインオーダーが一番。あまり構えずに相談してみたい。

SINTESI(シンテージ)

SINTESI(シンテージ)

フレーム素材:スチール<COLUMBUS NEURON>
フレーム重量:1730g(55cm)
フォーク:Tommasini AIR Nivacrom
ヘッドセット・コラム:ノーマル・1″
フレーム&フォーク価格:国内在庫カラー¥300,000(税別)
右チェーンステイのみメッキ仕様:¥280,000(税別)
メッキなしのペイント仕様:¥270,000(税別)
※価格はカラーオーダー料金込み
※カスタムサイズオーダー(料金別途¥20,000税別)
※デザインオーダー(料金別途¥30,000税別)
※シートポスト:27.2 BB規格:ITA

TECNO(テクノ)

TECNO(テクノ)

フレーム素材:スチール<COLUMBUS NEMO>
フレーム重量:1600g
フォーク:Tommasini AIR Nivacrom
フレーム&フォーク価格:¥330,000(税別)
※価格はカラーオーダー料金込み
※カスタムサイズオーダー(料金別途¥20,000税別)
※デザインオーダー(料金別途¥30,000税別)

X-FIRE(Xファイア)

X-FIRE(Xファイア)

フレーム素材:ステンレス<COLUMBUS XCr>
フレーム重量:1400g
フォーク:FKT56 1-1/8″フルカーボン インテグラル
フォーク重量:350g
フレーム&フォーク価格(参考):¥610,000(税別)
DISCブレーキ仕様:¥650,000(税別)
※価格はカラーオーダー料金込み
※カスタムサイズオーダー(料金別途¥20,000税別)
※デザインオーダー(料金別途¥30,000税別)

Tommasini come è fatto from Tommasini Biciclette on Vimeo.

▲トマジーニの職人技術の高さを動画で堪能できる(イタリア語)

All Photos:(C)Tommasini

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WRITTEN BY仲沢 隆

仲沢 隆 自転車ジャーナリスト。早稲田大学大学院で、ヨーロッパの自転車文化史を研究。著書に『ロードバイク進化論』『超一流選手の愛用品』、訳書に『カンパニョーロ −自転車競技の歴史を“変速”した革新のパーツたち−』がある。

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