初心者が3ヶ月でロードレースで好成績を収めるためにやって効果があったこと
こんにちは。東京大学農学部4年の大島拓司です。
私事ですが、先日ロードバイク歴3ヵ月半で挑んだツール・ド・おきなわ100(U39)をめでたく68位で完走することが出来ました。いやー嬉しい。
思い返せばこの3ヵ月半、ツール・ド・おきなわを完走するためにさまざまなことをしてきました。
第2話「ロードバイクのトレーニング教えて!国会図書館さん!」
第3話「え!?補給ってご飯いっぱい食べればいいんじゃないんですか!?」
第4話「ロードバイク偏差値、ヤビツ峠で測ってきました」
第5話「集団走行をスクールで学んでみたら、目からウロコ落ちまくりでした」
第6話「ロードバイク歴3ヵ月、沖縄一周300km日帰りライドに挑む」
第7話「ツール・ド・おきなわ本番で力を発揮するために必要なことはこれだけです!」
そんな私の経験を踏まえて、連載最終回である今回はロードレースを参加者として楽しむ方法についてまとめたいと思います。
「ロードレースに参加するのはちょっとハードル高いわぁ…」って人も、ご安心ください。3ヵ月半で完走した私が最短距離を教えましょう。
目次
結論その1「一番必要なのはトレーニング」
まず一番必要なことはトレーニングでしょうか。やはりある程度の脚力がなければロードレースではお話になりません。
トレーニング理論に関しては連日国会図書館に通い調べたことがこちらにまとまっています。
ここでは、それを踏まえて私がやったトレーニングを紹介しましょう。
内容は時期によって段階的に変わります。8月半ば~10月半ばはローラーによるパワートレーニング中心、10月半ば~11月半ばは沖縄で実走中心、といった感じです。
パワーが上がったローラー期(8月半ば~10月半ば)
具体的に何をやっていたかというと、平日はほぼ毎日ローラーでメディオ20分✕2セット、土日はどちらかで100kmくらい実走(LSD)、というトレーニングでした。
この時期で平地での巡行速度は25km/hから30km/hくらいに向上しました。面白いほどにグングン巡航速度が上がっていくので、メディオの辛さが逆に気持ちよく感じられました。
しかしながら、9月の終わりごろにヤビツ峠のタイムトライアルをした時には50分切りがやっとでヒルクライム偏差値は46というイマイチな結果に。(第4話「ロードバイク偏差値、ヤビツ峠で測ってきました」参照)
平地は楽しいけど登りはまだまだでした。この辺で、ロードバイクで速く走るにはパワーだけではなくテクニックも重要であることに気づき始めます。
テクニックがついた実走期(10月半ば~11月半ば)
10月半ばからは沖縄に滞在し、午前は観光がてら2時間ぐらいLSDをして、午後は筋肉痛でなければ実走でメディオをやる、というトレーニングをしていました。
なぜ実走を増やしたのかというと「せっかく沖縄に来たから」という理由しかないのですが、結果的にこれがテクニック改善につながりました。
宿が超田舎にあり、毎日市街地に行くのために標高差160mくらいの大垂水峠と同じくらいの小山を越えていかなければならないという状況でした。(帰りも通るので毎日2回軽くヒルクライムするイメージ。)
▲市街地に行くためのルート
その中で、登り方をいろいろと試行錯誤しました。最も脚に負担がかからないギアはどこか、くるくると回すようなペダリングはどうやるのか、休むダンシングはどう使うのが良いのか、などなど。その結果、かなり省エネで登れるようになりました。
また、下りや平地を走る際にも、空気抵抗を減らし、かつ腰などに負担がかからない姿勢を模索しました。この結果、下りや平地の速度も若干向上しました。
実走して試行錯誤するの、大事ですね。
ローラー台と実走、それぞれの長所短所
ローラー練は、一定負荷を一定時間かけ続けられるため追い込みやすいです。そのため、パワー向上をするのに効率が良いと感じました。
実走では信号や傾斜の変化があるので負荷を一定にできず、イマイチ追い込み切れないことが多いですからね。
なので、ローラー練は忙しいサラリーマンサイクリストには超おすすめです。個人的には自転車通勤をするより電車で帰って家でローラー回した方が速くなる気がします。どっちもやるのが最強ですが。
しかし、ローラー練では傾斜の変化や空気抵抗への対応力が養われないという短所があるので、週末などにしっかりと実走する必要があるでしょう。
特に、初心者が3ヵ月半でツール・ド・おきなわ100kmを目指す場合は、週末に100km走るだけでは不十分でした。皆さんも気を付けてください。
結論その2「ホイール買うよりスクールで集団走行学べ」
ロードレースに参加するにあたって、集団走行の練習も本当に大事です。
私は一緒に練習する友達がいなかったので、サイクルスクールに参加して集団走行について習いました。あ、一応言っておきますけど、“練習する”友達がいなかっただけで、“遊ぶ”友達はいますからね・・・ちょっとだけですが。
これは本当に参加しておいてよかったと感じます。参加していなかったら完走は結構危うかったし、周りに接触して落車なんてこともあり得ました。
ロードレースを楽しむためには、高いホイールを買うよりもサイクルスクールの方がよっぽど効果があるしお安いと思われます。
実際のスクールの様子などはこちらに書かれているので、ここでは集団走行練習が実際のレースでどう役に立ったのかをお伝えします。
大集団でしっかり固まることが出来た
レース序盤は4、50人の大集団の中で走っていました。そんな規模の集団だと、前にも後ろにも横にも人がいます。40km/hくらいで人と固まって走るなんて冷静に考えると異常ですよね。
しかし、サイクルスクールで20km/hくらいの速度から2列で固まって走る練習をしていたおかげで、ビビらずにしっかり密集することができました。
集団内にいてもしっかり密集しないと意外と結構風をうけて脚を使ってしまいます。ここでちゃんと風を避けられたことも後半までハイペースを維持できた要因でしょう。
小集団をスムーズに形成出来た
大集団が徐々にバラけてしまった後も、ローテーションに慣れていたおかげで周りとスムーズに連携して小集団を形成することが出来ました。
平地は一人で走るとかなり消耗してしまうので、誰かと一緒に走りたいところです。こんなとき、どれくらい前を引くべきなのか、集団の速度を維持するにはどれくらい踏むべきなのか、などが分かっていると、周りの人とすぐに連携できます。
本当は「よかったら一緒に走ってください!」とか知らない人に言えれば小集団は形成できるんでしょうが、私は人見知りなので無理です。
サイクルスクールで集団走行技術をある程度身に着けていたおかげで、無言で周りと連携できました。
この連携のおかげで、終盤の平地で4人でローテを回して40km/hを維持し、順位を上げました。そして何より、集団をサッと形成して40km/hで走っているとき「あぁ…俺ロードレースしてるわ…」と何とも言えない感慨に浸ることが出来ました。
結論その3「パフォーマンスを途切れさせないための補給知識」
補給に関する正しい知識は必須です。どれだけ速く走れて、どれだけ集団走行が上手くても、いい加減な補給をしていては力を発揮できません。
補給についてはこちらで理論をまとめたので、ここではそれを実践してみてどうだったかをお伝えいたします。とはいえ、補給に関してはかなりの個人差があり、色々試してみるのが一番大事です。
エネルギーと水分
今回のレースにおいて、エネルギーと水分の補給に関してはかなり上手くいったと感じます。練習で100km走ったときと比較して、格段に体が動きました。
補給食として持っていたのはこちらでも書いた通りグリコのワンセコンドが4つとパワーバーのジェルが1つ。このうちレース中に消費したのはワンセコンド3つとパワーバーのジェル1つ。
水分はポカリスエットの入ったボトル2つと補給所でもらったスポーツドリンクのボトル2つを消費しました。合計で約2リットル、1時間で約600ml消費した計算になります。ちなみに当日の天気は曇りで、気温は20℃ちょいくらいでした。
概ね、第7話でまとめた理論通りの補給です。その結果、レース終盤やレース後にエネルギー不足でふらつくこともなく、激しい口渇感に襲われることもなく、脚がつることもなくレースに集中することが出来ました。
もうね、完璧に計算通りです。科学の勝利。
カフェイン
カフェインに関してはイマイチ上手くいきませんでした。
というのも、レース1時間前にカフェイン補給のためにブラックコーヒーを350ml(カフェイン約140mg入り)を飲んだんですけど、そのあと利尿作用でトイレに行きたくなってしまい、トイレに並んでいたらスタートの列に並び遅れるという事件が発生しました。
いや、科学的には運動中であればカフェインを摂取しても利尿作用は発生しないんですよ。ただ、運動前はダメですね。まぁ冷静に考えれば当然なんですけど…。
そのせいでほぼ最後尾からスタートしました。
しかし、最初の登りはカフェインがガンギマリしていたおかげで、最後尾から小野田○道ばりの抜きを見せ、第2集団あたりまで浮上することが出来ました。
中盤でもパワージェル(カフェイン26mg入り)を摂取しましたが、こちらはあまり効果は実感できず。おそらく摂取量が少なかったのが原因でしょう。第7話で紹介した論文でも、パフォーマンス向上が見られた被験者は約1時間の実験でカフェインを200mg前後摂取していました。
結論その4「高級ロードバイクでなくてもレースは十分走れる」
「初心者がそんなに速く走れたってことは、数十万ぐらいするお高いロードバイクに乗っているんじゃないの?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
いえいえ、そんなことないんです。私の愛車を紹介しましょう。
私の愛車はSpecializedのAllez Elite*。価格は162,000円のいわゆるエントリーモデルのアルミロードバイクです。(ロードバイクに乗らない人からすれば「めちゃ高いやんけ!」って感じでしょうけど、これでもお安い方です…。)
この価格帯でコンポはシマノの105、完成車重量は8.7kgというコスパの良さ。軽さ、運動性能、安定性がありレースでもツーリングでも使えます。
そして、太いタイヤクリアランスによりグラベルでも使えたり、ラックを装着可能なダボ穴が各所にあることからバイクパッキングも楽々できたりします。
Specializedさん曰く、「多くの科目で80点とれる優等生」であることがその最大の売りだそうです。まぁ私は全ての科目で100点を取りますけどね。
でも、なんでも出来るっていいですよね。私は元々、レースに出たくてロードバイクに乗り始めたのですが、今度はキャリアをつけて長旅とかしてみたいなぁとか思ったり。
乗れば乗るほど「次は何しようかな!」というワクワクが湧いてくる、そんな最高の相棒です。
さて、ツール・ド・おきなわも完走したし、次はツール・ド・フランス完走を目指そうかな!
*Specialized Allez Eliteは12月14日にリコール情報が発表されています。このツール・ド・おきなわ挑戦はリコール情報前に作成されたものです。
機材提供:スペシャライズド・ジャパン