FULCRUM(フルクラム)ホイール徹底解説|初心者脱却を目指すならこのテクノロジーの結晶を履け!

目次
フルクラムというブランドとは
フルクラムとは、1933年に創業したイタリアの老舗自転車部品メーカー・カンパニョーロの伝統を引き継ぎ、2004年に立ち上げられたホイールに特化した姉妹ブランドだ。自転車をこよなく愛する航空宇宙工学のエンジニアたちの、革新的なアイデアから誕生したものである。カンパニョーロの高い技術力を踏襲しつつ、独自のコンセプトからユーザーのニーズとコストに合わせて最適なホイールを提供している。初心者からトッププロまで幅広い層から人気を得ており、新興ながら特許技術も生み出してホイール業界で世界屈指の評価を受けている。今回はそのフルクラムの魅力に迫ってみよう。
フルクラムのホイールにはどんな種類があるのか
フルクラムのロードホイールはシーン別、目的別に4つのカテゴリーがある。以下、そのカテゴリーの特徴である。
Racing(レーシング)シリーズ
アルミ最高峰と言われているRacing Zeroを始め、Racing 3、Racing 5、Racing 7を擁するシリーズである。トップグレード、ミドルグレード、エントリーグレードに分かれており、高い剛性から生み出される卓越した加速性能と推進力は、まさにレースのためのホイールだ。
Racing (レーシング)クアトロシリーズ
エアロ特性に注力したベンチマーク的グレード。特別に設計された35mmリムを始め、ミディアムレンジのリムプロファイルが持ち味だ。平坦の高速巡航はもちろん、ちょっとしたアップダウンも乗りこなされる。コーナーやダウンヒルでの安定性も抜群。
Speed (スピード)シリーズ
プロチームの選手が開発に関わる本格グレード。カーボンホイールの先進シリーズとしてチューブラーのみだけではなく、クリンチャー仕様も登場。レーシングシーンで活躍する圧倒的な高性能を誇り、リムハイトは40mmと55mmがある。
Red wind (レッドウィンド)シリーズ
トライアスロンやTTレースで大切なエアロダイナミクスを徹底的に追求。空気抵抗に打ち勝つために生まれたカーボンディープリムのクリンチャーホイールだ。取り扱いが楽で、高いエアロ効果をもたらす人気グレード。
フルクラムのこれらのホイールの中でも盤石の人気を誇るのがハイグレードなRacing Zero(レーシングゼロ)と、安価でよく回るミドルグレードのRacing 3(レーシングスリー)。「Racing Zeroは剛性が強くプロ向きなので、Racing 3のほうが初心者向きかも知れない」とちまたでよく言われている。本当にそうなのか、まずはシリーズ別にフルクラムのホイールを詳しく見ていこう。
Racing (レーシング)シリーズ解説
まずはRacing ZeroとRacing 3を徹底比較してみる。
Racing Zero
アルミホイールの最高峰と称され、平坦路、ヒルクライム、ダウンヒル、すべてのシーンで最高のパフォーマンスを発揮するオールラウンダー。高い剛性から生み出される卓越した加速性能と推進力はレースのためのホイールだ。シリーズには、CULTベアリングを採用したコンペティツィオーネ、30mmリムハイトのカーボン、ブレーキ性能を格段に進化させたナイト、ディスクブレーキ対応のDBがある。
Racing Zero Competizione
レーシングゼロ・シリーズの中でも特に決戦用。赤い一本のスポークとハブが目を惹くモデルだ。使用されているベアリングは「CULT」と呼ばれるもので、セラミックベアリングを受けるボールレース部分に特殊ステンレスを採用。耐久性を高め、メンテナンスフリーとなっている。
価格:187,920円(税込)
Racing Zero Carbon
カーボン素材によるリムハイト30mmホイール。優れたエアロ特性を獲得しながら、重量1340gという軽量化を果たして慣性モーメントを低減。それにより、少ないエネルギーでホイールを回すことを可能とし、ヒルクライムで強みを発揮。また高速巡航性、良質な反応性、卓越した操縦性を持ち抱く。
価格:291,600円(税込)
Racing Zero Nite
プラズマ電解酸処理を施して、専用のブレーキシューを使うことでリムブレーキ面の耐摩擦性を高め、優れた制動能力を実現。天候や路面に左右されない確実で繊細なブレーキタッチで、よりアグレッシブな走りが可能となった。マットブラックのリム加工面はそのポテンシャルをクールに秘めて、デザイン的にもシック。
価格:179,280円(税込)
Racing 3
2018年モデルからC17にワイドリム化したRacing 3。エアーボリュームが増えるとともにタイヤとのマッチングの影響で乗り心地が向上している。グリップ力も良くなり、コーナーリングの安定性も高くなった。通常、リム幅が広くなると重量が重くなるが、新しい技術「R2切削」でリムの重量を極限まで軽量に成功。同時に、フロント&リアともにハブの肉抜きもされ、徹底した軽量化のメリットを得ることができる。
価格:90,720円(税込)
Racing Zeroと3、どちらがオススメ?
Racing ZeroとRacing 3は相並ぶほど人気がある。Racing Zeroのほうが高性能で価格も高いが、値段が高い=自分の乗り方に合うというわけではない。あえてRacing 3を選ぶライダーもいる。下記はふたつのホイールに乗った経験を持つ、愛知県の自転車店に勤務する21歳の男性ライダーによるインプレッションだ。
「まず始めにRacing 3は剛性が高い。特に横方向に硬く、力がダイレクトに伝わりやすい。私が乗っているロードバイクは横方向にしなりやすかったのだが、Racing 3に変えてからは横の剛性が高くなったように感じる。私はよくヒルクライムをするのだが、ダンシングをしたときに力が逃げないのを実感することができる。平地でも力が逃げる感覚はなく、速くなることを実感できるホイールだ」
さらに価格以上のものがRacing 3にあると言う。
「重量も軽くハブの回転も良いため、漕ぎ出しの軽さも実感できる。体重の軽い人であるならば、ホイールの軽さはRacing 3ぐらいがちょうどいい重量だと感じる。体重が重く、パワーのある人でもRacing 3は力を受け止めてくれるだろう。最初のアップグレードでどのホイールを選べばいいのかわからない人も多いと思うが、私は迷ったらRacing 3を選んでほしいと思っている。これまでの自分の走りの変化を実感することができるからだ。他のメーカーで同じ重量のホイールはRacing 3より安価で購入できるが、値段以上の価値がこのホイールにはあるだろう。『走りを変えたい。いまのホイールでは物足りない』という人にこそ、一度使用してほしい」
Zero か3か。悩む場合は、Racing 3に分があるとも語る。
「Racing Zeroとは重量も似ており、人気のモデルのため、価格の差がどれだけあるのか気にするする人は多いだろう。回転性能や剛性の面を比較するとRacing Zeroのほうが優れている。しかし、剛性が高すぎるため、硬いフレームにRacing Zeroを合わせると足の負担になってしまう場合がある。現状のフレームの硬さに不満があるなら良いかもしれないが、満足しているならRacing ZeroよりRacing 3のほうが良いだろう。エンデュランスモデルや、やわらかいフレームなどと合わせると、走りの違いがはっきりと分かるはずだ。クリテリウムやヒルクライムなどをこなしたい、または長距離をあまり乗らない人にはRacing Zeroがよい。長距離のライドをこなしたい人にはRacing 3をオススメしたい」
と言うように、Racing Zeroはレースに特化したい人向け。受け止める幅がより大きいのがRacing 3。初心者でホイール購入に悩んだら、ぜひ購入の候補にしてもらいたい。
それでは下記、他のRacingシリーズも見ていこう。
Racing 4 DB
クリンチャー、チューブレスレディにも対応する2ウェイフィット、「2ウェイフィット・レディ」。ストレートプルスポーク採用のディスクブレーキ仕様だ。初心者にも扱いやすい35mmリムハイトのエアロモデルである。
価格:57,024円(税込)
Racing 5 LG
上位モデルの構造を引き継ぎ、走行性も抜群な高いコストパフォーマンスを持つ。スタンダードモデルと、チューブレスレディにも対応する2ウェイフィット、「2ウェイフィット・レディ」のディスクブレーキ仕様ホイール(DB)があり、フルクラムの特長である高剛性を武器に走りの良さと楽しさを与えてくれる。初心者にも漕ぎ出した瞬間から進む感覚、踏んだ分だけ進む手応えを実感できるだろう。
価格:42,984円(税込)
50,544円(DB/税込)
Racing 6 DB
2018年モデルから登場の新型2ウェイフィット・レディ。アシンメトリックなC17ワイドリム採用のディスクブレーキ用ホイールだ。ディスクブレーキの強力なストッピングパワーに対応するモノブロック・ハブを採用。
価格:42,660円(税込)
Racing 7 LG
フルクラムの中ではベーシックなエントリーモデルとなるが、その走行性能は高いものがある。完成車に着いてきた重たいホイールを同機材に交換するだけで、自転車の世界が広がるだろう。フルクラムらしい高剛性に加え、ワイドリムによる快適性など、ロードバイクを楽しむには十分な性能を発揮。ディスクブレーキ仕様ホイール(DB)もあり、こちらはチューブレスレディにも対応する2ウェイフィット、「2ウェイフィット・レディ」。リム幅C19で太目のタイヤに対応する。
価格:32,184円(税込)
35,640円(DB/税込)
Racing クアトロ シリーズ
エアロ特性に注力したベンチマーク的グレードを紹介する。
Racing クアトロ LG
35mmハイトのリムを採用し、平地巡航や緩いアップダウンにおける高速維持に卓越した効果を発揮。優れたバランスのとれたホイールで、左右非対称のスポーク配置とオーバーサイズ・フランジが高い剛性を生み出している。
価格:56,160円(税込)
Racing クアトロ・カーボン
エアロ特性にこだわり抜いたクアトロシリーズ。中でも人気が高いのが本機だ。カーボンホイールならではの軽量性に加えて、上位モデル譲りの加速力と推進力、40mmハイトのディープリムにより優れた走りを実現。またブレーキ面をAC3加工することで、ウェットな路面での制動力が向上している。
価格:181,440円(税込)
Racing クアトロ・カーボン・ディスクブレーキ
ディスクブレーキ採用のカーボン・クリンチャーホイールセット。リムハイト40mmのフルカーボンとディスクブレーキハブにより、優れた機能性と耐用性に加え、路面が乾いていても濡れていても抜群のブレーキングを発揮する。
価格:180,360~183,600円(税込)
Speed シリーズ解説
Speed 40C
UCIプロレースチームとの共同開発により、最新グレードとして登場したスピード・シリーズ。中でも2018年モデルの40Cは、チューブラー用プロ仕様モデルの圧倒的な走りをクリンチャーでも実現できるよう設計されたレーシングホイールだ。
価格:362,880円(税込)
Speed 40T
プロ仕様のチューブラーモデル。オールラウンドに使えるリムハイト40mmで、55Tとともに決戦レースのためのホイールだ。ブレーキ面が「AC3」処理され、カーボン製ながらブレーキングが大幅に強化された。
価格:382,320円(税込)
Speed 40T DB
上記40Tのディスクブレーキモデル。リムブレーキでなくなったことで、カーボン製のデメリットだったブレーキングが大きく向上した。40mmのリムはディスクブレーキ用に再設計され、軽さやトルク伝達を最大限に引き出す理想的なリムへと進化。
価格:349,920円(税込)
Speed 55C
55mmハイトのディープリムが、高速巡航のゴールへ最短距離で近づける圧巻の走りを導く戦闘力を持つ。ツイン織りカーボンを採用して縦剛性も横剛性も強化され、ライダーのパワーをロスなく路面に伝えるクリンチャーモデル。
価格:382,320円(税込)
Speed 55T
プロが実際のレースで使用するモデル。ハイレベルの優れた操作性により、登りも下りも平坦でも、オールマイティーな走行性能を発揮する。ハイプロファイル化によりエアロダイナミクスが究極レベルまで向上し、高い剛性も実現するチューブラー。
価格:382,320円(税込)
Speed 55T DB
プロユースでお馴染みのスピードシリーズ。そのシリーズにディープリム・チューブラーのディスクブレーキ版が仲間入り。ブレーキ性能が飛躍的に向上するとともに、それまで注力されたリム素材や形状に自由度が与えられ、走りに専念させることが実現した。
参考価格:298,000円(税込)
Red wind シリーズ解説
カーボンディープリムのクリンチャーホイールを紹介する。
Red wind 50
ドラフティング(集団走行)禁止のタイムトライアルやトライアスロンでは、走行時に一人で空気抵抗と戦わなければならない。自分の力だけで空気を切り裂き、誰よりも速く前に進むように設計されたのがレッドウィンド・シリーズ。本機はカーボンとアルミを独自融合させたリム素材により、リムハイト50mmで練習からロングライドまで使えるオールラウンダーだ。
価格:162,000円(税込)
Red wind XLR 50
リムハイトを50mmにすることで軽量化を図り、慣性モーメントを下げるとともに正面や横からの風を受けにくくしたモデル。平地高速巡航の他、あらゆるシーンで性能を発揮できるように設計されている。
価格:243,000円(税込)
まとめると
以上、フルクラムのロードホイールを挙げてみたが、一番の印象はディスクブレーキ対応型が多いということだ。コンポーネントもディスクブレーキ採用のものが増えてきた時代の趨勢から、それはごく自然なことかもしれない。また、ディスクブレーキ対応ではないが、C17にワイドリム化したRacing 3の存在感が見出せる。Racing Zeroとの比較をしてみたが、完成車についてくる鉄下駄から乗り換えるには最適。安価ながら不動の地位を確立したものがある。パーツを換装して、最もライドフィールの違いを感じさせるのがホイール。あなたもその感触を味わってみてはいかがだろうか?
Photos (C)Kawashima Cycle Supply Co.,lTD

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