「ロードバイクがふらつくのは体幹不足だけじゃありません」元アテネ五輪代表・田代恭崇さんにまっすぐ走る方法を聞いた!

「まっすぐ走れてない」のに気付いてない人が多い

▲車道外側線(白線)がめやすとなる
▲車道外側線(白線)がめやすとなる

「自転車は子どもの頃から誰でも乗れる=ロードバイクやクロスバイクも乗れる、と考えがちですよね。でも実は、ママチャリなどシティサイクルとスポーツバイクは別の乗り物。ほとんどの人がまっとうに乗れてませんよ」

ニコニコ顔で厳しい現実をつきつける元アテネ五輪代表の田代恭崇さんに「ロードバイクの基本のき」を教わるシリーズ、第3回は「まっすぐ走る」。いや、ヤ○キーみたいに蛇行運転しているロードバイクって、そんなにいませんよね?

「ロードバイクってスピードが出ないと安定しない乗り物なので、スピードが出ていないスタート時はふらつきやすいですよね。でも、低速といってもママチャリ程度の速度=時速12〜15km程度のスピードが出ていればふらつかないはずなんです。もし高速でふらつく場合、明らかに低速時でも『まっすぐ走れてない』。時速10kmだろうと時速30kmだろうと、車道外側線(白線)の幅からはみ出さずに走れる。プロの僕らの基準はそれが出来て『まっすぐ走れる』だと考えます」(田代さん)

ちなみに車道外側線(白線)の幅はたった15cm。こ、これは自信なくなってきたぞい・・・

なぜ「まっすぐ走れない」とダメなのか?

▲視線は前へ
▲視線は前へ

「まっすぐ走れないと、クルマとの接触の危険性が高くなります」と言われてみれば当たり前。特に、信号待ちでスタートするときにひやっとしがち。また、ライドイベントやレースも、きちんとまっすぐ走れることで楽しさが増すのだとか。

「大会に出た時にいつもひとりぼっちになって走ってたりしませんか? イベントではまっすぐ走れない人は周りの人に敬遠されるので、いつの間にか置き去りにされたり、罵声を浴びせられたりするかもしれません。あるいは友人に『君の後ろを走りたくない』と言われるなど、不快な思いをすることも。でも周りからしてみれば、接触による事故のリスクを低くするための自衛策なんです。まっすぐ走れるようになれば、大会で集団走行が出来て楽しいですよ」(田代さん)

ぼっち走行が多い人は自分がまっすぐ走れているかが分かりにくいそうです。ではどうやって自分がまっすぐ走れているかどうか、確かめれられる? 

「あなたはまっすぐ走れてる?」6つのチェックリスト

いつもの道を走る時に以下の6つを意識してチェックしてください。車道外側線(白線)の幅は15cm。あなたははみ出さずに走れていますか?
*雨の日は白線上は滑りやすいのでお休みしましょう!

✔時速25km巡航で車道外側線(白線)に沿って走れる
✔時速15km巡航で車道外側線(白線)に沿って走れる
✔巡航スピードから減速し停まるまで、車道外側線(白線)に沿って走れる
✔スタートしてスピードに乗るまで、車道外側線(白線)に沿って走れる
✔立ちこぎで車道外側線(白線)に沿って走れる
✔ハンドサインを出しながら車道外側線(白線)に沿って走れる

▲カーブではみ出す人が多いのだとか
▲カーブではみ出す人が多いのだとか

「チェックリストは上から下に行くにつれ、だんだん難しくなっていきます。路肩や路側帯が恐い、という人は距離感が保てない=まっすぐ走れていないからです。片手運転が出来ない人/コワイ人は無理に片手運転をしなくていいんですが、将来的にはできるようになったほうが安全です」(田代さん)

ふらつくのは「フォーム」の問題

では、なぜまっすぐ走れずふらつくのでしょうか? 

その理由を「初心者だから慣れていない」「筋力が足りない」「体幹が出来てない」と考えがちですが、田代さんは首をふります。
「体感がしっかりできていればふらつきは少ないと思いますが、それよりもフォームの問題が大きいと思います。ロードバイクでふらつく人をクロスバイク/あるいはママチャリに乗せてみると、ふらつかないことも多いんですよね」
ふらつく原因は実はこんなところにあります。

ハンドルを握りすぎているか、ハンドル荷重過多

▲ぎゅっとハンドル、握ってませんか?
▲ぎゅっとハンドル、握ってませんか?

「ハンドルは握るのではなく、手を添えていつでもブレーキを握れる程度でいいんですよ」(田代さん)

目線が下すぎる

▲下を向くとふらつきやすい
▲下を向くとふらつきやすい

サドルとハンドルの落差が大きいと目線が下がりがちになります。
「理由は分かりませんが、人は下を向くとバランスを取りづらいんですよね。まっすぐ走れているかチェックするときも極力顔を上げて乗りましょう」(田代さん)

ポジションにそもそも無理がある

▲初心者にありがちな、腕をつっぱった乗車姿勢
▲初心者にありがちな、腕をつっぱった乗車姿勢

「先ほど『ロードバイクだとふらつく人もクロスバイクだとふらつかない人が多い』といいましたが、こういう人はサドルが高い・ハンドルが低い=怖くて腕をつっぱり、ハンドルに体重が乗っかってしまっていることが多いんです。購入時にお店でフィッティングしてもらったとしても、まっすぐ走れないのは安全に関わる問題ですから、サドルを下げたりハンドルを上げたりするなど、調整したほうがいいかもしれませんね」(田代さん)

余談:登り坂が苦手=ふらついているからかも?

▲登り坂は苦しい・・・

ここで田代さんが気になる発言。
登りが苦手/クルマが多い峠道が苦手って人、できてしまったその苦手意識の原因を探っていくと『ふらつき』かもしれませんね」(田代さん)

多くの人は登りになると平坦走行時より時速10km程度スピードが落ちます。つまり、ふらつきやすい低速域での走行になるわけです。

「さらに、登り坂が苦しいとなるとハンドルをギュッと握って上半身に力が入ってしまい、これがふらつく原因になりやすいんです」(田代さん)
自分では気づかぬままふらつき、側を通ったクルマにヒヤリハット。こんな経験が重なって登りへの苦手意識が培われてしまった可能性も。ある程度の低速でもふらつかない練習をすれば、「登り=苦手(〃>Å<〃)もぅャダー」とならないかもしれません。ああ、希望の光

「もうふらつかない自分になる」ための練習メニュー

というわけで、自分と周囲の安全のために、まっすぐ走る=もうふらつかない自分になるためにこれを練習すればいい!というポイントを田代さんが教えてくれました。
低速でできることは高速でもできるので、まずは低速でまっすぐ走る練習。それから立ちこぎでまっすぐ走る練習。最後にハンドサインを出しながらまっすぐ走る練習をしましょう」

時速15kmで車道外側線(白線)に沿ってまっすぐ走る練習

いつものライドをする時、なるべく車通りの少ない車道で、白線の上をはみ出さないように時速15kmを意識して走ってみましょう。雨の日は白線上は滑りやすいのでお休みしましょう!その際、注意するのは次の6つです。

▲赤印がポイント
▲赤印がポイント

・ペダルを漕ぐ・漕がない両方の状態でまっすぐ走れているか
・目線はやや上、視界を広く保つ
・ハンドルを握りすぎない
・ハンドルの上に体重を乗せすぎない
・肘は軽く曲がっているか(腕を突っ張ってないか)
・肩に力が入ってないか

▲ハンドルはこの程度、手をそえるだけでいつでもブレーキを握れる状態
▲ハンドルはこの程度、手をそえるだけでいつでもブレーキを握れる状態

肩を落として肘を軽く曲げた姿勢になっているかも気にして下さい。その姿勢だとハンドルに体重が乗ってないので、ふらつかないはずです」(田代さん)

▲カーブ部分が難しい
▲カーブ部分が難しい

「コーナーでの車道外側線沿いに走行できるようになると、集団内でまっすぐ走る、につながります。カーブ、注意して意識してみてください」(田代さん)

立ちこぎでまっすぐ走る練習

立ちこぎでも基本は同じ。いつものライドをする時、なるべく車通りの少ない車道で、白線の上をはみ出さないようにゆっくりを意識して立ちこぎで走ってみましょう。その際、注意するのは次の5つです。

・視界を広く保つ
・ハンドルを握りすぎない
・ハンドルの上に体重を乗せすぎない
・肘は軽く曲がっているか(腕を突っ張ってないか)
・肩に力が入ってないか

▲低速の立ちこぎは難しいのでご注意を
▲低速の立ちこぎは難しいのでご注意を

ギアを少し重めにするほうが簡単です。軽いギアで立ちこぎでまっすぐ走るのは難しいですよ」(田代さん)

ハンドサインを出しながらまっすぐ走る練習

「これは必ず車の来ないエリアで練習してください」と田代さん。ポイントは以下の通りです。
・まずは左右の片手運転
・左折・右折・停止のサインを全部やってみる
・時速25km巡航のスピードのほうがやりやすい(低速が難しい)
・慣れてきたら低速にも挑戦

▲目線は少し上、が基本。ハンドルは握りすぎないこと
▲目線は少し上、が基本。ハンドルは握りすぎないこと

まとめると「意識・目線・フォームが大事」


今回も厳しくニコニコ、分かりやすくポイントを教えてくれた田代さん。
まっすぐ走るためには・・・腹筋しなくていいんです。ハンドルに体重が乗り過ぎないようにフォームを作っていけば腹筋も背筋などの体幹もすこしづつ強化され、安定感も増します。まず、日々のライドで白線に沿ってまっすぐ走る意識を持つこと。目線を上めに視界を広く保ち、上半身に力を入れず柔らかく保つこと。この3つでより安全なロードバイクライフを楽しめるなら、明日から早速実践!ですな。

Photos by Ayumi Takeda

田代恭崇プロフィール:
ガイドツアーやスクール、コーチを行うリンケージサイクリング株式会社代表。元プロロードレーサーでアテネオリンピック日本代表、全日本選手権優勝、ヨーロッパプロロードレース優勝など数々の戦績を残し引退。ブリヂストンサイクル株式会社で6年間マーケティングを担当し退社。2014年同会社を設立し、JCA公認サイクリングガイド普及員として全国で活動する。

LINK:リンケージサイクリング

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WRITTEN BYヤマショウ

FRAME編集長 山祥ショウコ マガジンハウス『GINZA』を経て英国遊学から帰国後女性サイトの草分け「Cafeglobe.com」の立ち上げに参画。その後『Casa Brutus』『GQ Japan』「Variety Japan」など、雑誌やウェブのスタートアップ時の編集に携わる。自転車歴9年目。四国出身、湘南在住。

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