【CANYON】お手頃で高性能!ドイツ生まれのUltimate CF SLXとの5年間

ロードバイクの人気ブランド投票があると、上位に食い込むことが多いCANYON。お手頃な価格ながら、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどを走っているのと同じモデルが手に入るという素晴らしいコストパフォマンスのメーカーです。そんなCANYONの魅力にやられて、私は2013年から5年間ずっと乗り続けています。

日本法人ができる前の話ですので、買うまでに何度かドキドキするようなことがありましたし、CANYONに乗っている人もめったにいなかったので、情報が不足していることもありました。でも、走ってみればその実力ははっきりわかりますし、5年たった今でも気持よく乗っています。

では、まず最初にCANYONとはどんなメーカーなのかをおさらいしておきましょう。

CANYONってどんなメーカー?

CANYONってどんなメーカー?
画像引用:ENDURACE AL 6.0 © Canyon Bicycles

CANYONは、ロマン・アーノルドとフランク・アーノルドの兄弟により2002年にドイツで創業されました。当初から自転車競技との関わりは深く、ロードレース、トライアスロンのプロチームに機材を供給しています。現在、UCIプロツアーのチームでは、カチューシャ・アルペシンとモビスター・チームがCANYONを採用しています。モビスターのナイロ・キンタナは、2015年のツール・ド・フランス総合2位、2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝とCANYONに乗って大活躍してますね。

製品の販売はインターネット上の直販だけで、店頭では販売しないという方針です。商品を見たり、触ったりするチャンスは、展示会や試乗会に出かけないとないようです。

この販売形態のおかげで、CANYONのコストパフォーマンスは抜群です。いちばん安いアルミのロードバイクを例に取ってみます。

モデルENDURACE AL 6.0
フレームアルミ
コンポーネントシマノ・ティアグラ
ホイールマビック・アクシウム
平均重量8.6kg(Mサイズ、ペダルなし)
価格99,000円

これで10万円を切るとは驚きです。初めての1台としても立派な自転車です。

私がCANYONを選んだ理由

メーカー紹介のところで書いたようにコストパフォーマンスの高さがCANYON最大の魅力ですが、海外メーカーで直販しかしていないし、かつては日本法人もなく、サポートにも不安がありました。それでもCANYONを選んだのは、いくつか理由があります。

それまでに乗っていたのがウィリエールのアルミ+カーボンバックのモデルなのですが、これがものすごく硬く、長距離を乗ると、手やお尻がしびれるほどでした。ちょうど5年ほど乗った頃だったので、乗り換えたいなと思っていました。

CANYONの前に乗っていたウィリエール。
▲CANYONの前に乗っていたウィリエール。

他のブランドに比べて知名度の低かったのにCANYONが気になりだしたのは、海外の自転車サイトを見ていたら、とても高い評価を受けていたからです。最初は「ほほぉ」ぐらいだったのですが、CANYONのサイトに行って値段を見てみると、一気に「おぉぉ」となりました。ちょうどこの頃(2012年9月)は、円高で1ユーロが95円前後でした。2018年現在のレートが1ユーロ128円ぐらいなので、今より25%も安かったんですね。これに背中をグッと押されました。

もうひとつ後押しになったのが、会社の自転車部の先輩です。この先輩がある日「新車だぞ」と自慢したのがCANYONのUltimate CF SLXというモデルで、持ってみると軽いし、乗せてもらうとしっかりしている。当時、ヒルクライムにはまっていたこともあって「安くて、軽くて、しっかり走る。これだ!」と心に決めたのでした。

先輩に聞けば「日本語は通じないけど、最低限のことだけ伝えられれば問題なく届くよ」とのこと。その日、またCANYONのサイトであれこれ見ていたのは、言うまでもありません。

海外インターネット直販で注文

CANYON買うぞと心に決めて、いよいよサイトで注文です。モデルは、軽量カーボンのUltimate CF SLXに決めました。

Ultimate CF SLXにもいくつか種類があって、コンポーネント、ホイールを選ぶようになっています。それからフレームサイズも選ばないといけません。インターネット専売だけあって、サイズは自分の身長、股下、腕の長さ、胴の長さを測って入力すると、フィットするサイズをおすすめしてくれます。身長176cm、股下82㎝の私にはSサイズがおすすめとのことでした。サイズが決まれば、コンポーネント、ホイールを選びます。私が選んだモデルは、こんな感じです。

モデルUltimate CF SLX 9.0
サイズS
フレームカーボン
コンポーネントシマノ・デュラエース9000機械式
ホイールマビック・キシリウムSLR
平均重量7.4kg(ペダルなし)
価格360,893円(3,899ユーロ)

直販だからできる驚きのプライス

この構成で360,893円!!!ホントにそれでいいの??! 
だって、デュラエースで20万、キシリウムSLRで20万ぐらいですよ。それだけでおつりが来ちゃいます。なんか、すいませんという価格でした。円高様、ありがとうございます。

Sサイズを選びましたが、ハンドル位置は少し調整が必要かと思い、長さの違うステム2本も合わせて注文しました。CANYONのステムのコラムサイズが1-1/4インチと特殊なので、車体と同時に注文すると安く入手できます。リアディレイラーのハンガーも専用品なので、買った後に注文したところ、送料がかかり、高くつきました。

注文後からまさかの円安。価格にドキドキ

しかし、ここからが長かった。注文したのは9月頃で出荷予定は12月という予定だったのですが、これがいつまでたっても出荷されませんでした。ちょうどUltimate CF SLXがモデルチェンジされて新しいモデルを買ったのですが、おそらく新しいモデルの製造に時間がかかったのでしょう。それと、デュラエース9000も発売されたばかりだったので、思ったように数量が確保できなかったのかもしれません。

この間、円が安くなり、1ユーロ120円前後になりました。注文後に円建ての価格が書かれたインボイス(送り状)が来ましたので、まさか円安になったら値上げしないよねと思いつつ、不安を感じてしまったのは、海外直販ならではの経験かもしれません。

ドイツから遠路はるばる。ついに届いた!

首を長~くして待っていたところ、ようやく出荷予定のメールが届き、ドイツからCANYONがやって来ました。

箱からしてもカッコいい。「PURE CYCLING」のキャッチコピーもあり。
▲箱からしてもカッコいい。「PURE CYCLING」のキャッチコピーもあり。

箱の横にはいろいろな書類がびっしり貼り付けられています。
▲箱の横にはいろいろな書類がびっしり貼り付けられています。

こんな状態で梱包されています。
▲こんな状態で梱包されています。

すべてのパーツを箱に収めるために、ハンドルとサドルは外され、ホイールもバッグに入っています。上の写真左側のエアキャップでくるまれているのがハンドルです。右側にサドルとホイールが見えますね。ワイヤー類はすべて取り付けられていますので組み立て自体は簡単ですが、サドルの高さ、ステムの長さ、ハンドルの高さ、などのセッティングが必要なので、あらかじめこういったデータをメモしておくと、セッティングしやすいですね。

そうそう、組立中にちょっと笑えるエピソードもありました。
ハンドルを取り付けるときに何気なくロゴが印刷されているところにステムを取り付けたんですが、よく見るとなにかおかしい。むむっ?もう一度見ると、左右の長さが10mmほど違っていました。ロゴが真ん中からずれていたんですね。後で聞けば、よくあることだそうなんですが、体験してみないとわからないですね。

ようやく、マイCANYONが完成。
▲ようやく、マイCANYONが完成。

INVOICEこと納品書。もちろん日本語ではありません。
▲INVOICEこと納品書。もちろん日本語ではありません。

一緒に送られてきた納品書の最初の品目に自転車本体がJPY360,893と書いてあります。ホッとしました。注文時の値段と同じです。その他に、ステム、箱代、保険代を入れると、411,623円となりました。これに税金が加わって、総額は43万円ほどでした。知り合いの自転車ショップで、この値段と内容を話したら、「安い!」と驚かれました。

こんな紙も入っていました。出荷担当者のサインです。ドイツらしいですね。
▲こんな紙も入っていました。出荷担当者のサインです。ドイツらしいですね。

注文してから約9ヶ月。その間、出荷時期を問い合わせてもはっきりした答えが来なくて、やきもきしていましたが、ようやくこれでCANYONオーナーの仲間入りとなりました。

試走のファーストインプレッション

セッティングができれば、もう走りたくてしょうがありません。まずは、家の近くの平坦な道を走ってみました。

長野県の「安曇野ちひろ美術館」にて。
▲長野県の「安曇野ちひろ美術館」にて。

これが軽いのなんの。それまでがガチガチのアルミだったので、第一印象は「何もかもスムーズ」でした。加速もスムーズ、路面からの突き上げも少ないし、コンポがデュラエースなので変速もスムーズ。走りながらのニヤニヤが止まりません。

フレームはとてもしっかりしているいて、踏んだ分だけスーッと進むという感じです。ウィリエールのように硬い感じがしないのは、振動が抑えられているからでしょうか。アルミのウィリエールに比べると、かなり楽に走れるようになった気がします。いや、そう思いたい。

機関車とCANYON、どちらも力強く走ります。
▲機関車とCANYON、どちらも力強く走ります。

ヒルクライムでCANYONの実力試し

奥にそびえるのは北アルプスの山々。大町市籠川の橋上より。
▲奥にそびえるのは北アルプスの山々。大町市籠川の橋上より。

平坦な道を走って合格となれば、いよいよお目当てのヒルクライムです。

まずは、あまりきつくない坂を選んで走りましたが、これも平坦と似た印象です。勾配のきつい坂を登るのが楽になるわけではありませんが、力を入れた分だけ進むし、無駄に力が逃げることがなく、力をかけた分だけちゃんと登ってくれるので、ゼイゼイ言いながらも少し登りやすくなりました。

平坦と上りでCANYONを試してみて、とても気に入りました。これ以降は、どこを走るのもCANYONと一緒です。しらびそ高原、美ヶ原、乗鞍、栂池と登っては、雄大な景色に感動していました。

いざ、ヒルクライムレースに挑戦

CANYONが届いた頃に住んでいた長野県松本市はまわりを山に囲まれているので、ヒルクライムには絶好の環境です。私はヒルクライムを始めたのが遅かったので、レースへの参戦は順位を競うよりも、どのくらいのタイムが出せるかという自分への挑戦でした。

ツール・ド・美ヶ原

ツール・ド・美ヶ原スタート地点。すぐ先に17%の激坂が待っている。
▲ツール・ド・美ヶ原スタート地点。すぐ先に17%の激坂が待っている。


▲ゴール後のホッとした表情。

「激坂」が売り物のツール・ド・美ヶ原に参加しました。序盤の激坂はやっぱりきつかったですが、車体が軽いことと、踏んだ分だけ進んでくれるので前年より3分ほどタイムを更新しました。ホイールが軽くなったのも大きいですね。あ、もちろんトレーニングもやりましたので、新車効果+トレーニング効果でタイムが縮められたのだと思います。

全日本マウンテンサイクリング in 乗鞍

日本最大のヒルクライムレース。言わずと知れた聖地です。家から1時間ほどで行けたので、年に何度も登りに行きました。実に恵まれた環境だったなぁ。

うっすら雪が残る大雪渓付近。
▲うっすら雪が残る大雪渓付近。

ツール・ド・美ヶ原が終わってから、全日本マウンテンサイクリング in 乗鞍にむけて準備しました。準備と言っても、週末に試走に行くぐらいでしたけど、何度登っても乗鞍は楽しいですね。聖地です。この年のレースでもタイムはだいぶ縮めることができました。

乗鞍はレースだけでなく、景色も素晴らしいんです。特に秋の乗鞍は、全山が紅葉して素晴らしい景色になりますので、CANYONで登りながら楽しみました。

位ヶ原付近。
▲位ヶ原付近。

大雪渓手前。山頂までバスで行き、歩いて景色を楽しむ人が多い。
▲大雪渓手前。山頂までバスで行き、歩いて景色を楽しむ人が多い。

CANYONは輪行にもベストチョイス

車体が軽くなったので、輪行はすごく楽になりました。ヒルクライムでも「CANYONいいな」と思いましたが、輪行でも助かります。ウィリエールに比べると、駅で階段の上り降りも苦にはなりません。今はヒルクライムをやらなくなったので、これが最大のメリットかも知れません。

クルマ、飛行機、輪行といろいろな手段で、CANYONと出かけました。

輪行袋に収まる愛車。
▲輪行袋に収まる愛車。

箱根

ツール・ド・美ヶ原をいっしょに走ったヒルクライム仲間に誘われて、箱根を登りました。旧道で七曲りを経由して芦ノ湖まで一気に登ると気持ちいいですね。いつもは1人で走るそうなんですが一緒に走ったら、タイムが7分縮まったと驚いていました。

芦ノ湖で一休みしてから、車の少ないコースを案内してもらい、上りをたっぷり堪能した1日となりました。

このときはクルマにCANYONを積んで、南足柄市の運動公園を起点にしました。車内に入れましたが、しっかり固定しておけば、安心して運べます。

箱根も紅葉の季節でした。
▲箱根も紅葉の季節でした。

函館~大沼公園~駒ケ岳一周

用事があって函館に出かけたのですが、ちょっと用事をサボってサイクリングを楽しませてもらいました。函館市内から大沼公園まで走り、その後は海側に回って駒ケ岳を一周して函館市内へ戻るコースを走りました。山から、海、また山へと変化に富んだコースで夏の北海道を満喫できました。

このときは荷物が多かったので、はじめてヤマト運輸の「サイクリングヤマト便」でCANYONをホテルに送りました。東京~函館が片道4,500円ほどかかりましたが、家とホテルまで集荷に来てくれるので、とても助かりました。オーストリッチのOS-500というクッションが厚手の輪行バッグを使いましたが、何もトラブルはありませんでした。

函館・大沼公園。奥の尖った山が駒ケ岳。
▲函館・大沼公園。奥の尖った山が駒ケ岳。

函館赤レンガ倉庫群。
▲函館赤レンガ倉庫群。

山中湖

東京から道志みちを通って、山中湖まで走り、御殿場、小田原でゴール。一杯飲んで輪行という楽しいコースだったんですが、しばらくブランクがあったおかげで山伏峠を越えて山中湖にたどり着いた頃には足がつりそう。残念ながら御殿場で離脱するというちょっと残念なサイクリングとなりました。

富士山をバックに撮影。
▲富士山をバックに撮影。

遠征以外にも近距離、中距離でいろいろと出かけて、良い思い出がたくさん残っています。

性能を保つにはメンテナンスも大事

すっかり気に入ってしまったCANYONですが、この5年間、性能が落ちないように大事にお手入れしました。

日常メンテナンスはシンプルでOK

あまり難しいことはしていません。だいたい週に1回、汚れを落とす、シリコンスプレーでブレーキ、ディレイラーを潤滑していました。フレームの塗装はつや消しなのでワックスをかけたりはしませんでしたが、傷も付かず、5年たった今でも見た目はほとんど変わりません。

あとは一般的なメンテナンスですね。チェーン掃除、バーテープの交換、ネジの増し締めぐらいでしょうか。そのくらいのメンテナンスをしておけば、安心して乗っていられます。

頼りになるショップでオーバーホール

日常のメンテナンスをしていても、徐々に劣化してきますので、3年目にオーバーホールを行いました。自分ではできないのでショップにお願いしました。CANYONは店頭販売していないので、修理を断られるお店があるとも聞きますので、困ったときに頼りにできるショップを確保しておくと安心です。幸い、近くに腕のいいショップを見つけたのでお願いしました。

オーバーホールの中身は、チェーン、ワイヤー、バーテープを交換。ヘッドパーツ、BB、ホイールハブの清掃と点検。ディレイラー、ブレーキの清掃と点検。

ショップの方によると、致命的な劣化はなかったが、ヘッドパーツやBBに汚れが入ったり、ディレイラーの動きが渋くなったりしていたので、きちんと動くように調整したとのことでした。

オーバーホールから戻ってきたCANYONに乗ってみても、すごくリフレッシュしたという感じは受けませんでしたが、安心して乗れるので心に余裕が出たように感じます。

自分に合わせて再度フィッティング

自分に合わせて再度フィッティング

自分の体に合うサイズを選んだとはいえ、適切なセッティングになっているかどうか不安でしたので、改めてショップでフィッティングをしてもらいました。

ショップでは、まずに前屈や片足上げなどの動作を行って体の特徴をつかんでもらってから、ローラーの上で漕いでみて、ペダリングの特徴を見るというやり方でのフィッティングでした。ペダリング時の足を撮影し、足の角度などからベストなサドル高、ハンドル高、ステム長を割り出します。

私の場合はサドルを少し下げ、ブラケットを持ち上げて握りやすくしてみたところ、腰が安定し、上半身が楽になりました。フィッティングのおかげで楽にパワーが出せるようになったので、効果が実感できました。自分の体に合わせて、初めて自転車も本領を発揮するものなのですね。

私が5年間乗った感想

私が5年間乗った感想

これまで書いてきたようにすっかり気に入っているので、良い買い物をして自転車ライフが楽しくなったと感じています。5年間乗った感想をひと言で言えば「まじめに黙々と走ってくれる頼もしい相棒」でしょうか。見た目が地味で、他の有名ブランドほど派手な自己主張はしませんが、しっかり仕事をしてくれる。そんな自転車です。

今ではCANYONの日本法人もできて、日本語でオーダーできますし、サポートも受けられます。2013年の頃よりはずっと手を出しやすくなりました。

それでも、ハンドルやサドルは自分で取り付ける必要がありますし、トラブルの際はショップのお世話になるかもしれません。あえて、CANYONをおすすめするとすれば、以下のような方になるでしょうか。

  • ブランド名よりコストパフォーマンス重視
  • 見た目より実質重視
  • ハンドル、サドルを取り付けられる(または取り付けてくれる人がいる)
  • ブランドに関係なく、修理・メンテナンスをしてくれるショップが近くにある

とても気に入っているCANYONですが、残念ながらあまり走っているのを見かけません。ちょっと無骨ですが、コストパフォーマンスが良く、頼もしいCANYONを次の愛車の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

今回のCANYOUをけんたさんが動画でも紹介しています!

監修:Viking the Maintenance石橋
Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BYモモンガ

築地市場に水揚げされ、テニスやバスケットに夢中になっていたが、自転車に目覚めたのが40代の後半。それ以来、東京、長野を拠点に走る。ヒルクライムにはまって乗鞍などを上っていたが、今は、楽しく、安全なロングライドが大好物。

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