「自転車が下手だな」と思うなら…格段にうまくなる“チョコチョコ乗り”を~自転車の処方箋#08

「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。千葉県のYOSHIさんからの「ロードバイクに乗っていて、低速になるとバランスを崩す」「信号待ち直前で立ちゴケしやすい」という悩みをいただきました。前回の“スタンス”に続いて、今回は“チョコチョコ乗り”について解説してもらいましょう。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!

自転車の処方箋

時速1km以下の超低速でも安定できる!

クランクを水平に両脚荷重で前後の平衡を保つスタンスを習得した後にトライしたいのが、超低速でハンドル荷重を抜いてバイクをコントロールする技術=通称“チョコチョコ乗り”です。これは、サドルに腰を付けた状態で水平位置から後ろのクランクを踏んで(バック踏みをして)、さらに前クランクを上方(3時→1時)引き上げて、再び水平位置まで踏み直すことを繰り返すクランクワークのことを言います。シーソーのようにする、といえばイメージしやすいかもしれません。

上死点付近の1時から3時の位置までのペダルの踏み込みは、ヒザが高く上がった状態からペダルにトルクを掛けるので、自然と腰が引けてハンドル荷重が抜けます。再びクランクを引き戻し踏み直すことで、前に進みながらも腰が引いた状態をキープできるのです。

チョコチョコ乗り
さらに、フロントの当て効きブレーキを加えていくと、踏み込みで前進しようとする後輪のトルクと、フロントのブレーキ制動によるバイクが起き上がる力がつり合い、時速1kmを下回った超低速でもバランスを崩すことなく、安定してバイクをコントロールできます。

水平→下方に踏み込むパターンを試してみるとその差は歴然!

このクランクワークの走行性能を確かめるには、わざと良くないパターンを実践するとイメージしやすいでしょう。前クランクを水平から下方(3時→5時)へ踏み込み、3時まで引き戻すことを繰り返すと、腰は前方へ引き寄せられハンドルへ荷重がかかってきます。
腕を伸ばして上体を後方へ逃がそうとしても、上体が前へ引き寄せられてハンドルに体重が乗ってしまうでしょう。不安定なコントロールを実感すればこそ、クランクワークの奥深さを知ることができるのです。

水平→下方に踏み込むパターンを試してみるとその差は歴然!

さまざまなシーンで応用できるテクニック

この“チョコチョコ乗り”を身につけると、コントロールを失いそうになった時にクランクを上方へ引き戻す癖がつくため、自然と安定した走行をすることが可能になります。

例えば、サイクリングロードの途中にあるやや狭い柵の隙間をすり抜けることを想像してください。ロードバイクが通るには十分な間隔があっても、コントロールを意識して通過するには、かなりの減速とスムーズなハンドリングが必要となります。こういった場面で“チョコチョコ乗り”は大活躍。

こんな狭い場所でも“チョコチョコ乗り”をすれば、バランスを崩さず通過できる。低速でバランスを崩しにくいので、立ちゴケもしにくくなります。
▲こんな狭い場所でも“チョコチョコ乗り”をすれば、バランスを崩さず通過できる。低速でバランスを崩しにくいので、立ちゴケもしにくくなります。

クランクを上方で踏み直している間は、ハンドルを左右に大きく振ってもバイクが起立した状態を維持できるので、怖さを感じません

ほかにも、ハンドルを大きく切る必要がある狭い路地での180度ターンや、バイクの上で停止状態をキープするスタンディングにも必須のコントロール技術となります。さらに、ビンディングを外し遅れてほぼ停止状態で転んでしまう立ちゴケに対しても大きな防止策となりますよ!

このクランクワークを身に付けると、実はコーナーリングのフォーミングに対しても理解を深めることができます。詳しくは、また別の機会に解説しましょう。

ちょっとのスペースで練習できて、安全な技術が身に付く“チョコチョコ乗り”、ぜひとも実践してください。

●バックナンバー
第1回:上手い下りの走り方
第2回:楽しく上るための回転数と心拍数の関係
第3回:予習が上りを楽にする
第4回:緩い上りは“もも裏”で効率的に上る
第5回:平均勾配7.8%の激坂の走り方
第6回:斜度に合わせてシッティングとダンシングを使い分ける
第7回:バイバイ立ちゴケ! 走行スキルを高める“スタンス”とは?

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BY管洋介

1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。

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