スマートに止まるブレーキングの極意~自転車の処方箋#11

「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。千葉県のTAKASHIさんから「レバーを握るだけなのに、止まるときになんだがふらつく」という悩みをいただきました。“スタンス”“チョコチョコ乗り”平地のダンシングに続き、ブレーキングについて解説しています。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!

きちんと止まれないから怖いし危ない

「週末はじめてグループライドに参加する」「自分のブレーキングって周りからはどう思われているんだろう…」とロードバイクを購入して乗っているものの、人と走るのはなんだか不安と思うライダーも多いはず…。今回は、スマートなブレーキングのコツを紹介していきます。

ブレーキングには大きく分けて次の3つのシチュエーションがあります。

  1. 停止線に向けて徐々に減速して停止するブレーキング
  2. オーバースピードになりそうな場面で減速する為のブレーキコントロール
  3. 前方の危険や状況へ咄嗟に対応するフルブレーキング


ではそれぞれのブレーキの特徴とコントロールのポイントを説明していきましょう。

停止線に向けてのブレーキコントロール

皆さんは、一般軽快車(ママちゃり)やクロスバイクに乗った経験があると思います。これらの自転車で「制動距離を読む」ことは、自然とできていたでしょう。
しかし、直進安定性能と加速性能が優れているロードバイクは、巡航するスピード域が高いうえ制動力も高く、レバーを軽く引いたつもりでも思いのほかブレーキが強く作動します

進行方向とは逆の力が強く加わることにより、慣性の法則が働いて重心が急激に前方へ移動してしまいます。その状況をこらえようと腕を突っ張るとハンドリングは悪くなり、精神的にもナーバスな状態になるのです。
まずは安全な場所で、低速からブレーキングを繰り返し、ブレーキタッチに慣れましょう。
特に下り坂でのブレーキングは慣性が強く働くので、パニックになりやすいです。以前寄稿した記事を参考に、対策してみてください。

減速時にも“スタンス”が大活躍

ロードバイクのブレーキタッチにも慣れた、減速のスピードコントロールもある程度つかめてきた。次に、停まる寸前までバランスをコントロールできたら、脱初心者です。この時に役に立つのがスタンスの技術です。

ではここで、停止直前で不安定なフォームをとっている例をあげて解説していきましょう。

クランクを上下にした状態でのブレーキング。
▲クランクを上下にした状態でのブレーキング。

ビンディングペダルを使用して走行中、制動に気を取られているうちにかなりの低速になってしまい、立ちゴケてしまうシーンは頻繁にありますよね。
また減速時、ペダルを漕がなくていい場面で、左右のクランクを上下にした状態でブレーキ制動し停止している人をよく見かけます。おそらく足下への意識が抜けると、利き足のクランクを下へ落としやすいからでしょう。

この状態では重心バランスがサドル中心になっていることが多く、停止寸前の超低速時にビンディングペダルが予想よりも上手く外れなかったり、路面状況にハンドルが取られたりすると一気にパニックに陥ります。
脚は上下のまま緊張して固まり、バタッとバイクと共に倒れてしまう。これが安全な場所であればいいのですが、周りにクルマがいたり、グループ走でライダーがいたりする場面では危険な状況になってしまうでしょう。

バランスのとれた綺麗な止まり方を目指すなら、低速になったタイミングでクランクを水平に構えてあげましょう。路面状況が悪いときはバイクの上にスタンディングした状態でスタンスの姿勢をとるのもオススメです。
スタンスに構えてから活用したいのが、当て利きブレーキを活用したチョコチョコ乗りの技術です。こちらも過去の記事を参考にしてみましょう。

ブレーキをかけて減速し、ほぼ停止した状態になったら、クランク位置は2時と8時の位置にしておくと重心を後方に保てる。重心が後方にあり、8時の位置にペダルがあるときにペダルをサッと外すときれいに着地ができる。見た目にもスムーズだ。
▲ブレーキをかけて減速し、ほぼ停止した状態になったら、クランク位置は2時と8時の位置にしておくと重心を後方に保てる。重心が後方にあり、8時の位置にペダルがあるときにペダルをサッと外すときれいに着地ができる。見た目にもスムーズだ。

クランクが上下の状態(12時と6時)のままで停止し、そのタイミングで足を出すと、バイクの前方に着地してしまう。ハンドルに荷重が移りやすく、バイクの安定が崩れてアクシデントを誘発しやすい。
▲クランクが上下の状態(12時と6時)のままで停止し、そのタイミングで足を出すと、バイクの前方に着地してしまう。ハンドルに荷重が移りやすく、バイクの安定が崩れてアクシデントを誘発しやすい。

車輪ロックによるノッキングを防ぐテクニック

停車寸前に車輪がロックし、「カックン」と前のめりになる“ノッキング”。特にグループ走では、ノッキングは周りのライダーにストレスを与えてしまいます。完全停止の直前にレバーを握る手をほんの少し緩めるだけで、ノッキングは防げます。また、ブレーキングで指が疲れてしまい細かなコントロールができないときは、停止寸前にフロントブレーキレバーからリアブレーキレバーへ持ち返ることで対応できます。

完全停止する直前に、ブレーキレバーをほんの少し緩めるだけでノッキングを防げる。
▲完全停止する直前に、ブレーキレバーをほんの少し緩めるだけでノッキングを防げる。

次回はオーバースピード時の減速と、緊急時のフルブレーキングについて解説します。お楽しみに!

●バックナンバー
第1回:上手い下りの走り方
第2回:楽しく上るための回転数と心拍数の関係
第3回:予習が上りを楽にする
第4回:緩い上りは“もも裏”で効率的に上る
第5回:平均勾配7.8%の激坂の走り方
第6回:斜度に合わせてシッティングとダンシングを使い分ける
第7回:バイバイ立ちゴケ! 走行スキルを高める“スタンス”とは?
第8回:「自転車が下手だな」と思うなら…各段にうまくなる“チョコチョコ乗り”を
第9回:段ボールでマスターする平地のダンシング前編
第10回:“華麗なダンシング”のための3つのポイント

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BY管洋介

1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。

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