ホイールの重要性が昔以上に声高に言われるようになって久しい。以前はフレームが絶対的な権力者で、デローザやコルナゴは剛性が高くて、チネリは……といった具合に、ブランドの名前が走行性能を決めているかのようだった。

と言うのも、走行感がどのように決まるかが、実際にはよく分かっていなかったのだ。手組みホイール時代は部品構成が同じでも、スポークの組み方や張力に差があって、ホイールの性能は均質化されていなかった。製品にばらつきがあるせいか、ホイールの地位はフレームや駆動系部品よりも低かった。


それが今や、フレームの次に大事だという人もいれば、いや、ホイールが良ければフレームはサイズだけ合っていればいいという人もいる時代である。どちらが正解かは別として、ホイールの性能が重要なことは間違いない。

ひと昔では考えられない高コスパ


“Prime – BlackEdition 38”は、イギリスの通販サイトWiggleが扱う人気ホイールだ。原稿を書いている現在、サイトをみると販売価格は定価11万5000円の25%オフで8万6250円。しかも、送料無料。

横風の影響も少なく、ハンドリングに優れた性能を発揮する38㎜ハイト▲横風の影響も少なく、ハンドリングに優れた性能を発揮する38㎜ハイト。予備スポーク&ニップル、クイックレリーズ、ブレーキパッド、10スピード用ワッシャーが付属する。

スペックををみると・・・

  • リム高:38㎜
  • リムの素材:T700UDカーボン
  • リム幅:内側19㎜、外側27.5㎜
  • 対応タイヤ:チューブレスレディ&クリンチャー
  • ハブ:超々ジュラルミンをCNC加工したプライム・R010
  • スポーク:DTエアロライトとエアロコンプ(後輪駆動側)を採用
  • 重量:前後セットで1429g(公称)


wiggleで見る

スペックを聞いてもピンと来ない人もいるかもしれないが、この数値はライバルメーカーが気の毒になるほど戦略的だ。このスペックは一昔前なら完組ホイールで30万円以上だし、現在でもカーボン製チューブレス用リム1本分の価格と大差ない。カーボン製クリンチャーリムが手頃になってきたとはいえ、際立つスペックである。

このスペックで注目すべきはリムの内幅。旧型となる“RP-38”から2.5㎜拡張され、現在、主流の内幅よりも2㎜ほど太い。リム幅が注目されるようになったのは最近のことで、タイヤが太くなり、それを最適化するにはリムも太くなるべきと考えられるようになったからだ。
プライムのロゴが白文字で示されるが、ブラックエディションのロゴはリムよりもグロッシーなデカールが貼られている。▲プライムのロゴが白文字で示されるが、ブラックエディションのロゴはリムよりもグロッシーなデカールが貼られている。試乗タイヤはチューブレスレディのハッチンソン・フュージョン5 11ストームの25C。

今後タイヤ幅は28mm&チューブレスが主流に


現在、レーシングタイヤの主流は25㎜幅だが、次世代は28㎜まで拡大すると予想されている。“Prime – BlackEdition 38”の内幅19㎜はタイヤ幅が28㎜になる次世代を見通した仕様だと言える。リムの構造もチューブレスタイヤに適合しており、インナーチューブが不要だ。太くなると、当然のようにタイヤの重量は重くなる。これは軽快な走りに背を向けるようだが、転がり抵抗は太いタイヤにしたほうが歪み量を小さく、軽快感が増す。また、タイヤは重くなってもチューブレスタイヤなら、インナチューブの分だけ軽くなるので、相殺できるというわけだ。

スムーズな車輪の回転に驚く


走りカット
今回はハッチンソンのチューブレスレディタイヤ、フュージョン5・11ストームの25Cにフィニッシュラインのシーラント剤(乳化ゴム)を挿入し、バイクをタイム・スカイロンアクティブで走ってみた。空気圧はフロント6.2bar、リア6.5bar

走り出して驚くのは、転がり抵抗の小ささだ。タイヤの変形が少ないから……もあるが、なによりホイールの剛性が高く、スムーズに車輪が回っている感じだ。これがヤワなホイールだと様々なフリクションロスが発生して、スムーズさが失われてしまう。限界領域の話を別にすれば、常用域においてはスポーク張力も十分であり、走行感から推測するに、ハブシャフトやシェルの変形量も小さいことがうかがい知れる。

スポークは中央部分が扁平加工されたエアロタイプで、後輪のギヤ側がDT・エアロコンプ、それ以外はDT・エアロライトを採用している。▲スポークは中央部分が扁平加工されたエアロタイプで、後輪のギヤ側がDT・エアロコンプ、それ以外はDT・エアロライトを採用している。

リムが重くなっているはずだが、良い加速感


加減速においても、“Prime – BlackEdition 38”は弱点らしい弱点を感じさせない。リムの重量は旧型のCC-38が440g、ブラックエディションのリム重量は公開されていないが、リム幅が広くなっていることもあり、軽くなる要素はないのでプラスαは重くなっているはずだ。

リムの重量は大切なファクターではあるが、世間でいうほど絶対的なモノではない。抜群に加速がいい……とは言わないが、価格を考えれば加速も十分だろう。なにより数値以上の快適性が光る。いかにも硬度の高そうなリムはタイヤとのマッチングもよく、路面の振動の収まりがいい。簡単に言えば、乗り心地がいい。太いタイヤで空気圧を落としてフワフワとした快適性が高いのではなく、リムが硬く、タイヤのみが変形し、歪みが素早く収束される。いわゆるスポーツカーのような足回りと一緒だ。

ブレーキのタッチも想像以上にいい。雨天時でも制動力が落ちないようにブレーキパッドの当たり面が荒らされており、カーボンリム用ブレーキパッドなら、程よく減速してくれる。欲を言えば、もう少し摩擦抵抗の高いほうが制動距離も短くなるだろうし、制動力の立ち上がりも早くなる。ただ、中級者までのことを考えるなら、いい妥協点だとも言える。クイックレバーの出来は価格なりなので、レバーを閉めていったときの質感が乏しい。
評判に違わぬ実力派モデル▲フリーボディはシマノ&スラムに対応する。カンパニョーロ用フリーボディもプライムのWebから購入できる。

評判に違わぬ実力派モデル


初めてホイールを買い換えようと思っている人にとって、定価11万円というのは悩ましい価格帯だろうが、この性能なら、ちょっと無理をしても買って後悔することはないだろう。廉価なカーボン製クリンチャーリムが走行中に崩壊するのを見たことがあるので、手放しに推奨する気にはなれないが、テストした範囲で不備はなかった。また、今のWiggleの規模を考えれば、そこらのメーカーよりもはるかに大きな商いをしており、『安かろう、悪かろう』という商品を出すとは考えにくい。プライムのホイールは「コスパがいい」という評判だが、まさにその評判に違わぬ性能は十分にある。

ハブはプライム・R010プロを前後共に採用。フランジはストレートプルタイプで、フロントは20本のラジアル、リアは24本のタンジェント組み。

▲ハブはプライム・R010プロを前後共に採用。フランジはストレートプルタイプで、フロントは20本のラジアル、リアは24本のタンジェント組み。



購入後のパーツの交換は基本的に自転車ショップでやってもらうものと考えた方が良い。ホイールの交換はパーツ交換の中でも比較的簡単なため、自分で済ます方も多いかもしれない。しかし、パーツ交換は、ちょっとしたミスが思わぬ事故につながる危険をはらんでいるため、やはり、プロにお任せすることを強く勧める。

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