ロードバイクの楽しさはWiggleの「ブランドX」から学べ! 価格破壊バイクのストロングポイントとは?

初めてのロードバイクにナニを選ぶか……。
買った後、実際に使ってみてよく考えてみれば、もっと考えて買うべきだったと思うこともあるもの。でもはじめての自転車は「できるだけ安く済ませたい」という人は多いだろう。

そんな人たちにとって、海外通販はとても手軽で魅力的。ロードバイクの魅力を備え、それでいて手に入れやすい“ちょうどいい加減”はどこにあるのか?という疑問の答えてくれるのが、Wiggleの扱うバイク、“ブランドX”である。

決して“ルック車”ではない。かつてはツールを走った素材を使用

細身でオーセンティックなスタイリング。フレームサイズはXSからXLまで5種類。フレームカラーはブラックのみ。
▲細身でオーセンティックなスタイリング。フレームサイズはXSからXLまで5種類。フレームカラーはブラックのみ。

価格破壊のWiggleにおいても、“ブランドX”の完成車価格4万円~4万9498円は破格。ライバルはドンキホーテやホームセンターに並べられている“ルック車”だろうから、すでにロードバイクを持っている人にとっては、同価格帯では俄然興味がわく対象ではある。

さらに最近の高級カーボンバイクは、フレームだけで80万円近くする製品も珍しくない。その20分の1の価格で完成車が買えるのだと思えば、どんな性能でも受け入れるべきだとも思うが、ブランドXのスペックは想像以上に悪くない。たとえばフレームの素材は6061アルミ。熱処理番号の表記はないが、通常であればT6処理が施されているはず。これによってアルミは機械的特性、特に最高の強度と硬度を得られる素材になる。

そう言われてもピンと来ないかもしれないが、カーボン時代が到来する直前まで、この素材がグランツールを走っていたといえば、高価な素材だというのも想像がつくだろう。ただし、当時の選手が使っていたフロントフォークはカーボン、ブランドXはスチール製のため重量は大きく違ってくるが……。

規則並んだビード痕が美しいウェーブウェルディング方式のTig溶接。
▲規則並んだビード痕が美しいウェーブウェルディング方式のTig溶接。

確かに重い。でもすぐに慣れる

そのブランドXの完成車重量はMサイズで11.5㎏。クルマの荷室から出すときはギックリ腰になるんじゃないかと思った。それでもママチャリの半分ではあるが、持っても、走っても身重さを感じた。

ただし感覚とは恐ろしいモノで、重量や摩擦抵抗というのは“慣れ”てしまうことが多い。数日も走れば、住めば都とばかりに重さは気にならなくなる。ギアもシマノ・ターニーは後ろが7枚しかないので、高級車のようなきめ細やかさはないし、変速ショックも大きい。ホイールのフリクションも大きく、急に激太りしたときのように身のこなしが重い。ただし、これも“慣れ”の範疇だ。ブレーキの制動力も高くないが、大してスピードも出ないので大きな不満はない。1つ1つを細かく取り出して評価するなら、そんなに高い評価はつけられない。実際、海外のレビューをみても、かなり厳しめな意見が多く書かれていた。

ギア比はコンパクト仕様の50-34T。フロントディレイラーはシマノ・ターニーで、チェーンはKTCが採用されている。
▲ギア比はコンパクト仕様の50-34T。フロントディレイラーはシマノ・ターニーで、チェーンはKTCが採用されている。

しかし、ユーザーのレビューは5点満点で4.3。要するに買った人は大満足というわけだ。素人がワケも分からないくせに……とうがった見方もあるが、私も4万円のブランドXが嫌いじゃない。便利なことが、必ずしも楽しさに直結しないように、高性能でなくとも楽しいことだってある。このブランドXよりも高性能なクロスバイクはいくらでもあるが、ツーリングに行くなら断然ブランドXを選ぶ。

シフトワイヤは内蔵方式ではなく、コストを抑えられる外装式のためダウンチューブ下側にアウターリードがある。
▲シフトワイヤは内蔵方式ではなく、コストを抑えられる外装式のためダウンチューブ下側にアウターリードがある。

路面の凹凸を越えるときのブルブルンと震える感じは、子供の頃のサイクリングの原体験を思い出させてくれる。チョコレートでいえばトレック・マドンがジャン・ポールエヴァンなら、ブランドXはチロルチョコ。ホテルで言うならリッツ・カールトン VS ユースホステル。安っぽさ当然あるが、これが嫌いじゃない人はきっと多いだろう。決して値段が全てではない

上位モデルとは異なる操作方法のコントロールレバー。ワイヤの張力解除レバーはブラケット内側の小さなレバーを親指で操作する。
▲上位モデルとは異なる操作方法のコントロールレバー。ワイヤの張力解除レバーはブラケット内側の小さなレバーを親指で操作する。

リムサイドには磨耗を判断するためのサイピングが施されており、雨天時は排水性を高める効果もある。
▲リムサイドには磨耗を判断するためのサイピングが施されており、雨天時は排水性を高める効果もある。

耐パンク性を高めたケンダ製のシールド。タイヤ幅はレースでも主流になりつつある25C。
▲耐パンク性を高めたケンダ製のシールド。タイヤ幅はレースでも主流になりつつある25C。

ロードバイクを楽しむための入り口はこのバイクから

このバイクの用途は街乗りや通勤が最適だろう。これなら盗難に怯える必要もないし、キズも汚れも気にならない。道具として割り切って付き合うなら、なんの不満もない。しかし後々にはアップグレードして……はやめておくべきだ。

ブレーキはエントリーモデルで採用されることの多いテクトロ製のデュアルピボットキャリパー。
▲ブレーキはエントリーモデルで採用されることの多いテクトロ製のデュアルピボットキャリパー。

この状態でバランスがとれているので、ブレーキを強化すればフォークの弱さが出てくるし、コンポの変更もベース価格を考えれば非現実的である。ロードバイクの楽しさの入り口までは行けるが、ゲートの先には入れない。スポーツバイクの魅力に触れるには高い製品が必要だと言わないが、どの世界でも入場料やエントリーフィーが相応にかかる。なので、用途を限って、割り切って使えばブランドXは、価格相応の魅力のあるバイクだ。



ブランドXをwiggleで見る

初期の整備は、熟練したプロに任せるのが賢明だろう。適切な整備は、快適にサイクリングできるようになるだけでなく、点検不良に由来する事故を防ぐことにもつながるということを肝に命じてほしい。

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WRITTEN BY菊地武洋

自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、独自の視点・語り口でハードウエアの評論を行う。近年はロードバイク以外にも、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛ける。

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