寒い冬でも、暑い日でも、雨でも雪でも自転車に乗れる室内サイクリング。Zwiftといったバーチャルライドアプリのおかげで、ずいぶん身近な存在となりました。
そんなバーチャルライドに欠かせないのがスマートトレーナーです。安くはない買い物ですから、後悔のないようにしたいですよね。
スマートトレーナーの選び方を専門家に徹底ガイドしてもらいました。
目次
スマートトレーナーとは
スマートトレーナーとは、Zwiftといったトレーニングアプリとの双方向通信機能が付いたローラー台のこと。
パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどのデバイスとローラー台が接続でき、アプリ上の仮想空間で室内サイクリングを楽しめます。
普通のローラー台と大きく違うのは、負荷が自動調整される点です。仮想空間の勾配に合わせ、上り坂では負荷が重くなり、下り坂では軽くなります。バーチャルでの実走感が格段にあがる機能です。
>> ローラー台って?
室内サイクリングのメリット・デメリット
スマートトレーナーを検討している人に向けて、室内サイクリングのメリットとデメリットをまとめました。
外がいくら寒かろうが、猛暑だろうが大雨だろうが、室内サイクリングなら問題なし。特に梅雨シーズンや真夏・真冬は、室内で自転車を漕げる環境は重宝します。
室内サイクリングは自転車に乗る時間がない人にもおすすめ。ジャージやヘルメットの準備が不要なので、帰宅後など、気が向いたときにサクッと自転車に乗ることができます。脚を止めるシーンがなく、短い時間で集中したトレーニングが可能です。
>>「飽きないサイクリング」こそスマートトレーナー最大の強み! 解説は記事中盤でチェック
いっぽうで、設置スペースや予算、無風の室内からくる暑さはマイナスポイント。カバーできるデメリットはプラスアイテムでうまく対処しましょう。
>> 記事終盤の「一緒に揃えたいアイテム」をチェック!
☆買ってよかった!スマートトレーナーのここが好き
今回のインタビューをつとめた大学生ライダーのカオくんは去年スマートトレーナーを導入したばかり。「買ってよかった」を聞いてみました。
「とにかくトレーニングに集中できます。落車や事故を起こす心配がないので、ひたすらパワーと心拍数とにらめっこです。周りを気にせず全力疾走できる点も室内サイクリングならでは。
Zwiftのバーチャルレースはホンモノのレースと同じ感覚で、純粋に楽しいです。毎日、家の中でレースできるって最高じゃないですか?」
スマートトレーナーの選び方
スマートトレーナーの選び方を専門店でしっかり聞いてきました。解説してくれたのはインドアトレーナーの取り扱い量エリアNo.1を誇るワイズロード横浜店の奥平さん。
奥平 総帆 店長
ワイズロード横浜店店長。横浜店は常時300台以上の自転車本体を取り揃えるエリア最大級のスポーツバイクショップ。スマートトレーナー専用コーナーも常設しており各メーカーで乗り比べることが可能です。
スマートトレーナーの種類
スマートトレーナーは、大きく4タイプに分けられます。
- ダイレクトドライブ
- タイヤドライブ(リムドライブ*)
- 3本ローラー
- 一体型
*) リムを挟んで負荷をかけるタイプ。現在では商品がほとんどないため割愛。
*) フライホイールがなく電子的な負荷で調整するものもあります
各タイプの特徴を奥平店長に教えてもらいましょう。
チェックポイント①静音性
室内サイクリングでは「音」を気にされる方が多いと思います。特に集合住宅では必須条件ともいえる『静音性』に優れたタイプは何でしょうか?
間違いなくダイレクトドライブですね。室内サイクリングで何が一番うるさいかと言うと、『駆動音』。つまり車輪とローラーが当たることで発生する音・振動が一番うるさいのです。ダイレクトドライブはそもそも後輪を外すので、音がかなり抑えられます。
ダイレクトドライブ式の駆動音は、室内で自転車をメンテナンスしてるときの音ぐらいと想像してもらうといいでしょう。ペダルを回すときにチェーンがギアに噛み合う音や、変速させてカチャカチャと動かすときに音がします。その程度の音ということです。
ダイレクトドライブ式の駆動音はそもそも小さいのですが、高額になればなるほどさらに静かになる傾向があります。
いっぽうタイヤドライブと3本ローラーでは、音は覚悟しておかないといけません。うるさいです。音もしますし振動もあるので、集合住宅で使いたいならダイレクトドライブを強くおすすめします。
チェックポイント②実走感
せっかくバーチャルライドをするなら入り込んで集中したいです! できる限り外で走るのと同じような実走感、仮想空間への没入感が得られるものはどれでしょうか?
これもダイレクトドライブですね。もちろん他のタイプでもアプリ上で景色は変わりますが、実走感を得られる一番のポイントは斜度変化と連動した「ペダルにかかる負荷の変化」です。景色と負荷がマッチしないと没入感は大きく欠落してしまいます。
その意味で、なめらかで自然な負荷がかかるダイレクトドライブは抜きん出て実走感がありますから。
チェックポイント③コンパクト性
狭い家や部屋だとコンパクトになるかも気になるところです。
バーチャルサイクリングのたびに片付けるならコンパクトに越したことはないですよね。足をたためるダイレクトドライブが一番コンパクトにはなるでしょうか。
ただ実際に走るときにはどのタイプでも自転車1台分のスペースは必要ですから、毎回片付けないなら、形状の違いはあれど、大きな差はないと思いますね。
自転車をセットする必要がない一体型のタイプがスマートバイクです。1台でさまざまなライディングポジションを再現できます。ポジションはもちろん変速段数、組み合わせ・歯の大きさまで各ユーザーごとにセットでき、さらに電動変速ならDi2(シマノ)、EPS(カンパニョーロ)、eTap(スラム)それぞれのボタン配置を設定可能。
高性能なだけに価格は高いですが、外用・室内用と自転車を複数台用意すると考えると意外とアリな選択肢。毎回自転車をローラー台にセッティングしなくて良いのはラクですよね。
▽ これまでの3つのチェックポイント+価格帯を一覧でチェック
選ぶ基準は「バーチャルサイクリングのメリットを最大限に活かせるか」
スマートトレーナーの各タイプの特徴をつかんだところで、どのように選べばいいか聞いてみましょう。
ズバリ、バーチャルライドが目的ならダイレクトドライブ一択ですね。ちなみに室内サイクリングの最大のデメリットってなんだと思いますか?
うーん、すぐ横になって休めちゃうこと……?(笑)
そう、そうなんです。スマートトレーナーがなかった時代に1人でトレーニングするときは、固定ローラーや3本ローラーで自分でメニューを作って黙々とやっていたわけですよ。もはや修行のごとく。
自分との戦いになるので、逆にサボろうと思えばいくらでもサボれるんですよね。単調にこぎつづけるから飽きるし。
つまり 長続きしないことが最大のデメリットだった。
そのデメリットをカバーするものこそが、バーチャルサイクリング。仮想世界なら景色が変わるし斜度もつく。目的地があるから達成感もある。変化があるから長続きするんです。
友達と一緒に走ったり、ライドイベントやレースも楽しめます。
スマートトレーナーを選ぶときは、バーチャルサイクリングのメリットを最大限に活かすためにはどういうトレーナーを使ったらいいの?という順番なんですよ。
「総合的な実走感」でダイレクトドライブ一択
先にお話したとおり、 総合的な意味で実走感を得られるのはダイレクトドライブです。画面の景色とマッチした自然な負荷が再現されるので、一番リアルに走れる。
「予算の兼ね合いで他のタイプを買ったけれど物足りなくなってしまった」というのはよくある話です。そもそもタイヤドライブ ・リムドライブで予算を抑えるといっても5~6万円はしますからね。あとで買い替えるぐらいなら、最初から10万円以上の予算を設定してダイレクトドライブを買った方が無駄にならないという考え方もできますね。
唯一、3本ローラーは “全身運動” ができる。ただし玄人向け
3本ローラーに関しては違う視点が入ります。ダイレクトドライブやタイヤドライブといった固定方式のものに唯一足りない部分が、全身運動。本来自転車は全身を使って漕いでいるのですが、自転車が固定されることで足だけの運動になりがちなのです。上半身はほぼ動かない。
ダイレクトドライブもいかに全身運動につなげるかで各社工夫してはいますが、3本ローラーは自転車をまるごと乗せて漕ぎますからね。バランスを取らないと落車しますし。
玄人向けではありますが、全身運動が最優先なのであれば、3本ローラーの選択肢もアリです。
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▽ お得なセットを見てみる
主要ブランドをチェック
GARMIN TACX (ガーミン タックス) | |
オランダに本社を構えるサイクル周辺機器メーカー。 ハイエンドモデルはペダリング解析や路面振動も再現する。Garminのサイコンとの連携も◎ >> 商品一覧(ワイズロード) |
Wahoo(ワフー) | |
バーチャルトレーニングのトータルコーディネートに長けたブランド。前輪で勾配を再現するKICKR CLIMBや、速度にあわせて風量を変化させるエアフローHEAD WINDなど周辺機器が充実。Wahooサイコンとの連携も◎ >> 商品一覧(ワイズロード) |
SARIS(サリス) | |
アメリカ発のサイクルキャリア、スマートトレーナーメーカー。スペックに対して比較的安価で実走感が高い。 >> 商品一覧リンク |
ELITE(エリート) | |
イタリアのサイクルアクセサリー名門ブランド。値段が比較的安いので始めやすい。前輪オプションのステアリング機能でZwift内でのハンドリングを可能にしている。 >> 商品一覧リンク |
MINOURA(ミノウラ) | |
日本が誇る自転車用品ブランド。プロ仕様の3本ローラーや、国産初のダイレクトドライブ式スマートトレーナーを展開。 >> 商品一覧リンク |
XPLOVA (エクスプローバ) | |
台湾のサイコンメーカー。税抜10万円を切るリーズナブルさが魅力。最近ではなんと6万円を切るモデルも登場(※自動負荷装置はつきません) >> 商品一覧リンク |
>> 高コスパなNOZA全モデルを比較したインプレッション記事もチェックしよう!
スマートトレーナーとセットで必要になるもの
バーチャルライドを楽しむために、スマートトレーナーとセットでそろえるべきものをまとめました。
- 絶対にいるもの
- 設置スペース
- バーチャルライドに必要なデバイス
- デバイスを置くスタンドやホルダー
- 汗対策
- ダイレクトドライブならスプロケット
- ディスクブレーキのロードバイクならスペーサー
- 扇風機
この中で意外と大事なのが『汗対策』。冗談でなく、床が池になるくらい汗をかきます。このとき気にしたいのが、床だけでなく自転車本体も同時に傷む可能性があるということ。
屋外であれば風がふくので汗も流れ乾くのですが、室内サイクリングでは真下に汗が垂れて溜まります。しかも単なる水でなく汗なので、ベアリングなどの金属部品は腐食してしまいます。ハンドルまわりやBBまわりに汗が流れ込まないよう、汗マットやタオルを置くと良いでしょう。
もちろんトレーニング後は自転車をさっと拭きあげてください。分解メンテナンス時に錆び防止として耐水性のグリスを多めに塗るのもひとつの手です。
内部のことなので気付きにくく、知らないうちに自転車を傷めていることもあります。自転車への汗対策は意外な落とし穴です。
サイクルウエアは、汗をしっかりと吸ってくれる夏用のインナーの使用がおすすめです。
- あれば嬉しいもの
- マット
- 防振パッド
- 心拍計(身体の努力度がわかる)
- サイクルコンピューター(ラップタイムやパワーの計測など)
- さらに楽しめる拡張アイテム
- フォークを上下させて勾配を再現するグレードシミュレーター
- 仮想空間と連動して風を送るスマートファン
- モーションプラットフォーム
- 前輪を水平に保ち固定するブロック(※セットになっていたり不要な場合も)
- ステアリングブロック
Q&A
最後にスマートトレーナーの利用で気になる疑問に答えてもらいました!
ダンシングってできるの?
できなくはないですが、ほとんどのモデルが固定されているので正直やりにくいですね。一部の製品を除き、自転車を横に大きく振る動作は想定されていません。
SARISのモーションプラットフォーム(MP1)を使うと、前後左右の動きができるようになるのでダンシングを含めた実走感や全身を使ったトレーニングも出来るようになります。
>> モーションプラットフォームって何? 動画でチェック ※音に注意
Zwiftしかないの?
他にもあります。
実在する場所・コースを実写画面で走るアプリや、実写画面で自分のアバターを走らせたり、過去の自分のゴーストを置いて競うことが可能なアプリもあります。
各メーカーも純正アプリを出していてトレーニングメニューが組まれています。
組み立ては自分でできる?
トレーナー自体は本体の足を開いて設置すれば完了です。
あとは自転車をセットする工程ですね。車輪の脱着・スプロケットの脱着(工具も含む)は、プラスの技術が必要ですね。
車輪の固定方式(クイックリリース/スルーアクスル)についても各商品に説明がついていますから、よく確認して作業してください。相性によってはギアの調整が必要な場合もあります。
セッティングに不安があるなら、お店でトレーナーを購入し、取り付け時の力加減などを含めたレクチャーを受けると安心です。
おすすめスマートトレーナー5選をチェック
「スペックにこだわりたい」
「コスパ重視」
「とにかく安く!」
目的別におすすめモデルを奥平店長に選んでもらいました。
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