自転車に乗るとき、「車道を歩道、どこを走れば良いのだろう?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。海外に目を向けると、例えばパリでは400kmにも及ぶ自転車の専用道路が整備されるなど、街中に自転車道が整備されている国は増えています。しかし日本国内では、残念ながらまだ普及できていません。
警視庁による自転車に関わる交通事故発生状況を見ると、事故件数こそ減少しているものの、交通事故のうち17%以上に自転車が関与しています。東京都内では30%を超えていますが、この他に歩行者との接触など危険も少なくないでしょう。
国内に自転車道が普及することは、こうした事故の防止にも繋がるのではないでしょうか。今回は、この自転車道について少し考察していきたいと思います。
歩行者との自転車事故
歩道を歩いている際、次のような経験をしたことのある方は、多いのではないでしょうか。
- 突然、後ろから猛スピードの自転車に追い抜かれて驚いた
- 細い歩道で無理やり通り抜けていく自転車に接触しそうになった
本来であれば、自転車は車道を走るものです。しかし実態としては、歩道を走る自転車が非常に多く見られます。
歩行者と自転車とでは、当然ながら進行速度が異なります。一般的な歩行者であれば歩く速度は早くても時速5〜6kmですが、自転車は時速20km以上もの速度が出ます。もしぶつかれば、歩行者は大怪我をするでしょう。
実際に自転車と歩行者とで接触事故が起きた場合、歩行者のみ怪我をするというケースが多いようです。中には重傷者や死者が出るケースも見られ、歩道における自転車走行がいかに危険であるかが分かります。
自転車道があれば、自転車と歩行者が歩道に混在することもないでしょう。過去に起きた自転車事故についても、自転車道があれば避けられたものも少なくないはずです。
自動車との自転車事故
特にクロスバイクやロードバイクなどを中心に、自転車が車道を走っている光景もよく見るでしょう。歩行者から見れば安全ですが、実は車道でも自転車事故は少なくありません。
自転車には、ブレーキランプやウィンカーがありません。そのため自動車から見ると、自転車が次にどこへ向かって走るのかは予想ができないのです。そして、当然ながら自動車は自転車とは比べ物にならない速度で走っていますから、少し接触しただけでも大事故に繋がるでしょう。
さらに自転車は、細い隙間を縫って前へと進んでくることもあります。例えば、信号で停車中に横へつけていた自転車に気づかず、自動車が左折したらどうでしょう。自転車には自動車の車内にまで聞こえるクラクションもありませんから、巻き込み事故に発展してしまうかもしれません。
自転車道があれば、自転車と自動車とで走る場所が明確化されます。そのため、走行中の危険は大きく減るでしょう。また、路肩との間に空間ができることで、右左折時にも自転車の存在が見えやすくなるはずです。
都心で広がる自転車道
東京都内では、自転車道の整備が進められつつあります。実際に、都内をはじめとした各地の国道や県道にも、一部で自動車専用レーンが設けられている場所が少なくありません。中でも、大規模に整備が進められている2つ代表的な例をご紹介しましょう。
1)国道246号線
東京都世田谷区に伸びる国道246号線は、国土交通省によって2014年度内に自転車とバスとの走行帯共有化が目指されています。共有化は駒沢から三軒茶屋までの約2kmにわたって行われる予定です。
世田谷区では通勤等に自転車を利用する人が増えており、国道246号線もまた交通量の多い場所です。そのため、この共有化では歩行者と自転車との接触事故減少、そして自転車に関する自動車事故の減少が目的といえるでしょう。
尚、共有化では走行帯に以下のような工夫を加えることで、自動車から自転車への注意を促すことが検討されています。
- 自転車の図柄を路面に標す
- 青色の矢印で進行方向を示す
- 路肩をカラー舗装する
2)虎ノ門「新虎通り」
東京都港区にある虎ノ門でも、自転車道の設置が計画されています。2014年6月11日に開業した「虎ノ門ヒルズ」を皮切りに進められる都市開発において、隣接する「新虎通り」に自転車道が設置される予定です。
「新虎通り」は、東京都が2013年3月に立ち上げた「東京シャンゼリゼプロジェクト」により、東京都のシンボルストリートとして新しく整備される予定となっており、自転車道の設置はその一環となっています。
尚、この「新虎通り」は新橋から虎ノ門までを繋いでおり、環状二号線における地上部道路の愛称です。
終わりに
自転車道が整備されることは、自転車に関わる事故の防止に繋がるでしょう。実際に国土交通省の発表でも、自転車走行空間の整備による交通事故の減少が発表されています。自動車による事故から自分自身を守るだけでなく、自転車との接触等による歩行者の安全を守ることにも繋がるはずです。
また、自転車道によって自転車の走行路が分けられることは、自転車の利用が周囲からより理解を得るうえでも有効といえそうです。