無料のレンタサイクルやシャワールームまであるカフェが、渋谷の明治通りから入った小道沿いにある。その名も「Pillar Cafe(ピラーカフェ)」。
開店から 1 周年を迎えた今、カフェのプロデューサーである江口一啓氏に自転車に対する想いや、自転車をテーマにしたカフェの魅力などを伺った。
自転車は単なる移動手段。それ以上でもそれ以下でもなかった学生時代
ー現在は「Pillar Cafe」のプロデューサーをされていますが、まずはそこに至るまでの江口
さんのプロフィールから教えてください。
学生時代までさかのぼると、生まれ育ったのは大分県大分市にあるニュータウンです。
自然に囲まれた場所で、川で泳いだり山で走りまわったりと、自由奔放な環境でしたね。
ーその頃から、自転車に乗っていたのですか?
自転車は移動手段としては乗っていましたが、ほんとそれだけ。特にこだわりも無かったです。
周りを見ても趣味で自転車に乗っているなんて友達はまったくいませんでした。
中学生の頃はアメリカのカルチャーシーンに興味があって、ファッション雑誌を立ち読みして、これカッコいいな!と憧れて…そんな感じの学生時代でしたね。
ー高校、大学時代はどうでしたか?
セーラー服の女子と付き合いたい!そんな理由もあり(笑)共学の高校に入学しました。
中学時代は水泳部でしたが、高校になってラグビーを本格的に始めたのと、女の子と遊ぶという目標も実現できました……ってその影響ではないと思うんですが、大学は一浪し北九州の予備校へ。勉強だらけの監獄生活が待っていましたね。
晴れて東京の大学に入学した後は、上京した友達のバンドの手伝いをするのと同時に飲食店でバイトの日々。週 7 で 16-27 時のアルバイトを半年間続けて、240 万円稼いで、それでアメ車を買ったりしていました。そして、車で全国行脚のストリートライブに行ったりして、それはもう楽しかったですね。
あと、この頃もまだ自転車にはまったく興味はありませんでした。
生活習慣病への危機感からはじめた「自転車通勤」が世界を変えた
ー意外と自転車との共通点はありませんね。社会人になってからはどうですか?
自転車に乗りはじめたのは三十路過ぎてからなんです。
現在所属している音楽の制作会社に入ったのが 4 年前でしたが、その頃は自らの不摂生もあって体重が 80 キロくらいになってしまったんです。学生時代は 55 キロ以下、スポーツをやっていた時が筋肉があって 68 キロ、そして今では、って感じで順調にお肉がついてきて…
これはやばいと思いましたね。生活習慣病まっしぐらだと。それで自転車通勤を始めたんです。
家が埼玉で、会社が中野、あとはライブ会場までの移動など、通勤の一部を強制的に自転車にして毎日 10kmほどこいでいました。仕事が忙しくてジムに行く暇もなかったのですが、通勤は毎日するじゃないですか。
もうこの時間しか無いと思っていたので必死でしたね。雨の日も雪の日も関係なく毎日自転車をこいでいました。
ー雨の日も雪の日も自転車ってすごい気合いですね!どういった自転車に乗っていたので
すか?
まずは格好から入り、スポーツタイプの自転車を専門店で購入しました。車種はルイガノの「TR1」。今まで 1 万円以下で買えるようなシティサイクルしか乗ったことがなかったので、もぅなんじゃこりゃ!の世界でしたね。
大袈裟かもしれませんが、自分の力で風になれる感覚です。
今では、通勤で 1 日約 40 キロ、最高では 1 日 160 キロくらい走るなど、まさに自転車にはまりました。
車種もスペシャライズドのロードや SURLY の「PUGSLEY」など、いろいろ乗り継いで、未だに通勤は自転車オンリーです。
ー自転車通勤をはじめて最初は大変じゃなかったですか?
正直言うと大変でした。初めて 10 キロくらい走った時は、自転車から降りた瞬間、産まれたての子鹿みたいに足がプルプルしちゃって(笑)
あと、パンクには泣かされましたね。そのためパンク修理の講習会に参加して勉強もしましたよ。
ーモチベーションの維持はどうでしたか?
特段モチベーションを維持するのは難しくありませんでした。
体の見た目が変わってくると嬉しいじゃないですか。基礎代謝量が確実にあがったので普通に飲み食いしても太らなくなり、いっぱい食べてもその分走ればいいと割り切っていたのでストレスもなくて。体重は自転車をはじめてから今までで 20 キロくらい落ちたと思います。
あとは自転車のコミュニティに参加したので、自転車仲間も増えました。1 ヶ月に 1、2回集まったりして。そういうのも楽しいですよね。
ー江口さんのお話を聞いていると、これから自転車をはじめたい人も勇気づけられそうですね。
最初は生活習慣の改善する手段でしたが、だんだんとハマっていって、今では自転車をテーマにしたカフェまで運営してますからね(笑)
自転車はライフスタイルに溶け込んでしまいました。
ただ、これからも自転車とは安全に付き合いたいと思っています。スマホを見ながら自転車をこいでいる方を見かけたりすると危ないと思いますし、私自身も止まっている車のドアが急に空いてぶつかりそうになったり、街中でもけっこうリスクがある乗り物だと感じています。
そういったことをわかった上で、皆さんにも自転車ライフを楽しんでほしいですね。
ーアドバイスまでありがとうございます。では、そんな江口さんが満を持して立ち上げた
「Pillar Cafe」については【後編】にてご紹介したいと思います。