ロードバイクの効果的なギアチェンジ法!メカニックの初心者向けガイド
ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツバイクは一般的な自転車と比べてギア数がとても多いですよね。最初はそのギアの多さに、いつ、どこでどんなギアを使えばいいのか分からず戸惑うもの。実は、一般サイクリストとプロライダーのシフトチェンジの回数を比べると、同じ距離を走っているにも関わらず、プロライダーは数倍ものシフトチェンジをしているんです。
そんなロードバイクの走行に不可欠なギアチェンジを、初心者に向けてしっかりと解説します。
目次
シフティングとは「快適に走るための操作」
ロードバイクやクロスバイクなど、多段式の自転車に乗っていると避けられないシフティング。いわゆるギアチェンジのことです。ハンドルに装着されているシフトレバーを操作して、走行中のさまざまなシーンにおいて適切なギアに変速する。初心者のみならず、いままであまり気にせず走っていた人もいるのではないでしょうか?
登り、下り、平坦。そして、追い風や向かい風のような天候コンディション。もちろん体力と精神力は基本ですが、もっと簡単に対応できるのがシフティングです。ビギナーにとってシフティングが効果的にできるとサイクリングがより楽しくなること間違いなしです!
ギアのシステムを知ろう
まずはスポーツバイクのギアシステムを知っておきましょう。前と後ろに分けて解説していきます。
フロントギアのしくみ
チェーンリングという大小2枚、もしくは3枚のギアの歯(画像では2枚)とそれを動かすフロントディレイラーがあります。
大きい方の歯をアウターギアといい、小さい方をインナーギアといいます。(3枚構成の場合は真ん中に当たるギアをミドルギアと呼びます)
こぎ心地は、アウターギア(大きい方)は負荷が掛かるよう重く感じ、一方インナーギア(小さい方)は軽くて回しやすくなります。
詳しくは後述しますが、ダウンヒルや平地で巡航するような場合はアウターギアを、ヒルクライムや向かい風の中を走るような場合はインナーギアを使うといったイメージになります。
リアギアのしくみ
上の画像はリアホイールの中心部分です。大小7~11段(バイクにより異なる)で構成されているギア(=スプロケット)と、それを動かすリアディレイラーがあります。一番小さいギアはトップギア、一番大きいギアはローギアといいます。
こぎ心地はトップギアが重く、ローギアに移動していくたびにだんだん軽く回しやすくなっていきます。走り始めはローギアを使い、加速していったらトップギアに近づけてシフトチェンジしていくのが一般的な走り方です。
お気づきかもしれませんが、後ろと前のギアは逆のこぎ心地になるのです
3種類のシフター
機械式の場合、シフターとディレイラーが繫がったワイヤーを引っ張る/引っ張りを解放することでギアチェンジを行ないます。その司令塔となるのがSTIレバー、トリガーシフト、グリップシフトといった変速機器です。それぞれの操作方法を簡単におさらいしましょう。
STIレバー(デュアルコントロールレバー)
多くのロードバイクに採用されているのがSTIレバー。シフトレバーとブレーキレバーが一体化しています。
- フロント(左側)
重くする場合は、シフトレバーとブレーキレバーを同時に内側へ押します。軽くする場合は、シフトレバーのみ内側へ押します。 - リア(右側)
重くする場合は、シフトレバーのみ内側へ押します。軽くする場合は、シフトレバーとブレーキレバーを同時に内側に押します。
トリガーシフト
クロスバイクやマウンテンバイクに使われるのがトリガーシフトです。
- フロント(左側)
重くする場合は、親指にあたるレバーを押し込みます。軽くする場合は、人差し指にあたる部分を手前に押し込みます。 - リア(右側)
重くする場合は、人差し指を手前に押し込みます。軽くする場合は、親指を押し込みます。
グリップシフト
今ではほとんど見かけなくなりましたが、ひと昔前はマウンテンバイクに使われていました。有名どころでは、クロスバイクの名品 GIANT ESCAPE R3が2011年までグリップシフトを採用していました。(2012年以降はトリガーシフトに変わっています)
- フロント(左側)
重くする場合は、手前に回します。軽くする場合は、前方に回します。 - リア(右側)
重くする場合は、前方に回し、軽くする場合は、手前に回します。
効果的なギアチェンジ
いよいよ実践編です。ギアチェンジのコツを学んでいきましょう。
シフティングの基礎3か条
シフティングの基礎として頭に入れておいてほしいのは以下の3つ。
- シフトチェンジはゆるやかにペダルを回しながら行う
- こまめに少しずつ、そして早めのシフティングを心がける
- トルクをかけた状態や、路面が悪いときの変速は避ける
まず、チェーンが動いていないと、チェーンを移動させることができないので変速は行えません。とはいえ立ち漕ぎなど、力いっぱい踏んでいる状態(=トルクがかかっている状態)でのシフトチェンジはパーツへ過剰な負荷をかけることに。軽くペダルを回している状態で、こまめなシフティングを心がけましょう。また前後のギアを同時に変速することや、乗っていないときに手遊びとしてパチパチするのもNGです。
ビギナーのなかには、変速することでチェーンが落ちてしまうのでは……と心配する人も少なくありません。ディレイラーに狂いがなければ、そうそうチェーン落ちすることはありませんが、路面から衝撃を受けているときは慎重に変速するようにしましょう。
ただし後述しますが、フロント/リアでのギアの組み合わせ位置によってはチェーンが落ちる可能性もあるので注意してほしいです。
フロントとリアの使い分け
ビギナーであれば、いくつもあるギアを覚え切れないのも当然です。おおざっぱにフロントとリアの役割を分類するとしたら、フロントはギア全体の重さを決定し、リアが微調整の役目を持つといったところ。フロントがアウターだったら全体的に重く、インナーだったら全体的に軽くなります。そこから微調整をするのがリアの役割というわけです。最初のうちはこの程度の理解でも大丈夫です。
フロントギア、普段はインナーとアウターどっち?
フロントのインナーギア(軽い方)はヒルクライムや向かい風の中を走る際に使う頻度が高く、普段はあまり使わないという人が多いです。基本的には平地巡航ならフロントはアウター(重い方)に固定しておき、リア変速で細かく調整していく走り方がベストでしょう。
またフロントをシフトチェンジすると、ペダルが一気に重く/軽くなるので走行感のギャップが起こります。走りのロスに繫がるので、そうした場合はリアも続けてシフトチェンジして、適切な組み合わせになるようにすることが必要です。
最初は頭を使うので混乱してしまいますが、慣れてくれば道の状況に合わせた前後ギアの組み合わせが自然に身についてきます。
R=R と覚える
特に乗り始めて間もない頃は、左右どちらの手が前のギアなのか、後ろのギアなのかがわからなくなってしまうこともあります。そんなときは、
REAR = RIGHT
つまり「リア=ライト:後ろのギアは右側」とあらかじめ記憶しておくと、とっさの場面で役に立ちます。
シチュエーションごとのギアチェンジ法
坂をのぼるときと、ひたすら平地を巡航するときとでは適したギアが違うことはイメージできたかと思います。
ここからは、どんな時に、どのギアにシフティングすれば快適な走りになるのか、具体的にお伝えします。
変速をかけるべきシチュエーションごとに解説していきましょう。
- 低速走行やストップ&ゴーの多いときは?
A:インナー or ミドル+トップとローの中間
ゆっくり走るときやストップ&ゴーの多い都市部での走行時は、フロントをインナーギアかミドルギアに位置しておくと楽に走れます。 - 登り坂や向かい風が強いときは?
A:インナー or ミドル+ロー寄り
登りの手前でフロントをインナーギアに、リアはより軽めのギアにシフティングしておいて登り始めるのがおすすめです。リアのギアは少し余裕を持って、1段温存しておくと後々便利です。途中、まだ漕げる余裕が出てきたら、リアを少し重くしてみるとよいでしょう。
また坂の多い状況や向かい風が激しい日などは、インナーギアとローギア周辺を使って足にかかる負荷を軽めにし、ペダルの回転数を下げすぎないようにするのが効果的です。 - 下り坂や追い風のときは?
A:アウター+トップ寄り
登り坂を超えてからの下り坂や追い風の場合は、その好条件を利用してアウター&トップギア周辺を使ってみましょう。驚くほどスピードアップが望めます。もちろんスピードの出し過ぎは要注意ですが、コントロールできる範囲の速度であれば非常に快適に走れるでしょう。 - 速度が安定した巡航のときは?
A:アウター+トップとローの中間
サイクリングロードなど信号のない平地では、フロントをアウターにしてペダルの回転数をある程度上げてから一定にすることで安定した巡航速度を保つことができます。このときリアのギアを重くしすぎると回転数も上がらず疲れてしまいます。筋肉に負荷を与えずに回転数を上げていけるギアをみつけることがコツ。
シフティング(ギアチェンジ)の注意点
ギアチェンジの基本と、変速のコツがつかめたところで、最後に気を付けておきたいポイントをお伝えしておきます。
チェーンの負担が大きい!避けたい組み合わせ
前後ギアのチェーンラインを示した画像です。推奨しているコンビネーションが左半分の2つ。おすすめしないコンビネーションが右半分の2つを表しています。
おすすめする左半分のコンビネーションは、チェーンラインができるだけ車体と平行になっていることがわかると思います。
逆に良くない右半分のコンビネーションは、チェーンラインがより斜めになってしまっている状態であり、あと1段重く、または軽くしたいと思ってもできません。ともに後がない状況になります。
たすき掛けにも注意
それに加えチェーンラインが一番角度のついた斜めの状態は要注意です。いわゆる「たすき掛け」の状態ですが、フロントギアにチェーンが干渉しカラカラと音が鳴ったりチェーンの脱落が起きる可能性があります。最初の頃は気づくとたすき掛けになっていることがよくあるので注意が必要です。
前後ギアをバランスよく使うことで、チェーンやディレイラーに負担が掛からないギア位置を見つけることができます。最初は頭を使いますが、是非挑戦してみてくださいね。
トリム調整
前述したように、アウター×ローやインナー×トップでチェーンラインが斜めになるような場合、フロントディレイラーのプレートにチェーンがこすり異音が発生することがあります。そうしたときの解消に便利なのがトリム調整です。
フロントのシフターをギアが変わらない程度に軽く押すことで、フロントディレイラーの位置を微妙に動かすことが出来ます。意外と知られていない機能ですが、調整は2段階可能。これがうまくいかないときはワイヤーの調節が甘いときなので、ショップに行って整備してもらいましょう。
カンパニョーロやスラムのシフトチェンジ
これまでの解説はシマノ製を基準にお話ししてきましたが、他社のコンポーネントの場合はどうなるのでしょうか?
まずはCampagnolo(カンパニョーロ)。エルゴパワーと名付けられたシフトブレーキレバーは、親指と人差し指でギアチェンジします。リアアップの場合は親指ボタンを押し、リアダウンの場合はシフターを押す。どちらも右側です。
一方、左側においては、フロントアップの場合はシフターを押し、フロントダウンの場合は親指ボタンを押します。シマノの「カチッ」とした操作感に比べると柔らかめで、よく「マニュアル感がある」と言われます。
次にSRAM(スラム)。フロント&リアともに、レバーを一回押し込むとシフトアップ、二回押し込むとシフトダウンします。単純なようで、慣れないうちは操作ミスが起きやすいです。またシマノのようなジャストタイミングでのギアチェンジと比べると、一瞬「間」を置くようなもたつきがあります。良くも悪くもアメリカ製らしい大味な感は否めない、といったところ。いっぽうで、手や指の力が小さくとも楽に操作できるので、女性におすすめしたいタイプでもあります。
まとめ
ギアシステムというのはアップダウンをはじめ様々な地形や天候に対応できるためにあります。せっかく多段式のバイクに乗っているのならば、その利点を最大限に取り入れたいですよね。
快適な走りと、余計な疲労を押さえるための方法として、筋力、心肺機能以上に「効果的なシフトチェンジ」は大事です。
状況に応じたシフティングをまとめると、
■登り坂や向かい風が強い状況=インナー or ミドル + ロー寄り
■下り坂や追い風の状況=アウター + トップ寄り
■速度が安定した巡航状態=アウター + トップとローの中間
ギアチェンジがうまくなれば、遠方へのツーリングやヒルクライムに挑戦など、サイクリングが今以上に楽しめるようになりますよ!
Second Edition by Toshiyuki Masubuchi
あわせて読みたい!
WRITTEN BYVIKING the MAINTENANCE
都内のプロショップに10年間在籍後、2015年VIKING the MAINTENANCE を設立。東京・西新宿を拠点にスポーク自転車の組付け、カスタマイズ、メンテナンスを軸に展開中。年2回富士山麓でサイクルイベントも企画中。 http://www.viking-the-maintenance.com/