ゼロから始めるMTBの楽しみ方 — MTBのイントロダクション
このたびFRAMEでMTB(マウンテンバイク)について連載を始めることになりました。MTBやバイクパッキングの普及啓発、関連ギアの輸入販売をおこなうオルタナティブバイシクルズ主宰の北澤 肯です。MTBの楽しさと素晴らしさを、複数回に渡って読者のみなさんと共有できればと思っています。
僕は39歳の時、神の啓示のようにMTBを突然始めた遅咲きマウンテンバイカーです。そして、アフリカやアジアでのODA開発援助や国際協力のキャリアを捨てて、MTBにどっぷりハマって仕事にまでしてしまいました。遅く始めていまだ発展途上なので、ビギナーの人の気持ちもわかるし、少し上達してきたので、多くのユーザーの人たちと共感できる経験や問題意識も多いと思います。レースもたまに出るし、昨年はシングルスピード(変速機なし)MTBの世界大会まで主催してしまいました。今はバイクパッキングというキャンプツーリングに力を入れていて、来年本も出す予定です。
速くもうまくもない僕ですが、とにかくMTBが大好きで、人生まで変わってしまった人間ですから、こんな連載を書いてもいいかも知れません。あまりに高度で技術的なこと以外でしたら、読者の方からの、こんなことを書いてほしいというリクエストも受け付けています。よろしくお願いします。
MTBとは?
簡単に言うと、舗装路ではなくトレイル(山道)を自転車で走ることです。自転車でハイキングをすることと考えるとよいかもしれません。機材や装備で言うと、トレイルには石や木の根っこ、段差などがありますから、それに対応できるだけの太めのタイヤ(だいたい幅が5㎝以上)、丈夫なフレーム、また最近は前や後ろにサスペンションが付いているのが普通です。
もともとは、1970年代の終わりころに、アメリカの西海岸でヒッピーの人たちが丈夫に改造した自転車で山を駆け下ったことに由来します。なので、元々はスポーツというよりカルチャー的なものであり、なにか精神性のあるものでもあります。現在は、アウトドア活動の一つとして世界的な人気を博し、またオリンピックや世界選手権の競技種目でもあります。
MTBの楽しさ
それは、自然の中を自転車で走る爽快感にあるでしょう。森の中の静謐な空気、森のにおい、タイヤが落ち葉を踏みしめるパリパリという耳に心地よい音。自然の中を、人間の体では不可能な、自然を超えたスピードで疾走する快感は、アドレナリンとドーパミンを分泌せしめ、人を一種の興奮状態へと誘ってくれ、また開放してくれます。
そして木々や小動物たちとの出会いだったり、森林浴にも似たリラックス効果もあります。MTBは人と自然の関係を築き、拡大する、素晴らしい道具です。
またMTBは一時ATB(オールテラインバイク=全地形対応型バイク)と呼ばれたこともありました。荒野、山岳地帯等での高速走行、急坂登降、段差越え、そしてもちろん舗装路でも、どんなところでも、あなたのペダルの力で可能な、自立した、究極のフリーダムマシンです。そして、自然の中を旅する最高のパートナーでもあります。
MTBを始めるには
こんなに素晴らしいMTBですが、始めるにはちょっとだけコツがいります。まず日本では、走れるトレイルが一般的には公開されていません。(常設コース以外)なので、MTBを扱っているショップや、SNSでMTBの情報を載せている人と友達になって連れて行ってもらう必要があります。僕も実際に6年前に、mixiで知り合った人に初めて連れていってもらいました。彼とは5年後に一緒に世界大会を開催することになったのですが。
道具は、最初はレンタルでも良いと思います。あとヘルメットとグローブが必要です。それから、トレイルはハイカーやトレイルランナー等、他の利用者もいるので、その人たちへの気配り、そして雨後は走らない等トレイルを痛めない配慮も必要です。
次回は、自分が始めた頃を振り返りながら、もう少し具体的にMTBの始め方について書く予定です。お楽しみに。
(TOP画像撮影:Jotaro Yoshida)