どうやって自転車事故に備えるか – 昨今の自転車事故事情から考える
こんにちは、FRAME編集部です。
今回はNPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長の内海潤さんに昨今の自転車事故の状況について考察していただきました。
自転車事故は何もスポーツ自転車に限ったことではありません。現在シティーサイクル(いわゆるママチャリ)に乗られている方もぜひ他人事と思わずにお読みください。
交通事故死者数は減っている
2016年の交通事故死者数が1949年以来、67年ぶりに4,000人を切った。2000年に対前年で僅かにプラスとなったが、それからは連続して減り続けている。自転車乗車中に亡くなった方と歩行中に亡くなった方の数も減っているが、依然として高い水準にあり、日本はクルマに乗っていた方が安全という異常な国である。
安心して歩いて暮らせる街になるのはいつの日か。自転車事故の観点から考察してみたい。
自転車が加害者になる事故
2008年に小学5年生が自転車で62歳の老女を寝た切りにした事故は2013年に損害賠償金9,521万円という判決が出て話題になったが、これは氷山の一角で5,000万円を超える判決も複数出ている。
当時11歳の子どもには弁済能力がないとして母親に支払命令が出たが、翌年に母親は自己破産した。また2011年に車道左側通行の徹底が各都道府県警へ通達されて以降、法曹界では歩道上で自転車と歩行者の事故があった場合に「100%自転車が悪い」という前提で審議を開始することになっており、自治体レベルで自転車保険への加入を義務化する動きが出て来たこともあって、「たかが自転車」から「されど自転車」へ意識が変わりつつある。
一方、危険な運転をする自転車運転者が相変わらず存在するのも事実で「免許制の導入を」という声があるのもやむを得ないが、現実的ではない。
自転車が被害者になる事故
高齢化が招く影響は交通事故も無関係ではない。2016年の交通事故死者数において65歳以上の高齢者割合は54.8%と過去最も高かった。高齢ドライバーが起こすペダルの踏み間違い事故や高速道路逆走などの交通違反も近年とみに増えている。
自転車が被害者になる事故が起きている場所は実に7割が交差点で、中で最も多いのが細街路、つまり住宅街の生活道路で信号のない交差点である。
クルマの往来が少なく慣れた近所の道路にこそ危険が潜んでいると言えよう。これを防ぐには一時停止と安全確認に尽きる。とりわけ夜間はカーブミラーが有効だ。
昨日は大丈夫だったから今日も大丈夫とは限らない。クルマは来ないだろうとたかをくくらず、来るかもしれないと辻々で身構えて欲しい。これは自分の身を守るためだ。痛い思いをするのは必ず、生身むき出しの自転車側なのだから。
自転車事故に備える
加害者になっても被害者になっても、事故は人の一生を大きく変える破壊力を持つ。できるだけ関わらずに過ごしたいものだ。
そのための秘訣をいくつか。
1.「だろう運転」をやめて「かもしれない運転」をすること
2.自転車保険には必ず加入する。なるべく示談交渉代行サービス付きを選ぼう
3.明るい色の服を着るほか、ライト・反射材を複数装着して目立つように
4.車道の左側をクルマと同じ方向に走ること
5.ミラーを装着して後方から来るクルマの情報を把握しながら走ること
備えあれば憂いなしである。巻き込まれる事故もあるから絶対とは言えないが、意識して乗っていれば防げる事故は多い。
最後に
正月早々、S級の競輪選手がトラックにひき逃げされたというニュースが飛び込んで来た。やはり交差点の事故で選手は重体だそうだ。
ひき逃げで競輪選手が重体 静岡・夏目新吾選手 – 社会 @nikkansportsさんから https://t.co/VpmjCSZ8TB #競輪 #ひき逃げ
— 日刊スポーツ (@nikkansports) 2017年1月5日
一日も早い快復を願うが、このニュースでも分かる通り自転車はクルマ(特に大型車)から見えていない。歩道を進んでいれば更にドライバーの意識外なので認識されにくい。
とりわけ子ども達にはクルマの運転体験がない分、大人達がドライバー心理を教えて自分たちの頭で考えさせることを始めたい。交通事故はインフラ整備、教育・広報、取締りの3つを推し進めていくことで更に減らして行ける。
自転車が市民権を確立するまで、もう少し時間はかかると思うが、今から対策を始めれば未来は確実に明るい。