交差点で左折専用レーン、自転車はどう進むべき?

FRAME編集部では自転車に乗っている時に遭遇する場面を例に、実際にどんな行動が良いのか考える連載を行っています。

前回の車のドアが急に開くシチュエーションに続き、今回は第三弾として今回は以下のシチュエーションについて考えてみたいと思います。

この状況で何を考え・何をすべきか、FRAME編集部で日本で一番真剣に自転車乗りの権利を考えていると理解しているNPO法人自転車活用推進研究会事務局長の内海潤さんに回答をお願いしました。

内海さんのコラムに移る前に、FRAME読者の回答を見ていきましょう。

左側車線をさける派

やむを得ず歩道を徐行する派

直進派(ケース・バイ・ケース)

あなたはどのように考えますか。それでは内海さんの見解を聞いてみましょう。

今の道路は自転車のことを考えて作られていない


1960年代後半から毎年倍々ゲームで自家用車が増え、飛躍的に交通事故も増えた、いわゆる交通戦争を経験した我が国は、事故を減らすため自転車を歩道に上げて歩行者と共存させる道を選んだ。

この判断が欧米諸国と日本との決定的な政策相違点だったが、当時の役人たちは正しいと信じて疑わなかったし、やがてクルマが減って自転車がクローズアップされる時代が来ようとは夢にも思わなかった。やがて自転車がいなくなった車道に左折専用や右折専用の車線、Y字やX字などの変形交差点も積極的に導入、さらに三灯式信号機に矢印式信号機まで駆使して今日まで何とかやってきた。

当時は、とにかく交差点から如何に早くクルマを捌くかという命題が先にあり、自転車は全く想定されなかったことが、現代になって新たな問題を引き起こしている。

消えゆく歩道橋や自転車横断帯……過渡期にある今

道交法は複雑怪奇で一般市民には理解できない代物になっているが、辻褄は合っていることに驚く。日本の官僚は優秀なので情勢の変化に対応して絆創膏を重ねて貼り合わせて来たから、一見しただけでは穴が見つからない。普通自転車という新たな定義まで作って自転車を歩道に上げただけでなく、自転車が歩道を通って目的地まで辿り着けるよう交差点では横断歩道脇に自転車横断帯をくっつけ、歩道橋にスロープまで付けて押して上がれるようしてきた。

ところが設置から半世紀ほど経った現在、老朽化に加えて使う人の減少が拍車をかけ歩道橋は各地で撤去が相次ぎ、自転車横断帯は事故の温床だと指摘され姿を消しつつある。

一方で歩道という天敵不在の新世界を与えられた自転車は半世紀の間に徐行義務を忘れて横暴を極め、歩行者を脅かして走るのが当たり前になった。全体事故件数が減って事故死者数も年々減少する中で自転車と歩行者の事故が一向に減らない事態を重く見た警察庁は従来の指導方針を転換し、平成23年10月25日に自転車の車道(左側)走行の徹底を各県警察本部へ通達した。我々は今、歴史的な揺り戻し期(過渡期と呼んでもいい)の渦中にいる。

左折専用車線から直進するには


第一車線を走っていると、いつの間にか、そこが左折専用車線になっていることがある。直進したい自転車は一体どうすればいいのか。こんな質問を時々いただく。テレビ番組で自転車を扱う際にも何度か取り上げられたテーマだが、結論から言うと左折専用車線から直進すればいい

こう言うと昔はテレビ局や自活研事務所に抗議の電話が入った。曰く、第二車線(直進専用)へ移動して直進するのが正しいという内容だ。中には警視庁に確認したから間違いないという人までいた。

電話口に出た警察担当者は自転車のルールを余りご存じないのだろう。さすがに「知らない」とは言えないからクルマを想定して回答したに違いない。交通管理者でさえ間違えるのだから、一般市民においては何をか言わんやである。本来行政は市民を迷わせてはいけないが、過渡期なのでやむを得まい。

では具体的に、どう対処すべきか


左折専用車線から直進すればいいことは分かった。では、具体的に前方をブロックしているクルマをどう追い越して直進すればいいのかという話をしよう。道交法第十八条と第二十条を足すと分かるのだが、第十八条に「車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き」と前置きがあって、自転車を含む軽車両は車道の左側端に寄って走ることと書いてある。

ところが左折専用車線がある場合は複数の車両通行帯があるので、自転車は左側端を走らなくてよい。第二十条に車両は例外を除いて道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行するとあり、自転車は例外が認められていないので第一車線を走ることになる。

つまり複数車線ある場合に自転車は第一車線のどこを走ってもよいと解釈できるので、前方に進路を邪魔するクルマがある場合は第一車線の右端を通って追い越せばいい

将来は自転車専用信号機の設置も

現在、我が国では三灯式信号機(矢印式含む)と人型二灯式信号機しか認められていないが、諸外国では自転車専用信号機が活躍している。日本にも一方通行出口に自転車専用と書かれた信号機はあるが、灯火が自転車のマークになっていないので外国人の多くは理解できないだろう。

JR田町駅付近に札の辻という交差点があって左折車が多く、いつまで経っても自転車が直進できないという声が多かったが、最近になってナビラインが整備されたのに加え信号の運用を変更して青信号現示の前に直進矢印が8秒間出るようにした。直進矢印の間、左折車は発進できず直進車と直進自転車が先に発進できるようになって不満の声は消えた。

このように現状ある物の組み合わせや運用の変更で対応できる場合もあるが、将来的には分かりやすさを優先させ、Y字交差点などにも自転車の走行位置を明示すると共に自転車専用信号機の設置を認めてもらいたい。どうしても横断歩道を使わなければ渡れない交差点が残るのは仕方がないものの、車道を走る人が増えて行く中で彼らを迷わせてはいけない。例えば、デンマークでは自転車専用信号機はクルマの信号機より5秒間早く青になり、同じく5秒間早く赤になる時差式を採用している。この5秒間が巻き込み事故を減らす効果を生んでいるが交通の乱れは起きていない。これから我が国が自転車先進国に学ぶ点は山ほどある。

FRAME編集部より

いかがでしたか? 内海さんの回答は前方に進路を邪魔するクルマがある場合は第一車線の右端を通って追い越すというものでした。

またFRAMEのTwitterで回答を募集したツイートでは、大きく2つに意見が分かれていました。第二車線に出る、または歩道に上がり徐行をするというものでした。

こうした問いをきっかけに、あなたも安全に自転車の法律について、また安全に走行することについて改めて考えてみてくださいね。

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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