「逮捕される?」自転車乗りの権利を日本で一番真剣に考える*自活研事務局長に交差点での乱横断について質問した

FRAME編集部では自転車に乗っている時に遭遇する場面を例に、実際にどんな行動が良いのか考える連載を行っています。

今回FRAME読者の皆さんと考えたいのは交差点において以下のような乱横断と呼ばれる走行をする自転車についてです。

第六弾として今回はシチュエーションについて考えてみたいと思います。

この状況で何を考え・何をすべきか、FRAME編集部で日本で一番真剣に自転車乗りの権利を考えていると理解しているNPO法人自転車活用推進研究会事務局長の内海潤さんに回答をお願いしました。

内海さんのコラムに移る前に、FRAME読者の回答を見ていきましょう。

「スポーツ自転車に乗るようになってより目につくようになった」

「いい大人でも守れていない人がいる」

「いや、そもそもルールを知らないのではないか?」

あなたはどう考えましたか?
それでは内海さんの回答をお読み下さい。

いつもは車両、時々歩行者のご都合主義

自転車で車道の左側を走ってきたのに、目の前にある三灯式信号機が赤だと突然右へハンドルを切って横断歩道を渡りだし、歩道へ上がって直進(あるいは車道右側を逆走)、横断歩道の人型二灯式信号機を無視して渡り、再び左へハンドルを切って横断歩道を渡ってから、左車線に戻って何事もなかったかのように走り続ける人を過去に何度か目撃している。一般に乱横断と呼ばれるが卍型横断と呼ぶ向きもあるようだ。いずれにしても交通違反をしている。

目の前の三灯式信号機を無視して直進するのと何ら変わらないが、本人にしてみれば合法行為だと言わんばかりだ。本来は停止線を越えた時点で違反なのだが、これまでは警察官も自転車の交通違反は注意してこなかった。1970年代に認めた時点でグズグズになってしまった緊急避難時の自転車の歩道通行。道交法第六十三条の四の三に書いてあるが、解釈は人それぞれだ。

ただ、危険だと判断して歩道へ避難するのと赤信号を無視するのとでは意味が違う。一方は避難行為であり、もう一方は交通違反行為だ。一緒くたにしてはいけない。

時間の節約が事故を生んでは意味がない

本人は少しでも赤信号の待ち時間を稼いで先へ進みたくて取った行為だろうが周りは迷惑している。他にも歩道がらみだと、左右確認もせずノールックで突然車道へ飛び出す輩がいるが、正直肝を冷やす。交通参加者という意識を持ち、周りの参加者とコミュニケーションを取って走りたい。最近の若い人たちの多くは免許を取らないので中には交通法規を知らずに自転車に乗って人もいるだろうから、法治国家として最低限のルールを教える必要があるが、座学は効果が期待しにくいので、ひたすら路面にピクト(絵)と矢印を描く。赤信号で進んでいいかどうかはしつけの範疇(はんちゅう)なので親の責任。それが守れない人は取り締まることで痛い目に合って覚えてもらう

肝心なことだがルールは何のためにあるのかということ。道交法第一条には道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とすると書いてある。つまり交通参加者ひとりひとりが気持ちよく安全に往来できるようにルールを作ったよと書いてある。

法の精神を考えると、自分勝手にルールを変えて運用してはいけないと気づくはずだ。それで事故を起こしたら急いだ意味すらなくなってしまう。

今後は出来なくなるはず

この稿の別のテーマでも書いたのだが、14項目の危険行為を明示して違反に対し摘発できるよう2015年に道交法の運用を一部改正した。乱横断には信号無視と安全運転義務違反が含まれるが、どの違反で調書を作るのかは摘発した警察官によって異なる可能性がある

本来なら違反によって罰金額等は異なるが、この改正で回数カウントだけして起訴はせず3年に2回の摘発で講習を受ければ許されることになったから、仮に自転車の酒酔い運転で捕まっても100万円以下の罰金または5年以下の懲役が適用されることはないはず。もちろん事故を起こせば、その限りではない。

いずれにしても今後は自転車の交通違反についても見て見ぬふりが減る可能性が高いので、普段から交通ルールを守って運転するよう心がけてほしい。

自分の子どもにも胸を張って教えられるか

お子さんがいる方であれば、今後自転車で一緒に出かける機会もあるだろう。お子さんに自転車のルールについて訊かれて親らしい回答ができるようしたいと思うのは当然だが、子どもたちは思いもしないことを訊いてくる。なんで? どうして? 親として嬉しい反面、時には面倒だなと思う時がある。自転車のルールについて親であるあなたが間違ったことを教えてしまうと子どもは素直に信じてしまう。この責任は重いので、予習しておくことをお勧めする。難しいことは必要ない。赤信号で止まるのは当然だが、信号機のない生活道路の交差点で多くの小さな命が失われていることを知っておいてほしい。

止まれの標識があるなしに関わらず、自分の命は自分で守る必要があることを、どうか、いまだ野蛮な日本の交通環境を生き抜かなければならない子どもたちに教えてあげてほしい。クルマのドライバー心理なんて子どもたちには分からないから、親が噛んで含めて教えるしかない。

我々が思っているほどドライバーには自転車が見えていない。交通事故で我が子を失ったら、と思うだけでもゾッとする。

いかがでしたか? FRAMEのTwitterで回答を募集したツイートでは、昔からこうした乱横断を繰り返す自転車乗りがいたという指摘があった一方、そもそも自転車に乗っている人がそこまで交通ルールを知らないのではないかという鋭い指摘もありました。

交通ルールを知らないのではという点については、内海さんの回答の通りは車の免許を取ったことがない人は真剣に学んだことがないという背景があるのではないかと思います。

こうした問いをきっかけに、より安全に自転車に乗るためにどうするべきか今一度考えてみませんか。人通りの多い交差点、わずか数分待てなかっただけで事故を起こしては元も子もありませんよ。

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

あわせて読みたい!

アバター画像

WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

他の記事も読む

pagetop