こんにちは。ITジャーナリストの甲斐寿憲です。今回より、ITジャーナリストの私がロードバイク沼にハマっていく連載をFRAMEさんで執筆させていただくことになりました。ITジャーナリストということで、皆さんがいつも読まれている自転車系メディアの記事とは少し毛色が違うかもしれませんが、初心者の方やこれからロードバイクを購入したい人も楽しめる内容にしていきたいと思っています。
簡単にですが私の紹介をしていきましょう。IT関連、特にモバイルマニアの方ならご存じのかたもいらっしゃるかもしれません。IT系のWebメディアや雑誌にてスマートフォンを中心としたデジタルガジェットのレビューやイベントレポート、海外取材記事などを執筆してきました。そんな私ですが、こっそりとスポーツサイクル好きなんです。ロードバイクは所有していなかったもものの、クロスバイクは7~8年ほど乗リ続けております。ということで、やっと(ずっと書きたかったという意味)自転車メディアのFRAMEさんで執筆させていただくことになりました。そして、これを機に私もロードバイクデビューをすることにしました。2017年はロードバイクで「ブルベ」に挑戦したいのです。
ブルベとは、タイムや順位にはこだらず、制限時間内での完走を認定するロングライドのサイクリングイベントのことです。日本では、オダックスジャパンが実施、認定している自転車での長距離ライドイベントのことをさします。参加者は200km(またはそれ以上)のコースをPoint of Control(PC)というチェックポイントを通過して、制限時間内にゴールを目指すというものです。あと、ロードバイクに乗って日本各地へ旅したいんです。大人の趣味って感じがしませんか?目指せランドヌール(旅人)です。
大人の財布の中身は厳しい
メーカーのWebサイトや専門ショップの店頭で確認すると、ロードバイクの価格というものは、一般的な感覚ではけっして安いものではありません。ノート型パソコンが3万円で買える時代に、10万円、20万円といった金額を自転車のために出費することになります。これまで乗っていたクロスバイクも8万円程度のものでしたし、割り切って「大人の趣味なんだから」としても、結構な高額です。学生時代に抱いていた「社会人になれば収入も増えて自分の好きにいろいろなものが買える」という甘い認識は、実際にこの歳になってしまうとこっぱ微塵に砕け散っていますので、なんとも勇気のいる話です。
ではなぜロードバイクって高いのでしょうか。考えてもみてください、ロードバイクって人力で最速の乗り物といっても過言ではないんです。高性能なものが高いのは自転車のみならずスマホや自動車でも同じです。開発費や仕様パーツに至るまで普通の自転車とは違うのですから、高額になるのは当たり前なんです。
なのに「なぜ高いんだ」という感覚になるのは、あくまで個人の見解なのですが、そもそも日本における自転車の適正価格の基準が安いからだと思うのです。ホームセンターや量販店で売っているママチャリ(シティーサイクル)が1万円前後で購入できたりするものですから「自転車に10万円!?」と思うのは致し方ないことなのかもしれません。実際、私もその結論に至るまで「やっぱり高よね…」と思っていたのは事実です。
そういうロードバイク購入における負のスパイラルにハマると、少しでも安く購入しようと通販サイトの誘惑に負けてしまうわけです。
通販のロードバイクはどうなんだ?
「とにかく出費をおさえてロードバイクを手に入れたい」と検討し始めるとAmazonや楽天などで販売されている格安のロードバイクが気になりはじめます。「あれ?スペックを落とせば買えるじゃん!初心者だからいいかな…」と思ってしまうのは私だけではないはずです。だって通販なら2万~5万円で買えそうじゃないですか。説明を読んでみても「シマノ製16段変速」、「初心者にぴったり」といった言葉が並んでいます。「ロードバイクは初めてだからここからスタートでも良いんじゃない」と思ってしまうのですが、ここでちょっとした疑問が。通販の格安ロードバイクって、そもそも何でこんなに安いのでしょうか。
ここで、4万円の某格安ロードバイクのスペックを見てみましょう。
・フレーム:480mm アルミフレーム/10.7Kg
・変速機:SHIMANO TOURNEYコンポ 7×2段 14段
・前ディレイラ:SHIMANO FD-A070
・後ディレイラ:SHIMANO RD-A070
・ブレーキ:PROMAX
・チェーン:KMC Z50
・ギア:SHIMANO CS-HG50-8 12-23T
・前後ハブ:Quando
・クランク:42/50T
・タイヤ:700x23C
先ずフレームの重量からですが10.7Kg。自転車はフレームだけではないので、タイヤやコンポーネントも含めると10.7Kg以上の重さということになります。また、変速機のはシマノ社製のTOURNYが採用されています。TOURNYはシマノでも低価格な入門向けコンポーネントです。ブレーキも低価格なPROMAXが使われています。廉価パーツを使って組み上げているからこそ安いわけなのです。
問題はそれが自分のロードバイクの使用目的に支障はないかということです。まず、自転車の軽さはイコール「楽に乗れる」ということですので、重ければそれだけ体力が必要で「ブルベに挑戦したい」と思っている私にはオススメできないということでもあります。さらに電車での移動「輪行」にも不向きだと思うのです。変速もTOURNYでは上位互換性もなく、その後色々と自分好みにカスタマイズしていく上での弊害にもなりそうです。
実はこのような種類のロードバイクは「ルックス車」と呼ばれています。小売価格を抑えるために安価な材料・部品を多用した作りのもので、本格的なスポーツ車に比べると鉄製部品の割合が高く(最近ではアルミ製のものも増えたが)、機能性よりも見た目やコストを重視した設計です。
それではロードバイクルックス車はダメなの?と言えば、それはそれで語弊があるわけで、要は本格的なスポーツ走行には不向きというだけであって、ママチャリ(シティーサイクル)よりカッコよく、ちょっとしたサイクリングやポタリングはこなせる自転車に変わりはありません。むしろ、ルックス車のおかげでスポーツサイクルの入り口の敷居は下がっているといった側面もあると思います。
付け加えておくと、通販で買える低価格車の中にはルックス車といいきれない車種もあります。型落ち(前年のモデル)などで安く流通しているものもありますし、ルックス車といわれているメーカーの中にもしっかりとしたロードバイクのモデルを取り扱っている場合もあるんです。
ただし、通販での購入には大きな問題点もあります。ネット上で調べてみると、通販で買った自転車を街の小売店さんが整備や修理の拒否したという事例も見うけられるようです。理由としては、修理しても店として安全が保障できないためということのようです。一見「自転車屋さんだから、お客の依頼には応えるべきだろう」と思いがちですが、なにも自転車に限ったことではありません。例えば「軽自動車を高級車のディーラーに持ち込んで修理とその後の保証をしてくれるのか?」「ファストファッションのジーンズを高級紳士服店で親切に補正してくれるのか?」と考えればわかると思います。自店で取り扱わないメーカー製のものに対し、ましてや不具合の修理など保証できないわけです。そう考えると通販で自転車を買うということは、自分で保守点検までしっかりできるようになることが前提なのかもしれません。
とりあえず「ブルベにも出てみたい」という私は今回は格安車やルックス車はパスすることにします。といっても、何を選べば良いのやら。色々な自転車をネットで見た上で、お仕事で絡んだことのあるあの人に相談することにしました。都内秋葉原に店舗を構えるサイクルショップ「ラモーンバイクス」の店長・村田氏。通称ラモーンさんです。
10万円代の大人のロードバイク「ROCKET」
とりあえず10万円代を条件としてロードバイクを探します。できれば自分の趣味にあわせた自転車が欲しいところです。私はジャーナリストになる前はグラフィックデザイナーだったという経歴なのでモノのデザインには少しこだわりが強かったりします。あと基本的に「ナンバーワンよりオンリーワン」を好むので、珍しいものを好む傾向です。そういうわけでいろいろなネット上の情報を参考にした上で見つけたのがROCKBIKESの「ROCKET」というロードバイクです。
ROCKBIKESは元FUJIの設計者が立ち上げた大阪の自転車メーカーです。コンセプトがまたいいんです。「上質さと色気が同居する、目立ってなんぼのグラマラスな自転車」。これにも激しく共感しました。
購入するロードバイクは、「ブルベで走りたい」、「色々なところを自転車で旅をしたい」という目的ももちろんなのですが、日々の生活で街乗りとしても利用することになります。ですので都市の景観の中で格好良いという条件も重視したいのです。できれば「大人の道具」としてちょっと悪っぽいもの。そいうい意味で、ROCKETの無骨なフレームに一目惚れしてしまったのです。
ということでROCKBIKESの取扱店一覧を見てみると、以前に他媒体の記事の取材でお世話になったラモーンバイクスさんの名前があります。じゃあということでラモーンさんに聞いてみると「ROCKET?仕様が特殊なので出られるレースは限られるけど、ブルベなら問題ないかな。まあ、むしろ街乗りでカッコいい自転車だよ」とお墨付きの言葉が。というか、最初からラモーンさんに相談しろよ俺。価格も10万円代なのでギリギリOK牧場(古い)です。
さて、そんなROCKETのスペックなのですが、アルミフレームで完成車がシマノ・TIAGRAを採用。TIAGRAは上位モデルとの互換性もあり、街乗り用としては高級、レース用としては入門のコンポーネントです。ブレーキには同じくシマノの105が採用されています。「ぬぬぬ!リア10速か…」とも思いましたが、上位モデルとの互換性があるので、本格的にブルベ参戦のときに11速化してしまいましょう。それを差し引いても、なんだか鮮烈なインパクトがあって欲しくなってしまったROCKETなのです。
実車については、ショップに丁度在庫が無かったので、ラモーンさんの「埼玉サイクルエキスポに展示してあるよ。そこで見ちゃって」という勧めで、さいたまスーパーアリーナへ足を運びました。そこには、ROCKETの新色「Garnet Red」が展示されていました。
埼玉サイクルエキスポのROCKBIKESブースで「ああ!コレコレ!まさにコレ!(俺の欲しいのはMatte Blackだけど…)」とジーっと舐めるように眺めていると、メーカーの中の人が近寄ってきます。「ひょっとして、甲斐さんですよね?ラモーンさんから聞いてますよ。ライターとしてこれでブルベに挑戦するって面白すぎるじゃないですか!ROCKBIKESとしてもできるだけのご協力はさせていいただきますよ」とのお言葉。ラモーンさん連絡してくれたんだ。さすがラモーンさん、髭が長いどころか顔も広い!と思っていると「まずこれに乗って“もてぎエンデューロ”に出るってラモーンさんから聞いてますよ!楽しみです!」とおっしゃられる…え?それいつ決まったの!?(汗)
さらに「明日、ラモーンバイクスに出荷しておきますので、来週には納車できると思います」とにこやかに話すROCKBIKESさん…確かにこれを買うとは言ったけど、明らかにラモーンさんに仕組まれている気がするのですが、ええい!買いましょう!そして始めましょう!むしろROCKET欲しかったんですから。優柔不断な性格をラモーンさんに見透かされて、明らかに背中をおされてしまったようです(悪い意味ではなく)。
こうやって私とROCKETのロードバイク生活がスタートすることになったのです。
今後の展開として、ROCKETを購入し自分色にカスタマイズ。そして日本各地のサイクリングロードを走りつつ、ブルベやエンデューロなどに参加したいと思います。ITジャーナリストの私が徐々にロード沼にハマり、ROCKETがカスタマイズされていく姿をお届けしていきます。
ということで、次回は納車の流れや、はじめてのロードバイクの注意点をご紹介しようと思います。