「自転車速くなりたければ腸のことを真剣に考える」時代が来た
腸内のバクテリアを大切にする「腸活」ブームが続いていますね。ヨーグルトやキムチなどのからだによいバクテリアを含む食品を積極的に食べたり、腸内のバクテリアのエサとなる食物繊維の多い食事を摂ることで腸内フローラ(細菌叢)が豊かになり、その結果アレルギーが軽快する、免疫力が上がる、肥満や生活習慣病が改善する、精神的な不調にも効果がある…などとさまざまな健康効果が期待されています。
最近では、どうやらサイクリングなど運動をすることも腸活の一環になるのではないか、あるいは腸内フローラが充実するとスポーツの身体能力もアップするのではないかという研究が活発になっています。これはサイクリストとしては見過ごせないので、調べてみました。
強いアスリートは豊かな腸内フローラを持つ傾向
アスリートと腸内フローラの関係について世界の注目が集まったきっかけになったのは、アイルランドのトップレベルの男性ラグビー選手40人の腸内フローラを調べたところ、一般男性よりも、腸内バクテリアが種類も数も格段に多かったという2014年の発表でした。一般的に腸内のバクテリアは種類や数が多いほど健康状態がよい指標とみなされているので、多くの研究者が「やっぱり!」と膝を叩いたようです。
動物での実験ですが、カゴの中に回し車を入れて好きなだけ運動できるようにしたラットと、回し車がなく運動できないラットでは、前者のほうが健康と関連づけられているタイプの腸内フローラになり、バクテリアによる酪酸という短鎖脂肪酸(←からだに良い)の生産がおよそ倍になっていたという報告もあります。
やはりマウスでの実験ですが、乳酸菌の一種を与えたマウスは運動能力や筋肉量がアップしたという実験結果も、いますぐにもヨーグルトやキムチを買いに走りたくしてくれます。
また、心肺能力の指標となるVO2 Maxが高い人ほど腸内に持っているバクテリアの種類が多かったという報告もあるのです。
運動すると腸内フローラが充実するのか。それとも腸内フローラが充実するから運動能力が上がるのか。どちらが先なのかはまだよくわかっていませんが、この2つに強い関係性がありそうなことはほぼ確実になってきました。
なぜ腸内フローラが充実すると運動能力が上がる?
ひとつの推測としては、腸内フローラがいい状態だと、バクテリアが作り出す酪酸などの短鎖脂肪酸や抗酸化物質が多くなり、それらが腸を始めとして免疫系、循環器、神経、筋肉などなど体中の組織の効率を上げるからではないかと考えられています。腸内フローラはもはやからだの調子を整える臓器だという声もあながち大げさではなさそうです。
プロスポーツの世界では、すでに優秀な選手たちが持っている腸内バクテリアの分析や食事方法の研究が盛んに行われているとか。オリンピックで腸内フローラドーピング(?)が話題になるのも時間の問題かもしれません。
(参考文献)
Exercise and associated dietary extremes impact on gut microbial diversity