ブルベとはフランス語の「Brevet」。「認定」を意味します。「ブルペ」じゃないよ「ブルベ」です。制限時間内で定められたルートを通っての完走が認定される長距離の自転車イベントです。
目次
ブルベの特徴
- 距離:日本での開催は200km以上
- ノーサポート:他者からのサポートは無しです(コントロールポイントを除く)。ただし参加者同士の助け合いは大切です。
- タイムや順位には拘らない:ブルベはレースではありません。
- ロングライドのブルベを走る人を「ランドヌール」と言います。女性は「ランドヌーズ」です。
ブルベの組織
ブルベは認定する機関によって世界中にいくつもの種類があります。そのうち、日本の「AJ(Audax Japan)」は下記2つの機関のBRM(Brevets de Randonneurs Mondiaux)などを日本国内で統括しています。
- ACP( Audax Club Parisien )パリにあるサイクリングイベント開催団体。1904年創設。ヨーロッパではブルベのことをACPの名称から「オダックス」と呼ぶことも多いそうです。
- RM( Randonneurs Mondiaux )1983年にパリにて創設。主に1200km以上の長い距離の認定に携わるサイクリングイベント開催団体。
BRMの距離とSR
①ACPやRMの認定するBRMなどの距離は…
- ACP認定—–200,300,400,600,1000,PBP1200km
- RM認定——1200km以上(PBPを除く)
②SR(Super Randonner)とは…
- 1年でBRM200・300・400・600kmの各BRMを完走すると得られる称号。認定とは違うが、記念メダルを購入できます。
- 各距離よりも長い距離の認定で代替可能(例:200・300・400・600の代わりに300・300・400・600で申請可)。600kmを4本で申請してもOK。ただし、600kmはたとえ1000kmブルベを完走しても代替できません。
- 1年で2セットでダブルSR、3セットでトリプルSRなどと呼びますが、それらは公式ではなく、実際に与えられるSRは1年でひとり1つのみです。
制限時間
600kmまでは15km/hです。
200km:13時間30分
300km:20時間
400km:27時間
600km:40時間
食事や睡眠時間、信号ストップなどすべて含めたトータルの時間です。
600kmを超えると少しずつ制限時間はゆるやかになります。
PBPとは
- PBP(Paris–Brest–Paris Randonneur) は4年に1回ACPの主催により開催される伝統あるブルベです。パリ郊外をスタートしブルターニュ半島の先端の街ブレストまで、片道600km往復1200kmのコースを参加者自らの力で完走を目指すBRMの最高峰です。次回開催は2019年です。
BRM以外のブルベ
ほかに日本で開催される主なブルベを紹介します。
- フレッシュ:「矢」という意味のFlecheは、24時間で360km以上のあらかじめ申請したルートを、3~5人のチームで走ります。
- SR600:距離600km、獲得標高1万m以上の山岳ルート。走る日程は自分で決める常設の「パーマネント」コースで、ランドヌール部門とツーリスト部門とがあります。BRMと違い、PC(コントロールポイント)でも他者のサポートは認められません。日本では、SR600Fuji(オダックス埼玉)、SR600 Nihon Alps(オダックス埼玉)、SR600北関東(AJ宇都宮)、SR600四国山脈(AJ岡山)の4コースがあります。
ブルベに参加するには
参加条件
- 20歳以上:上限はありません。20歳以上なら何歳からでも始められます。
- 賠償付き保険に加入:「保険」は必須です。ブルベも保障対象なのかどうかは、加入している保険会社で確認してください。
- サポート無しで走れる:ブルベは誰かの力で走らせてもらうものではありません。
以上をふまえたうえで「ブルベは危険を伴うスポーツである」認識のもとに参加を判断してください。
申込方法
- インターネット上で、各主催クラブから申し込みます。スポーツエントリー利用が多いようです。主催クラブにより、募集時期など様々です。各主催クラブのサイトを確認してください。
- 初めて参加する場合は、獲得標高の少ないルートやどこでやめても電車が近くに通っているルートをお勧めします。いきなり400km以上の長距離や、200kmでも夜スタートで夜間走り続けるものは避けた方が無難です。BRM名で「ルートラボ」などで調べると前年までのルートを見つけられることもあります。ブログやTwitterを検索するのも手です。
開催予定一覧
- 開催期間は1月から10月です。
2.日本の主催クラブ
日本の主催クラブは24団体あります。(2017年4月現在)
北海道 | AJ北海道 / ランドヌール札幌 |
東北 | ランドヌール宮城 |
東京 | AJ西東京 / ランドヌ東京 / AJたまがわ / AR日本橋 |
関東 | AJ神奈川 / AJ宇都宮 / AJ千葉 / オダックス埼玉 / VCR横浜あおば / AJ群馬 |
中部 | オダックスランドヌール中部 / AJ静岡 / ランドヌールクラブ名古屋 |
関西 | オダックス近畿 |
中国・四国 | AJ岡山 / AJ広島 / AJ四国 |
九州 | AJ福岡 / ランドヌール熊本 / AJ長崎 / AR鹿児島 |
3.申込後から出走まで
エントリが済んだら、出走に向けて準備をします。
キューシートを入手する
キューシートとは、スタートからフィニッシュ(及びゴール受付)までの走行ルートやコントロールポイントの通過時間の範囲などを示した表のことです。事前に主催クラブのWebサイトに掲載されており(多くの場合Excelファイルです)それを元に当日走ることになります。
スタッフは直前に試走を行うので、最終版の掲載は数日前になることもあります。
掲載されたキューシートを加工して印刷し見やすいように持ちます。(印刷せずスマホやタブレットで参照する人もいます。)キューシートが走行のすべての基本ですが、その持ち方は各自それぞれの工夫です。ほかに主催者からコマ図が提供されたり、自分でコマ図を作成する人もいます。
GPSルートをいれる
キューシートだけではなく、それをもとに作成したルートをGarminなどのGPS機器に表示させて走る人も多くいます。「ルートラボ」や「Ride with GPS」「Strava」などで自分で作成します。
主催者によっては、参考ルートを掲載していることもあり、その場合ファイルをダウンロードして使うこともできます。
装備
オダックスジャパンのウェブサイト及び参加するBRMの主催クラブのウェブサイトに記載されているレギュレーションに従って準備してください。
ライトや反射ベスト、ベル、ヘルメットなど必須ですが、ライトの個数など、距離や主催クラブによって多少違いがあります。すべて自分と他者の安全のための物です。よく読んでしっかり準備してください。
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DNS連絡
万一、エントリ済みのBRMに参加できなくなった場合(=DNS : Do Not Start)は、必ず主催者に連絡しましょう。
スタートからフィニッシュ、ゴール受付まで
受付
所定の受付時間に所定の場所に集合し、受付を行います。(住宅街のこともありますので、近隣の迷惑にならないように。)所定の提出物がある場合は提出し、ブルべカードを受け取ります。
場合によってはブルべカードは事前に郵送されることもあります。その場で中身に記載することもありますのでスタッフの指示に従ってください。ブルべカードはとても大切です。紛失すると完走しても認定されません。汚さず濡らさないようにカードケースやビニールなどを準備してください(81mm×130mm)。
ブリーフィング
受付後、ブリーフィングが行われます。注意事項や時にはコースの変更など、大切な話があります。キューシートを見ながら説明を聞く人が多いです。その後自転車などの装備のチェックを受けスタッフにサインをもらい、スタートします。
コントロールポイント
PC(point de controle)。ルートの途中に数か所設けられたチェックポイントのことで有人と無人があります。有人の場合はスタッフが通過の印をブルべカードに記載します。無人の場合はコンビニのレシートや、指定の構図の写真撮影で通過証明とします。
現在日本では多くの場合、指定のコンビニのレシートをゴール受付で提出となっています。規定の時間より遅いのはもちろん、早い場合も認定となりません。
走行途中でどこかに寄っても構いません。美味しいお店や観光スポット、きれいなトイレ、PC以外のコンビニ、トラブル時の自転車店などあらかじめ調べておく人も多くいます。仮眠場所も自分で確保します。ルートを外れた場合は、外れた地点まで戻ってリスタートします。
DNF連絡
もしも途中で走るのをやめることになった場合(=DNF : Did Not Finish)は、必ずブルべカード記載の連絡先に連絡します。「誰かに口頭で伝えた」「そこにいたスタッフがわかっているはず」等はトラブルのもとなので、自分で指定の連絡先に伝えてください。DNF後は自分で交通手段を手配・確保して帰宅します。スタッフによる回収を期待してはいけません。
ゴール受付
フィニッシュ後はゴール受付をします(ゴール受付が郵送の場合もあります)。受付会場に行き、ブルべカードとPCの証明(コンビニのレシート等)をスタッフに渡し手続きします。必要であれば完走のメダルを購入することもできます。ブルべカードはその場で提出し、認定作業後に郵送で返却されます。
帰宅
帰宅するまでがブルベです。最後までご安全に!
ノンサポートの精神
オダックス創世期、前を走る仲間の車の後ろについて走るなど、他者のサポートを受けて他の人より早く走ろうとばかりする人がいたそうです。それは過度の競争につながります。なので、「ノンサポート」で走りきる人を公に認めて讃えようというのが元々の精神です。
外からのサポートに頼らず、他人におんぶに抱っこにならず、準備し、走り、トラブル対処をし、判断をするということが求められていますが、それは必ずしも「ひとりで走れ」という意味ではありません。参加者同士がお互いに助け合うことを否とするものではないのです。
もちろん「サポート無しで走れる力」は必要で、他人任せで走るのは(たとえば荷物を誰かに持たせる、ルートを準備せずずっと誰かをナビ替わりにして走る…など)理念に反します。
助け合いは必要
でも走者同士がお互いに助け合い、励ましあい走るのはごく自然なことです。競走やレースではないのですから。複数で走ることは安全面でも利があります。日本では、夜中にひとりで走ってもあまり不安はないかもしれませんが、事故などが起こったとき、一人ではないというのは強みではないでしょうか。
単独走はリスクが高いことを認識する
PBP参加者の声を聞いたところ、多くの国で単独走はまれで、特に女性をひとりきりで走らせる国はほとんどないそうです。女性だから置かれているリスクまで背負わされるのは公平ではないでしょう。
危険な時間に危険な場所を単独で走らないというのも重要なマネジメントです。日本は安全でコンビニも多い国なので忘れられがちですが、女性ももちろん男性も(特に夜中に)ひとりで走るのはリスクが高いことを念頭に置いて、あまりにも「自己責任!」「ひとりで走るのがブルベ」と思いこまないようにしましょう。
脚が合う人がいれば「ご一緒してもよいですか?」と声をかけあったりすることは、決して非難されることではありません。
そして、自らの力と助け合いで走りきった自分たちをお互いに認め合い讃えましょう。それがオダックスの理念だと思うのです。
text & photos by Hitomi Sugibuchi(SR)