目次
ダジャレから始まります
みなさまごきげんいかがお蕎麦し?(FRAME編集部註:「あそばし?」と言いたかったようです)
おかげさまで第2回を迎えることができたLSD〜Long Soba Distance〜。
改めて趣旨を一応振り返ると「ロードバイクで立ち食い蕎麦を食べに行く、日常の中の小旅行」である。
第2回の今回、テーマは春らしく「春菊」。旬じゃないけど…
思えば春菊というのは不思議な食材で、すき焼きと、蕎麦の揚げ物くらいしか出会わない。
しかも高級な蕎麦屋ではなく立ち食いオンリー。
ハウス物もあるらしいので年がら年中お目にかかれるが、逆に言うとそれだけ需要があるということですわな。
立ち蕎麦界においてはいろんな流派がある気がする。
素揚げに近いもの、かき揚げに近いもの、衣が分厚いお好み焼きみたいなもの…
その中で今回は個人的な「23区内 春菊ベスト3」をチョイス。
あえて言おう。「春菊三国志」であると。
立ち食い蕎麦界の曹操は「甲斐そば」である:大田区大森
ここは大田区大森。
Tour of Japanの大井埠頭周回コースでハードにトレーニングしたあとは、
京急大森海岸駅にほど近いこちらの「甲斐そば」へ。
ご覧くださいこの堂々たるたたずまい。
孔雀が羽根を広げたかのようなこの春菊天、なんと5枚もの若葉を重ね揚げして作られているのだ!
1枚1枚は大葉ほどの大きさで、ここでしか見たことがないかわいいサイズ。
若葉なのでクセがなく、柔らかい。
自家製で販売もしているという生麺と、カツオ薫る上品なつゆと相まって、なんともスケールの大きな1杯に仕上がっている。
この春菊、立ち蕎麦界にあらわれた乱世の奸雄(かんゆう)、曹操に違いない。
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立ち食い蕎麦界の孫権は「丹波屋」なり:港区新橋
曹操の圧力から逃れるように一国(国道15号)を北上し、新橋へと向かう。
新橋〜虎ノ門ゾーンは立ち蕎麦店がひしめく立ち蕎麦パラダイスである。
やはり長いこと営業している店はそれぞれ支持される理由があるのだろう。
駅前のニュー新橋ビルにあるこちらの「丹波屋」もそんな老舗だ。
こちらの春菊天は、天ぷらというより炒めものに近い。
細かく刻んだ春菊をじゃんじゃん炒めて薄い衣でまとめました。的な感じである。
なので時間が経つと昆布の効いたつゆの上でほどけていく。
決して派手ではないが、このバランス感覚がたまらない。
ここの春菊は…孫権だね。
劉備玄徳が立ち食い蕎麦だったらきっと「大黒そば」:豊島区西池袋
新橋から向かうは池袋。電車でもどう行こうか迷うが、
自転車では古川橋からぐるっと明治通りで向かいたい。渋谷や新宿を通るわりに、明治通りは走りやすいのだ。自転車が走れない陸橋やトンネルが無い(池袋過ぎたらあるけど)からかもしれない。途中早稲田辺りにも銘店が多く心惹かれてしまうが、そんな時は腰を上げ無意味な平地ダンシングで切り抜けよう。びっくりガードをくぐって線路の反対、西口側に出るとたどり着くのが超がつくほどの銘店、「大黒そば」だ。
老人に弱い筆者にとって職人一徹な老夫婦のお店であるここは聖地に近い。
自転車をガードレールにくくり、心を鎮め、ちょっとお祈りして(しないけど)ドアを開ける。常連さんの多くが頼んでいるこの春菊天蕎麦。お盆の淵の赤が鳥居に見えて神々しい…
嗚呼もう国宝級のたたずまい…
ここの春菊は戸籍上は春菊だが、本当は布海苔なのではないかと思っている。
だってほら、箸でつまむと…
麺は細麺ながらやや四角い断面でコシがあり、つゆは深〜いところからカツオが薫り出てくる。
やさしい。とてもやさしい。もっと曹操のようにガンガン出て行けば、あるいは孫権のようにもっと早く世に出ていれば、やはりこの人が天下を取っていたのではなかろうか。やさしすぎたのだ。劉備玄徳は…
鼻息荒くまとめると、春菊天三国志は永遠に続くのだ
春菊三国志は終わることのない物語。
今日もまたどこかで新たな英雄が生まれているのかもしれない。
見つけてください。貴方の春菊天の英雄を。
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