2017ドフィネを占う

ツール・ド・フランスの前哨戦「クリテリウム・ドゥ・ドフィネ(Critérium du Dauphiné)」が始まった。ドフィネで活躍した選手の多くが続くツール・ド・フランスでも活躍するのが常なので、まさにファンにとっては「今年のツールを制するのは誰だ?」という予想をするのに、必見のレースなのである。

今年のドフィネで注目すべきは、やはりクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)だろう。3連覇4勝目に臨むフルームは、これまで2月のヘラルド・サンツアー、3月のボルタ・ア・カタルーニャ、4月のツール・ド・ロマンディなどを調整レースとして走ってきて、順調な仕上がりを見せている。今のところ、3連覇に向けて死角は見当たらない。

優勝候補最右翼のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。ツールは白いスペシャルジャージで走る (C)Team Sky
優勝候補最右翼のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。ツールは白いスペシャルジャージで走る (C)Team Sky

昨年のツールでは精彩を欠き、落車の影響もあってリタイアに終わった34歳のコンタドールだが、自分のキャリアの最終章を最高の形で終わらせるべく、ツール制覇への意欲を見せている。ここまで2月のブエルタ・ア・アンダルシア、アブダビ・ツアー、3月のパリ~ニース、ボルタ・ア・カタルーニャ、4月のブエルタ・アル・パイスバスコなどを走ってきて、やはり順調な仕上がりを見せている。

アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)もドフィネで弾みをつけて、ツール制覇を狙っている  (C)ASO
アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)もドフィネで弾みをつけて、ツール制覇を狙っている  (C)ASO

フルーム、コンタドールのライバル最右翼は、何と言ってもフルームの元チームメイト、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。ツール・ド・ロマンディでは総合優勝を飾っており、仕上がりは文句ない。ただ、あまり早い時期に仕上げてしまうと、その後に調子の波が下降線をたどることもしばしばある。ちょっと気がかりなところだ。

フルームが「最強のライバル」というリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) (C)ASO
フルームが「最強のライバル」というリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) (C)ASO

そのほかにも、2008年と2009年のドフィネを制しているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、昨年のドフィネ総合3位のダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)、フランス人のツール優勝候補最右翼のロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)、近年ステージレーサーとしてめきめきと力をつけてきたサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)とエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)も要注目だ。

37歳のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も、まだまだ最強レーサーの一人だ (C)ASO
37歳のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も、まだまだ最強レーサーの一人だ (C)ASO

近年めきめきと力をつけてきたサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) (C)Orica Scott
近年めきめきと力をつけてきたサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) (C)Orica Scott

登坂力の高いエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)も要注目の選手だ (C)Orica Scott
登坂力の高いエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)も要注目の選手だ (C)Orica Scott

フランス人によるツール制覇は1985年のベルナール・イノー以来途絶えており、このロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)にかかる期待が大きい (C)AG2R La Mondiale
フランス人によるツール制覇は1985年のベルナール・イノー以来途絶えており、このロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)にかかる期待が大きい (C)AG2R La Mondiale

また、われわれ日本のファンにとっては、新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)と別府史之(日本、トレック・セガフレード)の出場もうれしいところだ。第5ステージ以降の山岳ステージや総合成績では上位に食い込むことは難しいものの、前半の3ステージでは優勝の可能性もあるので期待したい。

フルームもコンタドールも、あるいは他のツール制覇をめざすライバルたちも、5月は徹底的に高地トレーニングを行い、さらに今年のツールのコースを走り込んできたことは言うまでもない。彼らが5月にほとんどレースを走っていないのは、そのためだ。そこまでしないと、近年のツール・ド・フランスに勝つことはできないのだ。そして、ドフィネはその仕上がり具合を見る格好のレースなのである。

2017クリテリウム・ドゥ・ドフィネ

第1ステージ(6/4)サンテティエンヌ~サンテティエンヌ 170.5km
第2ステージ(6/5)サンシャモン~アルラン 171km
第3ステージ(6/6)ルシャンボン=シュル=リニョン~チュラン 184km
第4ステージ(6/7)ラトゥール=デュ=パン~ブルゴワン=ジャイユー 23.5km(個人タイムトライアル)
第5ステージ(6/8)ラトゥール=ド=サルヴァニー~マコン 175.5km
第6ステージ(6/9)ヴィラール=レ=ドンブ~ラモット=セルヴォレックス 147.5km
第7ステージ(6/10)アオスト~ラルプデュエズ 168km
第8ステージ(6/11)アルベールヴィル~プラトー・ド・ソレゾン 115km

2017クリテリウム・ドゥ・ドフィネのコース図 (C)ASO
2017クリテリウム・ドゥ・ドフィネのコース図 (C)ASO

第6ステージのプロフィール図  (C)ASO
第6ステージのプロフィール図  (C)ASO

第7ステージのプロフィール図  (C)ASO
第7ステージのプロフィール図  (C)ASO

第8ステージのプロフィール図  (C)ASO
第8ステージのプロフィール図  (C)ASO

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WRITTEN BY仲沢 隆

仲沢 隆 自転車ジャーナリスト。早稲田大学大学院で、ヨーロッパの自転車文化史を研究。著書に『ロードバイク進化論』『超一流選手の愛用品』、訳書に『カンパニョーロ −自転車競技の歴史を“変速”した革新のパーツたち−』がある。

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