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「自転車料理本」はもはや1ジャンルに
このところわたしの周りのサイクリストの間でアツ~い話題のひとつが、パフォーマンスを高めるための食事法。「そんなの当たり前じゃん」と食に敏感なジャパンのみなさんはお思いになるでしょうが、これが日本人の目から見てもなかなか魅力的なレベルに到達してきているのです。
この「自転車食ブーム」を牽引しているのが、もはや1ジャンルになりつつある自転車料理本です。味気なくなりがちな栄養成分や摂取タイミングの話はポイントを押さえつつもほどほどに、美しい写真や人気選手のエピソードが散りばめられた、サイクリングファンにはパラパラと眺めるだけでも楽しい仕立てになっています。
フルームも食べた!?あのチーム・スカイのシェフのレシピを2つ紹介
先日発売された『ベロシェフ・イン・ヨーロッパ〜トレーニングとレースのための食事』を書いたチームスカイのシェフであるヘンリック・オッレさんのレシピを、許可をいただいて2つご紹介しましょう。
キヌアサラダ アボカドとインゲン豆を添えて
「サイクリストにもベジタリアンに転向する人が多いけれど、そういう人たちはタンパク質を多く含む植物性の食材を積極的にとりましょう。タンパク質の多いこのようなサラダをたっぷりととって」
【材料(4人前)】
- 赤と黄色のプチトマト 200g
- アボカド 4個
- パセリ 1束
- 赤キヌア 400g
- 水煮インゲン豆 200g
- レーズン 50g
- ライム絞り汁
- オリーブオイル
- 塩・胡椒
【手順】
- トマトとアボカドを大きめのざく切りにする。
- パセリは葉の部分を粗みじんに。
- キヌアは茹でておく。
- キヌア、インゲン、レーズン、みじん切りパセリ、トマトとアボカドをざっくり混ぜる。
- オリーブオイルとライムの絞り汁でドレッシングを作り、4に回しかけ、塩胡椒で調味する。
*写真のようにブロッコリーなどの新芽などを飾ると栄養的にもさらにアップ。
チアシードとヒヨコ豆入りプロテインバー
「植物性タンパク質と良質のオイル、繊維がたっぷりとれ、回復食としても◎。どっしりとした食べ応えなので、小さめに切り分けるのがオススメです」
【材料(20〜25個)】
- やわらかめのデーツ(ナツメヤシ) 30個
- むきクルミ 100g
- ココナツオイル 大さじ2
- チアシード 40g
- カカオニブ(カカオ豆を粗く砕いたもの) 40g
- タヒニ(練りゴマ) 大さじ2
- オートミールフレーク 大さじ4
- ヒヨコマメ粉 大さじ3
- カルダモンパウダー 小さじ1
- アガベネクター 大さじ4
【手順】
- デーツの種を抜き、クルミをやや細かく刻む。
- 材料全てをボウルに入れる。
- よく混ぜる。
- 混ぜたものをジップロックに入れ、平べったくならして冷蔵庫で一晩寝かせる。
- 硬くなったものを適当な大きさに切り分け、アルミ箔で包む(クッキングペーパーで裏張りされたアルミ箔だとライド中に片手でも扱いやすい)。冷蔵庫で2週間ほど保存可。
Velochef in Europe
チームスカイの専属シェフが、マヨルカ、ジローナ、ニース、ロンバルディという4つの自転車の聖地に得たインスピレーションを生かした80のレシピを掲載。自身もサイクリストのヘンリックの自転車旅持ち物リスト+シェフとしての持ち物リストなども面白い!
Velochef
ライド前・ライド中の補給食・ライド後の回復食とお楽しみディナーとサイクリストの食3シーンに分かれた構成。ストックホルムの名だたるレストランのヘッドシェフからチームスカイのシェフとなったオッレ氏の、「プロ選手に効いた」実践的かつ作るのが難しくなく美しい80レシピを掲載。
ハードなツール・ド・フランスを走る選手たちの食欲をかきたてる
このほか、チームスカイと並んでいち早く本格的なシェフと調理設備を搭載したキッチントラックを導入した元サクソバンク/ティンコフ-サクソのシェフだったハナ・グラントさんも、グランツールに帯同した経験を生かし、『ザ・グランツール・クックブック』を出しています。
グラントさんもオッレさんと同じくもともとはファインダイニング系シェフ。ステージレース中、毎日膨大なカロリーを摂取しなければならない選手たちはともすれば食欲を失ってしまいがちな中、見た目や香りなど五感に訴える料理はとても喜ばれたのだそうです。この本も華やかな写真が魅力的。
The Grand Tour Cookbook
グランツールの3週間のためのレシピという想定で選ばれたレシピ本。Nomaのヘッドシェフも知り合いというファインダイニング出身のグラントさんならでは、サイクリストに不可欠な炭水化物、タンパク質、良質のオイルなどを美味しくたっぷりとれるレシピがぎっしり。
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自転車はもはやライフスタイル、だから料理本が必要とされている
プロサイクリストのための、栄養本でなくレシピ本という意味でいち早く注目を集めたのは、補給食などのブランド、スクラッチ・ラボのファウンダーであるアレン・リムによる『フィードゾーン・クックブック』。
タイラー・フィニーなどのコーチをしてきたリムさんは、選手たちが毎日出来合いのシリアルバーやジェルや山盛りパスタにウンザリしているのを見て、忙しいアスリートでも作れ、栄養的にも満足のいくレシピや手作り補給食の提案を思いついたのだそうです。上でご紹介した2冊よりはスポーツ栄養学寄り・実践寄り。
The Feed Zone Cookbook
トレーニング前にさっと作って食べられるエネルギー食、持ち歩きやすい補給食、回復食などシンプルで気軽に作れ、飽きのこない150種類のレシピ本。続編である補給食に絞った『Feed Zone Portables』、家族やゲストにも喜ばれるハレの日レシピ『Feed Zone Table』も人気。
次に待たれるのは「和食で自転車料理本」?
自転車が単なるスポーツや競技から、豊かなライフスタイルとしてさらにファンを増やしている中、サイクリストとしての食カルチャーが生まれてきているのはなんとも誇らしい気がします。我こそはという人は、和食ベースのサイクリングレシピ本を企画してみてはいかがでしょうか?