シクロクロスに挑戦しよう!初心者向け完全ガイド
こんにちは、シクロクロッサーで自転車店店長の向山です。
今回は、私の得意分野「シクロクロス」のお話です。
新年を迎え何か新しいことに挑戦したい方も、そこまで大げさじゃなくとも前からシクロクロスに興味があった方も、2018年はぜひシクロクロスを始めてみませんか?
今回はシクロクロスをやったことがない方の疑問を解決する情報を提供できればと思っておりますので、ぜひご覧ください。
目次
シクロクロスとは何か
▲雪が残る中行われた今年のシクロクロス全日本選手権。不思議なもので、条件が厳しくなればなるほど面白い競技です。
「シクロクロス」を訳すと、シクロ⇒自転車、クロス⇒クロスカントリー。
つまり、オフロードを自転車で走る競技という意味ですね。
(シクロクロスをよく「シクロ」と言っている方がいますが、直訳するとただ単に「自転車」って言ってることになるんです!)
オフロードを自転車で走る自転車にはマウンテンバイクもありますが、マウンテンバイクはアメリカ生まれ。シクロクロスはヨーロッパ(フランス)生まれ。機材も生い立ちも異なるのです。
シクロクロスはもともと寒さの厳しいヨーロッパで、ロードバイクの選手がオフシーズンのトレーニングとして、オフロードを走れるように改造した自転車で近所の公園や森などを走っていたのが由来です。
シクロクロスはロードバイクのオフトレとして人気に
ロードバイクだとスピードが出て体が冷えてしまいますが、オフロード走行は身体が温まりやすいうえにそれほどスピードが出ないため身体も冷えず、悪路でバランスを取るので全身運動になって心肺機能を強化できるなど、オフトレとして理にかなっていたのです。
余談ですが、実は僕は寒いのが苦手です。
元々ロードレースをやっており、寒いのが苦手だから冬に少しでも強度の高いトレーニングが出来るようにとシクロクロスを始めたのですが、冬でもロードバイクに乗るより暖かいし、すぐに心拍も上がるし、狙いどおりでした。
ただ、シクロクロスのレースに出始めてみたら・・・実は、冬とは思えないくらい暑い中でのレースや、雪の中でのレースがあり、過酷な環境下で戦うこともしばしばです。が、そういう自然環境の変化もシクロクロスの魅力だと思います。
シクロクロスで使う機材とは
シクロクロスでは、専用設計のシクロクロスバイクを使用します。
(後ほどご説明しますが、最初はマウンテンバイクでもレースに参加できます。)
▲シクロクロスバイクはドロップハンドルが着いているので、シルエットはロードバイクに似ている。
最近は自転車系メディアにシクロクロスを取り上げられる機会も増え、シクロクロスバイクを見たことがある方も多いと思いますが、ご覧の通り、一見ロードバイクのような形の自転車です。
シクロクロスバイクとロードバイクはどう違うのか?
フレームはロードバイクより振動吸収性に優れたシクロクロス専用設計のフレームを使用し、オフロードを走るために30mmほどの太さのブロックタイヤを装着。ブレーキは泥詰まりしづらいディスクブレーキやカンチブレーキを採用しています。
また、マウンテンバイクのようなフロントギアを排除した「フロントシングル」のマシンが増えているのが近年のトレンドです。
▲ブロックタイヤ、ディスクブレーキ、フロントシングル。細部に目をやるとロードバイクとは異なる部分がいくつもある。
シクロクロスバイクのフレーム素材は?
ちなみにフレームの素材は主にカーボン、アルミ、クロモリなどがあります。
カーボンは重量が軽く振動吸収性も高いので、ミドルグレード以上のフレームはカーボンが主流になっています。
アルミはカーボンに比べて重量が増し振動吸収性も劣りますが、価格が安いためエントリーグレードに採用されています。「とりあえず始めてみたい」という方には充分な性能を持っています。
そしてクロモリは重量がかさむ反面、独特の振動吸収性があり、その乗り味には今も根強いファンがいます。昔、クロモリ素材のシクロクロス車の多くは値段が安く、それがクロモリを選ぶ第一の理由となっていましたが、今は「あえてクロモリを選ぶ」人のために軽量なチューブを使用したものが多く、カーボン並みの価格がほとんどです。
このカーボン、アルミ、クロモリという素材の図式はロードバイクとほぼ変わりません。
ただ、ロードバイクに比べてクロモリバイクの使用率が高いのが、シクロクロスの面白いところです。
フレーム素材別おすすめのエントリーモデル
では、カーボン、アルミ、クロモリそれぞれの入門者におすすめのモデルをご紹介します。
BOMA L’EPICE R CT-XR(ボーマ エピス アール CT-XR)
出典:BOMA
フレームセット価格:185,000円(税別)
カーボン素材のシクロクロスバイクのオススメはこちら。フレームセットでの販売ですが、最近では珍しくなったカンチブレーキ仕様なので、余っているロード用のホイールやコンポを流用すれば、少ない初期投資でシクロクロスデビューができます。
MERIDA CYCLOCROSS400(メリダ シクロクロス400)
出典:MERIDA
完成車価格:159,900円(税別)
アルミでオススメの入門用モデル。メカニカルディスクブレーキ、泥詰まりを考えたインナーケーブル仕様、コンポーネントはShimano105と、入門用としては申し分ないスペックで15万円台の低価格が魅力です。
東京サンエス OnebyESU JFF#801(ワンバイエス JFF#801)
出典:東京サンエス
完成車価格:288,000円(税別)
クロモリのオススメ入門モデルは東京サンエスのJFF#801。
全日本選手権9連覇を誇るシクロクロス界のレジェンドである辻浦氏が設計を担当。決して安いバイクとは言えませんが、クロモリを好むこだわり派も納得の1台です。
シクロクロスバイクとグラベルロードの違い
競技としてではなく、機材としてシクロクロスバイクを検討している方にとって「シクロクロスバイクとグラベルロードの違い」というのは気になるところではないでしょうか。
グラベルロード自体新しいジャンルなので、メーカーによって性能や想定している使用条件が異なりますが、グラベルロードはロードバイクに近い性能を持ちつつ、未舗装路や砂利道などのライトなオフロード走行も得意とするマシンです。
対してシクロクロスバイクはロードバイクとマウンテンバイクの中間のような性能を持っていて、グラベルロードよりもオフロード走行を得意としています。ただ、オンロードでのパフォーマンスはグラベルロードの方が優れています。
▲シクロクロスバイクやグラベルロードはそれぞれ想定した設計や得意分野が異なる
シクロクロスやグラベルロード、さらにはロードバイクやマウンテンバイクの得意分野を簡単にチャートにしてみました。
シクロクロスバイクは、マウンテンバイクより限界性能が低いものの、オフロードを走るのに適しており、それでいて舗装路を走ってもそこそこスピードが出せる。
グラベルロードはロードバイクのように舗装路を高速で走れるうえに、ライトなオフロードも走れる。
それぞれ特徴が異なるのです。
シクロクロスを始めるために必要なもの
では実際にシクロクロスを始める際に必要なものをご紹介します。
まずはシクロクロスバイク
FRAMEをご覧の皆さんはロードバイクをお持ちの方が大半かと思いますが、シクロクロスを始めるためには、オフロードを走れる自転車が必要です。
レースに出たいなら、専用のシクロクロスバイクを用意するのが理想的。各メーカー、入門モデルは10万円台半ば、ちょうど入門用ロードバイクと同じくらいの価格で販売されています。
▲シクロクロスバイクは十万円台半ばからラインナップされている。
シクロクロスレースの入門クラスはマウンテンバイクで参加可能
ちなみに、レースの入門クラスはマウンテンバイクでも出走可能です。「シクロクロスバイクは持っていないけれどマウンテンバイクならある」という方なら、まずは気軽に手持ちのマシンで参加してみるのも良いでしょう。
シクロクロスならではの特徴で選ぶペダルとシューズ
他にも揃えていただきたいのがペダルとシューズ。
ロードバイクに乗っている方なら、ヘルメットもウェアもサングラスも今使っているものをそのまま使用できますが、シクロクロスの場合、マウンテンバイク用のペダルとシューズを使うので、この2つはロードバイク用とは別に用意しましょう。
シクロクロスに最適なペダルとは
マウンテンバイク用のペダルはロードバイク用ペダルと比べて踏み面が小さく、泥詰まりに強い設計となっています。シマノやタイムの製品が代表的です。
シマノのマウンテンバイク用ペダル(SPDペダル)はベアリングの性能が優れており、脱着時のクリック感もしっかりしていて、シケイン(障害物)でのペダルの付け外しが楽なのが特徴です。
▲シマノのペダルは精密な造りが特徴で脱着感が良い。写真は最上級グレードのPD-M9000。価格は14,486円(税別)
出典:Shimano
対するタイムのペダルは、シマノと比較すると圧倒的に泥が詰まりにくいつくり(泥つまり対策性能)となっています。また自社のロード用ペダル同様、独自のフローティングシステムを採用していて、膝への負担が少ないもの嬉しいところです。
それぞれに特徴があり甲乙付けがたいですが、脱着性能や泥詰まり対策性能、何を優先するかで自分に合ったペダルが変わってくることは覚えておきましょう。
▲タイムのペダルは泥詰まりしづらく、タフなコンディションのレースで強い武器になります。写真は廉価グレード12,000円(税別)ですが、脱着し易いイージークリートが付いたATAC XC4
出典:株式会社ポディウム
シクロクロス向けシューズはフィット感や機能性を重視
マウンテンバイク用のシューズもエントリーモデルは1万円前後から商品があります。が、もしシクロクロスのレースへの出場を考えているのであれば、雪や泥のコンディションで自転車に乗ったり降りたり、シクロクロスバイクを担いで悪路を走ったり出来るよう、よいシューズを最初から導入しておくのがよいかもしれません。
私はシューズに関しては、シマノの最上級グレードSH-XC900をオススメしています。
45,000円(税別)と少々値は張りますが、フィット感が抜群に良いシューズです。
▲シマノのSH-XC900はフィット感が素晴らしい。価格は45,000円(税別)。
出典:Shimano
また、シクロクロスは冬の競技なので、ウィンターシューズもオススメです。
ウィンターシューズの分野では世界一のシェアを誇るNorthWaveは特にオススメ。
私も雪が残る中で行われた全日本選手権で使用しましたが、どんなに寒くてもつま先までしっかり血行が確保されてペダリングが楽になりました。
▲私が使っているNorthWaveのRAPTOR GTX。定価29,000円(税別)。
防寒&防水。冷気も泥も砂も、シューズ内に一切入ってきません。
実は近場で気軽に参加できるシクロクロスレース
シクロクロスバイクを手に入れたら、近所の河川敷やダートを走ってみましょう。オフロード走行には、オンロードにはない楽しさがあり、新たな自転車の面白さを発見できること間違いなしです。
そして、せっかくシクロクロスの機材を揃えたなら、ぜひシクロクロスレースに出てみませんか? ロードレースはちょっと難しそうと思っている方も、シクロクロスなら気軽にレースデビューできます。
何故なら、男子は入門クラスから上級者のコースまで4つのカテゴリーに分かれており、最初はビギナーが集まるカテゴリーから参加出来るからです。周りはみな同じレース初心者、臆することはありません。
もちろん、レース出場に当たって、基礎練習などトレーニングは必要ですが、「腕試しをしてみたいな」と思ったら、迷わずレースにエントリーしてみましょう。
ちなみに、女性のクラスは3つのカテゴリーに分かれており、男性に関しては、40歳以上のマスターズカテゴリーもあります。40歳上の男性は通常カテゴリーか、マスターズカテゴリーかどちらか好きな方を選んで参戦できます。
シクロクロスのレースに気軽に参加できるもう1つの理由は、近場でレースが開催されていることです。
例えば関東なら7都県すべてでレースが開催されていますし、関西には「関西シクロクロス」というシリーズ戦があり、毎週のようにレースが開催されています。
また、国内で最も歴史のある長野や東北、東海をはじめ、各地方でレースが開催されています。
▲2月に開催されるシクロクロス東京は砂浜のセクションが名物。レインボーブリッジをバックに開催される。
各地のレースの情報についてはAJOCC(一般社団法人日本シクロクロス競技主催者協会)のホームページをチェックすればレースカレンダー等が載っていて便利です。(ただし埼玉のGP-MistralはAJOCC非加盟)
シクロクロスの練習はどこで、どのように行うか
先ほど、シクロクロスのレースに出るために基礎練習は各自で行う必要があると書きましたが、どのように練習するのかをお話ししたいと思います。
公園での練習は事前確認とマナーが必須
まず場所について、近くに山がない場所に住んでいても、近所の河川敷や公園で練習が行えます。公園に関しては、自転車の乗り入れを禁止している公園もあるので、事前に乗り入れ可能か必ず確認しましょう。
私の家のすぐ近くの公園は自転車の乗り入れ可能ですが、メインのスペースは小さい子供も多いので、端の方の雑木林みたいなエリアで走るようにしています。他の利用者の妨げにならないことがマナーだと心得ておきましょう。
▲家の近所の公園での練習。球場裏の人があまり来ない場所や端の雑木林のようなエリアを選んで走ります。
そういう意味では、河川敷の方がスペースが広く、誰も使ってないエリアを見付けて練習するには最適でしょう。私のショップでもシクロクロスの練習会はほとんど近くの河川敷で実施しています。
練習にはミニコーンを活用
私のショップで行っている練習会の風景。近所の河川敷でミニコーンを置いて練習しています。
場所の確保が出来たら、サッカーの練習などに使う小さいコーンを使って、8の字練習でコーナーリングスキルを鍛えたり、目印を置いてシケインの練習を行います。また、ミニコースを作って短時間の模擬レースなど行っても楽しいです。
講習会や練習会で学ぶ
とは言え、一人ではどんな練習をすれば良いか分からないという方は、各地で開催されている講習会や練習会に参加すると良いでしょう。
有名な所では元全日本チャンピオンの三船雅彦氏が関西でシクロクロススクールを開催しています。また、東京では自転車乗りが集まるカフェとして有名な多摩川サイクリングロード近くのCROSS COFFEE(クロスコーヒー)で毎週木曜日の早朝に練習会を開催しています。こちらは仕事前に参加できる練習会で、早朝から熱気が凄い練習会です。
▲Cross Coffee -chocolate & sandwiches- Facebookより
その他にも各地でショップや有志による練習会が行われています。
そして、手前味噌になってしまいますが、私が店長を務めるA-Pad SPORT CYCLE STOREでも随時シクロクロス練習会を開催しておりますので、気になる方はご連絡頂ければ幸いです。
シクロクロスは間口が広くて奥が深い競技です
いかがでしたでしょうか。
ロードバイクは遠くまで行けるとても楽しい自転車ですが、シクロクロスはまた違った自転車の楽しさがあります。そして、気軽にその楽しさを味わうことが出来るのです。皆さんもシクロクロス、始めてみませんか?
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WRITTEN BY向山浩司
シクロクロッサー、自転車店店長。高校から自転車競技を始め、就職を機に一度引退。その後、ロードレースに復帰し、Jプロツアーを転戦。クリテリウムを得意とするスピードマンでならす。現在はSNEL CYCLOCROSS TEAMに所属し国内外のシクロクロスレースを主戦場にする。ロードからMTBまでこなすマルチライダーとして、自身の経験を活かして東京・あきる野市で自転車店A-Pad SPORT CYCLE STOREを運営する。A-Pad SPORT CYCLE STORE