ドライブレコーダーで自転車事故は防げるのか
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事故に遭遇した際の証拠として役立つ!? ドライブレコーダー
バスやタクシーのみならず、自家用車にドライブレコーダー(以下ドラレコと略)を搭載する人が増えた。昔に比べて機器の性能が上がって小型化し、バリエーションも増えて価格がリーズナブルになって来たところに、“あおり運転”が報道されたことなどもあって普及が加速している。人によって搭載する理由はさまざまあるだろうが、最も大きい理由としては「事故に遭遇した際に証拠映像を残したい」というニーズである。
従来は事故が起きた際に当事者と目撃者の証言くらいしか証拠がなかったため、時として真実とは異なる調書が作成されることもあった。人間の記憶は概して曖昧で、受けた印象や時間の経過によって歪められることも少なくない。また自分に有利な証言をする当事者もいて理不尽な思いをした人も多い。記録された映像は嘘をつかないから証拠として客観性が高く、過失割合を判断する際に大きな威力を発揮する。いざという時の自衛策として購入する人が増えたことで、カー用品店でも売場の一角をドラレコが堂々と占めるようになった。
一方、このドラレコのおかげで我々は当事者にしか見られなかったさまざまな事故映像を入手することができるようになり、事故の起きた原因が分かって傾向と対策が取れるようになった。2017年6月に起きた高速道路の事故で対向車線からクルマが宙を舞ってきてバスに飛び込む衝撃的な映像を覚えておられる方も多いだろう。今後は飛行機に搭載されているフライトレコーダー同様に事故映像の分析から改善策が見出せるようになることを期待したい。
自転車用ドライブレコーダーも登場、これから普及するのか
クルマには大型のバッテリーが搭載されており電源確保が容易ということもあって、クルマ用ドラレコは参入メーカーが多くバリエーションも豊富にある。電動アシスト自転車にもバッテリーは搭載されているが、動力用以外の電源として使用する前提になっておらず、クルマ用ドラレコを自転車で使用するのは現実的でない。スマホ用のモバイルバッテリーを搭載すれば使えるが更に重くなってしまうし、第一、自転車に搭載するためのアダプター類が入っていない。というわけで、自転車でドラレコを使うには外部電源がなくても動くバッテリー内蔵タイプに限られ、スマホ同様にあらかじめ充電してから装着する必要がある。
ただ、技術の進歩は素晴らしいもので小さくても高性能のカメラが開発され、バッテリーを内蔵しても百グラムを切るレコーダーが作れるようになった。記録媒体も飛躍的に進化して大容量にも関わらず安価で購入できるようになり、消費者にとっては誠に喜ばしい時代の到来だ。
▲実際に自転車用ドライブレコーダーで記録された動画
ドラレコの定義としてループ録画(メディアが満杯になると古い映像に上書きして行く)に対応していることを条件にすると機種は絞られるものの、アクションカメラやウェアラブルカメラと呼ばれる小型ビデオカメラでも十分に使える。これらのビデオカメラには手ぶれ補正機構が付いているので、振動の大きい自転車で使うには小型ビデオカメラの方がいいかもしれない。アクションカメラのカテゴリーには複数の大手家電メーカーが参入しており、高価だが画質や安心感を考えると価格相応の製品が多い。
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自転車用トライブレコーダー、どこに装着すべきか
ドラレコを前方に向けるか、後方に向けるかについては悩ましい。それぞれに目的が異なるからだ。事故の原因が前方にあるとは限らないから、予算が許せば前後それぞれに録画できるのが望ましい。クルマ用には1台で前方と後方の両方を同時に録画できる機種もあるが、あおり運転や幅寄せの様子を撮影したいなら後方のカメラは有効だ。クルマの場合はカメラ設置だけでなく「ドラレコ録画中」というステッカーを後方に貼っておくといい。カメラは小さくて見えないこともあるからステッカーの方が威力を発揮するだろう。
自転車の場合ハンドルとサドルに設置して前後に睨みを効かせるのがベスト。最近の機種は画角が100度以上ある広角レンズを採用するものが多いので、横方向もカバーできるが自転車は車道左側端に位置することが多いので、後方のカメラは車道中央寄り方向に少し角度をつけて設置した方がいいかもしれない。クルマと違いドラレコ録画中ステッカーを貼る場所が見当たらないけれども、プレートに貼って穴を開け結束バンドでサドルにぶら下げるか、思い切ってステッカーをウェアやバッグに貼る手はある。録画していることを後方のクルマに知らせることで幅寄せの防止効果が期待できるだろう。
ママチャリのカゴにデカデカとステッカーを貼れば迫力満点。将来的に自転車にもドラレコが標準搭載されたら、ドライバーの皆さんも自然に1.5m空けて抜いてくれるようになるかもしれない。
ドライブレコーダーにGPS機能は必要か
クルマ用ドラレコで安価なものは千円代からあるが、大手家電メーカー製の中には数万円するものまである。映像を撮影することに関しては廉価品から高級品まで変わらないが、映像の細かさや見やすさは大きく異なる。この映像の細かさは重要で、せっかく撮ってもクルマのナンバーが判別できなくては困る。少なくともFHD(フルハイビジョン)で200万画素は欲しい。現在主流なのは200〜300万画素で、1,000万画素位上の機種もあるが必要以上あっても肉眼では違いが分からない。むしろWDRやHDRといった明暗差が大きい場面で映像の白飛び、黒つぶれを防ぐ機能が搭載されている機種がオススメだ。
高級機にはGPS機能が搭載されており、事故を起こした場所と時間の記録も同時にされる。事故を起こした際には警察に通報して調書を取ってもらうからGPSが無くても問題はないが、あると便利な機能がいくつかある。例えば、常に正確な時間情報が降ってくるから時計合わせをする必要がない。GPS付きと無しでは、ほとんど値段の差がないから筆者はGPS付きを推奨する。
また最近はLED光源を採用した三灯式信号機が増えているが、実は周期的に点滅を繰り返して青・黄・赤色の信号を現示している。ご存知の通り電力会社から来る電気は東日本と西日本で周波数が違い、街中にある信号機もこの電気を使っているため東日本は1秒間に50回、西日本は60回プラスとマイナスが入れ替わって高速で点滅しており、これが人の目には残像効果で点灯しているように見えるが録画すると映らないことがある。ドラレコの中には信号機対策を取っているものと取っていないものがあり、東日本専用ドラレコだと西日本で使った際に信号現示が映らないことがあるので、過失割合を判断する証拠映像の価値が下がってしまうことがあるから購入する前に要チェックだ。
▲LED信号機だとドラレコに記録されない場合も(写真はイメージ)
自転車用ドラレコの生命線は内蔵バッテリーで、これがどれだけの時間作動するかによって使えるか、使えないかが分かれる。大手家電メーカー製のアクションカメラの中には小型・軽量を目指す代わりに録画時間を犠牲にしているものも散見される。バッテリーを含んだ重量は小さい方がロード乗りにウケがいいのは事実だが、録画時間が短ければすぐ無用の長物と化す。ドラレコとして使うのは要注意だ。いざという時に撮れていなければ意味がない。
NCD(日本コンピュータ・ダイナミクス)が発売したxplovaという自転車用ドラレコのデモ機を借りて体験してみたが、GPS機能があるので時間合わせをせずに済む上にマグネット不要で速度も分かる。担当者がロード乗りなので、サイクルコンピュータとして本人が必要だと思う機能は全部詰め込んだ。ケイデンスや心拍数の計測はもちろん、ナビやトレーニング設定機能も付いており、とりわけ特筆すべきはサクサク動く操作感である。ベースは台湾PCメーカーのacerが作っているので機器の信頼性も高い。ドラレコとしても必要十分なスペックを誇る。値段も納得の49,800円(税別)なので他社製品に満足できなかったユーザーは試す価値がある。
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ドライブレコーダーの使用で、事故を防止する効果はあるか
クルマ用のドラレコが普及したおかげで、あおり運転の様子を録画したり、事故当時の信号現示を証拠として提示したりする「事故に泣き寝入りしないドライバー」が増えている。自衛策としては実に有効であり、文明の利器を使わない手はない。いい加減な証言で理不尽な思いをしたことのある人ならドラレコ導入をためらわないはずだが、自転車にも導入するメリットはあるのだろうか? また導入したとして事故抑止効果は期待できるのか?
録画中だとドライバーに伝われば効果があると思う。ドライバーも人間だ。損得を考え出来るだけ損は避けたいと思っている。不用意に接触事故を起こし、(動画だけど)動かぬ証拠を相手が握っていると知れば出るところに出た時に自分が不利になることは明白だ。事故を起こしたら証拠を握られるから避けておこうという心理が働くことは想像に難くない。だからこそドラレコ録画中のメッセージを確実にドライバーへ伝えたい。ドラレコ自体が特殊な光でも出して主張してくれたら世話ないが、今のところそのような機種は見あたらない。
自転車にも標準でドラレコが搭載される時代が来るかどうかは分からないが、せっかく搭載した人はプレートと反射材入りステッカーでアピールして欲しい。万が一事故に遭遇してしまっても、映像が残っていれば投資は決して無駄にはならず、きっとあなたを助けてくれるはずだ。
▲夜でも、都会ならここまでくっきり記録できる