片耳、両耳は関係ない?自転車乗車中のイヤホンの違反判定基準はなにか
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自転車で音楽を聴きながら走りたい人は多い
スマホの使い勝手が上がる一方で定額制の音楽配信サービスが次々登場している。利用料金もリーズナブルで膨大な楽曲数を誇っており、ここ数年で音楽の楽しみ方は完全に変わった。
筆者のiPodは出番を失って埃をかぶったままだ。いつでもどこでも最新の楽曲を浴びるように聴ける時代の到来で、ハイタッチ券を欲しがるファンでもなければCDを買う意味すらなくなった。
お気に入りのアルバムを繰り返し聞くこともできるが、2017年前半のヒット曲というプレイリストを選べば知らない曲を発見する機会も得られる。テレビのCMで使われていた曲が誰の曲なのか、どんなタイトルなのかまで全部分かったり、聴きたいアーティストの名前が分かれば何千万曲の中から検索して曲を聴いたりすることもできる。
実に便利でありがたいし、こっそり練習してカラオケで歌うことだって可能。自転車通勤時や学校の通学時に歌って覚えてカラオケで披露した際に「そんな曲いつ覚えたの?」と仕事仲間や友達に訊かれるのが密かな快感にもなるだ。
筆者としては好きな曲が流れるとペダルを漕ぐ脚にも力が入るし、仕事の疲れも忘れてしまう。そんなワケで、お気に入りの音楽を自転車乗車中に聴くことは楽しみのひとつになっている。
Bluetoothイヤホンの進化がすごいが自転車で使ってOK?
インイヤーヘッドホンと呼ばれる、耳の中に直接入れるタイプのイヤホンは進化がすさまじい。
耳からうどん垂らしてる画像にしか見えないんだけど、これがApple社が満を持して送る最新製品を使用している画像らしい。繰り返すけど耳からうどん垂らしてるようにしか見えない pic.twitter.com/7hc6oKuaKo
— 和泉幸奇 2/17名古屋TMR 2/24大阪ID (@kouki_izumi) 2016年9月9日
▲「耳からうどん」の元となったツイート
iPhone 7からイヤホンジャックが廃止されたこともあり、完全ワイヤレスのBluetoothイヤホンが主流になりつつある。純正イヤホンのAirPodsは「耳からうどん」と呼ばれ見た目に難ありだが、サードパーティからさまざまなイヤホンが提案されている。
▲高性能を評価されクラウドファンディングで圧倒的な支援額を集めたVIE FIT
出典:Makuake
例えば、クラウドファンディングで耳の形状に合わせて変形する完全ワイヤレスイヤホンVIE FITが登場しているが、ノイズキャンセラ機能も備えており外界から遮断されて音楽だけに浸ることができる。防水でスポーツしながらでも外れることはないとなると「自転車でも使いたい」と考えるのが自然かもしれない。
でも待って欲しい。これを装着して自転車を運転するのは危険なのである。
なぜ自転車では、「外の音が聞こえないとダメ」なのか
外の音が入ってこない状態で運転することは何が問題なのだろう? 皆さんも一緒に考えてみてほしい。
そもそも自転車の交通ルールとして、安全運転義務というものが存在している。ブレーキやハンドル操作をしっかりするのはもちろんのこと、道路状況や交通状況に応じて通行するといった内容のものだ。
この状況に応じてという箇所が、安全運転義務違反になるのか気になるところ。イヤホンをしていた場合何が聞こえないとマズイのか。模範的解答は「交通安全に関わる音または声」なのだが、ひとつには警音器の音がある。
日本人は他国に比べると概してクラクションを鳴らさない。だが本来は、危険回避のためであれば鳴らさなければならない。警笛鳴らせの標識がある場所や、見通しの悪い交差点などでは自転車もベルを鳴らす必要がある。
鳴らしても相手に聞こえていなければ事故を起こしてしまうことだってあるだろう。自転車のベルを鳴らしてクルマのドライバーに聞こえるかどうかは微妙だけれど、少なくともイヤホンをしていない自転車の運転者には聞こえるはずだ。これはバイクでも同じことが言える。
次に、緊急自動車の接近音がある。
自転車は道路交通法上「軽車両」となっており、原則として車道を走ることになっている。交通ルールとして他の車両同様に、緊急自動車の接近時には路肩や路側帯に止まって進路を譲らなければならない。
横断歩道を渡る歩行者や自転車も、緊急自動車が接近したら横断をやめるか、急いで渡って進路を妨害しないよう努めなければならないが、街中で見ていると無頓着な人を多数見かける。もし自分が瀕死の状態となり救急車で運ばれている際に進路妨害があって手遅れになったらどう思うだろう。反則金どころの話ではなくなる。
交通事故全体の死者数は着実に減って来ているものの、昨年の暮れから悲惨な交通事故が相次いでいる。両手に物を持って電動アシスト自転車に乗り老婦人を撥ねた女子大生しかり、ブレーキを踏んだが間に合わず老夫婦を撥ねた塗装職人しかり。
イヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転中、高齢者をはねて死亡させたとして、大学生が重過失致死の疑いで書類送検されたこともあった。
報道によると前を見ていなかったため信号機を見落とし、高齢者の発見が遅れて事故につながったというものだ。論点としてはあくまでイヤホンをしていたから事故になったというのは直接の理由になるのは難しく、前を見ていなかったという点。これは安全運転義務違反に該当し、道路交通法違反にも該当してくる。
これらのように、事故を起こそうと思う人はおらず、安全確認の怠りや一瞬の気の緩みで起きてしまうことがほとんど。
明日は我が身だ。事故を起こしてから土下座して謝っても亡くなった人は帰ってこない。自転車を含め車両を運転する際は聴覚を含む五感を集中しなければならず、免許の有無にかかわらず責任を伴う行為なのだと認識する必要がある。
ノイズキャンセラタイプのイヤホンで外からの音を遮断してしまうと、注意散漫となり平衡感覚が狂うことも分かっている。外の音が聞こえない状態で走るのは危険だということが分かっていただけただろうか。
片耳イヤホンなら大丈夫か?
2015年6月の道路交通法改正で14項目の危険行為が定められ、自転車の取締り強化が示された。
この改正道路交通法は当時テレビ各局に呼ばれて解説したのだが、東京警視庁では片耳でも両耳でもアウトなのに、神奈川県警が片耳イヤホンならオッケイだと言っているという噂が流れた。これでは何が交通違反なのかがわからないだろう。
ことの真相はともかく、本質は先述した通りで交通安全に関わる音が聞こえてなければ片耳でもアウト。逆に両耳にイヤホンをして音楽を聴いていても、警察官が呼び止めた際、無視せずに止まれば外の音が聞こえているということで法律違反の対象にならずセーフである。あくまで安全利用のためのものであり、片方の耳だからオッケイ、両耳ならダメという話ではないのだ。
これは自転車に限らず、クルマのカーステレオを大音量で聴いていて外の音が聞こえない場合も交通規則の違反に該当する。
つまり音楽を聴きながら自転車に乗ることは、全面的に禁止ではなく、明確に道路交通法違反になるわけではない。周囲の音が聞こえないレベルまで音量を上げたり、ノイズキャンセラタイプのイヤホンを装着したりしてはいけないという認識でいれば大丈夫。
イヤホンでの走行で摘発されたら罰金刑もあり得る
安全運転であることは大前提だが、ヘッドホンでもスピーカーでも、周囲の音や声が聞こえる状態であれば音楽を聴きながら走ってもいいことは分かったが、具体的にどうすればいいだろうか。
街で両耳にイヤホンをして走っていると警官に呼び止められることがある。ここできちんと止まればお咎めは受けずに済むが、いちいち呼び止められるのは面倒だし、万が一音楽に集中していて聞き逃したりしたら一大事。摘発されて起訴されたら5万円以下の罰金刑だが恐らく不起訴になるだろう。
出典:愛知県警察
ただし油断は禁物だ。先の道路交通法改正で講習制度が定められた。罰則として3年以内に2回以上の摘発で講習を受講させられるのだが、受講者がジワジワと増えている。5,700円払って3時間の講習を受け、最後に反省文を書かされるだけでなく音読させられる。大のオトナが反省文を声に出して読まされるなど屈辱ではないか。
ワイヤレス骨伝導ヘッドフォンという選択肢ができた!
筆者は音楽を聴きながら走りたい派なので、過去にはiPodを防水スピーカーケースに入れて首から下げるという方法で走っていた。
これは絶対に呼び止められない代わりに、どんな音楽を聴いて道路を走っているかが周囲にモロバレなので恥ずかしい。なるべく聞かれて恥ずかしくない音楽を選んで入れていたが、それでも信号で止まると横断歩道を渡る歩行者から奇異の目で見られることも少なくなかった。
▲通常の聞き方と骨伝導との違い
出典:ゴールデンダンスオンラインショップ
耳をふさがない骨伝導ヘッドホンというシロモノは昔からあるにはあったが、必ずコードが付いていたし、音質も決して褒められたものではなかった。
ところが技術の進歩とはありがたいもので、Bluetoothでワイヤレスになった骨伝導ヘッドホンのラインナップが充実して来たし、メーカー各社はマジメに骨から伝導させることばかり考えていたのを改め、あえて音漏れさせることによって鼓膜からも音を拾わせる方向へ舵を切ったことで劇的に音質が良くなっている。
もちろん耳をふさがないことで風切り音や周囲の音も入ってくるから、音楽だけに没頭することはできないが、それでも十分に楽しく走れるのは嬉しいことだ。
音楽だけでなく電話もできる
出典:CODEO特設ページ
NCD(日本コンピュータ・ダイナミクス)のCODEO(コデオ)という骨伝導ヘッドホンを愛用しているが、音楽鑑賞のみならず乗車中にかかって来た電話に無線感覚で応対することもできる。とは言え、乗車中に色々考えながら電話応対するのは危険なので、できるだけ安全な場所に一旦停止してから通話してもらいたい。
携帯電話に保存されている前回の通話先ならばリダイアル機能があるのでこちらからもかけられるし、アプリを介してグループ間通話もできるので、大人数でサイクリングする際にも便利だ。
▲ヘルメットやアイウエアとも干渉しない設計が嬉しい
出典:CODEO特設ページ
耳の前部分に当てるスピーカー部の角度を変えられるので、ヘルメットの下にかぶるキャップを換えても位置を調整できるので気に入っている。音量調整や曲の巻き戻し、先送りもボタンで操作でき、サングラスとも干渉しないのがいい。
夏場は汗が気になるものの、コンパクトで軽いため締め付けの圧迫感や痛みとは無縁なのが当たり前ながら素晴らしい。また、この手の商品に珍しくカラーが3色あるので好みに合った色が選べるのも大変ありがたい。
その他にも、骨伝導スピーカー搭載スマートサイクリングヘルメットというものもある。これは骨伝導スピーカー内蔵のため、Bluetoothにスマホと接続すれば完結できる代物だ。有線接続もいらず、アゴひも内蔵のマイクで通話も可能になるため道路交通規則やそもそもの違反行為が気になる方にもおすすめだ。
音楽と自転車を楽しめる〜ただし運転は慎重に
CODEOに限らず、Bluetooth接続の骨伝導ヘッドホンはハンズフリーで会話できたり、耳を塞がず音楽を楽しめたりと自転車との相性がいい。乗車中はロードノイズだけ聞いていれば幸せで、余計な音楽など聴きたくないという人もいるだろう。
自転車の楽しみ方は人それぞれで結構だが、もしも音楽を聴きながら自転車に乗ることが法律違反なのではと心配で諦めていた人がいるとすれば、Bluetooth骨伝導ヘッドホンをオススメしたい。
今までCODEOをしていて警官に注意されたことはないし、たとえ呼び止められて指導が入ったとしても声が聞こえるから確実に止まれる。車両を運転する責任は伴うものの、乗車中の楽しみができて自転車に乗りたいと思う人が増えてくれるのは願ってもないことだ。
自転車運転者として安全ルールを守って快適なサイクルライフを楽しんでもらいたい。