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自転車+αの楽しみ。「呑みチャリ」とは?
自転車はさまざまな楽しみ方ができる乗り物です。気持ちの良いコースを走る、おいしいものを探しに出かける、自転車をカスタマイズする、などなど。でも、思うことがあるんです。自転車で走ることはとても楽しいけれど、それ以外の楽しみ方も組み合わせたら、幅が広がるんじゃないかって。
鉄道が好きな方も乗るだけではなくて、「撮り鉄」や「食べ鉄」というように鉄道といろいろなお楽しみを組み合わせていますよね。鉄道ファンを見ならって、自転車の楽しさを広げる方法を考えて、「呑みチャリ」にトライします。
お酒を飲んで走るのは法律で禁止されていますので、自転車で走って、おいしいお酒を飲んだら、輪行で帰って来るのが呑みチャリの流儀です。
今回の目的地に選んだのは、東京都福生市の「石川酒造」です。多摩川サイクリングロードからのアクセスが良く、おいしいお酒と食事がいただけて、駅が近くにあります。呑みチャリにはもってこいのロケーションではありませんか。
今回のコースは、二子玉川をスタートして多摩川サイクリングロードを走り、福生市にある石川酒造がゴールとなります。石川酒造のレストランで地ビールと料理を楽しんだら、最寄りのJR拝島駅から輪行で帰ります。二子玉川から石川酒造までは33.2km、片道約2時間のサイクリングです。
【ご注意】
ビールを飲んだら、自転車には乗らずに輪行しましょう。もちろん法律でも禁止されていますが、ご自分の安全のためにも「飲んだら乗るな」を実践していただきたいと思います。
ビールを求めて二子玉川から33kmのライド
スタート地点に選んだのは、二子玉川です。国道246号線が通っていますので、東京都内、神奈川からもアクセスしやすい場所です。田園都市線と大井町線が乗り入れていますので、輪行で来るにも便利です。
輪行の場合は、田園都市線が混雑しますので、一番前か一番後ろの車両の運転手さん、車掌さんのボックスの前のスペースに輪行袋を置くと、じゃまになりにくいですね。
待ち合わせは、駅の近くではケンタッキーフライドチキンの前が便利です。歩道が広くなっていますので、自転車をガードレールに寄せれば、歩行者の迷惑にはなりません。多摩川サイクリングロードの近くでしたら、二子橋の川崎側で待ち合わせると、すぐにサイクリングロードに出られます。
では、さっそく二子橋を渡って、多摩川サイクリングロードに出ます。
多摩川の右岸を北西に向かってずっと走り、是政橋で左岸に渡ります。ここまでは順調です。国立を過ぎると、河川敷の緑が気持ちいいですね。
多摩川の上流に向かって走り、昭島市を過ぎると睦橋が見えてきます。橋の手前で多摩川サイクリングロードを離れて一般道に入ります。すぐに石川酒造の案内看板が目に入ります。目指すゴールは「福生のビール小屋」です。いい響きです。
呑みチャリのオアシス・石川酒造に到着
案内看板に従って進んでいくと、酒造桶が見えてきました。石川酒造がお酒造りを始めたのは江戸時代の幕末の頃。今から155年前の1863年(文久3年)という歴史のある蔵です。現在の土地に移ってきたのが1880年(明治13年)で、その頃に建てた蔵で今でもお酒を作っています。歴史的景観に寄与しているものとして、蔵は国の登録有形文化財になっています。
現在は、日本酒のほか地ビールも製造し、敷地内にはレストラン、売店が揃っていますので、「酒飲みのテーマパーク」がキャッチフレーズになっています。
最初の入り口から入ると、正面の酒蔵が迎えてくれます。
奥へと進むと、大きな蔵、立派な門が見えてきます。
本格派イタリアンと注ぎたて地ビールで乾杯!
いよいよ目的の「福生のビール小屋」です。なかなかしゃれた外観で、期待できそうです。
店内も良さそうですが、天気がいいのでテラス席を選びました。眺めが良く、開放感があります。
あー、ノドも乾いた。お腹も空いた。何にしましょうか。
まずはビールです! 「多摩の恵み」と「東京ブルース」を頼みます。どちらも石川酒造で作っている地ビールです。お疲れさまでした。乾杯!
あぁ、天国ですね。本当においしい。ビールがおいしいのはもちろんですが、サイクリングの後というのがさらにいいですね。呑みチャリの幸せです。多摩の恵みピルスナーはすっきりしたタイプ。東京ブルースゴールデンエールは飲みごたえのあるタイプです。
さて、ビールを飲んで一息ついたところで、今度は食事ををいただきましょう。メニューはイタリアンがメインですね。どれもおいしそうで迷います。お店の方に伺ったところ、料理はビールに合うように工夫しているとのことでした。
まず、頼んだのが「季節の青豆とセロリのグリーンサラダ」です。野菜の味が濃く、くだいたアーモンドの食感が楽しいですね。ドレッシングは、さわやかな柑橘系です。酸っぱいものはビールに合わないかと思っていましたが、いやいや、なかなか。
ビールとサラダで、胃袋のギアが上がってきました。
次は定番ピッツァの「マルゲリータ」に行きます。なかなか大きいですね。シェアして食べるのにちょうど良い大きさです。店内の釜で焼いているので、焼きたての香ばしさが食欲を刺激します。生地は自家製で、お酒を作るのと同じ仕込み水でこねているとのことです。なるほど、酒造ならではのピッツァですね。
いよいよ胃袋がトップギアに入ってきました。次はパスタに行きましょう。
種類があって迷いますが、ビールとの相性で「生ハムとモッツァレラのトマトソース」を選びました。トマトソースの酸味がさわやかで、生ハムの塩味が効いています。これもボリュームがありますので、シェアするのにいいですね。
あぁ、飲みました。食べました。満足感たっぷりです。呑みチャリっていいなあ。
ピッツァとパスタがどちらもトマトソースになりましたが、これはこれで十分においしく食べられます。味を変えたいときは、パスタを「ペペロンチーノ」や「チキンのバジルクリームソース」に変えるのも良いと思います。
さて、最後はデザート。
「石川酒造の酒粕のアイスクリーム」を選んでみました。酒粕のアイスクリーム? 珍しい組み合わせですね。味わってみると、牛乳を使ったアイスクリームのようになめらかではなく、少し舌にざらっと来る食感が珍しいです。食べてすぐは酒粕の味が感じられないのですが、後味には風味がしっかり残っていました。ここにも酒造の特徴が活かされていますね。
満足しました。ごちそうさまでした。
食事を終える頃には、満席になっていました。土曜日のランチタイムに訪問しましたが、予約をしておいて正解でした。
さらに酒呑みの定番・角打ちで追いビール
お腹もいっぱいになったので、敷地内を散歩します。レストランのすぐ近くにあるのが「向蔵ビール工房」。ビールはすべてこの蔵で作っているそうです。呑みチャリさんがここにもいらっしゃいました。
ちなみに、角打ち(かくうち)とは、四角い升にお酒を入れて飲むことから転じて、酒屋の店先でお酒を立ち飲みするという意味で使われています。通な酒呑みスタイルです。
石川酒造の角打ちでは、ビールを作っている蔵の2階で造りたてのビールや日本酒が飲めるようになっています。いつも営業しているわけではありませんが、多摩川サイクリングロードを降りて、すぐに地ビールが飲めるのは魅力的です。
2階ではタップから注いだ地ビール、日本酒の多満自慢、それにおつまみもあり、言うことありません。ちゃんとテーブル席が用意されているので、腰を落ち着けて飲めます。
江戸時代から続く、酒蔵内を散策
向蔵ビール工房を出て、また少し歩くと歴史のある建物が並んでいます。長屋門は国の登録有形文化財で約250年前のものと言われているそうです。
茶色い杉玉は杉の葉を玉にしたもので、酒林とも呼ばれます。10月末に青々とした新しいものが吊るして、新酒ができたお知らせをします。だんだん茶色くなるにつれて、お酒の熟成度合いもわかります。
石川酒造の仕込水。これでお酒、ビール、ピザの生地を作っています。飲んでみると、柔らかい味がしました。水はお酒を作る上でとても重要な要素で、酒蔵は良い水が得られるところを選んで建てられます。石川酒造では、地下150mから天然地下水をくみ上げて使っています。
売店の「酒世羅」では、お酒はもちろん、おみやげ品も揃っています。この売店でしか買えない限定品や季節限定のお酒もあります。
呑んだ帰りはもちろん輪行です
おいしいビールと食事をいただいた石川酒造ともここでお別れです。ビールを飲みましたので、酒酔い運転は禁物です。最寄り駅の拝島駅まで輪行と行きたいところですが、歩くと15分かかりますので、自転車を肩にかつぐのはつらいものがあります。駅までは押して歩いて、駅に着いてから輪行袋に入れましょう。
広げ方は無限大!「◯◯チャリ」の世界
今回訪れた石川酒造は、地ビール、日本酒、おいしいレストラン、歴史のある蔵と、お酒にまつわる楽しいことが満載でした。
二子玉川から多摩川サイクリングロードで約2時間、走る楽しさを十分に味わった後に石川酒造に立ち寄れば、今度は飲む楽しさ・食べる楽しさが味わえます。
石川酒造と同じ福生市内には「幻の酒 嘉泉」で有名な「田村酒造」もありますし、青梅には「澤の井」を作っている「小澤酒造」もあります。また、酒造に限らず、ワイナリーやおいしいお酒と食事を出してくれるレストランを目指して走り、一杯やったら輪行で帰ってくるというのもいいですね。
今回ご紹介した呑みチャリ以外にも、自転車プラスアルファの組み合わせは、まだまだありそうです。食べチャリ、撮りチャリ、風呂チャリ……など、お好きなものと組み合わせた「◯◯チャリ」で自転車の楽しさを広げてみませんか。