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ちゃんと空気入れてますか? 「ひとりで100㎞」走るためのメンテナンス講座#01

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ゴキゲンですか? 初心者向けのメンテナンス記事を担当することになったライターの池田潮といいます。普段は走るというよりも、仲間とひたすらおしゃべりするためにロードバイクに乗ったり、クロスバイクの本を書いたりしています。

この連載は、初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて問題なく帰ってくるためのサポート企画です。とはいっても走り方の企画ではありません。

「問題なく帰ってくる」ためには準備も必要ですし、出先で起こるトラブルにも落ち着いて対処できなきゃダメですよね。そのためのメンテナンス企画なのです。連載を続けて読んでもらえれば、想定されるトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。メンテの知識を身につけ、100㎞ライドを無事に終えたころには、色々な意味ですでに初心者ではなくなっていることでしょう!

100㎞走るための第一歩は、正しく空気を入れること

フロアポンプ使ってますか?

第1回目は空気の入れ方です。空気圧管理はスポーツバイクメンテナンスの基本の「キ」。どんなに高性能なバイクも適切な空気圧が維持できなければ、快適な走行は望めませんからほんとに大事なことなんですよ。空気圧が低すぎればリム打ちパンクも起きやすくなってしまいますしね。「ふ、そんなのできるわ」って思った方、「完璧に」ですからね!

大抵の人は持っていると思いますが、もし持っていない、もしくは携帯ポンプしか持っていないという人は、フロアポンプを入手しましょう。1000円台から2万円を超えるものまで種類がたくさんあって迷います。無難に売れ筋を買おうと思った人。正解です。どうでもいいことは適当に決めて、大事なことに時間を割くのが得策ですからね。売れ筋で、かつ少し高い方を選ぶといいでしょう。僕はこの連載のためにAmazonで5分ほど検討して、PWTというメーカーのGF-55Pを買いました。

▲購入したブツ。PWTという国内メーカーが台湾の空気入れメーカーgiyoとコラボしたフロアポンプ。PWT GF-55P¥ 2,878

バルブに当たる部分が金属になっているので、樹脂でできているものより耐久性が期待できます。ネジ式のバルブを外して裏返すことで仏式・英式と米式を切り替えることができる仕様で、この口金には“ツインヘッドクレバーバルブ”という素敵な名称が付いています。口金が壊れた古いポンプを後生大事に使っているライド仲間がいたのですが、ポンピングのときに手で押さえていないと口金が外れてしまうので、彼は空気を入れる作業を億劫がっていたんです。そんな口金だと使っている人の知性まで疑われかねないのでさっさと交換しましょうね。買い替えるか、バルブを保持するパッキンが補修パーツで売られているもありますから、ポンプの調子が悪い人は調べてみてください。

さて、「○式」というのはチューブの空気を入れる金属でできたバルブの形式です。仏式=フレンチバルブやプレスタバルブと呼ばれるタイプがクロスバイクやロードバイクなどのスポーツバイクで標準的なものです。みなさんがいつも使っているやつです。英式はママチャリで一般的に使われるタイプですから、みなさんご存じでしょう。
もうひとつの米式は自転車ではマイナーですが、オートバイや自動車で使われています。ただ、米式をスポーツ自転車に使うメリットは特にないんですね。希にクロスバイクで採用されていることがあります。

もし手持ちの自転車が米式なら、そのうち仏式のチューブに変えてしまってもいいかもしれません。米式は仏式よりもリムに空けられたバルブの穴が大きいので、リムのバルブホールスペーサーを使用します。こんなパーツです。パナレーサー SPC-2英米式バルブ穴スペーサー。チューブはタイヤの直径と太さに合ったものを選んでください。適合するチューブのサイズはチューブ本体やタイヤサイドに書いてあるタイヤのサイズを参考にしますが、不安ならショップで店員さんに聞いてください。

▲米式バルブ。BMXや一部のMTB、クロスバイクなどに採用されている。

仏式バルブのタイヤに空気を入れる

では買ったばかりのポンプを使ってフレンチバルブのチューブに空気を入れていきます。ちなみにビギナーの方でホイールのことをタイヤと呼ぶ人がいます。タイヤ、チューブ、ホイールは別の部品なので呼び分けましょうね。それだけでメンテナンスの腕前がワンランクアップした印象を与えることができますよ!

▲バルブコアが閉まっている状態

▲バルブコアを緩めた状態

キャップをしている人はキャップを外してから作業してください。その後、バルブコア(バルブ先端の突起)を緩めます。滑り止めの加工が施されており、指で緩めることができます。バルブコアを緩めたら、一度その先端を押し込んで空気を抜いてあげます。しばらく空気を入れていない古いチューブなら特に必須の作業です。

▲バルブにポンプの口金を装着する

そして口金を真っ直ぐに装着します。バルブコアが押し込まれた状態になるまでしっかりと差し込んでください。

▲レバーを操作してロックする

ロックレバーを起こして口金をロックします。倒してロックするタイプやねじ込み式のものもあります。口金をしっかり保持して、真っ直ぐの状態を保ったまま操作します。このとき、レバーを動かす向きに口金が動きがちで、愛車をぶっ壊す確率の高い瞬間がやってきます。バルブコアは細いのですぐ曲がってしまいます。レバーを起こすよりも保持する手に力を入れて、あくまで真っ直ぐの状態で落ち着いて行ってくださいね。

▲ポンピングする

メーターを見ながら狙った空気圧までポンピングしていきます。足でポンプを固定して、力をかけやすい体制をとり、レバーを上下にストロークしていきましょう。このときも真っ直ぐ押し下げることを意識してください。今回はジャスト7barまで入れてみましょう。自分の体重は66kg、タイヤの太さは25Cなのですが、いつもより若干高めの空気圧です。

▲メーターで空気圧を確認する。予定していた空気圧までポンピングできた。

▲口金を外す

レバーを倒してロックを解除し、口金を外します。垂直に引き抜きましょう。本当に7barまで入っているか確かめるために、今回は空気圧を測るエアゲージを使ってみます。

▲エアゲージで空気圧をチェック。ちゃんと入ってますね。

大切なのは乗り心地。気持ちいい空気圧を探る

さてさて、作業手順を覚えることも大切ですが、実はどれぐらい空気を入れたらいいのか、の方が大問題なんです。低すぎるとリム打ちパンクの原因になりますし、走行感が重くなります。逆に高すぎると乗り心地が悪くなり、グリップ力が低下します。

タイヤサイドに最大空気圧や推奨空気圧の範囲が記載されていますので、参考にしましょう。たいていの人はここぞとばかりに上限値までポンピングしてしまいます。体重が100kg近い人でない限り、上限の空気圧を使うことはないですからね!

タイヤによってかなり変わって来るのですが、具体的な数字を出すと、体重70kgの人で700Cのロードタイヤ、太さが23、25、28、32Cの場合、7.2、6.5、5.8、5.0BARぐらいを目安に、0.2BARずつ上下に空気圧を変えて最適な数値を探してください。体重が10キロ軽くなるごとにマイナス0.7~0.9BAR、重くなるごとにプラス0.7~0.9BARの補正をかけます。推奨空気圧の範囲内で調整しましょう。

ロングライドでは、パンクしないことも大切ですが、「ああ、気持ちいいな」と感じることができる乗り心地も本当に大切です。タイヤによっても違うので、自分の使っているタイヤがどれくらいの空気圧で快適になるのかを、テストしながら探してみてください。

では今回のコツのおさらいです。まず、しっかりしたポンプを用意しましょう。口金は奥まで差し込み、終始口金の差し込み穴はバルブに対して真っ直ぐの状態を維持します。ロックレバーの操作時には特にしっかり保持すること。これで完璧です。簡単でしょ? 

空気入れに限らず自転車のメンテナンスにおける最大のコツは、ちゃんとした道具をちゃんと使うこと。 言い換えると、正しい道具を正しく使うこと。

さらにもう1つだけ重要なコツを伝授しましょう。それは、しっかり見るべき場所を見て、手で感触を感じとることです。五感のなかで、嗅覚と味覚は自転車のメンテナンスにはほぼ出番がありません。その分のリソースを視覚と触覚の神経回路に割いてください。覚えるべき基本的なメンテナンス項目は、シンプルな工業製品のだれでもできるように設計された手順ですから、不器用だと思ってる人でも集中すればマスターできる、と信じてください。

付言すると、心がけとしてマスターしてほしいこともあります。それは決して焦らないこと。焦ってる人がなにかものごとを華麗に成し遂げたケースを僕は寡聞にして知りません。猫の手を払いのけざるを得ない現代社会に生きる我々ですから、急がなければいけない場面には出くわすことでしょう。通勤・通学の出発時刻やライド仲間との待ち合わせが迫ってる、なんてケースは自転車乗りならあり得ます。そんなときは焦らずに急いでくださいね。

次回はチェーンの洗浄をマスターしちゃいましょう。


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→連載第2回「部屋でできるチェーン洗浄~「ひとりで100㎞」走るためのメンテナンス講座#02

B!

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