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ヒルクライムの走り方。 “いい感じ”で上るためのペーシングを知ろう!前編 ~自転車の処方箋 #02~

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2013年インタープロ時代の筆者 写真提供:河西正史

「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。第2回目は、神奈川県のユウさんから「長い上りに苦手意識がある」というお悩みをいただきました。

「8%以上の斜度になるとギアがなくなってひたすら我慢するしかなくなる」
「バテる、心拍が上がりすぎてもたない」
「一度上ってしまうと、その後ずっとつらくてスタミナもたない」

数10mの短い激坂ならダンシングと我慢で上りきれますが、長い山道で激坂と普通の上りが入るともうだめです。今回乙女ギア(※編集部注:大き目のリアギア)の導入を検討したきっかけが「ギアに余裕があればもっと脚がもつのでは?」と思ったからです。

楽しく上れる方法があるなら聞いてみたい! プロサイクリングチームAVENTURA CYCLINGの運営代表/プレイングディレクター、管洋介さん、教えてください!!

基本編と応用編で上りの悩みを解消

ヒルクライムはロードバイクの醍醐味であると同時にハードな運動を強いられるパートです。とはいえ、あなたが乗っているロードバイクの重さは大体9kgくらい。自転車のタイプからすれば、本来は軽快に上れるはずなのです。しかし、

「軽快に上れるはずなのに、厳しい上りに打ちのめされてしまう」

こんな悩みを持つライダーは多い。それは、それぞれのトレーニング量、フィジカルの強さに対する体重比、フォーム、ギア比……などにより、解決方法をアプローチする方向性が異なります。

上りはみなさんが興味を持つテーマだと思いますので、今回は前編・後編の2回に分けて解説したいと思います。前編はペースづくりの基本について、後編では特定のコースを例に挙げて、初心者におススメのペースの作り方、ヒルクライムに最適なフォームの導き方を指南します。上っている感じもありつつ、しかも楽しい。そんな「いい感じ」に上れるようになるはずです!

“ペーシング”の要は回転数にあり

「いい感じで登りたい!」こう思う様になったときに、ヒルクライム初心者に一番気にしてほしいのはペーシングです。ペーシングを考慮して走ると結果的に“充実感”と“楽に感じた”という感覚を得ることができます。
ペーシングとは速度域の話ですが、大きくいえばシッティングやダンシングなど、速度域に 合ったフォームをとることも入ります。
フォームについては後編として、ここでは速度域にあたる部分、運動強度(心拍数)と回転数という部分にフォーカスしてペーシングの話をしていきましょう

ヒルクライムを「うまく走る」には、ある程度の強度を保ち続ける努力が必要になります。
惰性では進まない上りで強度を保つ方法は、回転数を指標にするとリズムが保やすくなるので分かりやすいと思います。
回転数はいわゆる「ケイデンス」といわれているもので、1分間の間にペダルを何回転したかを表したものです。比較的オーソドックスなサイクルコンピューターにも計測できる昨日がついているものあるので、みなさんもご存じかもしれません。

2014年マトリックスパワータグ時代の筆者 写真提供:河西正史

一定のケイデンスで走ることができれば、かなり長い時間楽に走ることができます。そのためには、表示されるケイデンスを見ながら、こまめにシフトチェンジをしていく必要があります。ただし、使いこなせれば有効な数値ですが、「使えている」人はあまりいないかもしれません。勾配に変化があるところではシフトチェンジするきっかけを回転数によって、決めておくとそれが自然にペーシングに繋がります。
さらにケイデンスのペーシングに、運動強度を保つ目安となる心拍計を使えれば、より本格的なペーシングが可能となります。

“心拍数”の使い方

心拍数をペーシングに使うためには、まず自分の最大心拍数を知っておくことが大切になります。それを求める公式は、いろいろとあるのですが、ここでは
最大心拍数=208‐0.7×年齢
としておきます。

例えば、25歳、45歳の場合は・・・
208‐0.7×25=190
208‐0.7×45=176
このようになりますが、それぞれ自分のおおよその最大心拍数は、計算して把握しておきましょう。

この最大心拍数の60~70%が上りのときの「いい感じで登りたい!」と思える現実的なペースになると考えてください。
80%まで上げてしまうとそれを峠の距離によっては最後まで維持するのが難しくなります。もしそれを維持しようとすれば、それなりに厳しいトレーニングを積む必要があります。

▲心拍数とケイデンスは上りのペーシングに使える数値。

高い、低いでこんなに違う? 回転数の違いで身体に現れる変化

なぜケイデンスがペーシングに繋がるのか??
上りのときのケイデンスはその数値によって顕著に次のような身体的な違いがあらわれます。ここではある運動強度を一定にした状態でケイデンスを変化に持たせた時に感じる特徴を紹介していきます。この変化はその日の体調の好条件を合わせている事が前提になります。

4%~5%の上り坂でペーシングを行った場面での特徴

85回転±5と回転数が高い場合

特徴:筋肉への負担が少ないので、筋力がなくても対応しやすい
メリット:高い運動強度(高い心拍数)を保ちやすい
     比較的初めての坂でもテンポをつかみやすい
デメリット:運動に慣れていないと心拍数が高い状態(高運動強度)がツラくなる
準備するもの:軽く速く回せるギアが必要になる

70回転±5と回転数が低い場合

特徴:心拍数が低く落ち着いて踏んでいける
メリット:心拍的につらくない
デメリット:慣れた坂道でないと追い込んでいる運動強度の指数が分かりにくい。
      脚の筋肉への負担が大きくなり崩れやすい
準備するもの:トルク(ギア)を踏める筋力が必要になる


中程度の4~5%くらいの上り坂で、ある程度一定の高い強度を保つ場面では、以上のように回転数によって、異なった身体の反応が現れます。これらはどちらが良いというものではありません。自分がどちらの方が楽に走れるタイプなのか、ターゲットの心拍数を基準に試してみながら見極めてみるとペーシングの目標も見えて来ます。10分くらいで上り切れる坂を見つけるといいでしょう。

ペースが作れていないライダーの特徴

心拍数を見て運動強度を感じて、しっかりペーシングできるライダーは上記の2つのタイプにあてはまると思います。しかし一方で、一定で高めの運動強度を保てなくなるライダーの特徴として、勾配に見合ったギアを選べていない場合も見られます。いずれにせよペーシングというものを理解できていないということです。

これらの場合、運動強度というものを知ったり、ギア比を考察する必要があります。
それらの人には次のパターンが考えられます。

回転数が低過ぎる場合 50回転前後で走ってしまう人の傾向と状況

  • コースの状況の変化しても重いギアのまま、もしくはギアが足りていない
  • 必然的に重すぎて踏めなくなり、心拍数はそれほど高くならなくなる結果、スピードが落ちる
  • 安定してキープできるちょうどよい運動強度に達しない。
  • 非効率な回転数

対策:こうなる前にギアをシフトチェンジする必要があります。

▲踏み込みし過ぎてハンドルにしがみつくようなフォームになってしまう。

回転数が高過ぎる 100回転前後で走ってしまう人の傾向と状況

  • 視線の先に上りを見た瞬間、一番ギアを軽くしてしまう
  • 軽いギアを回し過ぎるため、心拍数が上がりやすく苦しい
  • ペダルは回るが、なかなか前に進まず苦戦する

対策:惰性の効かない登りでは勾配に合わせて回転数を抑えていく必要があります。シフトチェンジを細やかに行うのも重要です

▲クルクル回すは悪いことではないが、回し過ぎると心拍数が上がりすぎることにもなる。

おおよそ回転数と心拍数を基準にすれば、ライダーが走りの質をコントロール(ペーシング)することができるのです。そして、挑戦するコースの特徴をしっかり把握し、走りを想像することが「いい感じで登れた!」という結果に繋がるのです。
というわけで、次回は赤城山のコース例に具体的なコース攻略の方法を紹介していきます。お楽しみに!

 

B!

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