こんにちは、ロードバイクで山を登るのが大好きな篠と申します。
連載第5回目の今回は、ここ何年間か山岳ライドを続けて、自分なりに考えた「ヒルクライムを楽しむ3つのポイント」について語ってみたいと思います。
ヒルクライムは辛い、これは事実です
ロードバイクを購入し、「軽く漕ぐだけで速く進むなんて、なんと素晴らしい乗り物だ!」という感動は、スポーツバイクに初めて乗る方なら誰しもが経験していると思います。自分が風になったよう気がして、どこでも速く駆け抜けられる錯覚に陥りますが、いざ峠道に足を踏み入れてみたら、びっくりするぐらい進まずに挫折したことはないでしょうか?
平地では一回漕げばしばらく慣性で進む自転車も、坂では漕ぐ足を止めるとピタッと止まってしまいます。その上、自身の体重分の負荷を支えながら坂を登り続けないといけないので、一気に難易度が上がります。
何も知らずに登るとただ辛くて苦しいだけのヒルクライムでも、着目点を少し変えるだけでいろんな楽しみ方ができます。それを少し掘り下げていきたいと思います。
苦しい達成感にご褒美絶景をプラスする
頂上から綺麗な景色が見られる峠は、これから山を登ってみようかなと考えている方にオススメです。いくら峠を登り切った達成感があるとは言え、最初の頃は登った先に何もないのはいささかしょんぼりします。
本当の意味で私をヒルクライム沼に引きずり込んだのは、2015年11月にふとした思い付きで出かけた箱根弾丸旅行で見た、箱根大観山からの景色でした。
1日目は江ノ島スタートで、箱根湯元経由で国道1号線最高地点を越えたところに宿を取り、2日目はそのまま江ノ島に折り返す予定の一泊二日旅でしたが、せっかくいい天気だったので、宿から10km離れた箱根大観山の頂上まで登ってみようと思いました。
芦ノ湖から本当の登坂は5kmほどしかありませんが、前日の筋肉痛を引きずりながら登った先には思いも寄らぬ壮大な景色が私を待ち受けていました。
秋晴れの澄み渡る青空をバックに、富士山と山々に囲まれた芦ノ湖が一望できました。この景色を目の当たりにした時、息を呑んだのを今でもはっきり覚えています。
さっきまでいた芦ノ湖がまるでミニチュアのようで、湖からここまでたったの5km、標高差も250mしかなかったのに、自分の足で漕いでここまで上がってきた!登ってよかった!という感動が大きかったです。
登っている最中は辛くて早く終わって欲しかったのに、この景色が見るためならまた何度でも登りたくなります。これこそが頂上が開けている峠の素晴らしさと言えるのでしょう。
後から知りましたが、大観山山頂から毎日富士山がくっきり見える訳ではないようです。気温が上がると雲で富士山が隠れてしまうので、景色目当てなら午前中が狙い目です。
目前が開けた絶景という意味で選ぶならば、神奈川県のヤビツ峠であれば、頂上よりも景色のいい山の中腰にある菜の花台の方が好きだという方もいらっしゃるでしょう。
少し都心からは離れてしまいますが、群馬県と長野県にまたがる開放感のある渋峠や、長野県大町市にある小熊山もとても綺麗でオススメです。
ヒルクライム初心者には獲得標高と登坂距離も少し厳しいですが、ちょっと坂道に慣れてきた頃にでも、是非足を伸ばしてみてほしい素敵な峠です。
脱補給食!美味しいご飯をコースに設定する
サイクリストはコンビニ補給で済ませがちですが、実は探せば峠道の近くには意外と美味しいお店たくさんあります。
店の脇にバイクラックやエアポンプが設置されていたり、真夏ですとボトルの水をサービスで補充してもらえたり、サイクリストに優しいお店が多いです。
私の場合、お昼ご飯と午後のデザートを食べるお店をあらかじめ決めてからその日のライドコースを考えることもあります。
例えば、60kmを走る予定なら、峠をひとつ入れて、20km地点でお昼を食べて、またひとつ峠追加してもいいし、疲れたらさらに平地を20km進んだところでデザートにするなど、自分の体力と時間と相談しながらコースを決めていきます。
人気のない林道を登り進んだら、隠れ家のようなお店が佇んでいたというのはなかなかロマンがあります。
そういった素敵なお店探しも山の楽しみ方のひとつではないでしょうか。
私がすすめる峠のレストラン
ビストロラント
山梨県上野原市秋山にある歴史のある洋食店。
牧馬峠&新雛鶴&厳道峠にアクセスしやすく、サイクリングルートに組み込みやすい。
料理はどれもリーズナブルなのにボリューミーで美味しい。
きまぐれ喫茶
神奈川県秦野市・ヤビツ峠(宮ヶ瀬側)にあるカフェ。自転車漫画「かもめ☆チャンス」にも登場したお店。メニューはカレー、パスタ、ホットサンド、自家製ケーキなど。
店名通り営業日はきまぐれなので、ヤビツ峠登った日に是非チャレンジしてみてください。
JURIN’s GEO
埼玉県秩父市浦山ダム&有間峠(秩父側)の麓にあるカフェ。飯能から有間峠越えてからのランチにちょうどいい。
スキレットパンケーキと231通り自由に組み合わせられるアイスクリームが名物。
天空の楽校
山里の小さな元分校をカフェに作り替えたお店。
標高550メートルの絶景ポイントにあり、豊かな自然と美味しい湧水が魅力。
「給食セット」(ちまき+ドリンク)やスペアリブ、フルーツバームクーヘンが名物!
前回より今回。目標をゲーム感覚でクリアする
初めて山を登ってみようと思うのは、ほとんどの場合は好奇心からだと思います。
「本物の峠道ってどんな感じだろう」
「登り切れなかったらどうしよう」
「ネットで調べた平均タイムと比べて、自分の実力はいかなるものか?」
……と、まだ行ってもいないのに妄想ばかりが膨らんでいきますが、まずは深く考えずに体で長い坂を感じて楽しんでみましょう。最初からすんなり登れてしまう人はほとんどいないので、上手くいかなくても焦る必要はありません。
私は初めてヤビツ峠登った時蓑毛のバス停で足をついてしまいました。
今度こそ登り切ってやる!とリベンジした2回目も結局足をついてしまいましたが、その先のドーナツ坂まで登り進めました。
たったの100mの違いですが、自分の中では一歩確実に前に進んだ気がしました。
「前回は1kmで足をついてしまったので、今回は100mでもいいからもっと先まで登り進めよう」
「時速5kmを切らないようにしよう」
「今日はダンシングを頑張ってみよう」
こんなふうに手が届きそうな小さな目標を一個一個設けて、徐々にクリアしていくと、上手くいかないヒルクライムもなんだかゲーム感覚のように思えてきませんか?
次はこれも試してみよう!とモチベーションにも繋がります。
平地走行とは違って、ヒルクライムは「できなかったことができるようになる」という実感がとても得られやすいのも、山が楽しくなる理由のひとつです。
前回登れなかった坂が登れるようになった、同じ坂が少し楽に登れるようになった、同じ峠でも翌日ひどい筋肉痛にならなかったなど、登った分は必ず経験となって積み重ねていきます。
まずはいろんな峠を登って、違う表情の峠道を楽しんで、筋力を体力を身につけることから始めると、心の余裕も増えますし、後々走りの幅も広がります。
自身の些細な変化に目を向けてみると、実は前に進み続けていることに気が付きます。
成長の判断基準は他人との比較だけではありません。
自分の中の「物差し」を見つけることがとても大切です。
最初の頃の私は、上手く登れないことが恥ずかしいと思う時期がありました。
ほぼ同時に自転車を始めた人ほど速く走れないことに焦りを覚えることもありました。
どんどん速くなっていく周りに置いていかれることはやはり心細いものです。
自転車はフィジカルとテクニックの両方が欠かせないスポーツ。
元々スポーツをやっていた人と、初めてのスポーツが自転車という人とでは、成長スピードが違うのも当然です。冷静になって自分に足りないものをよく考えてみれば、次も目標も立てやすくなるでしょう。
次回は登っている最中に気を付けていること、少し意識するだけで登坂の体感が変わるコツなどを話してみたいと思います。