クルマの駐車スペースに屋根を設置したいけど、大きなガレージは建てられない……そういう人はカーポートを検討してみてはいかがでしょうか。カーポートは大きな基礎工事が不要で、手軽に設置できる魅力があります。
日除けや雨をガードできるのはもちろん、使う材質によっては豪雪地帯でも耐えられる頑丈さも持ち合わせています。近年ではUVカットや遮熱効果があるタイプが主流となっており、愛車の内外装を保護する意味でも大いに有効です。
では具体的にどのようなカーポートを選べば良いのでしょう。設置時の注意点なども含めて紹介します。
目次
屋根付きの駐車場にするならカーポートがおすすめ!
カーポートとは、外壁を持たない簡易的な車庫のことで、柱と屋根板は軽量な素材で作られています。クルマ専用のガレージに比べると手軽に設置できて、コストも抑えられることが特徴です。
構造としては住宅の屋根に構築するスタイルと、駐車スペース内に独立したカーポートを構築するスタイルがあります。住宅の一部を使ったカーポートは注文住宅になる場合が多いですが、独立したカーポートは駐車スペースさえあれば後からでも設置できます。この記事では、住宅から独立したタイプのカーポートについて解説していきます。
カーポートを設置する7つのメリット
カーポートの設置を検討している人は「日差しや雨から愛車を守りたい」と考えているケースが多いでしょう。駐車スペースに屋根があることで、ほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではカーポートのメリットを7つ紹介します。
➀クルマが雨や雪で汚れない
屋根付き駐車場の最大のメリットは、雪や雨の影響を最小限まで軽減できることです。
「雪や雨はもともと水蒸気だし、綺麗な水だから気にしなくていいのでは?」と考えるかもしれませんが、現代における日本の雨雲というのは大気中の汚染物質(PM2.5や黄砂)を含むケースが多く、純水とは言えません。
むしろ汚染物質を含みながら雪や雨となって降ってくる場合もあるので、雨が降るたびに汚れも降ってきていると言えるかもしれません。屋根が雪や雨を防いでくれればクルマに付着する汚れは少なくなるので、洗車する回数も減らせます。
②雨降りの時でも濡れずに乗り降りできる
雨降りで傘をさしながらクルマの乗り降りをするのは気を使います。傘がクルマに接触すればキズになりますし、風が吹いていればさらに困難です。結局クルマから少し離れた場所で傘を使うことになり、その間に濡れてしまいます。
カーポートがあれば屋根の下で傘を開閉できるので、クルマの乗り降りがスムーズに行えます。傘を閉じた後に付いた雨を払う余裕も生まれ、持ち込んだ傘で車内を濡らすことも少なくなるでしょう。
➂クルマの塗装や内装品が傷みにくくなる
クルマの塗装や内装品にダメージを与えるのが太陽光です。ただ太陽光と言っても、人間の目に見える「可視光線」、目に見えない「紫外線・赤外線」があります。問題なのは目に見えない紫外線と赤外線です。
紫外線は人間の皮膚や目にもダメージを与えると知られていますが、クルマにおいても樹脂素材や塗装の劣化を引き起こします。UVカットガラスの採用で紫外線による内装品へのダメージは少なくなりましたが、外気にさらされる塗装は太陽光に含まれる紫外線を常に浴びています。
そこで太陽とクルマの間に屋根を1枚挟んで紫外線をカットすることで、塗装に当たる紫外線の量が少なくなり塗装の劣化を抑えることができるわけです。
④季節によるクルマへの影響を軽減
光をとおさない屋根であれば紫外線も赤外線も遮断して、日除けとしての効果により夏場の車内温度上昇を抑えられます。最近ではUV&IRカット機能が付いた素材もあり、可視光線はある程度とおしながら紫外線と赤外線による影響を軽減できる製品もあります。
またカーポートは空からの熱は遮りますが、地面からの熱は逃がさない構造です。そのため冬場の温度低下を防ぎ、霜の付着を防止する効果も期待できます。
⑤大気中の異物・鳥のフン・落下物をガード
空から降ってくるのは雪や雨だけではありません。大気中に舞い上がった物は、やがて地表へと降ってきます。先にも述べたPM2.5や黄砂もそうですし、季節によっては花粉や落ち葉も舞います。動物由来の物であれば、鳥のフンなども空から降ってくるものと言えるかもしれません。
そういった空から降ってくるものを、屋根となるカーポートを設置することでガードできるのです。ただ鳥にかんしてはカーポートそのものに巣を作ってしまう例もあるので、カーポート設置と併せて鳥避けの対策を講じる必要もあります。
⑥ガレージよりも安くて工事期間も短い
カーポートの柱は軽量な鉄骨、屋根板にも軽量なポリカーボネートやアルミ板で作られていることがほとんどです。そのため本格的なガレージに比べれば組立は比較的容易で、人手も少なく工期も短いことから材料費と作業工賃が安く済みます。
またカーポートは恒久的な設置を前提としない簡易的な建築物とみなされるので、固定資産税の対象とならないケースが多く、税制面を考慮した上での維持費としても安く済む傾向にあります。固定資産税の対象になるガレージよりも経済的なのです。
⑦ソーラーパネルも設置可能
カーポートは簡易的な屋根であり、太陽光を遮る効果があると述べました。であれば「太陽光を遮る屋根板をソーラーパネルにすれば発電が可能ではないか?」
まさにそれを可能としたのがソーラーカーポートと言われるもので、屋根板に硬質のソーラーパネルを採用した物や、屋根合わせて柔らかい薄型ソーラーパネルを張り付けた物までさまざまなタイプがあります。
以前であれば発電した電力を売電して電気料金の節約にも繋がっていましたが、売電収入が下落したことで太陽光発電の魅力は落ちました。ただ所有している車がEVやPHVといった車両であれば、外部充電可能な大容量の走行用バッテリーがあるはずです。
もちろんソーラーパネルの電力で充電することも可能なのですが、オススメはただの充電器ではなくV2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)という充放電機を使う方法。これによりクルマのバッテリーから家庭への電力供給が可能になります。これはクルマの走行用バッテリーを使った蓄電池システムであり、災害時においても数日分の電力確保を可能とするシステムでもあります。
売電での収益性は下がりましたが、防災という観点から見ればカーポートにソーラーパネルやV2Hシステムを設置する価値は十分にあるでしょう。
カーポートのデメリットも知っておこう
駐車場に屋根をつけるだけでも多数のメリットがあるのですが、カーポートは簡易的であるということがメリットとなるケースが多いです。特に設置費用にかんしてはガレージよりもずっと安価に済みます。
ただその簡易的な屋根であるというのが、逆にデメリットにつながるケースもあるようです。
柱が邪魔になる
カーポートは少ない本数で大きな屋根を支えるバランスの関係上、中央寄りに支柱が設置されてしまうことも。壁も無くて開放的なのに、いざ駐車してみると支柱がドアの側面に来てしまい、意外と邪魔になった……ということも起こります。
とはいえ、これはカーポートの柱の配置も含めた設計によるところが大きいです。四隅に太い柱を設置することで車両側面に柱が来ない設計のカーポートもありますので、設計図や車両寸法を確認することで回避できます。
台風や大雪で破損する可能性がある
簡易的な屋根なので、強度では本格的なガレージに劣ります。特に影響があるのは台風と大雪です。台風の強風による飛来物は、カーポートでは防ぎきれません。壁面が無い開放的な設計であるが故のデメリットです。またカーポートそのものが強風で損壊するというケースも考えられます。
大雪は屋根に降り積もった雪の重みがカーポートへの負荷となり、その荷重に耐えきれずにカーポートが崩壊してしまう可能性もあります。もっともこれはカーポートに限らず、他の建築物でも同じことが言えます。
そうならないためにも、雪下ろし作業は重要ですし、豪雪地帯向けの高耐荷重設計のカーポートもあります。お住まいの地域に合わせて構造や耐久性を選ぶのが大切です。
カーポートの種類と形状
カーポートには柱の位置関係や使われる材質の違いにより、いくつかの種類に分けられます。注文住宅に隣接するカーポートでは住宅との調和も考えられ、材質も住宅に合わせた形となることが一般的です。
一方で住宅と独立させて設置するカーポートも、近年ではデザイン性や機能性でも優れたモデルも登場し、クルマを魅せたり保護したりする性能が高くなっています。
ここでは構造や材質の違いによるカーポートの種類について紹介します。
柱のタイプ
左右いずれかに柱を設けるタイプは「片側支持タイプ」と「両側支持タイプ」で大別されます。
「片側支持タイプ」は片方に柱を設置するタイプで、反対側には柱がなく見た目もスッキリとした印象です。柱がないほうはスペースが広くて楽に乗り降りできます。ただその構造上、高い強度を求めるには不利で屋根の大型化が難しく、1台用のカーポートに使われることがほとんどです。
一方の「両側支持タイプ」は、左右に柱を設置するタイプです。見た目にも安定感があり、2台以上の駐車スペースにも対応可能。降雪時の耐荷重性でも有利になります。
上記の片側支持タイプを90度回転させたような構造となるのが「後方支持タイプ」です。クルマの左右のドアに干渉しない位置に柱があるので、乗り降りがスムーズになります。ただ構造的に屋根の大型化が難しく、風の影響を受けやすいのが難点です。
「片側上吊りタイプ」は片側支持タイプの派生形。柱と柱から伸びたポールによって、柱から遠い位置を吊り上げる形で支えています。柱そのものは太くする必要はありますが、片側支持タイプに比べて屋根の大型化がしやすい構造です。柱の位置を変えれば後方支持型にもなります。
屋根の形
屋根の形状は「ラウンドスタイル」と「フラットスタイル」があります。
まず「ラウンドスタイル」は屋根にアールを付けたタイプで、梁となる部分に曲げ加工がされています。降雪などによる重量負荷に対して強い構造で、積雪地区では特に人気です。だだ左右に雪が落ちるので、となりの住宅と隣接している場合には注意が必要になります。
「フラットスタイル」はその名のとおり、平面となった屋根に水はけの傾斜を付けたタイプで、シンプルな構造により大型化しやすいことが特徴です。2つ以上のカーポート同士を連結させる場合にも向いています。
このほか、駐車スペースの中央に柱を集中させ左右に屋根を広げる「Y字合掌」、駐車スペースの左右から中央に向かって屋根を伸ばす「M字合掌」もあります。形状が特殊なのでほとんど見かけることはありませんが、人とは違うオシャレなカーポートとして魅力的です。
屋根材の種類
透明なプラスチック素材の屋根板としては「アクリル板」と「ポリカーボネート板」の2種類があります。
アクリルはプラスチックの中では透明度がもっとも高い素材です。変色や透明度の低下も少なく、加工のしやすさでも優れています。特にラウンドタイプのような曲面となる屋根では、アクリルの加工しやすさが重宝されていました。欠点としては紫外線による劣化と衝撃に弱いことで、強風や飛来物で割れる場合があり、近年では使用されることが少なくなっています。
ポリカーボネートはアクリル同様の透明度と加工のしやすさで優れていますが、何より特筆すべきなのはその強度です。身近な用途ですと、スマホケースやノートPCの筐体にも採用されています。航空機の窓や軍や警察で使う防弾盾も、ポリカーボネートが使われるほど衝撃に強い素材です。
強度を優先するのであれば「アルミ折板」、安さで言えば「塩化ビニール波板」も以前から使われている屋根材です。
アルミ折板はガレージにも使われる高強度の屋根で、金属としては軽量でありサビや腐食に強いという特徴があります。現在主流のポリカーボネート板とは違い、完全に太陽光をさえぎる遮光性と遮熱性の高さが魅力です。
塩化ビニール波板は昔からある屋根材で、安価・軽量であることが特徴です。柔らかくて加工しやすいですが、強度に難があり紫外線による劣化が早いことが欠点です。とはいえ、ホームセンターでも取り扱われているので入手しやすく、DIYで張替補修できることがメリットです。
おすすめのカーポートをご紹介!
カーポートはさまざまなメーカーと種類があります。先に述べた種類と形状を中心に、より差別化を図ったデザイン性の高いモデルも存在します。
ここではLIXIL(リクシル)とYKK APのカーポートについて紹介します。
LIXIL(リクシル)のカーポート
LIXIL カーポート 「ネスカR」
LIXILのカーポートのなかでも特にコスパが高いのが「ネスカシリーズ」です。屋根の形がラウンドスタイルになったものが「ネスカR」で、1台用と2台用があります。1台用はM字およびY字合掌での連結もでき、縦方向への連結も可能です。
本体のカラーバリエーションも豊富で、「オータムブラウン」「シャイングレー」「ホワイト」「ブラック」「ナチュラルシルバー」の5種、屋根材もポリカーボネート板もしくはFRP板が選べ、熱線吸収タイプも含めて6種あります。
オプションにはカメラや防水コンセントが用意されており、防犯対策もできます。車庫入れをサポートしてくれるスポットライトや柱ガードもあり、必要に応じてカスタマイズできるのは嬉しいポイントです。
LIXIL カーポート 「ネスカF」
屋根がフラットスタイルになったモデルが「ネスカF」です。こちらもネスカR同様に1台用と2台用があり、1台用ではM字とY字の合掌が可能。縦方向への連結もできます。屋根材の種類ははネスカRと同じで、オプションのスポットライト、カメラなども取り付け可能です。
ネスカRとの違いはほとんどありませんが、あえて違いを述べるのなら「傾斜の向き」です。ネスカRでは1台用、2台用ともに左右に落ちる傾斜となっていました。ネスカFの1台用も左右に落ちるのですが、2台用では前後に落ちる傾斜が付けられています。1台用のM字合掌を使えば左右への傾斜となるため、デザインとしての選択肢はネスカFのほうが多いと言えます。
※詳細は公式サイトより
・ネスカR
・ネスカF
YKK AP のカーポート
ビルなどの法人向け製品をを扱っている「YKK AP」ですが、個人宅用のカーポートも販売しています。カーポート以外にも出入り口のゲートも扱っているので、駐車場のスタイルとしてのバリエーションは豊富です。
特に目を引くデザインなのが、エクスティアラシリーズです。通常のカーポートだと、いかにも駐車スペースという印象になってしましますが、エクスティアラではエントランスと駐車スペースを兼ねる空間を演出しています。
カーポートだけでなくルーフモデルもあり、ルーフモデルはより大型の屋根を構築できます。駐車スペースの屋根としてはもちろんのこと、そこから更に延長して庭の一角に屋根を持ってくることも可能で、これを利用して庭先でのアウトドアを楽しむことができます。
※詳細は公式サイトより
カーポート設置の注意点
カーポートはガレージに比べれば比較的簡単に設置できます。それ故に固定資産税の対象から外れているわけです。
とはいえ建築物ないし設置物であることに変わりありません。特に駐車スペースという道路に面したところに作ることが前提であるため、それに関連した法律などを守る必要があります。
道路境界線を越えないようにする
敷地の管轄というのは、その上空にまで及びます。言い換えれば土地の範囲内で上に伸ばす分には問題になることは少ないのです。
しかし、カーポートの屋根が道路上にせり出していると「建築基準法違反」になります。これを守らないと、車高の高いクルマあるいは積載された荷物がカーポートと接触する可能性があり、それによって生じた損害などを請求される可能性があります。
隣の家にも配慮する
カーポートに雨どいが付いていれば、雨どいを通して流れてくれるでしょう。しかし降り積もった雪は雨どいに入りきらず、最後はカーポートの端から落下します。
この落下した先が隣人の敷地であった場合、隣人は他人の敷地に降った雪の除雪を押し付けられたと感じるかもしれません。苦情やトラブルの元になり兼ねないので、設置後に支障がないかもチェックしておきましょう。
建築確認申請が必要になる場合がある
カーポートは道路に面する場所に設置されることが前提の建築物であるため、その地域の都市計画や防火地域の決まりに左右されます。いわゆる「建ぺい率」にかかわってくる部分で、床面積10㎡(へいべい、へいほうめーとる※)以上の建築物を建てる際に必要になってきます。
※)㎡=縦(m)× 横(m)
これに該当するカーポートを設置する場合は、その旨を熟知した建築士に建築確認申請にかんする相談や依頼をしたほうが良いでしょう。なお、自治体によって建築物の規制が異なります。
防火地域・準防火地域・法22条指定区域は素材が限られる
建築確認申請の結果として、防火地域であることが分かる場合もあります。主に住宅密集地や駅前付近の商店街など、立地的に隣家との間隔も狭くて延焼が起きやすい条件となっている場所が指定されることが多いです。
こういった場所で火災が起きると延焼で被害が拡大するので、燃えやすい素材を使った建築物は認められていません。カーポートを選ぶ際には、まずこれらの区域に該当していないかを確認することが重要です。仮に該当区域でも、設置可能なカーポートはあります。
設置費用の価格相場
カーポートを設置には、カーポート本体に加えて設置費用がかかります。一般的には柱の本数・屋根の材質・屋根の大きさで価格が変動し、柱が多くなるほど、もしくは工程が複雑になるほど価格が高くなる傾向にあります。
たとえば、屋根にポリカーボネート板を使用した1台用カーポートであれば、約4~6万円程度で設置可能。柱が4本になる2台用では約6~10万円程度、屋根が大きくなる3台用は11~14万が相場と言われています(いずれも税込み)。頑丈なアルミ製の屋根板や豪雪地帯向けの高耐荷重モデルになると、設置費用も上がります。
ただ、カーポート取扱いメーカーやインターネット通販では「工事費込み」となっている場合がほとんどです。本体に工事費を含んだ総額で判断できるので、設置費用はあまり気にしなくても良いでしょう。
ほかにかかる費用としては各種オプションであったり、建築士に依頼した建築確認申請の代行費用などが挙げられます。
まとめ
簡易的な屋根付きの駐車場だったカーポートは、技術の進化により丈夫で長持ちする車庫として機能するようになりました。屋根板もアルミ折板を使えば高い耐久性を持たせることができます。
またカーポートを駐車スペースだけでなく、庭のウッドデッキなどの屋根にするという利用法もあります。デザイン性が高いカーポートであれば、駐車スペース以外の使い方をする場所としても活用できるでしょう。
費用面で見ればガレージに比べて容易に設置できるのですが、カーポートも建築物です。各自治体が定めるところの建築基準を満たした作りでなければなりません。簡易的な構造故に風や雪には弱いですし、大きな災害となることを防ぐ意味でも設置時には建築士に相談することをオススメします。