サガン失格！ツール・ド・フランス第4ステージ、ゴールスプリント中にカヴェンディッシュに故意に肘を出したとして

サガン失格、なぜ

ツール・ド・フランス第4ステージに大波乱。世界王者ペテル・サガン（ボーラ・ハンスグローエ）がゴール前200ｍのスプリント中、右背後から来たマーク・カヴェンディッシュ（チーム・ディメンションデータ）を肘で妨害、故意にカヴェンディッシュを落車させたとして、失格となった。サガンはこの失格により、2017年のツール・ド・フランスをこれ以上走ることが出来なくなった。また、カヴェンディッシュも落車による右肩骨折で、２０１７ツール・ド・フランスの第５ステージ以降はリタイアが決定した。

サガンと言えば、その実力だけでなく、今世界で最も人気がある選手の一人だけに、波紋は大きく広がっている。かつては独特のファッションセンスや表彰台上でのセクシャルハラスメント行為なども含め「悪童」キャラで鳴らしたサガンだが、世界王者となって以降は風格を身に着けたとの評価、尊敬を集めている。
いったいゴール前で何が起こったのか。

映像で見る「その瞬間」

こちらはゴールスプリントを正面から撮影した映像。

問題はこの動画の0:06秒付近。スプリンター達が全体的に右に寄る中、隙間がなくなり、白地にアルカンシェル・ジャージを着たサガンの右背後から小柄なカヴェンディッシュが脇を狙って入り込もうとしたところ、確かにサガンの肘がカヴェンディッシュにヒット。カヴェンディッシュは落車。

Unfortunately following today’s crash, @MarkCavendish is ruled out of rest of this year’s @LeTour. Heal up well, Mark. #TDF2017 pic.twitter.com/mw1Cf6YaQe

— Le Tour de France UK (@letour_uk) July 4, 2017

事態を重く見たUCIコミセールパネル(国際自転車競技連合審判団）はサガンの失格を決定、通知したというわけだ。

サガン失格の件、チーフ・コミッセールのフィリップ・マリン氏が発表。カヴ母国のイギリスでも、「これは厳しい！」と物議を醸しています。やはりラルカンシエルを着る者としてあるまじき振る舞い、という判断はあるのでは?

— yoko aoki 青木陽子 (@yokoaoki) July 4, 2017

サガンはすぐにカヴェンディッシュに謝罪

レース後、サガンは落車したカヴェンディッシュに謝罪に向かった。

ANNOUNCEMENT: protest to result of stage4 #TDF2017 more here: https://t.co/cs12wRUgNC pic.twitter.com/sEJ7D6JYtO

— BORA – hansgrohe (@BORAhansgrohe) July 4, 2017

この「失格」に対し、サガンの所属チームであるボーラ・ハンスグローエは公式に抗議、闘う姿勢を見せている。
「サガンは故意にカヴェンディッシュの落車を誘発していない。サガンはスプリントの中で右端の自分のラインにいただけで、後ろから来るカヴェンディッシュのことは見えていなかった」（ボーラ・ハンスグローエ公式サイトより）

「ゴール前スプリントの中で、私はマーク・カヴェンディッシュが自分の背後にいることを知らなかった。彼は私の右側から来て、私はクリストフの車輪を追っていた。マークは背後からとても速く迫ってきたので、左に避けるという反応が出来なかった。彼は私に衝突し、そしてフェンスに衝突した。ゴールを過ぎてからマークが落車したことを知り、すぐに彼の状態を知りたくてマークの元へ行った。マークは私の友人であり、プロトン（レース中の集団）での同僚でもある。ああいう落車は絶対良くない。マークがすぐよく回復することを祈っている」（ペテル・サガン、公式コメントより）

一方落車したカヴェンディッシュの怪我を治療中のチーム所属医師、ロルフ・アルダグ氏は「落車は問題ではない。問題なのは肘が顔に当たったことで、これは暴力だということだ。したがってサガンの失格は当然。２０１０年にレンショーが頭突きして失格になったのと同じ」とTwitteｒでコメントした。

Sorry, badly explained. Crash isn’t the problem. Elbow into face=violence= out=correct. Renshaw headbutting 2010= violence= out= correct pic.twitter.com/oBWEgRhelt

— Rolf Aldag (@RolfAldag) July 4, 2017

ハンスグローエの抗議は受け付けられるのか？

ツール・ド・フランス中の審判団の決定に対し、抗議が受け付けられないというわけではないが、今回の場合サガンのレース復帰は認められないのでは、という見方が主流だ。

ボーラ・ハンスグローエは、サガン選手のレース除外というコミセールパネル決定に『正式に抗議する』（protested officially）とのこと。『異議申し立て』ではないように読めます。後にも書きますが、今回はUCI規則内で『異議申し立て』が認められていないケースのようです。 https://t.co/nbAAGu8763

— Maki Terao (@makiterao) July 4, 2017

かた苦しいお話になりおそれいりますが、今回の違反はUCI規則10.2.2『ステージレースでの反則スプリント』。1回目:集団最後に降格 + 200CHF、2回目:ステージ最下位に降格 + 200CHF、3回目:除外 +200CHF。重大な場合、（続きます）

— Maki Terao (@makiterao) July 4, 2017

（続きです）上記にかかわらずコミセールパネルは１回目の違反で除外および200CHFの罰金を科すことができる　とあります。今回はこちらが適用されたことになります。一方、UCI規則の12.1.012には、競技中の問題行為に対するコミセール･パネルまたは審判員の決定が（また続きます）

— Maki Terao (@makiterao) July 4, 2017

（続きです）罰金200スイスフラン超える額を（”exceeding”）課されたものでない限り，異議を申立てることはできない、とあります。サガン選手のケースは200CHFを超えていないため、異議申し立てできるケースに該当しない、ということのようです。

— Maki Terao (@makiterao) July 4, 2017

事故後、記者会見でのカヴェンディッシュの狼狽ぶりが涙をさそう。
「骨折にショックを受けている。審判団の判断に任せる。サガンと僕はとても仲がよくて、でもあの肘は・・・分からない（混乱気味）」

「私は肩の骨折の診断にものすごく落胆している。今日、チームはとても良かった。朝のミーティングでやろうと決めたことをパーフェクトに出来ていた。私は勝つためにいいポジションにいると思っていた。それがこのような形で、ツール・ド・フランス……自分の自転車人生のすべてを賭けてここに来たのに……このレースをリタイアするのがとても悲しい。今はチームメイトのレースでの幸運を祈る。残りのレースはTVの前で楽しんでチームの旗がサウスアフリカと、私がサポートしているQhubekaの活動（災害後に自転車を供給するサポートを行っている）のために翻るのを見たいね」（カヴェンディッシュ公式コメント）

Top photo(c)BORA-Hansgrohe official website